アヤベさんの妹に転生したけどこれキャラ崩壊する奴じゃんってなる話   作:煎餅さん

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ギリ3か月以内って事になりませんか?
ならない? そっかー

レース()書くの苦手まである


模擬レース ~三人仕立て~

 時間は過ぎて、夏合宿最後の日。私たちは邸のターフコースに集まり、準備運動を行っていた。

 結局、追加の走者は現れなかった。まあ我ながら無茶振りをした自覚はあるので、残念ではあるけどコーチを責めることはできない。

 

「お姉ちゃん、頑張って!」

 

 そんな風に声を張り上げてくれるのは、弟のナナセだ。走者は三人だけで、駆け引きも何もないがレースはレース。だからこそ観客として、ナナセは精一杯に声を出していた。

 当然というか、みんなウマ娘のレースが好きらしく、作業の合間に見に来てくれた邸の使用人さん達も居る。何人かは直接お世話になったりで見覚えのある人も居るし、不甲斐ない走りは出来ない。

 

「さて、そろそろ始めるとしよう。ゲートインを進めてくれ」

 

 応援してくれる彼らに手を振っていれば、コーチがそう言って誘導してくれる。

 スターティングゲートがあることには驚いたが、敷地にコースを作ったり、学校周辺の敷地を買ってコースを作ったり、兎に角規模がでかいこの世界のお金持ち様だ。もうなんでもありだなと受け入れる事にする。でも言わせてくれ、何処にしまってたんだこんなでかいの。

 というか、あんま使われてないけど学校にもあったな。そんなポンポン買えるものなのかこれ。こわい。

 

 ちなみに、今回の模擬レースではゲートから出走する関係で、ゲート練習も前日に行われている。

 現状、私たちの中では先ず私が前世のヒトミミ補正でそこそこ落ち着いて対処できるので、結果としてスタートは巧い方。アヤベはまだ少し落ち着かないが、それでも出遅れという程の遅れは出ないので問題ない程度。

 そして最後にレイクは、意外にもアヤベよりは巧かった。落ち着きがないアヤベは気付いてなかったけれど、動き出しの反応速度は私に迫る程だ。

 

 ゲートインは問題なく進み、三人が無事収まる。背後の扉をコーチとお手伝いのヒトが閉じて、全員が走り出す構えを取った。

 これから私達が走るのは、一年生の時にも使ったターフコース。あの時は練習の為、部分的に使っていただけだけど、今回はちゃんと使う。

 

 そう意気込んで、しかしふと聞き覚えのある声が聞こえた。意識を向けすぎない程度に、けれど気になって耳を向ける。

 

 

 

「コースは一周約2100m、今回の模擬レースは1600m戦左回り。御邸その物をスタンドに見立てて、向こう正面からのスタートだ」

 

「どうした急に」

 

「このコースは東京レース場をモデルにしているらしく、向こう正面からの直線を300mなだらかな下り坂が続き、そこから100m程の上り坂。再び下り、緩やかに上って行った最後の直線にハッキリとした上り坂が待ち受ける」

 

「道理で妙な既視感があると思ったよ。とりあえず正直小学三年生のウマ娘が走るコースじゃなければ、距離でもないな」

 

「だが当時は油断があったとはいえ、ロータードラッヘとリコリスフレーバーを抑えてツートップを飾った姉妹だ。ここまで成長していても不思議じゃないさ。……流石に距離限界ギリギリだろうけど」

 

「だな。……こりゃかなりのスパルタコーチが付いてるみたいだ」

 

 

 

 ……いや君ら居たんかい!

 

 そんなツッコミと共にゲートが開いて、今までに無い会心のスタートダッシュが切れた。

 

 解せぬ。

 

 

 

———☆☆☆———

 

 

 

 ゲートが開く。

 

 そのままポンと飛び出したのはザーガ。昨日もそうだったけど、妙にゲートからのスタートが巧い。

 最初の100mを過ぎた時点で少人数故に位置取りは定まり、練習の時以上に巧いスタートダッシュで飛び出したザーガが先頭についてぐんぐんリードを伸ばす。次いでレイク、最後に私の順だ。私とレイクの間には2~3バ身の差。あまり近すぎても競り合って余計なスタミナを消費しかねない、ザーガとの距離を離され過ぎない程度に後ろに位置取る。

 ザーガは私の練習に付き合った末、身に付いてしまった癖をそのまま武器にしている。そして今まさに、目の前でぐんぐんと距離を離していく彼女を見て冷汗をかく。一緒に居るからこそ種は割れているけれど、それでもちゃんとしたレースの体を取るのは久しぶりだ。緊張で掛かりそう。

