アヤベさんの妹に転生したけどこれキャラ崩壊する奴じゃんってなる話   作:煎餅さん

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前回の投稿からギリ一ヶ月経ってない。やりたい事詰めてたら迷走し始めた感が否めないけど、まぁ無事(???)に一年生編も終わります。次はまたちょっと時間飛ばして都合のいい時期からスタート予定。

ぶっちゃけこれ投稿する時に前回の投稿日確認するまで既に一ヶ月経ってる気持ちでいたのは内緒。

(11/26)誤字報告ありがとうございます。いつも助かるタスカル…ありがたや
(24/1/25追記)加筆修正しました


足りていたものと、遅かった事

 勝敗は決した。

 

 私達は負けた、それも一年生に。

 

「まさか、ツートップ丸ごと持って行かれるとは思いませんでしたわ」

 

「あっはは、同感。3番ちゃんぐらいは最後落ちてくると思ってたんだけどなぁ、返しウマの件もあって気を引き締めた心算だったんだけど……自分で思ってたよりもずっと舐め過ぎてたっぽいわ~」

 

 独り言のつもりで呟いた私の言葉に、同意の言葉を返したのは4着に滑り込んだ尾花栗毛のクラスメイト。

 

「リコリスさん……私も、最終コーナーを抜ける瞬間に上の空になっていました。少し思うところがあって、つい感傷的になってしまいましたわ。勝負の最中に、情けない」

 

「あー、ドラッヘは仕方ないんじゃない? だってほら、あの子結局また転校しちゃうし。あんたの言葉に耳を傾けたのも、殆どが今日一緒に走ってたメンツだったじゃん。今後増えないとも限らないけど、たぶんあの子達に同じ思いをさせるのが怖いんだと思うよ、自覚してないだけで」

 

 最後の直線、立ち上がる直前で余計な事を考えた。それが私の敗因だ。

 

 今年の頭、四年生で居られるのも最後の月に急に転校してきたウマ娘が再び転校していってしまう。そんな彼女の事を考えて、自分達上級生と既にわたり合えるあの後輩たちと重ねてしまったのだ。

 

「強すぎる子と戦いたいって思うのは、向上心の固まりや奇特な子ぐらいだよ。ウマ娘と駆けっこをしたがるヒトが滅多に居ないのと同じかもね、同じウマ娘だけどさ」

 

「解ってますわよ、そんな事。……せめて私達が卒業するまでの間は、彼女達と切磋琢磨させて貰いますわ」

 

「おーこわ、アレが無ければ1バ身の差は消えてただろうし次は勝てるんじゃない? あたしも負ける気は無いけど、だからと言ってやり過ぎると虐めみたいに見えるからほどほどにね~」

 

 そう言いあって、互いに電光掲示板を見る。

 

 煌々と光る赤い確定の文字。そこに並んだ数字が、私達の勝負の結果を公正に、無慈悲に告げていた。

 

 

 

 Ⅰ 8 アドマイヤベガ

               クビ

 Ⅱ 3 アナザーベガ

               1バ身

 Ⅲ 9 ロータードラッヘ

               アタマ

 Ⅳ 1 リコリスフレーバー

               1/2

 Ⅴ 5 ドレッカブロット

 

 

 

 1バ身、それが私とあの姉妹の間に出来た差。

 

 一説では、三女神様のモデルとなったウマ娘が両腕を広げた長さなのだとか。

 

「……いえ、流石にロマンチストにも程がありますわね」

 

「えっ、何々? 何考えたの?」

 

 ふと頭に浮かんだ考えを、頭を振って否定する。横でリコリスフレーバーが興味津々といった様子で近づいてくるが、それも無視して一つ深呼吸。

 くだらない妄想な上に、ともすればあの姉妹に対してある種の無礼にも値する。少なくとも私はそう考える。

 

「なんでもありませんわよ。それより、勝者を労いに行きましょう?」

 

