突如、ボスが姿を消した後に姿を見せた二人。その内の一人である青年は自分がオレンジギルドであるベラドンナ・リリーを率いる者、ブリガンテスと名乗った。ただし、俺以外のプレイヤーを雑魚と言ってだ。その為か、リンドがキレつつ有る。
「雑魚だと!!何とか・リリーだか知らねえけどよ、俺達を雑魚だぁ?舐めきってんじゃねえよ!!」
いや、もうキレていた。今にもブリガンテスに突っ込んで行きそうなので、ディアベルとキバオウの二人がリンドを抑えている。
「落ち着いてリンド。彼はオレンジプレイヤーだ。ツナ君がかつて、スワロさんを助けた時の相手もオレンジプレイヤーだと聞いた。あの二人がオレンジプレイヤーだという事はリンド、君が突っ込んでいけば殺されてしまう。」
「ディアベルはんの言う通りや。リンドはん、安い挑発に乗ってはダメや!頭に血が上った状態では、プレイヤー対プレイヤーの戦闘では勝てへん。気持ちは分かるんやが、今は落ち着くんや。」
「あ、ああ。済まねえな二人供。そうだな、あんなの安い挑発だよな!」
何とかリンドは落ち着いた様だな。ブリガンテスはそんな事は別に気に止めてもいなかった様で、
「ふん。安い挑発か。別にそう思ってくれて構わん。俺はそんな短期で感情的な行動しか出せそうに無いバカには興味など無いからな。」
と言う。この一言で怒りは頂点に達したのかリンドは、
「ああ!もう我慢出来ねえ!あの野郎、絶対に俺がぶっ倒してやるーーー!!」
今にも猪の如く突っ込んで行きそうで、もう静止すら出来そうに無いのでディアベルは、
「転移!リンドを第1層の街であるトールバーナーへ!」
転移結晶を使ってリンドを第1層の街であるトールバーナーに転移させた。正しい判断だよ、ディアベル。転移させなかったら、あのまま、ブリガンテスの実力を考えずに勢いだけで突っ込んではブリガンテスに殺されていたと思うしな。さすがに一人なら、リンドはここまで戻って来たりはしない筈だ。多分・・・
ブリガンテスは下らない茶番でも見てたかの様に鼻で笑った後に、再び話し出す。
「ふん。くだらん邪魔が入ったが、その通りだ。俺の部下である、この女こそがボス隠しの犯人だ。」
ブリガンテスがボス隠しの犯人が隣にいる緑色の髪で髪が真っ直ぐ上に立っている独特な髪型をした女性だと言う。
その女性がブリガンテスの顔を見て、悟ったかの様に名乗りだした。
「初めまして、頭が悪そうなプレイヤーの諸君。私の名前はビオキルル。ベラドンナ・リリーのビオキルルさ。
こう見えて私はアーガス社で働いていた人間さ。」
「アーガス社だと!?」
ビオキルルと名乗る女が現実ではアーガス社で働いていたと聞いたキリトが驚きの声を出す。
アーガス社といえば、このSAOを作った会社でも有り、ナーブギアを生み出した茅場昌彦が働く会社の名前だからだ!
ビオキルルの話を聞いたアスナは、
「もしかして、あなたなら私達を全員ログアウトさせる事ができますよね?」
と希望に満ちた事を言った。だが、そんな希望を粉々に砕くかの様にビオキルルが言う。
「ログアウトできる?ハハッ。残念だけど、私でもさすがにログアウトできる様にするのは無理ね!
