黄金樹の麓から   作:シショ

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第3節

「んん……ふぁ」

 

 カーテンの隙間から差し込んできた朝日に照らされて、マリアは目を覚ました。部屋に戻った時間が時間だったため寝足りないが、最悪眠らなくとも平気なので気分的な問題だろう。また欠伸を漏らしながらふと横のベッドを見ると、そこにシェラの姿は無かった。

 

(寝過ごした?)

 

 持ち込んだ懐中時計は朝を示しているが、大雑把な表示のせいで正確な時間は分からない。これで困らなかった狭間の地はやはり遅れていたのだなぁと思いながら眠気を堪えていると、部屋の扉が静かに開かれた。

 

「あら、起きていたのですね」

「シェラ」

「もう少ししたら起こしに行こうと思っていましたの」

 

 きっちりと制服を着込んで髪のセットまで終わらせたシェラは、マリアが着替えるのを待ってくれているようだった。するりとワンピースを脱いで下着姿になると何故かシェラの眉がぐっと寄せられて、傍目にも気分を害しているのが伝わってきた。

 何も言ってこない居心地の悪さを感じながら制服を着てリボンを結ぶと、いつの間にか近くにいたシェラが結び目を整えてくれる。

 

「……下着は持っていないんですの?」

「ん? いや、これが「それは下着とは言いません」……えっ?」

 

 呆気にとられたような表情をしたマリアに、シェラは深々と溜め息を吐いた。なにやら葛藤しているようで話しかけるのも躊躇われる雰囲気を纏っていたシェラは、突然がしりとマリアの肩を掴んだ。

 

「今夜、話があります。良いですわね?」

「あっ、はい」

 

 抵抗を許さぬ眼光が、マリアを射抜いた。

 

◆◆◆

 

 他の面子と合流したマリアはまたシェラに教わりながら朝食を食べて、初めての授業が行われる大教室に足を運んだ。そこには五十人ほどの生徒が集められ、教師の到着を期待と不安を抱いて待っていた。

 

「ん、揃っているようだな。では──魔法剣の授業にようこそ」

 

 白いマントを靡かせて入ってきた男性はかなりの使い手のようだった。マリアは自分が緊張していることに気づいて、何度か深呼吸を繰り返した。

 仮にも教師であるのだから、こんなに人目がある中で襲ってくることは無いはずだ。そう思っても、警戒心はなかなか解けてはくれなかった。

 

「私が担当教諭のルーサー・ガーランドだ。ガーランド先生、もしくは師範(マスター)ガーランドと呼んでくれ。ただ私自身が苦手なので、ここでは礼儀作法はそれほど厳しくいかないつもりだ」

 

 ふむ、とマリアは頷いた。礼儀のれの字も知らない自分にとってその方針は渡りに船だった。とはいえわざわざ『ここでは』と付け加えたあたり、礼儀作法が必要になる授業があるのだろうか。そう考えると少し憂鬱な気分になった。

 

「さて、期待していたかもしれないが初日の授業は概論から始める決まりになっている。誰かこの分野の発祥について説明できる者はいるか?」

「出来ます、師範(マスター)ガーランド!」

 

 意外なことに、と言っては彼に失礼かもしれないが、挙手したのはピートだった。彼はガーランドから許可を受けて、咳払いを重ねた後に勢いよく話し始めた。

 思いの外それは長く続いたが、簡単に纏めると恐らくこうだろう。四百年前、杖だけで戦って普通人との決闘に負けたバダウェルの末路から、ある間合いの内では呪文を唱えるよりも斬り殺される方が早いことが分かった。その距離の戦闘に対応するために、魔法族も剣を持つようになった。

 その後に呪文未満の魔法行使がどうとか言っていたが、これらの内容はマリアにとって当たり前の事だった。それよりも剣を持たずに戦っていた魔法使いの姿を見てみたいと思っていた。

 

「これも毎年の慣例だが、授業初日には景気付けを兼ねて経験者同士で立ち合ってもらうことにしている。さあ──我こそはという者はいるか?」

 