 

「っとに、こうもいきなり突き放されると焦るぜ……!」

 

 私の少し前を走るレイクがそうぼやく。正直気持ちは分かるけれど、怖いのはむしろここからだ。もうすぐ最初の上り坂が来る。

 

 短いとはいえ上り坂である以上、今のザーガには味方となる。むしろ短い分、急な坂道であるから余計に。

 

 短い歩幅で走るピッチ走法で瞬く間に加速して行く今のザーガにとって、上り坂は独壇場に等しい。上り坂に入っても全く速度が落ちないまま、前へ前へと進んでいくザーガの背はみるみるうちに遠くなる。対する私とレイクは、ここで減速し過ぎないようにするのがやっと。ただでさえスタート直後で加速も乗ってないのだから、現状でザーガに追いつく術が私達には無い。

 

 坂はゆっくり上ってゆっくり下る。そんなセオリーなんてかなぐり捨てて、ザーガはスタミナが持つギリギリまでスピードを増していく。

 

「はっ、はっ……! 分かってたけど、こうも突き放されるとっ、……キツイわねっ!」

 

 無駄と分かっていても、悪態のひとつも吐きたくなる。べつに体力がキツいわけではない。ここで言うキツイとは、気持ちの問題だ。

 レースの体で走った経験はあまりない。それ故にこうやって彼我の距離を自分の許容できる以上に取られると、焦りが生じるのだ。

 しかしここで焦れば、ザーガの……ひいてはコーチの思う壺。1600mという距離は、ハッキリ言って今の私達にとっては実質的な中距離から長距離に等しい。それ故にこんな序盤で焦れば、その瞬間にペース配分が瓦解して勝負にならなくなってしまう。

 だからこそ今は耐えて、勝負所を見誤らない様に気を配りつつ、兎に角控える。

 

 そうやって考えている内にザーガは短い坂を軽々と上り切り、既に下って第3コーナーへと向けて走っている。速度は全く落ちていない、けれど一定以上は上がっていないのも分かっている。

 スタミナが持たなくなるのは勿論だが、それ以上に脚が持たない。今の走法は、実を言うとザーガにとってかなりピーキーな物なのだ。理由はこの後実際に見れるが、兎に角今のザーガは一定以上の速度を出せない。

 

 でもそれはそれだ。この先のコーナーでさらに彼女は化ける。それに無事追いつけるかは、私達次第だ。

 

「くっそ、あんにゃろやっぱ頭可笑しいだろ……!!」

 

 2バ身程先に居るレイクの吐いた悪態が耳に入る。私から見て11バ身は差をつけて、先に第3コーナーへ入ったザーガを見れば、正直納得は出来る。納得は出来るけど、姉の前で妹を頭がおかしいなんて言わないでほしい。

 とはいえ、レイクじゃなくても殆どの子はそう言うのだろうけれど。なにせそれを初めて見た時、ライル先輩ですら「ザーガさん、もしや生まれた時に頭のネジを数本落としてきましたか?」なんて言ったほどだ。

 

 その証拠に、第3コーナーに入ったザーガの脚の動きが変化していく。

 通常ではあり得ない、走行中の走法変更。短かった歩幅が徐々に伸びていき、第4コーナーに入る頃にはその歩幅は十分な長さを備える。

 

 ピッチ走法からストライド走法への移行。

 だいぶ前に海外で活躍したウマ娘がやっていたらしい、等速ストライドに近い技術だ。これの何が凄いかと言えば、極めればバ場も距離も不問となる点だ。スプリンター向けのピッチ走法、ステイヤー向けのストライド走法。その両方を使い分けられたなら、ザーガはきっとこの先有名になれただろう。

 

 だけど幸か不幸か、彼女が出来るのは劣化版。ピッチからストライドへの一方通行。正直それだけでも十分凄いが、少なくともこれだけではバ場や距離は不問にはならない。

 それでも十分脅威ではあるけど。なにせ最初のピッチ走法でスプリンターみたいな加速をして突き放したと思えば、その加速状況のままでストライド走法に移行する事で高速度域を長く維持できるのだ。

 ザーガが序盤から飛ばしていける理由の一つがこれだ。序盤で多少スタミナを消費しても、後半は序盤で稼いだ加速をある程度維持したまま、その多少分ぐらいはスタミナ消費を抑えられるのだから。

 

「……我が妹ながら、やっぱりどうかしてるわね」

 

 ちなみにどうやってるのか聞いたけれど、参考にならない回答が返ってきたのは記憶に新しい。曰く「コーナーで遠心力と慣性を巧い事使って歩幅を伸ばす」のだとか。

 そんなのが出来たら誰も苦労しないわよ。普段は理屈っぽいくせに、やってる事が完全に感覚派じゃない。

 