だって、一応とは言え私がログアウトできる様に細工を試みたけど、ログアウトの項目事態が元々無かった様に完全に跡形も無く、塵すら残さずに消去されていたわ。
もちろん、私はログアウトできる項目を作ろうと思ったんだけど、それも大失敗。
つまり、ログアウトする方法は悔しいけど、現実で茅場本人がログアウトさせるか、第100層のボスを倒してのゲームクリアの二つしか無いわ。本当に残念ね。ハハッ!」
このビオキルルと言う女の答えを聞いたアスナは訪れた希望が砕けたのか表情が曇りだす。この女は自分がログアウトできる方法を思いついては試してみたが、全て失敗したと言うのに気にしてないのか、アスナの反応を見るかの様に笑う。
このやり取りを見ていたクラインが口を開いた。
「おい、ビオキルルつったな!お前、アーガス社の人間なんだろ?なのに、アンタもこのSAOに参加してる身だ。開発者であるお前は、自分に真意を隠してデスゲームを作る手伝いをさせた茅場に怒りとか無いのか!そして、最終的に自分をデスゲームに閉じ込めた事に不満は無いのかよ!」
クラインが最もな事を言うがビオキルルは、
「はあっ・・・これだから、頭が悪い髭面の男は嫌いなのよ。」
「何ぃ!?」
ビオキルルがクラインの事をバカにするかの様な事を言う。
「私がアーガス社にいた理由は単なる潜入捜査の為に一時的に働いただけさ。茅場昌彦の研究データを奪う為にね。」
「茅場昌彦の研究データを奪う為にか・・・」
ビオキルルが自分はアーガス社にいた理由は単なる潜入捜査の為で、その目的は茅場の研究データを奪う為だと聞いたヒースクリフは遠くを見つめる様な表情をしている。ヒースクリフが何故、こんな表情をしているかは知らないが、ビオキルルは潜入捜査の為にいたって事は、ビオキルルより上の存在がビオキルルを潜入させたという事になる。ビオキルルを潜入させたのは、ブリガンテスに間違いない。
「研究データを奪うと言っても、茅場の管理しているサーバーへのアクセスは骨が折れる作業だったわ。しかも、コピーできたデータも極僅かだけに終わった。でも、その奪ったデータから狙いだったナーブギアの設計図は手に入れた。そのデータを用いる事でナーブギアの改造を施したのさ。まあ、ナーブギアの改造の他にもナーブギアの設計図は面白い事に使えそうなんだけどね。
まあ、私はボスともう一人と供に改造したナーブギアを使ってSAOにログインした訳さ。」
もう一人?他にも仲間がいるのか。茅場からナーブギアの設計図を奪って、ナーブギアの改造をしたのは解ったが、他にも面白い事に使えそうと言った事が気になるな。ここでエギルが口を開いた。
「とにかく、お前が茅場の管理しているサーバーからナーブギアの設計図のデータを奪う事に成功したのは解った。
だが、現にお前はこのデスゲームに閉じ込められているが、不満な点は無いのか?」
エギルの質問を聞いたビオキルルは相変わらず人を見下した態度を取りながら、話す。
「不満?別に無いさ。私達がわざわざSAOに参加したのは、ちょっとした実験の為さ!
さすがにデスゲームに閉じ込められたのは想定外だけど、私達には関係無いわ。そうよね、ボス。」
「ふん。言うまでも無いな。俺はデスゲームの中だろうと関係無い!ただ、全ての頂点に立つ事だけを考えるだけだ!」
ビオキルルがデスゲームに閉じ込められた事は想定外とはいえ、関係無いと言うとブリガンテスも賛成すると、
「少し喋り過ぎたな。まあ、ちょうどいい。貴様らにはちょっとした実験に付き合って貰おうか。」
ちょっとした実験?何をさせる気なんだ、ブリガンテスは・・・
「すまないが、あなた方がオレンジプレイヤーである以上は自分は手を抜かん。そして、あなた方の実験とやらに付き合う道理も無い!
