遊戯王 モンスターゆるゆるお喋り次元   作:ヴィルティ

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聖女のデートと過保護な騎士

ワクワクした表情をしながら、辺りを見渡す金色の髪の毛の少女。

華やかと可愛らしさが共存した少女に、通りすがる人は思わず目を向ける。

人々に対してにこっと笑顔を向けるが、そこにやってきたとある人物を見たらぱっと満面の笑みを浮かべる。

 

「お待たせ、エクレシア」

「アルバス君」

 

アルバスと呼ばれた銀髪で褐色の肌の少年がエクレシアの元に来る。

アルバスもエクレシアの満面の笑みに引っ張られてとびっきりの笑顔になる。

 

「今日は初めてのデートだな」

「うん! せっかくだしおめかししてきちゃった」

「おお『白の聖女エクレシア』の時の格好だな。よく似合ってるぞ」

 

アルバスに褒められエクレシアが照れた表情になる。

 

「俺も少しおめかししてきた方が良かったかな」

「いやいや、デートにちゃんと来てくれただけで十分だよ。じゃ、行こうか」

「おう。行くところ決めてるのか?」

「うん」

 

そしてアルバスとエクレシアがデートを堪能すべく、その場から歩いていく。

 

 

……そんな様子をこっそりと見てる存在がいた。

 

 

「おのれぇ、アルバス……私のエクレシアちゃんにぃ」

 

建物の影に隠れ2人の様子を見てる、鎧を着てる女性の名は『教導の騎士フルルドリス』。

鎧を身に纏うことで変装を兼ねているのだろうが、逆に一般人の格好しかいないこの場所では逆に浮いている。

嫉妬のオーラも放ってるせいか、彼女から目を逸らす通りすがりの人もいるぐらいだ。

 

「エクレシアちゃんがアルバスとデートでにっこにこと眼を輝かせてたから止められなかったけど……何とかしてこのデートを……あ」

「げ」

 

そんなフルルドリスが目ざとく一人の少年を発見する。

燃えるような赤髪で、アルバスとよく似た顔付きながら、周りを見下してるかのような表情がアルバスとの違いを感じさせる。

少年の名は『デスピアの導化アルベル』。

彼はフルルドリスを見た瞬間露骨に嫌な顔をした。

 

「見覚えがありすぎる鎧を来た奴がいたから見つからないようにしたかったのに」

「それどういう意味よ?」

「言葉通りの意味だよ。アルバスとエクレシアをストーキングしてる奴に関わりたいと思わねー」

「誰がストーカーよ……まぁいいわ。アルベル、あなたの使役する『デスピア』をあの2人に差し向けてデートの邪魔をしなさい。ちゃんと報酬は出すわ」

 

フルルドリスが嫉妬のオーラを全開にしながらアルベルに依頼するが、アルベルは首を横に振る。

 

「断る。なんで俺がそんなことしなくちゃいけないんだ」

「そりゃもちろん、私がエクレシアちゃんに嫌われたくないからよ。それにあなた、いかにもな悪役顔なんだしデートの邪魔とかぴったりじゃない」

「悪役顔って……そもそもそれ以前に今日の俺はオフだし。それにそもそも」

「そもそも?」

「今日は『デスピアの凶劇』と『デスピアの大導劇神』が『喜劇のデスピアン』と『悲劇のデスピアン』たちを連れて『魔界劇団』たちのシアターを見てきた後『アメイズメント』のテーマパークで遊んでくるらしいから、俺の招集なんて聞くわけないだろ」

「ものすごくエンジョイしてるわね!?」

 

悪役らしい見た目の癖にやたらと娯楽に興じてる事実を知りフルルドリスが思わず驚愕する。

 

「俺はそもそも『デスピア』たちを作り出す際に『魔界劇団』たちのシアターを何度も何度も見てきたから正直飽きてるし、ならフリーでショッピングでも楽しもうかなーと」

「あなたも色々エンジョイしてるわね」

「第一、アルバスの奴は『烙印融合』で『悲劇のデスピアン』と融合して、デスピアンの効果で俺や他のデスピアの連中をサーチしてくれる、いわばお得意様だからな。そんなアルバスが楽しむというのならその邪魔はせんよ」

「あんたって奴は……まぁいいわ。ならせめてアルバスがエクレシアちゃんに変なことをしないように見張るのを手伝いなさい」

 