「んー、気になるなぁ。今度先生に頼んで御馳走用意するからさぁ、私にだけ教えておくれよぉ~♪」

 

「しつこいですわ、さっさと行きますわよ!」

 

 とりあえず、うっかり口に出したのは失敗だったと思う。

 クラスメイトのしつこさに辟易としながら歩を進め、けれど視界の端で捉えた栗毛のウマ娘を見つけて足を止める。

 

 私が勝負の最中に雑念を抱く切っ掛けとなった彼女を恨むわけではないが、いっそ一緒に走っていれば何か変わっただろうにと思わずに居られないのもまた事実。

 だからこそ隣の煩い同じ尾花栗毛を引き離しながら、視線の先で踵を返して去ろうとしている彼女に対して独り言を漏らす。

 

 

 

「貴女はこの日、このレースを走らなかった事をずっと後悔しますわよ。マルゼンスキー」

 

 

 

 たとえ敵わずとも、それでも食い下がる者は確かに居た。

 けれどその少数よりも、他の大多数に遠慮をしてしまったのが彼女の運の尽きだろう。

 

 いつか自分の気持ちを隠さず、打ち明けられるヒトと出会えることを願う。

 

 その時こそが、私が彼女を打ち倒すのに相応しいのだから。

 

 

 

——☆☆☆——

 

 

 

 高揚感が胸を埋め尽くした。

 楽しい、嬉しい。そういった気持ちが胸中を渦巻いて、返って気持ち悪いとも思えてくる程だ。

 

「勝った、私が勝ったんだ……」

 

 第3コーナーで、ずっと年上の先輩とほぼ同時に仕掛けた。

 あの時、僅かに私が早かった。けれど歩幅と歩数の関係で、彼女が先に前に進み始めた。きっとそれこそが真に私を勝利へ導いた要因だろう。

 

 偶然が重なったあの瞬間、そこから第4コーナーを抜けるまでの間。その間も変わらずずっと彼女の真後ろを着けることが出来た。

 ザーガからそういう技術があると、以前聞いた事があった。今日は偶然、それをする事が出来たのだ。

 

 私達ウマ娘は、その走行速度ゆえに空気抵抗の影響をどうしても受ける。それを回避する術として、スリップストリームという物が存在する。

 詳しい理屈は省くが、要は前を走る相手を風除けに使う技術だ。とはいえその恩恵を受けられるエリアは極めて小さく、相手の動きに合わせて自身も動かなければ途端に空気抵抗の煽りを受けて失速する。習熟しなければ、諸刃の剣に等しい技術。

 それが私を、ザーガの隣まで導いてくれた。ザーガを追い抜かすチャンスをくれた。

 

 同時にあの子を負かしたという事実が仄暗い影を胸中に落とすが、勝負事なんだからこれは当然の事だと一蹴する。

 それにあの子には最後の一瞬、粘りが足りなかった。威圧感が無かったのだ。否、それらしい気迫は確かに発した。けれど並ばれた後、既に抜かす事が確定した時だった。それでは致命的に遅い。

 

 抜かせてたまるか、自分が勝つんだ。そういった気迫が無い相手を追い抜かす事ほど、容易い事は無い。

 自分が勝つという気迫が無い、あるいは揺らいだ相手からは威圧感が消える。もしくはそもそも無い。

 レースにおいて威圧感という物はバカにならない存在感を放つ。その隣を追い抜かそうと思うならば、こちらも相応に威圧感を放って相殺しなければ満足に走れもしない。

 何の対策も無ければ、気圧されて終わるのだ。並ばれる前から牽制しなければ対策にはなりえない。

 

 深呼吸を数回繰り返す。頭の中を渦巻く悪い考えを排除し、気持ちを切り替える。

 あの子が負けたのは、覚悟に差があった。それに尽きると納得する。

 

 

 

 実際私もギリギリだった。夏休み前、上級生の彼が言った言葉は確かに堪えたし。その言葉を当事者に対して発するのは、一種のタブーらしいというのをブリッジコンプさん達のトレーナーから聞いた。