ブリガンテス殿。悪いが、あなた方には牢獄に行ってもらう!」
そう言ったのは、キバオウの仲間であるプレイヤーの一人である短剣使いのアストンだ。アストンは短剣を構えてブリガンテスに向かって行くが、
「や、止めるんだ!ブリガンテスは他のオレンジプレイヤーとは違うんだ・・・」
俺が止めに入ったが、
「ツナ殿。助言感謝する!ですが、自分はこのブリガンテスと言う男にこれ以上、好き勝手されるのは我慢できない。この者達を何とかしないと第15層に行けないのは確か。だから、自分がこの者らを何とかしましょう!」
アストンは俺の忠告を聞いても止まりはしなかった。アストンは短剣のソードスキル[クロス・エッジ]を繰り出す。
「ブリガンテス殿。悪いが、あなたを弱らせて牢獄に送らせてもらう!」
アストンの攻撃がブリガンテスにヒットする様に思えたが、ブリガンテスは黒い炎を出したと同時にアストンの後方に一瞬で移動した。
バカな!あの黒い炎は・・・
「ば、バカな!一瞬で自分の後ろに・・・」
アストンは、いやアストンの攻撃が当たるかと思っていた攻略組のプレイヤーも何が起きたか解らずにいた。ただし、俺とゴクデラ君にヤマモトを除いて。
アストンの後ろに立ったブリガンテスは片手剣を手に取ると、
「ビオキルル。それでは、あのシステムを使った実験を行うとしよう。」
ブリガンテスはビオキルルにそう語ると、
「分かってるわ、ボス。その男のペイン・アブソーバをレベル0に!」
ペイン・アブソーバ?その名前を聞いたヒースクリフの顔は一瞬、曇った様に見えた。
「ふん。それでは面白い実験を開始する。」
そう言うとブリガンテスはアストンの腹部に剣を突き刺した。他のプレイヤーもそれがどうしたんだという感じだ。だが、アストンの様子が変だ。
「ばあっああっあ!!?」
絶句するかの様に苦しそうに悲鳴を挙げたのだ。これはまるで本当に腹部に剣を突き刺された事で痛みを感じている様だ。あり得ない、SAOの中では痛みを感じない様にされている筈だ。まさか!?そんな筈は・・・
ブリガンテスはアストンが苦痛を感じる様な悲鳴を挙げている事に戸惑うプレイヤーに言う。
「ペイン・アブソーバとは、このSAOの中で痛みを感じない様にする為のシステムだ。そのシステムは本来なら全てのプレイヤーにレベル10で設定されて掛けられている。ペイン・アブソーバが有るから、このSAOの中では痛みを気にせずに戦える訳だ。だが、そのペイン・アブソーバに設定されているレベルを下げるとそれだけ痛みを抑える機能が働かなくなる。それが一切働かないレベル0にすれば、この男の様に普段なら腹部に剣を突き刺されたとしても痛みは感じないのに、今では現実と変わらない痛みを感じる訳だ。
この男は現実で言うと、本来なら絶命してもおかしくないレベルの痛みを感じているのだ。」
ブリガンテスの話を聞いた攻略組のプレイヤーは愕然する。まさか、痛みを感じないのがペイン・アブソーバのレベルが10で設定されているからだとは知らなかった。俺も今まで痛みを感じないのはゲームの中だからと錯覚していた。
だが、違った。痛みを感じない様にする為のシステムが有ったからこそ、痛みを感じない訳だ。
このアストンの悲鳴の原因が強烈な痛みが原因だと知ったチハヤは、
「酷い。酷すぎるわ!今直ぐにアストンのペイン・アブソーバのレベルを元に戻して!」
ブリガンテスにアストンのペイン・アブソーバのレベルを元の10に戻す様に言うが、
「それは出来ん相談だ。貴様らは黙って、この男が痛みを感じたまま散る様を見ているがいい!」
ブリガンテスはそう言うと、アストンの腹部に突き刺した剣を引き抜くと、アストンの首を剣で切り裂いた!
「がっれっかばっぶべへ!!!?」
アストンが首を切られた時の断末魔の悲鳴は『誰か助けてくれ』と聞こえた。アストンは首を切られた後に、その首が中に浮いたところをブリガンテスがその首を切り裂いた。そして、そのアストンの首と体は黒い炎で燃やされ粒子となり散ってしまった。
「アストン!そ、そんな・・・めちゃくちゃ良い奴やったのに!?なのに、何でアストンが死ななきゃならんのや・・・」
キバオウが仲間を目の前で殺された事とそれを黙って見る事ができなかった自分が許せないのか、悲しみにくれた。
