アヤベさんの妹に転生したけどこれキャラ崩壊する奴じゃんってなる話   作:煎餅さん

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 勢いでそこそこまとまった量をキリの良い所まで書けたのでポーイ。

 夏休み明けの二人、お盆の後からは大したイベントも無く学校が始まりました。
 匿名の誰かさんが学校に何やら色々と手を加えたらしく、ザーガとアヤベは今日も走る。いやこの回じゃまだ走らんけど、タイトル通り準備です。続きは頑張って書く、レース描写が鬼門。いっそキングクリムゾンするか……。

(9/21)誤字報告ありがとうございます。いつも確かります
(24/1/25追記)ぼちぼちと加筆修正しました


夏の経験、決算準備

 さて、夏休みを終えた私達を迎えたのは平穏な日常。

 

 と言う訳にも行かなかった。

 

 何があったかと言えば、夏休み中ブリッジコンプがSNSでだいぶ派手に私達との夏の思い出を放出していた事が原因と判明。

 短距離路線は人気が無いとは言うが、あくまで比較的という話であって数万人規模でファンは存在するのだ。

 

 要は彼女達のファン、の子ども達から私達経由で推しのアレやこれやを聞き出そうという魂胆の見え透いた質問の雨あられが飛んで来た。後日電話越しでブリッジコンプに説教を入れようと思ったら、既に学園に戻ってから気付いたらしいトレーナーと友人各位にボロカスに絞られた後だった。

 流石に酷だと思ったので、そっとSNSに人の写真を無暗に上げない様に言うだけに留めた。

 

 結果として小学生にマナーを諭されたと心が折れてしまったが。そっか、トドメだったか……。

 

 まぁそんな事もあってこのざまだ。

 その中には何人か上級生も混じっており、その中で一人の男子生徒が気まずそうにしてるのを見かけた。姉さんが知ってる様な事を呟いたので聞いたら、夏休みに入る前少しだけいざこざがあったらしい。

 とはいえそれは姉さん側で解決していたらしく、軽く手招きして小声で何か言っていた。結果としてその男子生徒は安堵の表情になったが、結局なんだったのだろうか。祖母の所を発つ前に挨拶をして回っていた時、コンプトレに何か聞いていたがその事だろうか?

 

 事情を知らない私としては、青春してるなーと思いつつクラスメイトの質問攻めを適当にあしらう事しか出来ないのだけども。

 予想が付かないわけでも無いけどさ。

 

 

 

 そんなこんなで適当に周囲の質問を適当にあしらっていれば、ふと姉さんが口を開く。

 

「そういえば、この夏休みの間に校庭が色々増改築されてたみたいよ?」

 

 そう言って、教室の窓から外を見た。私もそれに続けば(ぶっちゃけ登校してきた時点で気付いてたけど)それが見える。

 

「なんでヒトとウマ娘の共学校にターフコースがあるんですかねぇ……」

 

 それを見て出るのは本心からの、一種の呆れに近い言葉だった。

 

 それもその筈で、普通ヒトとウマ娘の共学校というのは、基本的にヒトミミ優位の学校だ。

 厳密に言うと、URAの支援を受けられない学校に位置する。その為ウマ娘優位にするとお金が足りないのだ。

 それ故に近所にウマ娘専門学校がある場合、競走を志すならばそちらに入るのが通例である。そっちの方が色々と保険もあるし、設備も整っているからね。

 

 まぁ設備と言っても、本格化を迎えてない以上はあくまでウマ娘の出力に耐えられる素材で体育館が作られているとかぐらいだけど。変にウェイトトレーニングすると成長に支障が出るからね、その他だとシューズとかの消耗品の補充がメインだったりする。

 あ、でもターフとダートのコースはそれぞれちゃんと完備されてる。整備に滅茶苦茶人員もお金も食うから、URAの支援が無いとマジで学校の予算がカツカツになるんだけど。

 

 そんな訳で、共学校にターフコースがあるというのはかなりの異例な事態だ。一応私立学校ではあるので、何かしらの力が働けば可能性自体はあったけどさ。流石にこれは急が過ぎる。