 ざわりと場に緊張が走った。マリア自身は出られるものなら出てみたかったが、『経験者同士』という条件に見合わないと思ったため自重した。まさかホーラの地揺らしで部屋を崩壊させるわけにもいかないだろうし。

 

「拙者! 是非にもやらせて欲しいでござる!」

「……へ?」

「……Ms.ヒビヤ。そのやる気は非常に好ましいが、はたして君は経験者なのだろうか?」

 

 マリアがうだうだと心の中で言い訳をしているうちに、なんとナナオが手を挙げた。ぽかんと口を開いたマリアはガーランドの困ったような反応に、自分の判断が間違っていなかったことが分かり複雑な気分になった。

 

「ガーランド先生、僕もぜひ」

 

 そう声を上げたのはオリバーの後ろに立っていた長髪の少年だった。仕草の端々から家柄を感じさせるが、浮かべた微笑には嫌なものが混じっているように見える。警戒を滲ませるマリアを他所に、少年はさらに言葉を続けた。

 

「聞けば彼女は剣一本でトロールを打ち倒したとか。その腕前をここで披露してもらおうかと」

 

 それにしては、ナナオに対する彼の瞳には敬意や興味は欠片も無かった。対人経験が殆どないマリアにはその程度しか読み取れなかったが、オリバーとシェラはまた違ったようだった。一歩進み出たオリバーがナナオとの立ち合いを希望し、シェラは気色ばんだ長髪の少年の相手を務めると言う。

 

「……話は纏まったか? 一戦目はMs.ヒビヤとMr.ホーン、二戦目はMr.アンドリューズとMs.マクファーレンということでいいな。他に希望者は?」

 

 ガーランドは目の前で起こったいざこざには口を出さず、教室を見渡した。他の生徒が手を挙げないのを見ると、すぐに立ち合いの準備を始めた。

 

「全員、部屋の真ん中にスペースを開けろ。Mr.ホーンとMs.ヒビヤは中央に立て」

 

 そしてガーランドが二人の杖剣に不殺の(まじな)いを掛けると、杖剣は白い光を帯びた。その光はすぐに消えたが、それはどうやら怪我を防ぐためのものらしい。現にナナオが刃に手を押し付けているが、傷はついていない。

 

「前置きはここまでだ。両者構えて──始め!」

 

◆◆◆

 

 立ち合いはマリアにとって全く不本意な形で終わってしまった。数合の打ち合いの後、二人の間で何か特別なことがおこったのだろう。不殺の(まじな)いは解かれ、それを理由にガーランドが二人を止めた。

 あの時ナナオは涙を零して、オリバーはそれに応えようとした。ナナオの剣は見事なものだったし、オリバーの受け方もおおよそ完璧だった。しかし、そこには特別なものはなかったはずだ。少なくともマリアにはそう感じられた。

 

(それなら、どうして)

 

 ぐるりぐるりと思考が巡る。

 結局マリアは授業が終わるまで、その問いに囚われていた。

 

◆◆◆

 

「私は呪文学を担当するフランシス=ギルクリストです。──毎年のことですが、あなたたちの有様には心底失望させられます」

 

 ニ限目の授業は呪文学。教室へ入ってきた老魔女は、開口一番にそう言い放った。驚きに固まる生徒たちに、彼女はさらに言葉を続ける。

 

「不格好な鉄のかたまりをぶら下げて、よくも魔法使いなどと名乗れたものです。我らが執るべきは杖だけでしょうに」

 

 ははぁとマリアは頷いた。確かに剣を帯びた段階で、それは魔法使いではなく魔法剣士である。主は魔法などと嘯くならば杖しか持たないのは道理だろう。もっとも周りに潜むモノたちを見るに、彼女には杖すら必要なさそうではあるが。

 カティはその発言に納得出来なかったのか、手を挙げて挑戦的な質問をぶつけた。

 