キバオウだけじゃない。俺を含めた今のアストンが散る瞬間を見た攻略組のプレイヤー全員が何も出来ずにアストンを死なせてしまった事で悲しみと罪悪感にとらわれる。アスナがこの様な人を弄ぶ事をしたブリガンテスが許せないのか、
「許せない。私はあなたを許せない!何でこんな酷い事ができるの!!何でこんな人の命を玩具の様に扱えるの。許せない!!」
アスナが怒りを抑えきれないのか、細剣を抜き構えると細剣のソードスキルの奥義である[フラッシング・ペネトレイター]をブリガンテスに放った。この奥義とアスナの攻略の鬼以外の通り名である閃光のアスナと言われる程のスピードを持てば、このブリガンテスを倒せると攻略組のプレイヤーは思っているだろう。おそらく、皆はブリガンテスのスピードが早いからアストンの攻撃を避けられたという考えに違いない。
俺とゴクデラ君にヤマモトは知ってる。ブリガンテスの炎の属性は復讐者(ヴィンディチェ)と、いやバミューダと同じ夜だと・・・
「えっ・・・」
ブリガンテスはアスナの奥義を容易く、夜の炎を使い避けるとアスナの後ろに一瞬で移動した。夜の炎の特性は詳しく解らないが、その炎は空間と空間に穴を作り、その穴を通る事で一瞬で遠い場所にすら移動できる炎だ。本来なら、復讐者を束ねるバミューダしか扱えない筈なのだが、ブリガンテスはどうやら、バミューダ以外で夜の属性を扱える事になる。つまり、この男を倒す方法は夜の炎で移動する場所を先読みして攻撃を行うしか無い。
アスナがどう考えても勝てる相手では無い。俺でも、ブリガンテスを倒せるかは解らない。バミューダの様に無限に夜の炎を扱えるなら、現時点で勝ち目は無い。ブリガンテスがどれだけ夜の炎を扱えるかが問題だ。
ブリガンテスは夜の炎の力を使い、アスナの後方を取ったのをいいことにアスナの胸に剣を突き刺す。
「ふん。この俺が興味有るのは貴様の様な小娘では無い!俺が興味を持つ相手はボンゴレ十代目だけだ!
一応、慈悲としてペイン・アブソーバのレベルを下げたりはせん。だから安心しろ。苦しまず死ねるぞ。」
アスナのHPがどんどん減っている。俺はアスナを助ける為に超死ぬ気モードになろうとした時だった。
「喰らえ!必殺、リンドキック!」
ディアベルによって第1層に転移された筈のリンドが早くも戻って来て、ブリガンテスの背後に強烈な飛び蹴りを喰らわせようとしたが、ブリガンテスは夜の炎を使い、リンドの後方に移動する。この間にアスナはブリガンテスに刺された剣を抜き、地面に投げ捨てた後にポーションを飲みHPを回復する。
リンド、まさか戻って来るとはな。しかも、ちょうど良いタイミングで。今回はリンドのファインプレーに感謝しよう。
「おい。何で、コイツ俺の後ろにいつの間に移動してるの・・・」
リンドは先までの事は知らないので、ブリガンテスの力にビビりつつある。
「ビオキルル。このバカのペイン・アブソーバのレベルを0にしろ。」
「了解。リンドのペイン・アブソーバをレベル0に!」
ブリガンテスがリンドのペイン・アブソーバのレベルを0にする様に言うと、ビオキルルは直ぐ実行する。
「ベントーハ・アブラソバ?何を言ってるんだ?」
リンドが聞き取れ無かったのか、ペイン・アブソーバの名前を言い間違っている。
「貴様は殺すに値しないが、目障りな上に五月蝿いから俺の視界に二度と入るな。俺の目が腐る!」
「ブッバァァ!!?」
リンドはブリガンテスから強烈なアッパーカットを喰らわされ、その威力で空中に浮かび上がった。リンドは地面に落下した後に、痛みが原因か騒ぎ出す。
「イッテェェ!!な、何で痛みを感じるんだよ!?物凄くイッテェ!」
リンドのHPはイエローゾーンにはいってないが、ペイン・アブソーバのレベルを0にされたので強烈な痛みを感じる様だ。
ディアベルがリンドに一応、痛みを感じる原因を教える。
「リンド。痛みを感じるのはペイン・アブソーバという痛みを感じない様にする為のシステムが働かないレベル0にされたからだよ。」
「ペンシル・ヤキソバ?それが原因か!あんの野郎、汚い真似しやがって!!」
「違うよリンド。ペイン・アブソーバだよ・・・」
リンドがペイン・アブソーバの名前を正しく覚える以前にペイン・アブソーバがどういうモノか全く解ってないだろうな。