 事実私の心を抉った言葉であったし、それぐらいの扱いを受けていて当然ではあるかもしれない。走る事が一つのアイデンティティとも言えるウマ娘にとって、そういった発言は禁忌に等しいのだそう。

 しかも医学的側面から見れば確かに不利になりえるという、葦毛よりもハッキリとした理由を持ったジンクス。今でこそ同年代と隔絶した能力はあるけれど、今後それが伸び悩んでデビューする頃には落ち込む可能性もぬぐい切れないのだし。

 

 けれどそんな失敗の可能性にだけ目を向けて諦めるより、その隣にある成功の道という可能性を追いかけた方がよほど建設的だ。そんなトレーナー陣の言葉は私の支えになったし、今日は実際に上級生を打ち負かす大金星をあげた。

 相手の油断はあったかもしれないが、それでも勝ちは勝ちだ。そうでなくとも勝ち負けが出来る程度の実力がある事が証明された、その事実は大きい。

 

 ジンクスを覆してやる。その一心で、自らの証明をするという覚悟を持って挑んだ。だから勝てた、そんな気持ちも無い訳ではない。

 

 兎に角このレースは明確に自信に繋がった。双子がなんだ、私達は年上を相手取ってツートップを勝ち取ったのだ。ここからだ、これから私達の物語は始まるのだ。

 

「よしっ!」

 

 自分の頬を両手で軽く挟む様に、音が出ない程度に叩く。あんまり勝者がグズグズ悩んでも良くない、そう思っていれば歓声が上がる。

 見れば、掲示板に赤く光る『確定』の文字。ザーガとの着差はクビ、およそ80㎝だったか。一説によれば、三女神様のモデルとなったウマ娘達は皆身体が大きかったらしい。頭頂部から鼻、顎までの頭、首を含めた長さがそのまま現在のハナ、アタマ、クビ差として浸透しているのだとか。

 

「おめでとう、姉さん」

 

 そうザーガが短く声を掛けてきた。少しだけ声が震えている。

 

「ありがとう、ザーガ」

 

 とはいえそれを指摘するのは野暮だろう。今は短く、そう応える。

 

「次は負けない」

 

 そしてそれを察してか彼女から、短くも明確な宣戦布告を受ける。本当に珍しい、初めての事だ。

 そもそもこうしてレースをするのも初めてだったから、当然と言えば当然なのだけど。それでも思わず言葉に詰まって、その一瞬の内にザーガは踵を返してしまった。

 

「あらあら、実の姉妹だからこそ言い難い物と思っていたのですけれど……思いの外、好戦的だったんですのね? 先を越されましたけれど、おめでとうございます。次は負けませんわよ」

 

 声を掛けて引き留めるべきか、そう考えていれば横からそんな言葉がかけられる。

 振り向けば、私がずっと後ろを走らせて貰った先輩が居た。どこかスッキリした様子だが、なにかあったのだろうか。

 

「あ、ありがとうございます。ロータードラッヘ先輩。あの、最後の直線……」

 

「ああ、流石にバレますか。ごめんなさい、勝負の最中だというのに少し考え事をしてしまいまして……全ては油断が招いた事、貴女方を侮った私の未熟ですわ」

 

 最後の直線に入る時、不自然な角度で外に膨らんで行った彼女を思い出して聞こうと思えば直ぐにそんな返答。なるほど道理で、最後の直線でやけに簡単に前に抜け出せたわけだ。

 しかも彼女は無駄に外を走った形になった分、不利を受けた。その分もあって、今回の勝利だったのだろう。

 

 きっと彼女が徹頭徹尾油断なく走っていたならば、私達は彼女の後ろで仲良く2~3着だっただろう。

 いや否、後塵を喫する事になったであろうウマ娘はもう一人居た。下手をすれば3~4着にまで落ちていた可能性はあったかもしれない。

 

「やあやあ! 君たち強かったねぇ、お姉さん感動しちゃったよ~♪」

 

