アヤベさんの妹に転生したけどこれキャラ崩壊する奴じゃんってなる話   作:煎餅さん

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~始めに~
 アドマイヤアナザー ~もう一つの一等星~の序章第一話「頑張って受け入れてみましょう」と同一の内容です、既にお読みの方は飛ばして頂いて結構です
 失敗を経験してから考えるとやっぱ最初からこうした方が良かったなってなる。まぁ元々下手の横好きにもなり切れないポンコツなので見逃して欲しい

 わりと説明会。デジタルは時を超え空間を超え遍在する

(5/14追記)読み返してたらガッツリ一人称間違えてたので修正しました

(7/14追記)ちょこちょこと加筆修正をしました。

(24/1/9追記)またぞろ加筆修正しました。


受け入れ態勢を整えよう(心の)

 少し取り乱したな。

 さて、一先ず冷静になろう。

 

 

 

 確かにここは地獄みたいな世界だと理解したし、いじめとしか言いようのない環境なのも事実。

 しかし俺も大人だ、ここでヤダヤダ言って駄々こねるほど子供じゃない。いや今は赤ん坊だけど。

 少なくとも一時期流行ったスイープ因子は継承していない。……してないよね?

 

 大丈夫だよな、神様の悪戯なんて物が無い限り大丈夫だと思う。そう信じよう。というか確か血統的にも何にも関係無かった筈だし。

 

 

 

 ただそれはそれとして、俺という存在が推しの進退に影響しかねない状況というのが凄まじく精神に来る。双子のウマ娘は大成しないみたいな話があるとか、そう言うのが無いのを祈りたいが母親の反応的に無理そうなのも辛い。

 

 もちろん全部が全部俺の予想ってだけで、実際にそうなるかは分からない。杞憂に終わる可能性だって十分にあるのだ。ほら、一応転生者枠じゃん? 転生って言ったら何かしらのチートスキルはお約束でしょ?

 あと、どの道まだ赤子の状態だからさ。競争能力なんて分かった物じゃないしね。

 

 とはいえ先も考えた通り事実として、この世界には双子のウマ娘の競争能力には問題がある可能性が高い事は確かだ。これに関しては正直祈るしかないし、今後成長した俺達を取り巻く環境にそれが関わってくる可能性もゼロじゃない。俺達の能力がどうであれ、双子であるという事実がマイナスに働く可能性は常に頭に入れなければ。

 

 何度でも擦るけど名馬のウマソウル的な物が確立してさえいれば、こっちの世界でイレギュラーがあっても頑張り次第でどうにかなると信じたい。ほら、アプリトレーナーとかそうじゃん。いやアレも大事故起きれば負けるけどもさ。

 

 

 

 兎にも角にも、冷静になったら先ずは状況確認だ。

 

 先ほど母親が言った俺の名前、アナザーベガだったか。直訳したらもう一つの一等星だが、何か意味がありそうで実は特に無いとかありそうだから今深読みするのはやめておこう。

 次に周囲の状況だが、見てみればやっぱり父親の方もちょっと無理して笑顔浮かべてるな。娘が無事に生まれてうれしい反面、ウマ娘として生を受けたのに双子ってだけで道を一つ明確に失ってると考えると当然ではあるか。

 

 

 

 そこまで考えてて気づいた事がある。なんかめちゃくちゃ視界が良好なんだが。

 

 というか生まれてすぐの時も、母親の顔を視認できてたしな。普通の赤ん坊ってこんなに視覚がハッキリしてる物なのかな、単にウマ娘ってその辺も結構普通の人間と違ったりするんだろうか。この辺りは大きくなったら少し調べてみるとしよう。

 ぶっちゃけ普通の人間が生まれた時の状態すらうろ覚えだしね。

 

 

 

 気を取り直して、最後にアドマイヤベガ改め我が姉を見る。推しである事には変わりはないが、それはそれとして彼女は現世での姉である。であれば、俺は妹として素直に彼女を慕っておくのが良いだろう。

 