 何はともあれ、自分の妹が色々可笑しい技術を持っているのは事実。現実逃避をする暇もなく、気付けば第4コーナーも終盤。ザーガも直線に立ち上がろうという姿勢で、私もそれを見てギアを入れていく。

 いくら序盤に稼いだ加速をストライドで引き延ばそうとも、肝心なそれ以降の加速はザーガには出来ない。だけど私は出来る、私のトップスピードはザーガより速い。脚もまだ残っている。

 

「ここ……っ!?」

 

 スパートを仕掛ける。そしてそれと同時に、前に居たレイクも仕掛け始めた。

 前の併走の時はトップスピードで私が勝っていたけれど、ここ数日は今までの身体作りが少しづつ形になり始めている事もあって、伸びが早い。加えて体格差もあると来たなら、勝負はまだ分からない。

 

 そうでなくとも、スタミナとタフさだけで言えば三人の中でレイクが一番だ。滅茶苦茶なフォームで走っていた期間が長かった事で、フォームを矯正してもトップスピードが伸び悩む状況が続いていた。だけどそれが解決していたら正直厳しい。

 距離が短い内は私達も多少の無理で下せただろうけれど、今日の距離はその限りではない。

 

 ザーガ曰く、スピード・スタミナ・パワーの順で私達の身体能力をランク付けすると、私がA・C・B、ザーガがB+・B・C、レイクがC+・B・B+といった具合らしい。現状私達が勝てているのは、何度でも言うがレイクのトップスピードが安定していなかったからだ。

 フォームのブレはそのまま減速に直結するから、どれだけパワーに優れていてもそれを御せない間は敵ではなかった。

 けれど今回は距離の関係で、私達はペース配分を考えなければならない。速度維持を考えると、どれだけスピードで勝っていてもスタミナ切れで一気に減速すれば簡単に負ける。そうなるとトップスピードがどれだけ優れていても、トータルで出せる速度限界を考えれば、そんなに差が出なくなってくる。

 

 そんな状況で、レイクのトップスピードがもし上がっていたら?

 

 

 

「うおおおおおおぁ!! 今日こそ負かす!!!」

 

 そう叫んで、レイクはザーガを猛追する。私も追いすがるが、そろそろこれ以上の加速はスタミナ切れが怖い頃だ。このままでもザーガには追い付くだろう、だけどレイクはどうかと言えば分からないのが現状。

 

 口酸っぱく言われている事だけど、レイクは私達と違って身体がある程度形になっている。肉体の成長が数年分差があるのだから、当然だ。

 対する私達はまだ未熟な身体に悪影響が出ない様、じっくりと年単位で時間をかけてトレーニングをしていた。お陰さまでフォームトレーニングを疎かにしている前提なら、相手が大人だって勝てる程度にはスピードが出せるようになっている。

 レイクはフォームが滅茶苦茶な代わりに、なんだかんだ今まで走っていただけあってフィジカルに優れ、スタミナとパワーもそこそこある。それでゴリ押して今の不良チームを束ねてる辺り、あのチームは走りのレベルがだいぶ低い証左にもなってしまうのだが、それは置いておく。

 

 大事なのは、彼女がちゃんとスピードを出せるようになっていれば、順当に私達姉妹は負けるという事。

 そしてそれは、レイクが一定以上の走りを出来る様になったという事だ。彼女の成長、その証だ。

 

 最初はトレーニングに対する姿勢すら良くなかったレイクが、今ではこうして私達を下そうとして、まさにそれを叶えようとしている。本気で負かそうとして、このレースに挑んで来てくれている。

 

「……上等っ! ここで攻めなきゃウマ娘じゃないわ!!」

 

 ライバルの成長を魅せられて、燃えないウマ娘なんてそう居ないだろう。あっさりと残った脚を解放し、最後の直線に入ってすぐに、レイクと縺れるように競り合い、そのままザーガに追い縋る。

 

「なんか二人して熱血してるねぇ!?」

 

 前の方からザーガの悲鳴じみた声が聞こえるが、そのくせ良く逃げ粘る。じわじわと距離は詰めているけど、ゴールまでの距離は視界の端を過ぎたハロン棒を見るに既に400mぐらい。既に加速は十分にあり、私も十分なパワーがあるから問題なく坂を駆け上っていく。ストライド走法に既にシフトしたザーガは、ここで僅かにペースを落とす。

