遊戯王 モンスターゆるゆるお喋り次元   作:ヴィルティ

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新たな力の祝い

「ヒーちゃん、霊媒師デビューおめでとー!」

「「「「おめでとう!」」」」

 

緑髪の少女の純粋な笑顔を筆頭に他の子たちも同様にお祝いの言葉を述べる。

大体中学生ぐらいの大きさの子たちが中心であり、大人はいない。

そんな子たちの周りを様々な種族の魔物……いわゆる使い魔たちが取り囲んでいる。

 

「へへ、ありがとな」

 

そんな中で唯一お祝いの言葉を述べず、言葉を受ける方だった赤い髪の毛が特徴的な少女……『火霊使いヒータ』がとびっきりの笑顔になる。

 

彼女たちは『霊使い』と呼ばれる子たちであり、様々な元素の力を元として戦う一族である。

その力は子供でありながら下手な魔物を凌駕するほどである。

『霊媒師』とは彼女たちが精神を統一させ、使い魔に元素の力を注入し、本人と使い魔がお互い一時的に成長した姿となる力の事である。

 

「これで私、アウちゃんに続いて3人目の『霊媒師』の力を得られたってことになるね。残りはエリちゃん、ダル君、ライちゃんの3人だね!」

「そうだね、ウィン。ところで俺の名前はせいぜい3文字しかないんだから、ちゃんと『ダルク』君って呼んでくれてもいいんじゃないか?」

 

霊使いたちの中で唯一の男の子であり、黒髪が特徴的な『闇霊使いダルク』はウィンにお願いする。

 

「えー、でもダル君の方が可愛いし」

「その『可愛い』ってワードは男の子が言われても嬉しくないからね?」

「そういうものなの?」

「そういうものだ」

 

ウィンはイマイチ分かってないようなきょとん顔でダルクを見る。

 

「じゃ、他の皆にも聞いてみようか。ダル君とダルク君、どっちがいいと思う?」

「「ダル君」」

 

他の霊使いの子たちからそう言われ、ダルクががっくりしながら肩を落とす。

多くの女の子の中で男の子が1人、いわゆるハーレム状態ではあるのだがまだ完全に大人にはなりきれてない男であるダルクにとってはまだ嬉しい物ではない。

そしてそんな中、他の霊使いの子たちにとってはダルクはからかう格好の的でもある。

 

「ほらほら、今日はヒーちゃんのお祝いなんだからつまらないこと言わないの」

「つまらないわけじゃないけど……そうだったね」

 

白髪の少女『霊使いライナ』に言われたことで皆が集まった目的を忘れてはいけないという事でダルクが文句を言おうとしていたが口を閉じた。

 

「はい、どうぞ」

 

茶髪の少女『地霊使いアウス』がホイップクリームたっぷりのホールケーキを持ってくる。

漂う甘い匂いに霊使いや使い魔たちは鼻をひくひく動かし、思わず笑みがこぼれた。

そんなケーキの中央に乗せられた『ヒータ、おめでとう!』という文字が書かれたチョコレートで出来た板と、ちょこんとケーキの上に座る形になっている菓子細工が愛らしい。

 

「へへっ、うまそうだな!」

「でしょ、皆で一生懸命作ったんだよ!」

「ここ最近私以外でこそこそしてるなと思ってたけど……嬉しいね」

 

もっとも、ヒータもかつてのウィンやアウスの2人の霊媒師デビューの時、ケーキを作ってお祝いをしていたのでこういうことをするのは知っているが、やはり自分自身が貰う立場となると嬉しさもひとしおだった。

 

「私は別に」

「もう、エリちゃんったら素直じゃないなぁ」

 

ぷいっとヒータから目を背けた少女『水霊使いエリア』に対してウィンが彼女の肩をがしっと掴みながら苦言を漏らす。

 

「そもそもエリちゃんが『あいつのお祝いなんだから気合入れるよ』って言ってたよ」

「そそそ、そんな訳ないでしょう! いい加減な事言わないで!」

「そっか」

 

慌てて否定するエリアに対して照れた様子のヒータ。

その照れたヒータを見てエリアが一息ついてから彼女に向き直る。

 