フルルドリスが無理やりアルベルの手を取り引っ張っていく。

 

(やれやれ……こんなことなら素直に他の連中と素直についていくべきだったか)

 

アルベルが自身の選択を内心後悔しつつ、フルルドリスになすすべなく引っ張られていった。

 

 

「アルバス君、着いたよ」

「おお、ここか」

「いらっしゃいませー」

 

最初にエクレシアがやってきたのは、色々な武器や雑貨が置かれてる店だった。

エクレシアとアルバスを『強欲ゴブリン』が出迎える。

 

 

「むむ、あの店長怪しい見た目ね。もしエクレシアちゃんに怪しげな物を売りつけようものならどうしてくれようか」

「いや俺に対する印象もそうだが見た目で判断するなよ……」

 

ゴブリンを睨みつけるフルルドリスに対して、スマホを操作していたアルベルが呆れた目でフルルドリスを見つめる。

 

「そちらの綺麗なお嬢さん、こちらのハンマーはいかがでしょうか?」

 

ゴブリンがゴマすりしながら鋼鉄でできた巨大なハンマーを見る。

 

「わぁ、すごーいカッコいい」

「おお、確かに良さそうなハンマーだな」

「せっかくだし使ってみるかね?」

 

ゴブリンがハンマーをエクレシアに手渡す。

 

「あ、でも振り回すのは店外で」

「どっせーい!」

 

ゴブリンが忠告するも時すでに遅し。

エクレシアがハンマーをフルスイングし、近くに置いてあった『強欲で金満な壺』を粉砕しようとし。

 

「わーっ!?」

 

アルバスが慌ててエクレシアのハンマーを受け止める。

間一髪でハンマーは壺を割ることがなく『強欲で金満な壺』が両方の顔で冷や汗を流していた。

もっとも、この店で高額な商品を叩き割られようとしていたゴブリンの冷や汗はまるで滝のようだったが。

 

「うん、なかなかの振り回しやすさ、気に入ったわ。これいくら?」

「あ……お買い上げありがとうございます」

 

ただ一人満足してる表情のエクレシアがハンマーを購入する意思を見せたことでゴブリンが一転して笑顔になる。

この表情の移り変わりの速さはさすが商人といったところか。

 

「よーし、ここは俺が出すぜ」

 

アルバスが財布を取り出しハンマーの代金を支払う。

 

「いいの、アルバス君?」

「もちろん。俺はエクレシアの彼氏なんだからな!」

 

堂々と言い放つその姿にエクレシアがぽっとなり「もう、アルバス君ったら、そんな堂々と……でも嬉しいや、ありがと」とお礼を言う。

ゴブリンもその2人のイチャイチャぶりに思わず顔を赤くする。

 

 

「アルバスめぇ……調子に乗るんじゃないわよ……」

 

ただ店の外でフルルドリスだけが嫉妬を通り越した負の念を発し、アルベルが今にでも殴り込みに行こうとしかねないフルルドリスをいつでも止められるように身構えていた。

 

 

「お買い上げありがとうございましたー!」

 

壺を叩き割られそうになったというハプニングを無事乗り越え高級なハンマーをお買い上げしてもらえたことでゴブリンは最上級の笑顔で2人を見送った。

 

「ありがと、アルバス君。このハンマーで立ち向かってくる敵、ボコボコにしちゃうね」

「うんうん、気に入ってくれて嬉しいんだぞ」

 

(なぜだろう、絵面は微笑ましいのに会話の中身がちょいと物騒なのは)

 

アルベルがそんなことを思いつつフルルドリスに引っ張られていく。

 

 

そして次にたどり着いたのは『レスキューキャット』を始めとした『レスキュー』の名称を持つ動物型モンスターを筆頭に、数多くの動物が多くいる公園だ。

ここはそんな彼らと触れ合うことが出来、もし公園内で怪我などをしたら即座に適切な治療を行ってくれるという事で数多くの人間やモンスターたちが訪れると有名な公園だ。

 

「わー、可愛いウサギさん」

 

エクレシアが『レスキューラビット』を見つけ、その毛皮をもふもふし始める。

エクレシアの手つきが優しい物であり、ラビットが気持ちよさそうな鳴き声を上げながらされるがままになる。

 

「良かったなエクレシアー」

 

そういうアルバスもまた近くにいた『バニーラ』をだっこし、ラビットを優しくもふもふするエクレシアを微笑ましく見守る。

 