 ぶっちゃけただの子どもなら兎も角、そういうのに興味を持って色々知ってる身だと学校の経営やらが不安になってくる代物なのだ。

 

「思ったんだけど、今年の夏休みが急遽七月からになったのってアレの増改築の為じゃない?」

 

「あ、あぁ~……確かに。凄い納得できるけど、今度は誰が何のためにって問題が……止めようこの話」

 

 姉さんの言葉で少し考えて、しかし直ぐに心当たりを見つける。ダメだ、この話は厄ネタだ。身内贔屓にも程があるとか言われかねない。

 

「まぁ私としては、上級生の子達とも走れると思うと楽しみなんだけどね」

 

「さりげなく同い年じゃ相手にならないみたいな事を……。まぁこの辺、活動範囲内にイイ感じに子ども向けのターフコースとか無いもんねぇ」

 

 なんでターフコースが学校に出来ているのかはさて置き、実際問題この近辺に私達が満足に使えるコースが無かったのでありがたくはあった。

 無くもないのだけど、大抵距離が微妙に遠かったりして私達だけで通うのが難しかったりするのだ。継続的に通うのに親の送迎を要するのは、まだ幼いヒトミミ二人を抱える我が家ではちょっとキビシイ。

 私達が通える距離にもあるにはあるが、こちらは主婦ウマ娘のお姉さま方が使うストレス発散の場としての側面が強すぎた。子どもが入るにはアウェー過ぎる。ウマ娘は基本的に皆優しいので、ただ走る練習をする分には良いのだがそれだけだ。併走したり、模擬レースで勘を掴むなんて事をするには向かない環境だった。

 だって結局負けず嫌いだから、こっちがいい感じに走れるとつい火が入っちゃってと本気で走ってくる。怖いのよ普通に。

 

 そんな事を話していれば、予鈴が鳴り始める。

 途中からろくに相手にされないと察したクラスメイトや他の生徒たちはいつの間にやら仲良く駄弁っていたらしく、教室が遠い他学年の生徒達は口々にヤバいと言って足早に駆けて行った。忙しないなぁ。

 

「ま、学校側からも色々説明はあるでしょ。放課後、早速走ってみよう」

 

 そう言って、私も姉さんと別れて自分の席に着く。

 ちなみに同じ教室ではあるが、顔がそっくり過ぎて教師が頻繁に間違えるので席替えをして私が窓側で姉さんが廊下側に振られている。担任がそこそこお年を召していて、最近目もヤバくなって引退も近いと寂しそうにぼやいていたので、文句は誰も言えなかったのは内緒だ。

 

 

 

 そんな具合で二学期初日のよくあるお話を聞いて、出来事を紹介したりして時間は過ぎていく。中には親に連れられてサマーシリーズレースを見にあちこち行った子も居て、親のバイタリティ凄いなとか思ったりした。

 なお、その子はかの有名な新潟の直線レースで脳を焼かれていた。ジャズステップというウマ娘の逃げに魅せられてしまったらしい。

 

 ちなみに後日ブリッジコンプに話したところ、致命的にスタミナが無い上にバ群が大の苦手という1000m直線の申し子みたいな子という話を聞いた。

 あと当日は映像では分かり難いが躓いて出遅れていたらしく、その立て直し方法が極めて独特だった上、あっという間に先頭に立ってしまったが為に妙な憶測が飛び交って、友人間で質問攻めにあい大変な事になってたらしい。ウケる。

 あとでレースの映像は見ておこう。というかどうやってデビューしたか、もしくは未勝利から脱したんだろう……。

 

 最後に全生徒が体育館に集まっての新学期挨拶をして終わった。地味に内装が変わっていて、踏みしめた感じ体育館もウマ娘仕様になっているのが分かった。怖い。

 ターフコースに関しても説明があったが、比較的ウマ娘の在籍率が高いこの学校にターフコースを作って欲しいと匿名のメッセージと共に寄付があったらしい。基本的に全生徒自由に使っても構わないが、走る子以外はコースに入らない様にするのを徹底する為、引率の教員や保護者が居る時にだけ使用する様にと説明が行われた。

 