「『不格好な鉄のかたまり』なんておっしゃいますけど、キンバリーの先生方や生徒の殆どは杖剣を身に着けています。先生はその全員を批判されるつもりなんですか?」

 

 トロールの時と言い彼女にはひやひやさせられる。よくもまあ格上の相手に、言葉でとはいえ喧嘩を吹っ掛けられるものだ。マリアの経験上ああいう人間は長生き出来ないので、後で注意しておこうと思った。

 

「愚問ですね」

 

 しかしそれはそれとして、カティの質問には頷ける部分があった。それにどう対応するかと待っていると、予想外の答えが返ってきた。

 

「他の先生方にはそれぞれ敬意を払っています。しかし──この学校の誰もが、魔法使いとして私よりも長く生きていないのです」

 

 これには流石に度肝を抜かれた。まさか四百年前から生きているのではあるまいな。そう考えたマリアは、ガイとシェラの会話でその確証が得られると思わず頬を引き攣らせた。

 四百年もの間正気を失わずに生きるというのは、果たしてどのような気分なのだろうか。狭間の地に居たのはどこかおかしなヤツばっかりだったから、いまいちよくわからない。

 

「魔法使いなら魔法でなんとかする。私の主張はこれだけです。出来ないとお思いならば、それはあなた達の未熟さ故です。ひとつ手本をご覧なさい」

 

 その言葉と同時に、ギルクリストの周囲の空間から滲み出すようにして何体かの人形が姿を現した。全身に球体関節を備えたそれらは、一糸乱れぬ統率の元で陣形を形作る。

 

「前衛は自立人形(オートマトン)や使役魔獣に任せれば事足ります。技術を収めてこれらを侍らせれば、剣を取るなどという発想は自然と消えていくでしょう」

 

◆◆◆

 

 午前の授業が終わった昼休み。

 マリアたちはガイの提案で昼食は外で食べることにし、それぞれ食堂で包んでもらった食べ物を手に、ベンチに並んで腰掛けた。

 

「……いやぁ、濃い。予想以上に濃い。呪文学なんて概論だけなのに腹いっぱいだぜ。前の授業で教わったことは要らないから捨てちまえなんて、そんなのありかよ」

 

 オープンサンドに齧り付きながらガイがしみじみと言葉を溢すと、ピートも同調するように声を上げた。

 

「あの人の意見には頷ける部分も多い。……ただ、ボクはあれが全面的に正しいとは思わない」

 

 サンドイッチに舌鼓を打っていたマリアはその言葉に首を傾げた。あれこそが魔法使いの完成形のひとつだと考えていたが故に、ピートの意見が気になった。

 

「どうひて、そうおもう?」

「飲み込んでから喋りなさい。……まったくもう」

 

 いきなり話しかけたせいで酷く驚かれたが、シェラからの注意を受けてマリアは大人しく食事に戻った。それを見ていたピートは数瞬迷った後に、ゆっくりと口を開いた。

 

「確かにあの自立人形(オートマトン)はとんでもなく高性能だった。でもあんなのを複数常駐させる負担は、それこそ尋常じゃないはずだ」

 

 んむ、とサンドイッチを飲み込みながらマリアは己の知識と照らし合わせて、勘違いに気がついた。マリアの持つ霊体や傀儡たちは一度呼び出してしまえばあとは放置して構わない。最悪召喚時の魔力(FP)さえ賄えれば、こっちがガス欠になっても維持できる。

 しかし、どうやらこちらの傀儡?は出している間常時魔力(FP)を消費し続けるようだ。

 

(それは困る……どうしよう)

 

 いつかはギルクリストのように傀儡を沢山使ってみたい。そう思っていたのだが、魔力(FP)量の少ないマリアには無謀な挑戦のようだった。

 気落ちして話も聞かずにもそもそとサンドイッチの残りをかじっていたマリアは、ナナオの食が進んでいないことに気がついた。

 