 ザーガが小細工してなければこのまま抜ききれるだろうけど、なんだかんだ小細工抜きでも粘り強いのは私との並走で分かってることだ。それにこの間の一件で、あの子が無意識に抑えていた能力を使いこなせるかもと考えれば、さらに手強いだろう。

 

 年上のライバルに、一皮剥けた妹。それらに勝とうというのだ、少しの無茶は許容範囲内。

 

「ザーガ、先ずはお前からだぁ!!」

 

「っ、……まだまだ! そう簡単に負けてやらないから!!」

 

 レイクの言葉にザーガがそう叫び返すと、本当に僅かだが、グンと速度が上がる。まだ余力を残していたらしい、詰まりかけた距離が僅かに伸びかける。

 けれどレイクも私もそんな事は織り込み済み、いよいよもって全員が全力での疾走状態となる。

 

「ザーガもレイクも、纏めて抜き去ってあげるわよ!!」

 

 私も叫び、更に速度を上げる。気合を入れて、やや負荷は掛かるが僅かに前傾姿勢を取る。一気に加速力が増し、脚が縺れそうになるが根性でロスを最小限に抑え込む。

 

 筋肉が悲鳴を上げるかと思ったが、耐えてくれたらしい。痛みは無いし、調子も悪くない。残り200mを前に、ザーガの背に追いつく。レイクも僅かに私より前の位置だけど、ここまで来ればもはや差は無いに等しい。

 

 可能な限りの最大効率で脚を回し、少しでも前へと突き進む。

 

「やぁあああああああああ!!!」

「今日こそ勝ぁああああああああつ!!!」

「やらせるかぁあああああああ!!!」

 

 三人が横並びになり、誰かが前に出たと思えばすぐに追い越してを繰り返す。最後の意地の張り合いに、とっくに全員が限界を越えていたように思える。

 

 だけどもう少し、もう少しだけ。まだ身体の奥底に眠るナニカに気付き、それを引き出すべく走る。

 だって、こんなにも楽しいのだから。これで勝てたなら、どれだけ素晴らしいだろう。そう思わずにはいられないし、ウマ娘であるならそう考えるべきだと思う。

 だから、それに手を伸ばす

 

 そうして一歩、二歩と、今までにない芝を抉る手応えに笑みを深める。これなら、勝てる。

 

 

 

 視界の端、流星が瞬いて───直後、業火が全てを焼き尽くした。

 

 

 

───☆☆☆───

 

 

 

 滝のように汗が流れる。ゴール後、そのままゆるゆると速度を落としてようやく制止して、噴き出し続ける汗を必死に腕で拭う。

 

 全身が酸素を求め、どれだけ深呼吸をしても、まだ足りないと喚く様に呼吸を強いる。すっかり喉も乾き、それなのに水分を補給する為に呼吸を止める事すら叶わない。そんな状態。

 

「まったく、無茶をするものだな。ストライド走法に切り替えた後、速度を上げるのはまだ無しだと言った筈だが?」

 

 いつの間にか近くに来ていたコーチが、呆れたようにそう言った。少しだけ怒っている様だけど、でもなんだか嬉しそうな気配がする。聞いてて心地いい声音だった。

 

「——ぁ、っ!? ゴホッゴホッ!!」

 

「バカ者、答えなくていい! ……いや、話しかけた私も悪かった。とにかく呼吸を整えろ、それがお前の今すべき事だ」

 

 答えようとして、けれど案の定というべきか、咽てしまった。流石に心配が勝るらしく、珍しく慌てた様子で怒られた。今は言われた通り、呼吸を整える事だけを考えるとしよう。

 コーチは大人しく呼吸を整え始めた私を見てから、次に脚を触って状態を観察し始めた。私の体感では特に熱感も無ければ、痛みもないと思う。だけど頭に酸素が足りてるかも自分で判断できない現状、役に立たない体感だけれど。

 

 見れば、姉さんの所には南坂トレーナーが向かって触診していた。確かに最後の方、急激に気配が高まったのを感じた。あの様子を見るに、アレは姉さんだったんだろう。いつかの私の様な、あの感覚を姉さんも掴んだのだろうか。

 

「……」

 

 もしそうだとしたら、無事をただただ祈るばかりだ。あの時の感覚は、今でも鮮明に覚えている。だからこそ、アレが今の私達ですら手に負えない代物だと理解できる。

 ほんの僅かでも、あの力を使って走ったならば。その代償ははたして、どれだけの物か計り知れない。

 

「……姉が心配か? 気持ちは分かるが、お前も大概だ。人の事を言えんのだぞ」

 