 そしてそのもう一人が、ロータードラッヘ先輩の後ろから顔を出す。

 

 妙になれなれしいというか、やけに明るい先輩だと思った。あえて言うなら、人懐っこい犬かもしれない。

 

「えっと、確かリコリスフレーバー先輩ですよね。ありがとうございます」

 

「ノンノン、リコちゃん! フルネームとか滅茶苦茶呼びにくいじゃん? だからそう呼んで!」

 

「え? えっと、……リコちゃん先輩?」

 

 だいぶグイグイ来る先輩だ。そのせいとは言わないが、若干妙な日本語になってしまった。とはいえ、困惑気味に返した言葉でも満足げに頷いてくれたので良かったのだろう。

 いや、良いのだろうかそれで……。

 

「はーい、リコちゃん先輩です! いやぁ、今回は負けちゃったけど次は負けないからね! 勝者を労うついでに、こうして宣戦布告をしに来たんだ。先越されちゃったけど!」

 

「ごめんなさいね、彼女いつもこうなのよ。そのうち彼女が手伝ってる喫茶店に招待させて貰いますわね、そこで改めてお祝いさせてくださいな。小さなライバルの登場を、ね」

 

 とりあえず、なにやら歓迎されているらしいのは解った。私としては、不意打ちをした気持ちもあってむず痒いけれど。

 しかし作戦で意表を突く事も含めて、それがレースだというのは知っている。相手の油断も、よそ見も全て自己責任だ。

 

 ……流石にそれでふんぞり返る事が出来る程図太くは無いけれど、一先ずの納得は出来るのでそれで飲み込む。

 

「その時は、お世話になります。……妹の事が気になるので、ごめんなさい。今日はこれで失礼させていただきます」

 

「ええ、行ってらっしゃい。妹さんにもよろしく伝えておいてくださいね」

 

「はい、かならず」

 

 とはいえ今はザーガだ。たぶん大丈夫だとは思うが、だからと言って放置出来る訳でもない。まして大切な妹なのだ、初めての確りしたレースでの敗北で気落ちしていないか心配にもなる。

 先輩二人との別れの挨拶も程々に、ザーガが去って行った方向に向かって行く。そもそもの場所が校庭のど真ん中だったというのと、幸いにしてザーガは走って行ったわけではなかったから、辛うじて彼女の背中が校舎に入っていくのが見えた。

 

 妹を追いかけて、私もそれに続く。

 あの子が悲しんでいるなら分かち合いたい。そして私のこの喜びも、分けてあげたい。

 

 たとえ身勝手な自己満足でも、そう思ったこの心を尊重してあげたいのだ。

 

 

 

——☆☆☆——

 

 

 

 負けた。

 

 その事実が、私の胸を締め付ける。

 

 どうやら自分が思っていた以上に、この勝負には入れ込んでいたらしい。

 

「……これが悔しいって気持ちか、自分で経験すると結構キツイな」

 

 胸に鉛を植え付けられた気分だった。出せる力を出し切って、ベストを尽くしたならばもう少しマシだったかもしれない。もっと気持ちの良い悔しさがこの身を支配し、存外姉さんの前で悔し泣きぐらいはしてみせたのかもしれない。

 

 だけど結果はどうだ。結果的にとはいえ私は常に先頭を走っていたし、幾ら基になったレース場が前残りしやすいコースだと予め知っていたとしてもそれは本格化したウマ娘の話だと解っていた筈だ。

 最高速度、バ体サイズ。諸々の条件を加味すれば、前残りしやすいなんて物は文字通りの幻想でしかない事に気付いていながら後方への警戒を疎かにした。思いがけず好スタートを切ってしまったあの時、いっそ先頭なんて手放して早々に自分も後方待機策にシフトする事も出来た筈だ。

 

「……いやダメだ、駆け上がる分のパワーはある。でも体格差を埋めるだけのパワーに欠ける。あそこで下がればバ群に埋もれてそのまま沈む、あの時はアレがベストだった」

 