 まぁそれはそうだ、小学生ウマ娘とはいえ私達や年長組は時速50㎞近くを出すのだから。ちょっとした交通事故に発展するし仕方がない。

 あと単純に悪戯防止の側面もある。芝の中に小石とか仕込まれて、運悪く疾走中のウマ娘が踏みでもしたらそれだけで大事故だ。ウマ娘程情緒の完成しきっていない小学生ヒトミミが居る以上、通常のウマ娘専門校の様に生徒から教員まで全員が走る事に真摯だとは言い切れないのだ。

 まぁ、後から聞いたが実際はURAから派遣された職員が常に居るらしいけど。あまり無い試みだからURAとしても当然事故が怖いとの事。そりゃそうだ。

 

 さて、諸々の説明を受けた生徒たちは案の定珍しさからターフへと集まって行った。学校に在籍するウマ娘達はほぼ全員が揃った。学校のガキ大将と名高い上級生の男子生徒とその取り巻きも居たのが精々の懸念点だろうか。……あれ、でもなんか見覚えあるな。何でだ。

 

「さて、集まった子で走りたい子は手を上げてね。ウマ娘の子とそうでない子で別れて貰って、その後にウマ娘の子達は学年別に別れて貰う予定だから予め集まって置いてくれると助かるかな」

 

 とはいえ、引率の教師とURA職員が居るので子どもが仕切るなんて事は無い。今でもそこそこの人数が集まり、結果としてそんな言葉を投げられる程度には男女ウマ娘問わず集まっていたので下手に子どもが仕切れば豪い事になるけど。

 

 だが実際に手を上げたのは、私と姉さん。そして上級生、私達よりは身体が出来上がってきている子も含めた計九人だけだった。

 

「あれ、皆は走らないの?」

 

「いやぁ、アヤベちゃんって私達よりずっと速いじゃん? 私ら夏休み中もそれなりに頑張ってたんだけど、伸びもあんまり良くなくてさ……」

 

 姉さんが疑問を呈して、それに対してクラスメイトの子がそう答えた。そしてそれに同調する様に、他のクラスメイトや友人達も頷いて答える。要は、みんな姉さんと走りたくないのだ。負けると分かっていて、挑むのはそれなりに勇気がいる。

 

「それより、ザーガちゃんは大丈夫なの? 走ってる所、見た事無いけど」

 

 姉さんの後ろで納得していれば、そんな疑問が投げかけられた。まぁ確かに私、姉さんが積極的に走らないだけで誘われれば走りに行ったのに対して、図書館とかに行って雑学貯め込むのが楽しくて基本断ってたからなぁ。仕方ない事ではある。

 

「ん、大丈夫。まぁ見てて」

 

 とはいえ夏休み中、劇的に進化したので問題は無い。まぁ展開次第では勝てるんじゃないだろうか。

 いや、幼いとはいえ推しに勝てるだなんて烏滸がましいのでは? とはいえ走るからには勝つ気で挑まねば不作法という物……。

 

 むむむ、どんな気持ちで走ればいいんだろう。

 

 とりあえず走ってから考えよう。そう結論付けて、職員の人と上級生の輪に混じっていく。どう振り分けるかの相談タイムだ。

 

 

 

——☆☆☆——

 

 

 

 結局、ウマ娘の中で走るメンバーはさほど多くなかった。

 URAから派遣されてきた職員さんが取り仕切り、最初の出走メンバーが発表された時は驚いたものだ。

 

 まさか一年生が混じっているとは思わなかった。何せ他のメンバーの殆どが五年生以上なのだから。

 

「今回行われる九人立てのレース、内二人は一年生だ。残りは四年生と五年生、六年生の混成……一般的に見るなら一年生のウマ娘は不利と見るのが普通だろう」

 

「どうした、急に?」

 

 不意に隣で見ていた男子生徒が、そんな事を言い始めた。

 確か六年生でガキ大将を自称してるらしいけど、近い学年では成績優秀者としても有名なので、低学年の子にしか怖がられてなかった筈だ。その証拠に、彼の言葉に気さくに返すのは優しい良い子と話題の学級委員長だった。

 

