「はい、カンパーイ」
「おぉ、これはこれはかたじけない」
「うめーなこの枝豆」
ここはとある居酒屋。
その中で中々整った顔をしているが、3人とも同じ顔をしている。
一人はへそ出しなワイルドなファッション。
もう1人は西洋風の鎧。
そして3人目は武士が着るような鎧のような服を着ていた。
「にしても俺、どれだけ決闘者に使われてるんだ……本当に疲れたぜ」
「まぁそりゃお前は決闘者たちに多く使われた『ティアラメンツ』というカテゴリの中で『ティアラメンツ』モンスターを墓地に送る効果を持つ力を持つんだ。そりゃ皆使うだろうよ、レイノハート」
「にしても限度があるだろ……制限カードになって少しはゆっくりできるかと思ったら『増援』とかで引っ張ってきてまで使おうとしてくるんだぜ。どれだけ俺の効果を当てにしてんだよ」
レイノハートが溜息をつき、手にしたグラスから透き通った水のような酒を一口飲む。
「まぁまぁ……そういやリウムハート殿はどうしたのでござるか? ライヒハート殿、今日は一緒にハート仲間で酒を飲もうと誘ったでござるよね?」
ライズハートが辺りをきょろきょろと見渡しながら枝豆をボリボリとむさぼっていたライヒハートに尋ねる。
声を掛けられたライヒハートが枝豆を飲み込み、一息ついてから口を開く。
「あぁ……ヴィサスの兄貴に『やっとシンクロの素晴らしさが分かる同士が来た』って散々色々な場所に連れまわされてるらしいぜ」
「「あぁ……」」
レイノハートとライズハートがどこか遠い目をする。
ヴィサスの兄貴と呼ばれた男……『ヴィサス=スタフロスト』はチューナーという、シンクロモンスターをシンクロ召喚するために必要な特性を持っている。
だが、スケアクロー・ライヒハートが属してる『スケアクロー』はリンク召喚を主軸としている。
ティアラメンツ・レイノハートが属してる『ティアラメンツ』は融合、そしてクシャトリラ・ライズハートが所属してる『クシャトリラ』はエクシーズを主体としている。
つまり、ことごとくヴィサスのやりたいことと彼ら3人のやりたいこととはかみ合っていないのである。
そんな中現れたマナドゥム・リウムハートが属してる『マナドゥム』はシンクロ召喚を主軸としてる。
そりゃヴィサスも彼を心の友として扱うだろう。
もっとも、ここにいる3人はそのヴィサスとほぼ同じ顔をしているのだが。
「まぁ俺はリウムハートのおかげで少しは解放されたぜ……なんせヴィサスの兄貴、ライトハートを経由して場に出てきて俺とことごとくシンクロを要求して『フルール・ド・バロネスになるぜオラァ!』って言ってくるからよぉ。これでしばらくは真の力を発揮した状態のトライヒハートになれるってもんだぜ」
ライヒハートがどこか安心したような顔で呟くと、レイノハートが今度は微妙な表情をする。
「いや、お前は他のスケアクローの連中と仲良いからいいじゃねーか。俺なんかなぁ。効果で墓地に送ったティアラメンツたちから『え、何こいつと合体するの……嫌』って感じでゴミを見るような眼で見てくるんだぜ!」
「そりゃお前背景ストーリーであれだけティアラメンツたちを虐げてたらそんな眼で見られるのは当たり前でござる」
「しかもよぉ、キトカロスの奴、禁止カードになってこれでやっと刺されること無くなったと安心してたら魔神王と手を組んで他のティアラメンツの力を借りてルルカロスになって俺を倒そうとしてくるんだぜ!? なんなんだあの殺意の波動に目覚めたアリ〇ルは!?」
「そういやこの間、拙者の同志のユニコーン殿がそのルルカロスと戦ってる最中『どうやったらあのクソウザイ王子面をぶっ刺せますかね?』と聞いていたみたいでござる」
「他所のカテゴリのモンスターにまで喧嘩売りに行った挙句何俺を襲うアドバイスを尋ねちゃってるの!?」
「そうしたらユニコーン殿『レイノハート殿は効果で墓地に贈られた場合、特殊召喚する効果を持ってるからその瞬間にルルカロスさんの効果でぶっすりとやるのが効果的だぜぇ』って助言してたでござる。お互い良い笑顔でbサインを出して、いやぁ、微笑ましかったでござるな」
「その会話、ぶっすりと殺られる俺からしてみたら物騒極まりない会話なんだけど!?」
「そのお礼としてルルカロスの元の姿と思われる『ティアラメンツ・キトカロス』の姿と力を模した同属である『ティアラメンツ・クシャトリラ』を作るのに協力してくれた出ござる。というわけでルルカロスに会えたら礼を言っておいてほしいでござる」
「その会話の流れでのこのこと前に出てったらぶっ刺されるの確定するんだけど!?」
レイノハートが熱くツッコミを言う中、ライヒハートがレイノハートのから揚げにレモンをかけながらライズハートを見る。
レイノハートが文句を言う中、ライヒハートがレイノハートの文句を無視しライズハートに尋ねる。
「そういやおめー、俺の力を発揮したトライヒハートの下半身部分を模した『スケアクロー・クシャトリラ』作ってたよな。いつの間に」