リンドはブリガンテスに再度攻撃しに行くが、
「貴様、二度と俺の視界に入るなと言った筈だが?今度は死なない程度に体を一部一部、丁寧に順番に斬られたいのか?」
ブリガンテスからのこの忠告を受けたリンドは、
「いえ、退かせてもらいます・・・」
あっさりと引き下がった。リンドは痛い事に関わると以外とヘタレな様だ・・・
「ビオキルル。一応、戻してやれ。」
「はいよ、ボス。リンドのペイン・アブソーバのレベルを10に戻してあげたわ。」
ブリガンテス。お前も以外と几帳面な奴なんだな・・・
リンドが色々と時間を稼いでくれたので、アスナは無事にこちらに戻って来た。一時はどうなるかと思ったよ。
「ペイン・アブソーバの痛みを抑える力がどれくらいか試す実験に付き合って貰おうかと思ったが、そのバカのせいで興が冷めた。
今回は引いてやる。ボスモンスターはもちろん元に戻してやる。では去らばだ!」
ブリガンテスがリンドの予想外の活躍(?)で興が冷めたらしく、俺達に背を向けて引こうとしたが、
「待ちなよ!君にこれ以上、悪さされると僕らが困るんだよね。だから逃がしはしないよ!」
ビャクランがブリガンテスにエストックを突き刺そうとした。だが、そのエストックを受け止める人物がいた。
その人物は一つ目の仮面を着けた素顔が口元すら解らない金髪のロングヘアーの男だ。その仮面の男はブリガンテスとビオキルルと同じ赤いボディスーツを装着しており、胸には二人と同じく黒百合に堕天使の右翼が生えたエンブレムが付いていた。コイツがもう一人の仲間か。
「君は何者だい?」
「・・・」
「ダンマリかい?君は感じが悪いよ。そんなんじゃ、友達無くすよ!」
ビャクランが仮面の男から受け止められたエストックを何とか引き離すと、仮面の男にエストックを刺そうとするが、仮面の男はビャクランの攻撃を先読みし、攻撃を簡単に避けると仮面の男はビャクランと同じくエストックを構えると、ビャクランにエストックで斬り掛かる。ビャクランはそれを何とか避けると、仮面の男のエストックを自身のエストックで弾きだして、遠くに飛ばした。
「これで君の武器は拾わない限りは手に無いよね?」
「・・・」
仮面の男は相変わらずダンマリするが、直ぐにエストックを拾いに向かうがビャクランはそんな暇を与えないかの様にエストックで攻撃を仕掛ける。
「貰った!」
ビャクランのエストックが仮面の男に当たる直前だった。
「何コレ・・・」
ビャクランの胸に槍が突き刺されていた。その槍を突き刺したのは仮面の男だった。
「油断したよ。まさか、君が細剣と槍の二つを扱うプレイヤーなんて思わなかったよ。」
ビャクランは自分に刺さった槍から抜けると再びエストックを構えるが、ビャクランの言葉を聞いた仮面の男はやっと声を出した。
「細剣と槍の二つだと?見くびるな。この俺の扱う武器は細剣と槍以外にも、片手剣、両手剣、短剣、曲刀、刀、斧、棍棒、投剣。その他を含めた現時点で入手できる武器、全てを扱うのだ。この俺に扱えない武器など無い。」
この男、ユニークスキル以外の全ての武器を扱うソードスキルを習得しているのか。
普通のプレイヤーなら、こんなユニークスキル以外の全てのを武器を扱うスキルを習得するという無茶苦茶なスキル構成はしない。この男は、おそらく、現実世界でも色んな武器を扱う戦いの達人なのだろう。体術の実力も確実に高いだろう。
仮面の男はビャクランのエストックを先ほどのお返しをするかの様に、今度は片手剣を使い遠くへ弾き飛ばした。
「ソコまでにしろ、デヴォルト!俺からすると、あの程度の攻撃など虫刺され程度だ。気にも止めん。デヴォルト、貴様に守って貰わずとも、あの様な攻撃は簡単に対処できる。余計な世話だ。」
この仮面の男はデヴォルトというのか。ブリガンテスはデヴォルトに助けて貰う必要は無いと言うと、
「それは承知している。お節介かもしれんが、もしもの場合も有るのでな。全てはあなた様を思ったからこその行動です。」
デヴォルト。この男はブリガンテスへの忠誠心が高いと見える。ブリガンテスはデヴォルトを自分の近くに来させると、夜の炎を使い、黒い炎のゲートを作った。
「今回は興が冷めたが、次に会う時は今日みたいな事は無いと思うんだな、ボンゴレ十代目!