「勘違いしないでよね、ヒータ。このケーキはあくまで皆で協力して作ったのであって、決して私がヒータのために真心込めて作ったわけじゃないからね!」

「それでも十分嬉しいぜ。ありがとうな皆」

 

とびっきりの笑顔のヒータの言葉を聞いての残りの霊使いや使い魔たちもまた笑顔になる。

 

「さてと、ごちそうはケーキだけじゃな。ヒータのために『ヌーベルズ』のみんなにお願いして色々な料理も作ってもらってるんだ」

 

ダルクがそう言いながら隠していた料理を机に並べていく。

フライドチキンにフライドポテト、フィッシュチップスにメンチカツやコロッケ。

それらすべてが強火を使い油で揚げた、ヒータの大好物だ。

 

「おおー!」

 

机の上に並べられていくヒータの大好物たちを見て彼女の目が輝く。

 

「よろこんでもらえてなにより、せっかくだしおれのそうるもくうか?」

 

ヌーベルズが作り上げたこれらの料理を彼女たちの集いの場に配達したハンバーガーを模した魔物……『ハングリーバーガー』が6人に尋ねる。

 

「何よソウルって」

 

エリアが尋ねると、説明するより口で見せた方が速いと言わんばかりにハングリーバーガーが口をパカパカする。

すると、みるみるうちにごちそうが乗ってる机の上にハンバーガー、チーズバーガー、フィッシュフィレオなど様々な種類のバーガーが現れる。

 

「すげー!」

「えへん」

 

早速机の上に乗ったチーズバーガーを手に取り一口齧ったヒータがその美味しさに満足してると、ハングリーバーガーが得意げになる。

 

「しかしなぜおれさまじしんをたべようってやつはいねぇんだよな。ぜっぴんなのに」

「いや皆は配達員である君を食べるとヌーベルズの皆に迷惑がかかると思ってるんだよ」

「そうか。そんなきづかいいらねぇのに。では、またの『ヌーベルズキッチン』のごりようおまちしております」

 

ハングリーバーガーがぴょんぴょんと飛び跳ねながらその場を後にした。

 

「……さすがにあの見た目のバーガーを食べようとは思わないからな」

「本人の目の前で言わなかっただけ立派だよダル君」

 

ダルクとライナがハンバーガーやフライドポテトを手にしながらそんなことを呟く。

さすがに動物の牙がパンズの部分に取りつけられ、カチカチ歯を鳴らしながらしゃべるバーガーに食いつこうとする気は2人はもちろん、他の子たちや使い魔たちもそんな気は一切起きなかった。

 

「さてと、ごちそうも揃ったし、思わずフライングしちゃったけど皆でいただこうぜ」

「そうだね。いただきます!」

 

皆が一斉にごちそうに手を伸ばし、おいしそうにそれらを食べ始める。

そして主である霊使いたちがごちそうを食べ始めたのを見て、使い魔たちもそれぞれのごちそうを食べ始める。

主が食事をするのが最優先であり、なるべく多く食べ過ぎないようにするのだがそれでもこれだけの大所帯であるためごちそうがなくなるペースは速い。

なにせ彼女たちは人間でいうところの成長期を迎えつつあり、食事量が少ないというわけではないのだ。

 

そしてごちそうが尽きそうになったとき。

 

「ガハハ、待たせたな!」

 

上空から声が響き、全員が顔を上げ声の主を見る。

 

「来てくれたんだな、ブラスター!」

 

溶岩流が竜の体を持ったかのような巨大竜『焔征竜―ブラスター』が彼女たちが席についてる机から少し離れた場所にゆっくりと着地する。

 

「火、水、地、風の四大元素を司る我ら『征竜』。同じように元素の力を使い戦うお主らが得た新たな力をお祝いするこの場に駆けつけぬ訳があるまい」

「しかも立派な大人の姿で! アウスのお祝いの時に駆けつけてくれた時は地属性の征竜だったけど、その時はまだ少し小さい体だった『地征竜―リアクタン』だったから驚いたっけ」