「ナナオ?」

「…………む、マリア殿」

「何かあった?」

「いや、大丈夫でござる。少しぼうっとしていただけで」

 

 少しと言うには大き過ぎる変化だった。思えばナナオは剣術の授業が終わってから、様子がおかしかった。

 

「そう? でも、無理はしないほうが良い」

「……忝い」

 

 結局、ナナオの食欲は戻らなかったようだった。それでも本人が大丈夫と言うのであればマリアに出来ることはないと、その場は干渉せずにいた。

 

◆◆◆

 

「新入生ども、魔法生物の授業にようこそ。担当のバネッサ=オールディスだ。覚えとけ」

 

 ラフな格好の女性教諭は、いくつかのグループに分かれた生徒たちを順繰りに見て再び口を開いた。

 

「あー、この中の動物好き、或いは亜人種の人権問題に熱心なやつら。そんな常識はドブに捨てろ。これは善意の忠告だ」

 

 視界の端でカティが体を固くするのが見えた。他の生徒でも何人かが、表情を強張らせている。

 

「この授業では『資源としての』魔法生物を扱う。ここには人間と人権を認められた亜人種以外の全生物が含まれると思って間違いない。ちなみに昔はケンタウロスもこの範疇で、かくいうアタシも肝刺しが好物だった。今は食えなくなっちまったがな」

 

 その発言に耐えかねたのか、カティが抗議の意思をあらわに手を挙げる。バネッサはそれを一瞥しただけで、気にすることなく話を続けた。

 

「つーわけで、初日だがお前らに課題を出す」

 

 バネッサが杖を一振りすると、それぞれの作業台の上に置いてあった木箱の蓋が取り払われた。それを覗き込むと、真っ白な体毛を生やした生き物が群れを成しているのが目に入った。

 バネッサから魔法蚕と呼ばれたそれは子猫ほどの大きさだったが、丸っこいフォルムやつぶらな瞳のせいか忌避感は抱かなかった。

 

「今回はそいつらに魔力を注いで、繭を作らせる作業をやってもらう。ただし最後の一注ぎが肝心でな。見てろ」

 

 近くの箱から一匹の蚕を掴み取ったバネッサが魔力を注ぎ出すと、それは激しく痙攣しながら真っ黒な糸を吐き出し始めた。黒い繭に包まれた蚕は、数秒後に繭を突き破って外に飛び出した。

 ブンブンと耳障りな羽音を響かせて飛び回るそれを撃ち落とさんと、マリアは杖剣を抜きかけて、

 

「はいはい、火炎盛りて(フランマ)

 

 空中で半ば炭と化して床に落ちたそれを靴底で踏みつけて、バネッサは再び口を開いた。

 

「こんな感じで、魔力を注ぎ過ぎると凶暴なバケモノになっちまう。これは仕方ない部分もあって熟練の養蚕家でも三十匹に一匹はミスる」

 

 一匹分の絹が採れなくなって、残念。バネッサの顔に浮かんだのはそれだけだった。しかし、その表情が魔法生物を『資源として』扱うということを雄弁に物語っていた。

 

「今日のノルマは一人十匹、五匹以上成功したら及第点だ。失敗したら後始末は自分でやれよ。んじゃ、始めー」

 

 その一声と共に、教室に阿鼻叫喚の光景が広がった。マリアも早速試そうとすると、横からシェラに声を掛けられる。

 

「マリア、あなたも初めはゆっくりやりなさい。魔力を注ぐ感覚はわかりますか?」

「たぶん。こう?」

 

 聖印を使うように杖剣の先を当てると、蚕が糸を吐き始めた。シェラはマリアが杖剣を使っていることに疑問を覚えたようだったが、蚕の様子には満足したようでナナオに声を掛けに行った。

 

「全部できるかな」

 

 これまでにない経験になんとなく楽しさを感じながら、マリアは黙々と作業を進めていった。

 

◆◆◆

 

「うぬ……」

 

