エルフの料理人ファルダニア、まだまだ修行中   作:セパさん

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ミントチェリー

 暑い蒸した工房の中、新進気鋭の若きドワーフたちは幻の名酒〝新しい火酒〟をも凌ぐ、エルフの娘から貰った【コメの酒】を再現しようと試行錯誤をしていた。まず分かったことは従来の火酒……穀物に蜜や砂糖を混ぜ酵母を加え発酵させ、アルコールにした品を蒸留させ続け度数を上げる造り方は全く通用しないことだった。

 

「まず麦や葡萄酒と違いコメには酒造りの元となる〝甘さ〟がない。コメは他の穀物と違い3年経ったとて腐らんのじゃ。じゃが酒巫女が作る濁り酒は間違いなくコメを発酵させたもの。こちらで意図的に発酵ができるよう手間を加えなければならんな。」

 

「〝甘さ〟についてなんじゃが、加熱したコメは性質が変わる。特に玄米を精製した品であればその違いは著明じゃ。だいぶ量は減ってしまうが、極限まで精製してから蒸したコメを試してみようではないか。」

 

「確かに何度か試したが、コメそのものの甘みを引き出すならば炊くよりも蒸す方がいい。しかし発酵にすら持って行けぬとは先行きは長いの。」

 

「酒巫女の作る濁り酒に発酵させる物質が必ずあるはずじゃ、その根源を突き止めて人工的に増やす手法をとってみるか。」

 

 しかしその難易度こそ職人魂に火をつけ、アイデアが湧き出て熱弁が止まらない。

 

「……本当、ドワーフってのは呑んだくれている時と仕事している時では大違いね。」

 

「おお、エルフの娘っ子!丁度よかった、お主から依頼を受けておった【料理】についてためになりそうなものをまとめておるぞ。」

 

「本当!ありがとう。ふん……やっぱり玄米を精製したときに出来上がる種皮からは油がとれるのね。確かに油分の多い品とは思っていたけれど、ここまで詳しく調べることは出来なかったわ。実際に取れた油と搾りかすはあるの?」

 

「おお、小瓶にも入らん程度じゃなが。持って帰るといい。」

 

「ええ、ありがとう。ついでに差し入れなんて大したものじゃないけれど、飲み物を用意しているわ。」

 

「「「 ほっほう♪ 」」」

 

 透明度の高い大きなグラスに入っているのはドワーフの間でよく飲まれる火酒。しかし、そこにはファルダニアが魔法で作り出し砕いた小粒の氷が入っており、まだ青く酸味の強いミケーネの果汁を入れている。また、上には蜜に漬け色鮮やかな緑色となっている木の実が飾られ、見た目も美しい。

 

 普段はチビチビ肴と共に飲む火酒も、砕いた氷(クラッシュアイス)と青いミケーネが清涼感を与え爽やかなのど越しが堪らず一気に飲み干してしまう。蒸し暑い工房の中となればその旨さは青天井まで昇っていくようだ。

 

 ファルダニアもまた、ドワーフが何を喜ぶか手探りで作った料理――しかも自分は蜜に漬けた果実以外、味見くらいしかできない――に舌鼓を打ってくれたことに安堵する。

 

「おい娘っ子!お代わりはないのか!?」

 

「あまり酔われても困るわよ。」

 

「ガハハ、ドワーフがこれしきで酔うものか。あと100杯はいけるわ!」

 

「全く……。また、今度はよりおいしいものを持ってくるわ。」

 

「ほぅ。そりゃあ楽しみじゃ。」

 

 ドワーフ族の技巧を駆使した火酒、そしてエルフ族の魔法と自然豊かな知識。お互いの種族の代名詞ともいうべき品が融合した料理はまるで互いの心をも交わすかのようで、ファルダニアとドワーフたちの談笑するその空間には歴史的ないがみ合いなどないかのようであった。

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