 自分のレースを振り返り、浮かんだ思考を口で否定する。

 確かに相対的に普通のレースとして考えられるなら、後方有利説を取れば可能性はあっただろう。しかし今回の私は内側で、しかも後方もそれなりに密集していた記憶がある。恐らく下がっていればその何処かで下がり切れなくなり、その後抜け出す事が難しくなっていた可能性は十分にある。

 口で否定した通り、それを踏まえればあの時先頭を走り続けたのはベストだった筈だ。

 

 ならばなぜ負けたのか。

 簡単だ、勝つという気迫が足りなかった。勝ってやる、絶対に抜かせない。そういう気持ちが足りなかった。

 

「違う、足りなかったんじゃない。遅かったんだ……」

 

 しかしそれも否定する。

 遅かった、とは脚の話ではない。勝つという気迫の話だ。

 

 勝つ、負けない、負けたくない。

 

 抜かされるものか、抜かせるものか。

 

 そういった気迫を、私は出すには出した。出せてはいたのだ。

 けれどそれを発揮するのがあまりにも遅かった。並ばれてからでは遅いのだ、まして姉の様な既に一級品と呼べるだけの末脚を誇る者相手ならば尚の事。

 致命的な出遅れを、私はゴール直前になって自覚したのだ。

 

「……だから、こんなに気持ちが重いのね」

 

 なんだかんだ言っておきながら、自分は結局勝ちたかったのだ。理由を並べて、姉を優先して置いてこの様である。

 

 この勝利への欲求が自分自身の物なのか、ウマ娘として本能的な物なのかはよく分からない。しかし事実として私の中には存在して、今こうして私の胸を締め付けている。

 

 自分の判断ミス。それも自分の勝利への渇望に気付くのが遅すぎたが故に、その発露すらも遅れてしまった。実力が拮抗しているならば、そういった気概すらも武器にしてようやくレースに勝てる。それを痛感する一戦だった。

 

「情けないなぁ」

 

 何も考えずにあの場から逃げだした自分に、そう短い評価を付ける。

 

 

 

「なら、次から同じ失敗をしなければ良いだけじゃない?」

 

「……姉さん」

 

 不意に背後から声が掛かり、振り向いた先には姉さんが居た。

 困った様な、そんな笑みを浮かべて私を見ていた。

 

 追いかけられるのが嫌で、わざわざ校舎裏にまで回って来たのに。姉さんには敵わないな……。

 

「確かに貴女は、その気になるのが遅すぎた。勝負の世界でそれは致命的だと思う」

 

 ゆっくりと近づいて来ながら、姉さんはそう言った。同じレースを走ったのだから、私の無様は全て気付いて、理解もしているらしい。

 

「でも、最後までその気にすらならないのよりはマシだったんじゃない? 私としては最後まで必死にもならずに終わっちゃうのかと心配だったから、そう思うのかもしれないけど」

 

「それは……ごめん。余計な心配かけた」

 

「いいのよ、勝手に心配しただけだし」

 

 姉さんは私の謝罪を手で制して、少し悩む仕草をする。不思議に思い首をかしげて待っていれば、ようやく口を開く。

 

「正直、貴女が情けないって言った所で追いついたから、何で悩んでるとかはよく分からない。それでも貴女が気落ちしてるのは見過ごせないから、ダメ元で言うわね?」

 

 何を言われるのだろうか。ドキリとするが、悪い事は流石に言われないと思う。

 身構えていると、姉さんがゆっくりと口を開く。

 

「先輩達、再戦を所望してるわ。あとその前に、今日勝ったお祝いをしたいって」

 

「……うん?」

 

「だから、えっと……ずっと年下の私達に負けた先輩達が前を見てるのよ? 貴女は確かに私には負けたかもしれないけど、先輩達からすれば貴女も勝った側なの。着差は見たでしょう? あの場に居た全員が見てたんだから、私達が堂々としてないと先輩達の立つ瀬が無いじゃない」