 そもそも例え俺が生まれた事が罪であったとしても、彼女には何も罪はない。ならばせめて彼女には幸せになって欲しいし、そのためには俺が妹としての役割を全うする必要がある。妹として、彼女を支えて見せようじゃないか。

 まぁ生まれた事が罪とは言ったけど、この世界はウマ娘の世界だ。この後父親からすらも追われる身にはならないだろう。なんで俺達は生きてちゃダメなんだとか、そんな事言う羽目にはならない筈だ。……クロスしてたら分かんないけど。

 

 

 

 気を取り直して思考を戻す。

 あとは正直短絡的だし不謹慎極まりないが、俺が消えれば疑似再現出来るんじゃないかってのも考えた。だがアプリウマ娘の様に死産なら兎も角、一度生まれてしまってからだと状況次第では監督責任やらで両親に迷惑がかかる。一度生まれてしまったからこそ、簡単には死ねないのだ。

 それに推しの成長に影響が出そうだし、大人しくこの状況を受け入れて生きて行くしかない。今こうして双子に生まれている時点で、もう今後身体的に変わる事はなさそうだし。

 

「あら、お姉ちゃんに夢中なのね。名前にも反応してたし、妹に愛されて幸せ者ねぇ」

 

 なんて考えていたら、母親がそんなことを言った。少し見すぎただろうか、まぁ赤子のする事だし深い意味で取られることもないだろう。事実可愛らしい解釈をしているし、こういうちょっとしたことも両親には良い思い出になる筈だ。

 実際にはだいぶ物騒な事を考えてました、とか口が裂けても言えないなコレ。封印しとかなきゃ。

 

「うーん、そうねぇ……お姉ちゃんはアヤベ、貴女は……ザーガにしましょう。お父さんも、それで良いかしら?」

 

「僕もそれで構わないよ。可愛い呼び名だと思う」

 

 我ながらあほな事考えていたら、そんな事を言って二人で話し込んでいた。どうやら呼び名を決めているらしい、というか決まったらしい。アヤベはアヤベで、元のまま。史実だとアドベと呼ばれていたらしいが、そっちは女の子に付けるには可愛くないしまぁ没だよな。

 

 ならば俺の方はと言えば、ザーガというのも中々少年ちっくな雰囲気がある気がする。しかし他に何か良いのがあるかと言われれば微妙なところで、アザベとか、捻らずアナザーとかしか浮かばない。そしてどちらも結局わりとゴツイ呼び名になり、ザーガが幾らかマシと消去法で決まった感があるのは気のせいだろう。

 好意的な見方をするなら、物語や叙事詩なんかを意味するサーガに引っ掛けた物とも取れる。それはそれで御大層が過ぎる気もするが、そこにある種の願いが込められているのかもと思えば無下には出来ない。深読みをするなら、だけど。

 

 でもたぶんご両親、そんな深い事考えてないと思うよ。

 

 

 

「さぁ、みんな経過が良いから明後日には帰れるんだ。病院とは雰囲気が変わってビックリするかもしれないけど、お家に早く慣れてくれるといいなぁ」

 

「ふふ、そうねぇ。……そうだあなた、この後哺乳瓶を買い足しておいてくれる? ザーガがあまりお乳を飲みたがらないのよ」

 

 それから少しして帰り支度をし始めた父親。退院後の生活に想いを馳せそんな事を言う父親に同意して、そしてすぐに思い出したととばかりに母親がそう言った。

 

 まぁうん、正直俺の中身が中身だからね、ちょっと抵抗がある。流石に免疫力とかの獲得に初乳は必須という知識があったので、心を無にして初乳とその後暫くは貰った。が、ずっと続けたら心が壊れる。

 折角転生したのに、メンタルがやられて幼児退行なんて洒落にならない。

 

 あとそれとは別に、単純に姉であるアヤベさんのお乳を飲む勢いが凄いというのもある。ウマ娘のその辺の機構がどうなってるか知らないが、母親の胸が枯れるんじゃないかってぐらい飲む。実際初乳を頂いた翌日、抵抗虚しく姉の後に再び頂く時明らかにサイズダウンしていた。