「ガハハ、我ら一同かつては『禁止カード』と呼ばれた、蓄えていた元素の力を周りに放出し子竜の姿となっていたからな。テンペストはウィンちゃんのお祝いの時には元素の力を蓄え直して立派な大人の姿『嵐征竜―テンペスト』としてお祝いの場に来ることに間に合いはしたが、レドックスは間に合わなかったのだ」

 

そこまで言ってブラスターはぐるると唸り声をあげる。

だがその顔は笑みがこぼれているのだと同じ火の力を使うヒータにはよくわかっていた。

 

「だがワシは間に合い、こうやって立派な姿でお祝いに来れたというわけだ。さて、祝いのメシを急いで用意せねばな」

 

ブラスターが背中に載せていた特大バーベキューセットを降ろす。

このセットをうっかり地上に落とさないようにここまで飛んでくるのは大変だったぞと豪快に笑う。

そして巨大な鉄箱に入っていた大量の肉や野菜を網に乗せ、ブラスター直々に炎を吐きそれらを焼いていく。

みるみるうちに香ばしい匂いが放たれ、肉や野菜が焼きあがる。

 

「さぁ、ウルトラ上手に焼けたぞ。皆の者、食うがよい」

「ありがとうな!」

 

ごちそうが足りなくなってきたところに追加されたバーベキュー。

それは食べ盛りである霊使いたちや使い魔たちが少し物足りなかったかなぁと思っていたところに追加され、しかも食欲を存分に刺激する匂いを放たれては食欲を抑えることなど出来はしなかった。

 

「さあさあ、存分にある。遠慮はいらんわい!」

 

霊使いや使い魔たちがバーベキューを食べる度にブラスターが追加を焼いていき、その肉や野菜のほとんどは霊使いや使い魔たちのお腹に入っていく。

ちょくちょくブラスターもそれらの肉や野菜を食べていたがあくまで彼女たちのお祝い、多く貪るようなマネはしなかった。

そしてブラスターが持ち込んだ肉や野菜が空になる前に皆が食事を終えた。

腹いっぱいになるまで食べていなかったのは、お祝いのケーキがまだ残っているからである。

その様子を見届けていたブラスターは満足げにしながらバーベキューセットの片づけを始める。

炎で熱せられた網だが、ブラスターにとってはこれぐらいの熱さなどぬるま湯ほどの熱さも感じなかった。

そんな中ホールケーキをウィンが皆に行き渡るように……ヒータの分だけ二回り大きいサイズになるように切り分ける。

 

「はい、どーぞ」

「ワシもいいのか?」

 

ウィンが片づけをしていたブラスターの前にケーキが乗った皿を置く。

 

「もちろん。こうやってお祝いの場に来てくれて、バーベキューを焼いてくれた追加のお礼だよ!」

 

テンペストやリアクタンが来た時も、ウィンはこうやってケーキをくれたとテンペストたちは教えてくれた。

 

「そういうことならありがたく頂こう」

 

パーティーの主役であるヒータの友達であるウィンにそう言われてはブラスターに断るという選択肢などなかった。

その体の大きさからケーキは腹を満たすには全然足りなかったが、その気持ちで胸がいっぱいになるのは感じていた。

 

「……いつになるかはまだ分からないけど、エリアのお祝いの時はこれ以上に立派なお祝いをしてやるからな」

 

ケーキを食べ終わったころ、ヒータがにっこりと笑いながらエリアに話しかけた。

火と水、相反する力ではあるがヒータとエリア自身の中が相反しているわけではない。

 

「期待しないで待ってるわよ……そもそも作者が私の霊媒師が出るまでこの物語を続けてるかどうか分からないし」

 

(不吉な事言わんといて!?)

 

「なんか聞こえた気がするけど、まぁ、いいや! 楽しみにしてろよ!」

 

突如聞こえた気がした謎の声にほんのちょっとだけ戸惑ったがすぐにヒータは笑顔をエリアに向けた。

 

 

こうして、火の力を使い魔と共に使いこなし戦う少女のお祝いパーティーは終わりを迎えたのであった。

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