「ほら、フルルドリスもせっかくだし色んな動物たちに触れ合ったらどうだ?」

 

アルベルも近くにいた『魔轟神獣キャシー』の肉球をぷにぷにしつつフルルドリスに尋ねる。

こんな可愛らしいモンスターたちと触れ合えればきっと嫉妬のオーラも収まるだろう。

だがフルルドリスは悶えていた。

 

「そうしたいけど……こんな鎧で動物たちを抱っこしちゃったら鎧の型さで動物たちが嫌がっちゃうだろうし、かといって鎧を脱いだらエクレシアにバレる可能性が高まっちゃうし」

 

フルルドリスはジレンマと戦っており、近くにいた『レスキューラット』に対して手を伸ばそうかどうか迷っていた。

その妙な緊張感がラットにも移り、ラットがぴたっと動きを止めていた。

 

「というか別にエクレシアにバレてもいいだろ。たまたまここに遊びに来たって言い訳も出来るし」

「ダメよ。エクレシアったら私のことを『フルルドリスさんはね。常に戦いにストイックで、クールでそれでいて仲間に優しく、ドラグマの皆に憧れられるような人じゃなきゃいけないの』って言ってるのよ……それなのにこんなところにいたなんて知れたらあの子に幻滅されるのは目に見えてるわ」

 

すでに尾行してる時点で幻滅されるポイントが臨界点を突破してる気がしたが、もうこんな面倒くさい女にツッコむのも嫌なのでアルベルはキャシーの肉球ぷにぷにを堪能することにした。

 

 

そしてそんな動物たちの触れ合いもひと段落し、アルバスとエクレシアが近くのベンチに座る。

 

「いやぁ、癒されるね」

「まったくだぞー。でも、結構歩いて疲れたぞ」

 

アルバスがそういうと同時にエクレシアが自身の膝をぽんぽんと叩く。

 

「ままままままさかエクレシアちゃん、アルバスなんかにひひひ膝枕を!? そんなサービス、私にもしてくれないのに!?」

 

フルルドリスの嫉妬のオーラが近くにいた動物たちが思わず怯えてしまうほどに達し、それを見ていたアルベルが(今のフルルドリスの鎧で『デスピアン・クエリティス』を融合の力で作り上げたら、きっと凄まじい呪物が出来上がるんだろうなー)と思う。

 

「そうよアルベル、あなたは確か『深淵の獣』も仲間にいたわよね。即刻アルバスにけしかけなさい」

「だから嫌だっての。そもそも今日は『深淵の獣』たちは『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』を筆頭とした『手軽に特殊召喚できる闇属性・ドラゴン族の集い』に参加して、肉を腹いっぱい食べてくるって言ってたから絶対に来ないぞ」

「何よその集い、というかあなた連れに対して甘すぎない!?」

「いやそもそも『デスピア』たちも『深淵の獣』たちも今日のオフの日のために一生懸命色んな決闘者の元で頑張ってきたんだから、今日ぐらい羽根を伸ばさせてあげないと」

 

アルベルがきっぱりと言い切り、膝に乗せるぐらい懐いたキャシーの頭を撫でてあげる。

 

「う、ううぅ」

 

そんな会話をしてる間にアルバスがエクレシアの膝に頭を乗せ眼を閉じる。

しかも膝の鎧のパーツを外し、生膝を晒している。

 

「エクレシアの膝、柔らかいなー」

「そ、そう言われるのは恥ずかしいけど……気に入ってくれてよかった」

「えへへ」

 

アルバスが後頭部をぐりぐりと動かし、エクレシアの生膝を堪能する。

 

 

今この瞬間、フルルドリスから放たれる嫉妬のオーラが頂点に達した。

 

「今バレたらエクレシアはフルルドリスに対してどんな感情を向けるかなー」

 

だが、アルベルの忠告を聞くぐらいにはまだフルルドリスには理性が残っており、今すぐに切り込みに行こうとしていたフルルドリスの足が止まる。

 

だがその間にもエクレシアとアルバスのイチャイチャは続き、それを見ていたフルルドリスの心情が崩壊しそうだったのは言うまでもない。

 

 

そして休憩も終わり、公園から出ていくアルバスとエクレシア。

 

 

「ここは……和菓子売り場?」

 