では、去らばだ!次に会う時までには、本来の強さを出来るだけ取り戻しておくんだな!」
ブリガンテスはビオキルルとデヴォルトと供に夜の炎のゲートを潜ると、この場から姿を消した。
ブリガンテス率いる黒百合の意味を持つオレンジギルド、ベラドンナ・リリーか・・・
俺は次に会う時までには、本来の強さを出来るだけ戻せているのか。取り戻せていたとしても、ブリガンテスが夜の炎を扱う以上、俺に勝ち目は有るのか。解らない。ブリガンテスがバミューダと違い体力の限界は有る。予想が正しければ体力の限界が近いと夜の炎を使えない筈だ。だけど、そんな相手を疲れさせる戦い方がブリガンテスに通用するのか・・・
とにかく、ブリガンテスはボスモンスターを戻すと言った。嘘はつかないだろう。
「ん?って、オイ!?」
突如、クラインが大声を挙げたので攻略組の全員がクラインの声が聞こえた方向を向くと、ボスモンスターであるプリズムシェル・ライトニング・トータスが姿を現した。クラインは腰を抜かしてトータスの目の前にいるな。トータスのHPは消える以前のままで、本当に一撃で倒せる状態だ。
「クライン。ボスが戻って来たんだ。さっさと、トドメをさしな!」
キリトがクラインにそう言うと、クラインが刀でトータスを斬り裂いた。
トータスのHPは0になり、ポリゴン状の粒子となり消えた。
「よっしゃ!とんだ邪魔というか、アクシデントが起きたけど、今回の俺が率いる風林火山にとっては初めてのボス戦だったが、見事に無事に終わらせる事ができ、てねえよな・・・」
クラインは本当なら、今回が初めてのボス戦で勝利を納めた事を喜びたいが、ブリガンテス率いるベラドンナ・リリーの介入でキバオウの仲間であるアストンが殺されてしまった事も有り、喜べる空気では無かった。
「おーい。何で、ボスを無事に倒せて第15層に行ける様になったのに、何でこんなに空気が重たいんだ?」
リンドはアストンが死んだ事を知らないので、空気が重くなった理由を知らない。
ディアベルがリンドにアストンが殺された事を教えると、
「な、何でだよ!何で、アストンの様な善意溢れる奴が死ななければならなかったんだよ!!クソ、俺がもっと強ければ・・・」
リンドがアストンの死をしり、悲しみにくれる。涙を堪えて、俺の方を向いたリンドは俺の胸元を掴むと、
「オイ!ブリガンテスはボンゴレばっかりに執着していたよな!まさか、お前が原因でアストンが死んだんじゃ無いよな!」
リンドは俺のせいでアストンが死んだと思っているのか。無理も無い。実際、ブリガンテスは俺にしか興味を示してはいなかった。アストンが死んだのは、俺が早く動けなかった事も有る。俺のせいだと言われても反論が出来ない。
「リンドはん。落ち着くんや!ツナはんは何も悪く無いんや。全て、アストンを助ける事ができるチャンスが十分有ったのに動けなかったワイが悪いんや。ブリガンテスが恐くて動けずにいたんや。これは全てワイのせいなんや・・・」
俺に怒りを向けるリンドをキバオウが静めた。キバオウは自分がブリガンテスに恐怖を感じて助けに行けなかった事を後悔していた。
それを聞いたディアベルは、
「キバオウさん。その考えはあなただけでは無い。俺を含めたこの場の全員が思っている事なんだ。アストンを助ける事ができたのに、ブリガンテスに恐怖を感じて動けずにいたのは俺達も同じなんだ・・・」
ディアベルの言う様に攻略組の全員がそう思っていたのか、リンド以外の全プレイヤーが黙って頷く。
「ディアベルの言う通りだ。俺も動く事ができたのによ、結局は動けずにいたんだ。アストンを助ける事ができなかったのは、この場の全員が後悔しているんだ。だから、リンド。ブリガンテスがボンゴレばっかりに執着していたとしても、ツナのせいでアストンが死んだとは言えないんだ。これは、今この場の全員が背負うモノなんだ。だから、リンド。ツナを離してやれ。ツナは何も悪くねえ。悪いのは、俺達も同じなんだ・・・」