 

 ああ、なるほど。何となく姉の言いたい事が解ってきた。

 

 たぶんこれが普通の小学一年生だったら、だいぶ博打に近い説得方法だと思う。結局負けた事に変わりは無いし。

 とはいえ私は内面だけなら既に大人だ。まぁ若干今の生活に慣れ親しみ過ぎて、少しばかり退行している所が無いと言えばウソになるけれど。それでも彼女の説得に乗れない程、子どもにはなっていない。

 

「私の知ってる賢いザーガなら、解ると思うのだけど」

 

 煽ってくれるじゃない。ここまで言われてしまっては、私としてもこれ以上ウジウジ悩むわけにはいかない。

 幸い私自身、反省すべき点は洗い出した後だ。前を向くタイミングが早まった、むしろ声を掛けられないよりずっと早く前を向けたのかも知れない。

 

 最近気づいたが思いの外、精神性が少女の物に引っ張られてしまっている気がする。前世の自分ってこんなにウジウジ悩んでたっけ、それすらも覚束ない。

 とはいえそれを考えるのは後だ、これ以上姉を待たせる訳にもいかない。

 

 それにせっかく姉さんが追いかけて来て、こうして声を掛けて来てくれたんだ。悪い気はしないし、そんな単純な理由で機嫌を直すのも妹の特権だろう。

 

「……解ってるよ、姉さん。大丈夫、反省は終わった」

 

「うん、良かった。それじゃ帰ろう?」

 

「うん。……ああ、でもその前に改めて」

 

「……?」

 

 さっきはついその場の勢いで行ってしまったから、改めて言い直すぐらいがちょうど良いだろう。我ながらさっきのは声も震えてしまって情けないにも程がある宣戦布告だったし、仕切り直しという奴だ。

 

「次は、私が勝つからね!」

 

「……! 次も、私は負けないから!」

 

 私の言葉を受けて嬉しそうにする姉さん。そしてそんな姉さんが返した言葉に、私もまた嬉しく感じてしまう辺りウマ娘の性なのだろうか。

 

 なんにせよ、先ほどまで胸にあった重みは消えた。すっかり晴れた胸中、浮かんでくるのは次は負けないという闘争心。いっそ今すぐにでも走りたい気持ちが一杯ではあるけれど、流石にそれは身体に悪すぎる。今は我慢だ。

 

 それに。

 

「さ、今度こそ帰ろう? お母さん達に今日の事話さないと!」

 

「そうだね、姉さん。きっとビックリするよ!」

 

 こういう時ぐらい、普通の姉妹らしくしても罰は当たらないだろう。

 かしこぶるのを少しだけ止めて、感情の赴くままに振舞うのも悪くない筈だ。

 

 そうしてみると、意外と気持ちが良い。強いて言うならば、自分が溶けて消えそうな気がしてならないのが難点か。

 

 

 

 もっとも、家に帰って両親に伝えた所で普段通りに戻らざるを得なくなったのだけども。

 流石に親戚を片っ端から呼んでお祝いしようとするのはやり過ぎだよ、勘弁してくれ。




シレっとぽっと出のモブに思わせぶりな感じでネームドキャラの名前言わせて如何にもその子の同期でライバル枠ですよみたいな描写をねじ込むんじゃない!!!

本作に登場するドラッヘさんは良い所のお嬢様な上に実力もかなりの物で、人格者だし優しい子。まぁその結果考えすぎて今回みたいな事やったり、他の所で調子に乗って大ポカやって幼馴染にウマ娘体術で〆られるんですけどね。作中で今後の出番……いやこんな書き方したら書くしかないじゃん、何やってんだワイ……負担マシ……。

次回は少し時間を飛ばすんで軽く仕切り直しも兼ねて色々処理していきたい所。場合に依ってはお前そこ飛ばすんかい!ってのもあるかもしれないけど、執筆に必要な要求性能がワイのスペックを超えてると思って生暖かい目で見てください()
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