 単純に張りが無くなってそう見えただけかもしれないが、それを見てしまったら羞恥とかを抜きにして心配が先に来る。以降はずっと抵抗していやいや飲むのを徹底して、哺乳瓶にシフトさせるよう仕向けた。

 

 今回のは、どうやらそれが実ったらしい。

 

「そうなのかい? 分かった、用意しておくよ。お姉ちゃんが沢山飲むって聞いてはいたけど、もしかしてそれで遠慮しちゃうのかな?」

 

「あらあら、もしそうならお姉ちゃん思いのいい子ね。案外この子の方がお姉ちゃんらしいかもしれないわ」

 

 なんだこの両親、エスパーかよ。冗談はさておき、意図が伝わったならそれはそれで良い。いや伝わるのかよと思わなくもないが、そこはまぁ親の力なのだろう。変な勘違いされるよりずっとましだし、一安心だ。

 

 そして幾らか言葉を交わした後、また明日来ると父親は言って母親にキスをして去って行った。お熱い事で。

 

 その後色々とお世話をされたり、母親が食事をしたり与えられたり。特筆すべき事も特になく時間は過ぎて、あっという間に退院となった。

 

 

 

 退院してこれから俺たちが住む家を初めて見た時、口を開けて驚いた。その様子を両親と、あとそんな両親を真似てか姉に笑われた。

 

 いやだって、めちゃくちゃデカい。小さめのお屋敷ぐらいあるんじゃないかってぐらい、デカい。具体例を挙げるなら一般的な大きめの一軒家二棟分の大きさ。こう言い表すと小さめのお屋敷が大袈裟な表現に聞こえるな。まぁ要はでかいのだ。

 

 ぶっちゃけ和風な平屋なのも相まって、一側面から見るよりも奥行があって実際にはさらに大きいかもしれない。そういう意味では範囲だけで言えば、やっぱりかなり広大な方だろう。

 

「あはは、初めてお義母さんやお義姉さんにこの家を紹介された時の僕と同じ反応してる。ちょっと嬉しいような、やっぱり改めて大きい家だなって感じるような……」

 

 よかった、父親は庶民派だった。

 父親の反応に安堵するが、しかしどの道この家で暮らす事は変わらない事に気付いてゲンナリする。シングレのタマモクロスやオグリキャップたちと何処で差がついたのか。

 今後の学校生活で変に浮かない事を祈ろう。

 

「私の実家を見れば予想は付いたでしょうに。まぁ私も大きいとは思うけど。……でも将来、もし子ども達がみんな独立するなんて言い始めたら寂しくて泣いちゃいそうね……」

 

 聞く感じ、単に母親の家族がデカかったらしい。

 そういえばアヤベさんのシナリオで、母親がティアラ二冠ウマ娘らしいみたいな話があった気がする。そう考えると実家が多少太くても不思議はないか。なんならキャラストーリーでポニーカップの話があった時の背景が和風な感じだった気がしたし、あれが自宅で行われた話だと考えれば目の前のコレもまぁ納得ではあるけど。

 

 というか、元競争ウマ娘だからこそ、俺達が双子な事に思うところがあったのだろう。余計に不安が増すが、ここはグッと我慢だ。確信を得られる決定的な何かを得るまで、無駄に不安がってストレスを負うのはよろしくない。

 

 

 

 家の中に入ってみれば、やっぱりめちゃくちゃ広い。たぶん家政婦さんとか居るだろうなと思わせる広さだ。掃除大変でしょこれ、俺なら即投げる。

 

 何であれ、ここから新しい人生が始まる。当分のうちは何もできないが、そればかりは時間が解決してくれるのを待つしかない。

 

 

 

 がんばるぞ~。えい、えい、むん!