クラインの言葉を聞いたリンドは俺の胸元から手を離す。
「・・・済まねえな。俺はアストンが死んだ瞬間を見てないから、どの様な感じでアストンが死んだかは知らない。
それなのに、俺はアストンが死ぬ瞬間を見たお前のせいにしてしまったんだな。ブリガンテスがボンゴレばっかりに執着している理由は知らないけどよ、それを理由にしてアストンが死んだ事をお前のせいみたいな事を言ってしまって済まねえ。
俺は感情的でバカだからよ、こんな感じでキレては周りに迷惑を掛けてばかりだ。俺は本当にバカだな。お前のせいにしても、アストンが戻ってくる訳が無いのにな。本当に済まねえ。」
「いいんだよ。気にしないで。」
リンドが謝ったので、俺はリンドを許す事にした。
「えっと、まだ空気が重い中で悪いんだが、今回俺が獲得したLAボーナスから強力な斧であるサンダーアックスが手に入ったんだけど、俺のギルドである風林火山に斧を扱う奴はいないから、誰か斧が欲しい奴がいたら挙手してくれないか。」
クラインが重い空気の中、LAボーナスから手に入った斧が欲しい者がいないか尋ねた。皆も今回の事は胸にしまって、空気を変える事にした。クラインに挙手したのはエギルだけだったので、エギルにサンダーアックスを渡る事になった。
今回のボス戦は、ベラドンナ・リリーの介入で滅茶苦茶にされたが何とか終わらせる事はできた。だけど、ブリガンテスに殺されたアストンは戻ってこない。攻略組はこんな悲劇が二度と起きない事を祈りながら、第15層に続く階段を上るのだった。
その夜、自分一人だけになった第15層の宿屋でヒースクリフはメニューを開き、ベラドンナ・リリーを含めた他のプレイヤーに無いログアウトの項目をタッチした。その後、アバターであるヒースクリフは人形の様に動かなくなる。
そして、ヒースクリフは現実世界の自分の肉体である茅場昌彦の体に戻った。その姿は少しだが、痩せこけている。
茅場は周りが木々で覆われた場所に有る小屋にいた。茅場は小屋に有るパソコンに近付いて起動させると、アーガス社のSAOサーバーにアクセスした。
「今回の事は私ですら、想定外だ。まさか、ボンゴレを狙うマフィアがSAOにいるとは思いもしなかったよ。
ツナ君、いや綱吉君にはどうか頑張ってもらいたいね。せめて今回の様なボスを隠す様な真似だけは出来ない様にするよ。
ペイン・アブソーバは何とかしたいが、これは下手にいじれないからね。これは、何とかできる問題では無いね・・・
本当なら、あの三人を強制的にログアウトさせたいのだが、それを行うと私が危険になるのは確かな上に、現実の綱吉君の身の安全を保証できないしね。私にできるのは、ボスを隠す様な真似が二度とされない様に強力なプロテクトを掛ける事だけだね。
だから、頑張ってくれたまえ。綱吉君。」
茅場はSAOサーバーからボスのプロテクトを出来る限り強固にした後に、再びSAOにログインするのだった。
どうでしたか?ベラドンナ・リリーの恐ろしさが伝わったでしょうか。
ブリガンテスは何と、夜の炎を扱う復讐者レベルと言える男。ビオキルルはアーガス社に潜入してデータを盗んだり、ナーブギアを改造を施す様なマッドサイエンティストです。デヴォルトは常に一つ目の口元すら見えない仮面を着けている謎だらけの人物です。デヴォルトはユニークスキル以外の武器を扱うスキルを習得しており、現実世界では世界中の様々な武器を扱う戦いのプロです。
次回は、ツナに新たな出会いが・・・
後、これからの予定している内容について記入しときます。
上記の話の次では第25層のボス戦にします。ただし、ボスはオリジナルにさせていただきます。
第25層のボス戦が終わった次の話で月夜の黒猫団編に入らせていただきます。
月夜の黒猫団編が終了した次の話で、ボンゴレのギルドホームを作る話にします。
その後は、よくタイミングを考えてからシリカ編や第50層ボス攻略編、リズベット編に入りたいと思います。