公園を後にしたアルバスとエクレシアが立ち寄ったのは和菓子を売ってるお店。

まさかこの中で更なるイチャイチャを堪能しようとしてるのではないか、と思ってたフルルドリスだったが、そんなに時間も経たずに2人が店から出てきた。

 

エクレシアの両手には紙袋が握られており、アルバスに買ってもらったハンマーは背中に背負っていた。

 

「エクレシア、それで良かったのか?」

「うん。今こうやって私がのんびりとデート出来てるのも、今もどこかで頑張ってるフルルドリスさんのおかげだもん。このお土産、喜んでくれるといいんだけど」

 

エクレシアの手にした紙袋の中には『メルフィー人形焼き』と呼ばれる、『メルフィー』の可愛らしいモンスターたちの形をした人形焼きが入っていた。

普通のあんこや白あん、カスタードクリームなど様々な種類の甘味がその人形焼きの中に入っており、この和菓子屋の主力商品であった。

 

「うん、きっとフルルドリスさんも喜んでくれるさ」

「そうだよね!」

 

 

「あ、あぁ、あああああぁ……」

 

そしてそれを遠くから聞いたフルルドリスががっくりと膝から崩れ落ちる。

エクレシアは自分をこれほどまでに信用してくれてるというのに、あろうことかエクレシアがアルバスと一線を越えるのではないかと思い彼女を信用できず、デートをこっそりと付けまわすなどと最低な行為に走ってしまっていた。

 

「じゃ、今日はいっぱい遊んだし、デートはこれまでだな」

「うん、早くこのお土産フルルドリスさんに渡してあげたいからね。じゃ、また次のデートでねー!」

「おう!」

 

エクレシアがハンマーを背中にその場をウキウキ気分で去っていく。

 

「よ、良かった。デートが無事終わったみたいね」

 

フルルドリスはなんとか言葉を絞り出す。

エクレシアの真意を知った今、これ以上2人を付け回すことは出来なかったからだ。

 

 

「あ、いたいた。おーい」

 

そんなフルルドリスの耳に、アルバスの声が入ってくる。

 

「ええっ!?」

 

フルルドリスの心が驚愕で満たされてる中、アルバスはあろうことか笑顔でフルルドリスに話しかける。

 

「フルルドリスさん、今日は本当にありがとうな」

「え、あ、ありがとうって?」

 

付け回していたことがバレて何を言われるか身構えられてなかったフルルドリスに対してアルバスがどうして感謝の言葉を述べるのか、フルルドリスの感情は更に追いつけていなかった。

 

「アルベルからメッセージ来てたんだ」

 

そう言いながらアルバスがスマホをフルルドリスに見せる。

 

『やっほ、アルバス君。今日はエクレシアちゃんとデートだって? そんなデートを成功させるために、フルルドリスが君たち2人に変な虫がつかないように、陰ながらサポートしてくれるらしい。俺も念のため一緒についていくけど、フルルドリスさんを安心させるために、エクレシアちゃんとイチャイチャする様子をいっぱい見せつけるといい。じゃ、俺もフルルドリスも顔を見せるなんて野暮はしないからデートを楽しんでくれよ♪』

 

「あ、ああ」

 

フルルドリスがアルベルを見ると、アルベルが今この瞬間どの生命体も浮かべられないであろう笑顔をフルルドリスに向ける。

 

「アルベルもありがとうな。お前がこんなにイイ性格してたなんて、俺、お前のことを勘違いしてたぞ!」

「うん、そのイイ性格は『良い性格』って言ってるんだと思っておくよ」

 

アルバスの発言の微妙なズレに内心苦笑しつつ、アルベルもアルバスに表面上最上級の笑みを向ける。

 

「本当に2人ともありがとうな。おかげで今日のエクレシアとのデート、すっごく楽しめたぞ! じゃあなー!」

 

アルバスも満足した表情でその場から走り去っていった。

 

「あ、あ、あ、アルベルうううううううううううう!」

「ずっと今日一日中俺を振り回してくれたからね。おかげで俺自身、ただショッピングするよりも面白い光景をいっぱい拝めるという有意義なオフを過ごせたぜ。感謝するよ、フルルドリス」

 

アルベルが崩れ落ち発狂するフルルドリスをその場に置き、悠々と去っていった。

 

 

デスピアの導化アルベル。

 

己の欲望を満たすためなら、ありとあらゆる生命体を己の掌の上で踊らせる、『道化』とも呼ぶのにも最も相応しい男である。

 

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