「そりゃこの間ヴィサス殿とライヒハート殿が『俺とシンクロしてバロネスになりやがれ!』『うるせー俺はリンク召喚してーんだよ、無理やりシンクロに誘ってくんな!』って喧嘩をしていた時にライヒハート殿がトライヒハートに変身した瞬間にちょちょいと」
「何覗いてんだオメーは! っていうか見てたなら止めろよ!」
「いやぁヴィサス殿がやり合ってる姿を見てるのに興奮してたらつい見入ってしまって」
「ってか、なんでお前わざわざ俺らのカテゴリから同族作ってるんだ? 優秀な仲間いるだろ」
「いやぁ……ヴィサス殿とも関わり深いスケアクローとティアラメンツの者たちの姿を模した同志を作り上げれば、ヴィサス殿は何事かと思い我らクシャトリラ陣営に喧嘩を売りに来るでござろう? そうなったらヴィサス殿と拙者とで熱い体のぶつかり合いが出来て……そしてその末に拙者がヴィサス殿と文字通り一心同体になって、ヴィサス殿の力になれれば……考えるだけで感情が昂るでござる」
良い笑顔を浮かべつつ妙に遠い目をしながらあらぬ方向を見るライズハート。
そんな彼をドン引きな眼でライヒハートとレイノハートは見ていた。
「枝豆と揚げ出汁豆腐お待たせしましたー!」
「お、待ってました」
ピンク色の髪をして、妙にボロい衣装を着つつもエプロンでそれを隠す少女が料理を持って3人の席に来る。
ライズハートの暴走を止めるチャンスだと思いライヒハートが敢えて大声で呼びかける。
「まぁ飲め」
「おお、レイノハート殿自ら酌とはありがたい」
そして便乗してレイノハートが手にした日本酒をライズハートが手にしたグラスに注ぐ。
その酌で満足したのか、ヒートアップしそうだったらヴィサスに対する会話が止まり、2人が内心ほっとする。
「ごゆっくりどうぞー……あ」
目にも止まらぬ速さで床を這うGを少女がスリッパで叩く。
「失礼しましたー……いや本当、どこにでも増殖するから困りますよねー」
そう言いながら少女……『灰流うらら』はそそくさと厨房へと戻っていった。
「そういやあの子、この間『カフェ・マ・ドルチェ』でもアルバイトしてたな。その時も確かGを対峙していたような」
「どこにでもいるGも大概でござるが、あの子も大概でござるよな」
「というかそんなワイルドな見た目のお前がそんなオシャレなカフェに行くこと自体が意外過ぎるわ」
「ほっとけ」
レイノハートからのツッコミにライヒハートが怒りかけるが、居酒屋という他の客も酒と飯を楽しんでる場所で本性を現すほどライヒハートも馬鹿ではない。
「お待たせ」
そんな空気を破るように、リウムハートがヴィサスを連れて居酒屋へと来店する。
「おう、遅かったじゃねぇかリウムハート、それにヴィサスの兄貴……」
ライヒハートがヴィサスに挨拶した瞬間、とある一点に目を奪われる。
真っ先にヴィサスを見たライズハートはもちろんの事、レイノハートもヴィサスの手にある『それ』に眼を奪われる。
「……これか? いやぁ、せっかく新鮮なジャガイモを拾っだからマッシュポテトにでもしようかと」
「ウケケウマイヨ」
どこの世界にジャック・オ・ランタンのような見た目をしてるあげく喋り出すジャガイモがあるんだよと3人はツッコミを入れかける。
だが、隣にいたリウムハートがうんうんうんと何度も頷いてるのを見てああ、こいつもツッコみたかったんだなと3人の心が1つとなった。
「いや凄いんだぞこのジャガイモ。ついさっき潰したら、なんかフランケンみたいな見た目の奴出てきて、しかもフランケンが力を使ったら『なんかあのクソウザイ王子面に似た気配……あ、ヴィサス様、こんばんわー』ってキトカロスまで現れたんだぞ」
「だから何してんだよキトカロスは!?」
「なんでも『マスターデュエル』という次元では1枚だけEXデッキにいることを許されてるから、カップ麺片手にOCGで禁止にされた憂さ晴らししてるらしい」
「何やってるんだほんと……」
「しかしそのカップ麺もマスターデュエルという次元ではそろそろ賞味期限切れになるらしいから、通りすがりのフランケンを誘惑して力を借りてるらしい」
そんなことを言いながらヴィサスが手にした喋る化け物ジャガイモをくるくる回す。
「そういやこの小説の作者、マスターデュエルで先攻1ターン目で相手に『デビル・フランケン』を召喚されて『ああ、まーたナチュル・エクストリオか』と辟易してたところにキトカロスがフランケンの効果で特殊召喚されて眼を見開いた覚えがあるらしいでござるよ」
「いきなりメタ発言やめんかいライズハート」
「まぁリウムハートもヴィサスの兄貴も合流したことだし、改めて乾杯しようや」
「カンパイカンパイウケケケ」
「お前手ないだろジャガイモ」
そしてリウムハートとヴィサスが注文した飲み物も無事運ばれ、5人(と1個)が改めて乾杯をする。
こうして4人のハートとヴィサスの夜は更けていくのであった。