 マリアの目の前には炭の塊が四つ並んでいた。初めの一つは良かったものの、いまいちコツを掴みきれずにやりすぎてしまった。それで結構な時間を使っていたようで、あと残っているのはカティだけになっていた。

 

「おいおい、まだやってんのかよ。たかが魔力を注ぐだけだぞ」

「今やります! 黙っていてください!」

 

 カティの前にいるのは一匹だけで、残りは全て白い繭で覆われていた。五匹で及第点と言っていたから、成果としては十分過ぎるものだろう。しかし失敗したら殺してしまうということに抵抗感があるのか、最後の一注ぎに踏み切れずにいるようだ。

 

(あれは失敗するな)

 

 焦っているときに何かを成功させようとしても、大抵うまく行かない。マリアにはそれが身に沁みて分かっていたため、カティの失敗をフォローしようと作業台を回り込んで近づいていく。

 

「大丈夫、やれる……! 絶対助けられる…………!」

 

 杖を振り下ろした瞬間に、杖先が僅かに震えた。そして蚕は黒い糸を吐き始め、カティの表情が絶望に染まっていく。繭を燃やすこともせずに立ち尽くす彼女に、オリバーが必死に声をかけた。

 

「カティ! 早く燃やせ、出てくるぞ!」

「あ、あぁっ……だめ、まだ、繭を剥がせばっ」

 

 杖を放り捨てて繭に掴みかかったカティの姿を見て、マリアの頭にちょっとした考えが浮かんだ。すぐさまそれを実行しようとしたマリアは繭の上に滑り込ませるようにして手を差し入れ──繭を食い破って出てきた翅虫に指を食い付かせた。

 

「え…………マリア?」

「マリア! なんてことをしているのですっ!」

「あん? 庇ったのか? まだこんな馬鹿が出てくるんだな」

 

 駆け寄ってくるシェラを尻目に、カティの手から虫を奪い取る。片手で掴み上げたそれに命奪拳を行使しながら懐の聖印と大ルーンを意識し、生まれなおし(・・・・・・)を行う。

 生まれ直しとは、雫の幼生を使うことで己の能力を再構成する業。ただし完全な生まれ直しには大ルーンが必要であり、それが無ければ短命になったり、体が脆弱になったりする。そもそもマリアが自分で生まれ直しを行った経験は無い。

 

「な、マリア……それは」

 

 結果が未知数な実験をやろうとしたのは完全に思いつきだったが、今のところそれは成功しているようだった。体色が黒から灰色に変わっていき、半分ほど齧っていたマリアの指から口を離してきょろきょろと周りを見ている。

 暫くマリアは変化を眺めていたが、姿が変わらなくなった辺りで作業台の上にそれを置いた。銀色の体毛に包まれた虫が一対の翅を広げて寛いでいる。貴重な雫の幼生を使ってしまったが、これなら十分な成果と言えるだろう。

 

「カティ」

「……えっ、マリア、指」

「返す」

「…………うぇえっ?!」

 

 見たかったのは変化までだからとカティに差し出すと、マリアと指と虫を目が行き来して、震える手で受け取られた。飼う気は無く、受け取って貰わなければどうしようかと思っていたので助かった。ぶっちゃけ三日も保たずに死なせる自信がある。

 

「マリア、医務室に行きますわよ。今すぐです!」

「いや、これくらいなら」

「駄目です。さあ、早く」

「待て」

 

 血が床に垂れないようにしていたのをシェラに見咎められてどこかに連れて行かれそうになったのを、バネッサが呼び止めた。

 

「お前、名前は?」

「マリア」

「そうかよ。覚えとくぜ」

 

 ニイと浮かんだ獰猛な笑みはすぐに消え、バネッサは犬でも追い払うように手を振った。シェラに怪我がない方の手を掴まれながら、マリアは教室を後にした。





【生まれなおし】

褪せ人、マリアの■■

生命に銀の雫を混ぜ合わせ、新たな姿に変容させる

秘術は時に奪われる
そしてまた、継がれていく

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