 私の心境を察してか、はたまた視線を追って気付いたのか。コーチはそう言って私の脚に指を押し込み、その瞬間に激痛が走った。

 呼吸が落ち着いてきてたから良かったが、そうじゃなかったら悶絶待った無しだったろう。いやむしろ、コーチの事だから見計らってやった可能性もある。人の心とかないのか。

 

「声も出ないか。まあここまで疲労を溜め込めばそうもなるだろうな……最低でも二週間は運動は無しだな」

 

「……そんなに?」

 

「そんなに、だ。むしろあれだけ走って、良くこの程度で済んだものだと感心すら覚えるよ。……少し冷たいぞ」

 

 あまりの痛みに涙が出て来るが、それはそれとして約半月も運動なしの休養とは穏やかではない。目の前でコーチが私の脚をアイシングスプレーで冷やしているが、それでもあまり実感が無い。

 暫くそうしていると、ナナセがスポーツドリンクを持って走り寄って来た。少し汗ばんでいるのを見るに、先に姉さん達の所に行ってたらしい。それに礼を言って受け取り、ゆっくりと、しかし十分な量を身体に流し込む。

 

 そこまでしてようやく、自分の身体が落ち着きを取り戻してきた。

 

「……あー、これは、確かにダメね」

 

 恐らくはアドレナリンとか、そういう興奮作用のある脳内物質でもドバドバ出てたのだろう。呼吸を整え、身体を冷やして水分を取って、やっとそれらも落ち着いた。

 自分の状態が、やっと鮮明になってきた。

 

 これは酷い。そうとしか言えない、凄まじい倦怠感が時間差で襲ってきた。そのまま倒れそうになったがどうにか堪え、肘を突きながらゆっくりと芝の上に寝転びはしたが、ここから自力で起きろと言われてもこれは無理だと感じる。

 うん、レース前に聞こえたあの会話にも納得だ。絶対私達に走らせる距離でもコースでも無いって、せめて平坦な道だったらまだここまで酷くなかったでしょ。

 

 見れば姉さんやレイクも概ね同じらしい。姉さんはライル先輩がお姫様抱っこで、レイクは南坂トレーナーに肩を貸して貰って歩いてた。こうして見ると、やっぱりレースの負担って大きいんだなと実感できる。

 

「詳細は追って伝える。体を休める事だけ考えろ、良いな?」

 

 そして私も、コーチに抱きかかえられて移動させられる事になった。正直このまま寝てしまいたいけれど、流石に寝たら落とされそうで怖い。こないだもアイアンクローされたし。……いや、アレはレイクの時の癖が出たって言ってたから流石にしないか。

 

 ……しないよね?




Q.主人公の走法ってコレ……
A.作中でも言われてるけど他作品様でも散々利用されているスーパーテクニック、等速ストライドの超劣化版です。頑張れば特定条件下でまたピッチに戻すぐらいは出来るだろうけど、本作主人公であるザーガがやると常に死と隣り合わせの博打技となります。
 ベットするのは自分と後続のウマ娘ちゃんの命なので事実上の使用不可技ですね。

Q.なんでわざわざ劣化版?
A.上記理由がほぼ答えに近いんですが、ぶっちゃけ二本足でアレやるって要は相当Crazyじゃないと出来ないと思うんですよ(語弊)。ザーガはちょっと真面目ちゃん属性が強すぎたので、片道一方通行が限度かなぁって。まぁ十分Crazyなんですけども。
 あと作中でも言われてるけど、アヤベの追込み練習に付き合い過ぎた(本来近似スペックなのに無理に前について走ってた)のが原因。走り出しをピッチ、途中から我流フォームでストライドに変更なんて真似してたのを大慌てでコーチが修正して武器化した。

Q.等速ストライドってパワーめちゃんこ必要じゃなかった?ザーガの筋力自己評価Cじゃん。
A.アイツの自己評価は当てになりません。実数値で言えばザーガはA・B+・B+は余裕であります。でも前回ようやく認識を改めたばかりでその評価の再測定はまだしてなかったのと、自分でもそうだと思い込んでた以上は虚もまた事実的な思い込みデバフがかかりました。

Q.小学生に走らせるコースじゃねぇだろコレ
A.ワイトもそう思います。



ザーガ:小学生に走らせるコースじゃないってコレ
アヤベ:小学生に走らせるコースじゃないわよコレ
レイク:やっとこさ身体スペック追いついて来た奴に走らせるコースじゃねぇよコレ。でもめっちゃ楽しい、テンション上がる。お前もウェルダンにしてやろうか!



余談:ほんとはこの後更に続き書き進めて15000字越えコース一直線だったんですが、途中でその続きの部分が気にくわなくて丸っと消して今の今まで煮詰めてました。なので実質ブランクは2ヶ月なんです信じてください。
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