 

 

 

───☆☆☆───

 

 

 

 なんて、気付けば早いもので二年の月日が経過した。

 

 

 

 この家に来てからの最初の半年は偶のお出かけとなる通院を除いて、敷地内から出る回数は数える程。特に目立った出来事は無かったのもある。

 

 もちろん、あるにはあるのだけどさ。それも内容としては僅か半月未満で二足歩行が可能になった程度の事。いやまぁそれも元居た世界的には、とんでもない事だけど。

 ただそれも、俺だけでなく姉さんですら危なっかしくも歩行できている辺りで御察しだ。ちなみに俺に至っては、バランスを自分で考えて取れる関係もあってほぼ完璧と言って良い。そしてそれらに対して両親は特に驚く事もなく、せいぜい俺が直ぐにスムーズに歩けた事でうちの子は凄いかもしれないとはしゃいだぐらい。

 

 これ、この世界じゃごく普通の事らしいな。俺ほどスムーズなのは流石に珍しいみたいだけど。

 

 それから成立する会話も同様で、こちらは生後二ヶ月目辺りから姉さんが意味のある言葉を明確に言い始めた。そして三ヶ月目に突入する頃には難しい言葉は分からず活舌も安定しないが、普通の会話は問題なく出来た。俺は当然として、姉さんがである。

 なんなら文字も概ね把握しつつあり、養育絵本のとあるページを指して「ふわふわ、うさぎさん!」と叫んだ時なんかは心の中のアグネスデジタルが爆発した。そして俺も誘爆した。両親は奇声を上げた俺にびっくりした、不可抗力だったが今後は自重しよう。

 アグネスデジタルは遍在するのだと実感した。

 

 それはそれとして、両親には俺が姉に対してカワイイと言う感情を抱いていると判断された。ザーガは本当にお姉ちゃんが大好きね、と言われた時はちょっとむず痒い気持ちになったのは記しておこう。

 カワイイ担当は将来何処かで出会うだろうから、俺がここで姉さんを着飾る事は無いから。俺がやるとただのオタクの願望になっちゃうから……。俺に洋服選ばせるのは止めて、赦して……。

 

 

 

 そしてそうやって意思疎通も出来て歩ける様になったならと、『幼ウマ娘用育児補助ハーネス』を付けられての散歩が始まった。通称ポニーリードと呼ばれるこれは、こちらの世界ではメジャー処か必須用品の扱いらしい。

 まぁ要は前世でいう所の育児ハーネスである。ただでさえ子どもは油断すれば興味の向くまま勝手に何処かへ行くのに、ウマ娘のパワーとスピードが合わされば悲惨な事になるしな。ハーネス付けるのも仕方がない。

 

 ちなみにこの半年間で外出が殆どなかった原因の一つでもあり、このポニーリードを着けない外出は車等での通院を除き全国的に条例で禁止されているレベルなのだそう。

 あと持ち手がウマ娘の母親でない場合は、父親が持ち手側を自分に括りつけて使うのが一般的らしい。最悪引きずられても一定距離を常に保てるのと、その分速度が落ちる事で周囲の人間が父親側を止める形で制止させる事が出来るって事だそう。この世界の父親、扱い酷くね?

 

 あとこのハーネス、安全性の為に身長が最低でも65㎝程度になるまで着けられない。殆どの場合は歩けるようになる生後一ヶ月辺りにはそれぐらいの身長になるのが大半らしいが、俺達はウマ娘としては小柄に生まれた方で丸々半年を要した形だ。

 まぁ帝王切開なんて緊急手術で取り上げられた事を踏まえれば、仕方ないけどさ。むしろよくそれで、保育器を殆ど使わずに退院したな俺らって気持ちになってくる。

 

 

 

 ちなみにそうして初めて行った公園では、既に数ヶ月通っている子の中に入るので抵抗があった。が、みんな優しかったりして何も気にせず一緒に遊べたので一安心。

 この年の子って何をするんだろうって一瞬思ったが、大抵は公園内に設けられた専用のコースでのかけっこと、ステージでのダンスが主な遊びだった。まぁよく考えたらそうだよな、同じウマ娘のお姉さま方が走る姿を毎週のように見ていれば子どもは走りたくなるだろうよ。

 毎週の土日は大抵の子がおやつ時に、その日のメインレースを見るのだ。それ以外は今みたいに外で遊んだり、ご家庭によってはこの年からもう塾とか通うらしい。特に弓道なんかが人気なんだとか、昔からの恒例行事という意味で。