 まあ兎に角、彼の言う通りだ。さらに言えば、高学年の子と一緒に走って怖くないのだろうかと思う。

 皆が私と走るのを嫌がるみたいに、負けるのが怖いと思わないのだろうか。一方的に突き放されるのが、恐くは無いのだろうかと思う。

 

「さらに言ってしまえばウマ娘をよく知る者ならば誰もが知り、同時に本人に用いるのはタブーとされる言葉がある通り、あの一年生達は『双子』だ。『葦毛』と並んだ二大タブー、特にこっちは医学的にも不利が理論上では証明されている分、質が悪い」

 

「ああ、葦毛は単純に珍しさと比例して出走率、勝率が全体的に低いからこそ言われているだけだ。だけど双子の場合は胎児時期の栄養の分散、成長の偏りと不安材料はかなり多いらしいな」

 

 随分と彼らはウマ娘に詳しいらしい。加えてよく聞くジンクスの類も、あくまでそういう話があるだけと正しく認識し、その実体もキチンと把握して発言している。

 

 けれど双子か、確かに珍しい上に出生時点で不利を被っているとはよく聞く。彼らの言ったように、胎児の時に母親から供給される栄養が偏るリスクがあるとかなんとか。

 正直保健の授業で見聞きしただけのうろ覚えで、詳しく授業が行われたわけでも無く単純に授業範囲の隣のページがそうだっただけだ。そういう意味では、彼らは本当に勤勉だと思う。

 

 確かにそれなら、『双子のウマ娘は走らない』だなんて言葉も生まれるだろう。

 

「だが出走希望者が手を上げた時、人数的に纏めて走らされる可能性に辞退する事も出来た筈。そうでなくとも、同学年同士で走ることも出来た筈。逆に言ってしまえば、あの場所に立っている時点で自分の脚に相当な自信があると見える」

 

「なるほど、確かにそう捉える事も出来るな。一年生姉妹によるジャイアントキリングか、無謀な挑戦でしかなく上級生に依る蹂躙が行われるのか。距離が距離だし、コーナーもある。スタミナやコーナリング技術によっては勝負にならない可能性もあるが……。なんにせよ、レースが始まらない事には判断できないな。俺らも本格化したウマ娘なら兎も角、子どもウマ娘の身体を見て判断出来る程の分析力は無いし」

 

「ああ、見守るとしよう!」

 

 彼らはそう言って、ターフに立つ彼女達を力強く見つめていた。トレーナー志望なのか、はたまた家族ぐるみでレース好きな物好きなのか。なんにせよ、彼らは熱意十分にそう分析していた。

 私はただ走るのが好きだったから、そういうのはさっぱりだ。

 それこそ今は、私もあそこに居たら最低でもあの二人は一緒に走ってくれたのかしらと、もう過ぎた事を未練がましく考えてるぐらい。

 

 彼らみたいに見守る事が出来ていれば、もう少し色々と変わったのだろう。

 けれどそれすらも過ぎた事で、私が今月中に引っ越して転校してしまうのも変わらない事実だ。

 

 でもやっぱり、私も走りたかったな。

 

 胸の内で、冷え切ったエンジンがカランと哭いた。




 ぶっちゃけ『葦毛のウマ娘は走らない』とかそういうジンクス、どうしてもいつかは何かの拍子で耳にしちゃう事はあるかもだけど当事者の前では絶対言っちゃダメだよね。オグリはマイペース極めてるから『何を言ってるんだ? 私は走ってるぞ?』とか言いそうだけど、普通は多感な年ごろの女の子にそんな事言ったら精神的デバフ凄いでしょ絶対。

 なんかどこかで見覚えのあるやり取りする男子生徒達。誰なんだ君ら一体。
 そんな男子生徒達を見守る少女、夏休み明け直前に良くも悪くも引っ越しが決まってしまった子。誰なんだあんた一体。

 いやマジで今回出す予定の無かった子がポンと出て来て書いてて「待て待て待て? 何しとん???」ってなってた。お陰様で妙な設定が生えて来た、どうしてくれる。

 それはそれとして、次の話で上級生ウマ娘を相手に走る訳なんだけど。出走するモブウマ娘ちゃんの名前考える時に某ゲームが某作品とコラボするって情報流れて来たんでそれに引っ張られてます。特に意味は無いです。
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