不良生徒な召喚士と禁忌教典   作:hibari11

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第二章 不真面目の理由

 二限目の講義は錬金術実験のはずだった。はずだったというのは男性の担当講師が女子生徒に叩きのめされ医務室送りとなったからだ。

 これには流石のロルフも呆れた。

 錬金術を始めとした魔術の実験は学生のみで行うと危険なため、講師の監督が必須となっている。

 その肝心の講師が居なくなったため、授業は結局自習となった。

 システィーナあたりは怒り心頭といった様子で文句を言い続けていたが、ロルフはラッキーと思い、自習となった教室をこっそりと抜け出して学院図書館へと向かった。

 ロルフも単に不真面目で不良なだけの学生ではない。

 ただ、多くの学院の生徒とは違う目的を持ってこの学院に来ている。

 故に学院の授業の内容や魔術師としての位階を高めるといったことに興味がないため、授業を真面目に受けていないのである。

 その目的のうちの一つが、学院図書館の豊富な蔵書である。

 この学院の図書館は、大陸随一の魔術研究機関だけあって古今東西の魔術に関する書籍が集められている。

 ロルフがよく授業に遅れたりサボったりするのも、学院に居る間の空き時間のほとんどをここでとある本を探しているためだ。

 ロルフが所属する二年次二組はなんともいえない事件の影響で自習となったが、まだ他のクラスは授業中だ。そのため図書館内は放課後等の時間と比べると人が少なかった。

「これはついてるな」

 放課後になると毎日多くの生徒や講師達が自習や自らの研究のためにこの図書館を訪れる。

 そのため、このように人が少ない時間は限られている。

 ロルフも場合によってはサボってこの図書館に入り浸っているが、最低限は授業に出ないと単位を落として退学になってしまう。

 なので今のような人目を憚らずに探し物ができる機会は貴重だった。

 本棚から手当たり次第に本を取り出しその内容に目を通しは戻し、取り出しては戻すという作業を繰り返す。

 学院に来てから数か月でかなりの本を調べたが、未だに探している本は見つかっていない。

 この図書館は莫大な蔵書量を誇っていて、魔術だけでなく様々な分野の書籍が所蔵されている。

 すでにかなりの量を調べたが、それでも全体の十パーセントにも満たないであろう。

 まさに気が遠くなるような作業を、クラスメイトが見れば本当にあのロルフ=ヴァーリなのかと疑うくらい授業中の態度からは想像できないほど真剣な表情で黙々と続けていた。

「ロルフー!これ見て!」

 そんな真剣な表情のロルフに、手に持った本を見せつけるように駆け寄ってくる一人の少女が居た。美しいプラチナブロンドの髪に吸い込まれるような金色の眼。誰もが振り返るような儚げで美しい顔は、どこかロルフと似た顔立ちをしている。

 古風な民族衣装に似た装束を身にまとっていて、それが一層神秘的な雰囲気を際立たせている。

 そんな美少女が、駆け寄った勢いのままロルフに飛びつく。

「ちょ、バカ!声がでけぇっての!」

 辺りを見回して、小声ながらも声を荒げるという器用な真似をしながら、ロルフは少女を引きはがして注意する。

「お前は本来学院に居ない人間なんだから、見つかったらマズいのわかってんのか!」

 注意された少女は、にこやかに笑いながらそれをなだめる。

「だいじょうぶだいじょうぶ!人もほとんどいないし、隠形の術もちゃんと機能しているから」

 少女はあっけらかんと、大丈夫だと言い張る。

「ここは大陸最高峰の魔術学院だぞ。生徒レベルは大丈夫でも、教授クラスには俺達の術も効かないような奴だって居るんだよ。それにどんな魔術的な護りがあるか分からないんだから、気を付けてくれっていつも言ってるだろ」

 ロルフが少女に対して竦めるように滔々と言い聞かせる。

 少女はそれをニコニコと笑いながら、

「はーい」

と、理解しているのか分からない気の抜けた返事を返す。

「本当に分かってんのかコイツは……まぁ、それは一旦置いといて何を見つけたんだ?探してる本があったのか?」

 溜め息を吐きながら、少女が自分に見せに来た本を指さして尋ねる。

「あ、そうそうこれ見て!」

 少女はそう言って、見せびらかすかのように本を突き出す。

 どれどれと本のタイトルを確認するが、記されているのは『帝都恋愛物語』という文字だった。どう見ても探している本ではない。

「……ナニソレ?」

 タイトルから見るに、最近流行りの青少年向けの恋愛小説だろう。探している本には全く、これっぽちも関係ない。

「これ、とても面白そうじゃない?」

 冷たい視線と固まった声を意に介さずに少女は続ける。

 しばらくロルフは沈黙したものの、諦めたのか溜め息をつく。

「あのさぁ、ロッタ……俺がこの学院に来た理由は覚えてるのか?」

 呆れたロルフの声に対してロッタと呼ばれた少女は朗らかに返事をする。

「もちろん!」

 その顔を見てついにロルフは諦めた。長い付き合いであるこの女は、今何を言っても無駄だと。

 あの真面目なシスティーナが自分に説教している時もこんな気持ちなのだろうか。今後はシスティーナの言葉をもうちょっと聞こうかなと心を改めながらロッタから本を取り上げる。

「俺達がここに来たのはこのフェジテでアイツの目撃証言があったからと、昔学者サマにウチの里から借りパクされたの魔導書を探すためなんだぞ……本当にわかってんのか?」

「本当にわかってるよ?でも毎日それだけじゃロルフも息が詰まっちゃうじゃん。たまには気分転換しないと!」

 ロッタはロルフのためだと言い張るが、どう考えても自分が読みたいだけだろう。

「はぁ……後でこれ借りとくからさっさとお目当てのブツを探してくれ。こうして人目が少ない時間は貴重なんだからさ」

 ロルフが頭を掻きながらそう言うと、後で借りておくという言葉を引き出したロッタは、満足げな顔をして元気に返事をすると、本を探しに元居た書架の方へと戻って行った。

 本当に大丈夫かとロルフは思いながらも、その後ろ姿を見送って自分も本の探索に戻ることにした。

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