 

 ちなみに誰も双子な点は突っ込まなかった。子どもだからか、どうなのかは不明だったが。

 

 

 

 まぁ兎に角そんなこんなで経過した二年、とりあえずハッキリしたのはウマ娘が想定以上にフィジカルお化けである事だ。

 幼少ながらに父親が移動に苦労する大荷物を持ち上げるのは朝飯前、確かにこれは人間がウマ娘に敵うわけがない。しかも生まれてから単独行動が出来るまでのスピードだけ見ても桁外れと来ている、とんでもないな。

 ウマ娘の身体能力がヒトよりも圧倒的に優れているのは分かってはいたが、こうしてその力を実感する側に立つと恐い気がしてくる。

 

 改めて思い出せば生後二ヶ月で言葉を理解し、三ヶ月目には会話と文字を理解した。そして二足歩行に関しては生後半月時点で可能になり、バランスさえ取れるようになればほぼ自立行動が可能。そんな存在が二年の月日を経たならば、まぁかなり流暢に会話が出来るようになって駆けっこもかなりの速度が出るようになる。

 特に会話と文字に関しては、何度でも言うが俺は当然として姉さんがだ。俺と違って、前世補正の無い姉さんが。ウマ娘ヤバい。

 

 

 

 さて、所変わって此処は病院。その中でも託児スペースとも言える一角に俺たちは居た。両親は産婦人科でお腹の中の赤ちゃんの様子を診て貰っている。

 

 そう、弟だか妹が増えるのだ。まぁあんなに大きい家だから、家族が増える事は喜ばしい。推しに双子の妹と別に下の子が居た事が吃驚だけど。

 ちなみにそろそろ十ヶ月が経つ。十月十日とは言うが実際には九ヶ月と少しと考えれば、もうじき出産だろう。

 

 

 

 あと最近気づいたというか現実逃避していたのだが、よくよく見れば母親も何処かアドマイヤベガの面影がある。そんな彼女がお腹を大きくしていて、やや複雑な気持ちになったのは内緒だ。

 まぁこの世界に生まれた以上は順序が逆で、母親の面影が俺達に引き継がれた形になるのだけどね。前世があるというのも考え物だなぁ。

 

 面影云々を考えてたら、この世界で生き続けると将来的に推しの結婚とかも見守る羽目になるのかとも思い至った。その時は父親と一緒に、姉に相応しい人物かを見定める必要がありそうだな……。お父さんは許しませんよ。俺お父さんじゃないけど。

 

「ザーガ、えほん読もう?」

 

 そんな事を考えていれば、幼女姿の推しが首を傾げながら、そう言って来た。

 これが成長して見知ったアヤベさんの顔になるのかと思うと感動する。同時に先ほど思い至った将来を再び想起して、まだ見ぬ義兄だか義姉だかへの闘争心を秘かに燃やす。

 

 ちなみに最初の時こそデジたんさながらの尊み爆発芸を見せていたが、ほぼ毎日やられていれば流石に慣れる。というより、精神が肉体に順応し始めたというのが正しいかもしれない。実は何気に、姉と一緒にプリファイとか見てるしね。暇潰しの側面が強いから、他に何かあればそっち優先する程度だけど。

 

 それに最近は比較的年相応の言動をする様になったと、自分でも思う。幼女の群れの中に居たらまぁ、自然にそうなる気がしないでもないが。

 知識や思考能力に影響が出てないのがせめてもの救いだろう。その関係か、一人称は未だに『俺』ではあるのだけど。

 

「うん、いいよ。なにを読むの?」

 

 なんにせよ今は姉の相手だ。病院の備品なのでどんな絵本があるのか把握できていないが、まぁ公共の託児スペースなのだし変な物は無いだろう。

 流石に雄蕊雌蕊が関わる話だったら、そっと閉じて別の本を持って来よう。うん。

 

「えっとね、ヒトとウマ娘のちがいってえほん!」

 

「う~ん、それは、えほんじゃないねぇ」

 

 そしてその言葉と、実際にお出しになられた物を見て即座にツッコんでしまった。どこぞのマッドサイエンティストみたいな口調で否定してしまったが、まぁ良いだろう。カ~フェ~、なんちゃって。

 

 そして改めて見てみれば、なるほど児童向けではあるが小学生高学年向け辺りの内容だ。こう、小学校の図書館に置いてあった電池だとか身の回りの物に関する雑学絵本的な物で伝わるだろうか。そんな感じの本だ。

 もっと具体的に、ぶっちゃけて言うと〇研のまんがでよくわかるシリーズ。

 

「そうなの? でもヒトとウマ娘がどうちがうのか気になるもん。パパがこの前『弟』って言ってたし」

 

 そういえばそんな事を父親が漏らしていた気がする。そっか弟で確定か。

 前世の家族構成は思い出せないけど、俺は元男だから世話は任せろ。手伝える事、今は少ないだろうけど。

 

 しかしなるほど、姉なりにウマ娘以外との付き合い方を把握しておきたいという所だろうか。

 まぁウマ娘のパワーが凄まじいのは子どもながらに実感しているのだろう、少なくとも父親をポニーリードで引きずって動くのはざらだし。

 男は子どもウマ娘にも負ける、そう学習してしまっていると言う事だろう。

 

「わかった、それじゃいっしょに読もうか」

 

 あ、ちなみに俺達は母親に勝てない。同じウマ娘ならば年功序列は競争能力を除いて、そのまま機能するからだ。

 まぁだからと言って他が変わる訳じゃない。父親よりもさらに弱いヒトの子どもなんて、俺達からしてみれば壊れ物に等しい。そう考えるとこれは俺にとっても、割と重要な知識な気がしてきた。

 

 そう思い至り、肯定しながら共に本を開く。そして真っ先に目に付いたのは、ウマ娘とヒトの子どもの成長曲線。これを見る限りだと、既に実感して予想をしていた通りだった。どうやらウマ娘の赤子の成長速度は凄まじいらしい。

 

 人間の子どもが大雑把に平均して、一歳程度で立って歩き会話が出来る様になるのに対してウマ娘は半年以下でそのどちらもこなしてしまう。と、記載がある。

 加えて生後間もない時点で視覚や聴覚は明確で、嗅覚も受容体から羊水が剥がれれば問題なく機能するらしい。それで生まれてすぐだった筈のあの時、周囲の状況を認識できていたのかと、少し納得もした。

 

 あとヒトの赤ん坊は生まれてすぐは目を開けられないのも知った。ついでに視線が合うのにも数ヶ月を要するらしい。へー。

 

 とまぁ、以上の事を読み上げて聞かせていれば、難しそうな顔をした姉が首をかしげる。

 

「へぇ、私たちみたいに直ぐにはおしゃべりできないんだ?」

 

「みたいだね。うーん、俺たちが力かげんを上手にできないと、さわるのも危ないかも?」

 

「そっかぁ、がっかり。お姉ちゃん、弟のこと抱っこしてみたかった」

 

 疑問に答え、ついでに触るのも危ないかもと言ってみれば、姉は耳をしょんぼりと下げて言葉でも態度でもあからさまにがっかりした様子を見せた。

 

 まぁ気持ちは分からなくはないが、どの道俺たちも体の大きさ的にバランスが取りにくいだろう。お互いの安全を考えるとしない方がマシだと思う。

 

「俺たちがもっと大きくなったら、抱っこでもなんでもさせてくれるよ。それまでは、お母さんたちの事を助けてあげよう?」

 

「……うん!」

 

 とりあえず今はこれでいい筈だ、出来ない事があるなら代わりの物をさせて我慢させる。そしてその代わりの物が、必然的に誰かを助ける事に繋がると理解できていれば、むしろ前向きになれるものだからね。

 

 というか実際問題、そんなわがままを通すよりは支えてやった方が両親は助かるだろうし。

 

 

 

 そしてそんな話をしてそうかからない内に、俺はついに妹から姉に昇格した。

 

 祝え!

 俺とアヤベさんの、弟が誕生した瞬間だ!




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