【本編完結】デビアス・ピースキーパー 〜異星文明製ガイノイドとして蘇生されましたが魔法少女に追い掛け回される日々を送っています〜   作:縁樹

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異界接触 1

 

 

 

 結果として私達の思惑通り、スーことステラちゃんはプリミシア局長の期待に見事に応え、八面六臂の大活躍を魅せてくれたらしい。

 

 

 確かにあの子は発声機能のオミットに伴い、対人コミュニケーション能力が高いとは言えない。

 その一方、処理業務のほぼ全てがコンピューター管理に置き換わったこの国において、こと業務処理速度は凄まじいものと言えるだろう。

 

 私やディンのものより有効レンジこそ削減されたものの、入出力端子としての機能は据え置きの『金属の触手』をこっそりと駆使し、直接制御下に置いたコンピューターを介して業務処理サーバーに侵入。

 地球文明の数世紀は先をゆく圧倒的な処理速度を遺憾無く発揮し、複数ファイルへ同時にアクセスしては求められる処理をこなしていく。

 

 

 とはいえ勿論、そんな様子を一般職員に公開してしまっては、私達が人外の存在であると容易に知れてしまうことだろう。

 スーの業務処理能力の一端を垣間見たプリミシア局長は『逃してなるものか』と自らの職権を行使し、執務室に囲い込むことに成功したらしい。

 

 一般人の目さえ届かぬ場であれば、人間離れした能力を伏せておく必要も無い。

 先述の働きを目の当たりにして感涙に咽び泣くプリミシア局長であったが……どうやら『ステラちゃんを独り占めするとはけしからん』と一般職員から突き上げられている模様。

 ……いや、知らんよ。他所様の職場の福利厚生など、私達にはどうすることも出来ない。上手くやってくれとしか言いようがない。

 

 

 

 

 ……まぁ、そんな感じで。

 当初の予定から若干遠回りもしているが、スーのほうはしばらく任せても大丈夫そうだ。

 プリミシア局長に時間を捻出させつつ、そう遠くないうちに要となる『魔法』を手に入れてくれることだろう。

 

 

 

 そんなわけで、本日私とディンとニニちゃん(および分割管制思考のスー)はというと、千葉県は南房総のとある片田舎へとお邪魔している。

 

 目的地とはほかでもない、我々の協力者『シシナさん』のお家、その裏庭である。

 豊かな自然にあふれる人けの少ないこの場所こそ、私達の交信計画において重要な役割を占める橋頭堡、その建設現場なのだ。

 

 

 

「…………どうだ? ディン」

 

「んゥー! 遺構全長はおよそ24メートル、底部に有機堆積物を確認、しかし現在当該遺構内に液体は確認されません」

 

「涸れ井戸、か。……都合が良いな、これなら怪しまれずに済みそうだ」

 

「え、と…………はいっ! みんな、元気いっぱい……ですっ!」

 

 

 

 少々以上に特殊な過去を経て我々の協力者となった、地球外生命体との融合実験の被験体少女、シシナ。

 彼女が日本国の法律に沿って手続きを行い、合法的に権利者となった一軒家の裏庭。かつての営みを取り戻しつつある畑の傍らの古井戸こそ、今まさに極秘作戦が進められている最前線なのだ。

 

 

 珪素生命体【イー・ライ】とは、金属的性質を多分に含む地球外生命体である。

 その質感や剛性・靭性等に加えて、彼らの明確な弱点としても判明しているように『高い導電性』を備える彼らの存在は、本作戦を成功させるための重要なファクターである。

 

 親株であるシシナの号令に従い、地底に向けて真っ直ぐ根を伸ばす【イー・ライ】は、周囲の地面から鉱石成分を摂取しつつモリモリと身体拡張に勤しんでいく。

 その目指す先とは、人類未踏の地底領域に他ならない。超好熱性生命体が棲まうマントル帯とまでは行かずとも、地殻層の半分以上にまで根を届かせることを目標としている。

 

 

 指揮者の意のままに行動し、自在にその形状と性質を変異させ、地表環境からかけ離れた環境でも問題なく稼働出来……そして金属的性質、導電性を備える。

 私達はそんな彼ら(イー・ライ)の力を借り、伸びに伸びた彼らの身体を『環境値計測および交信用のアンテナ』とする計画を立案、その初期段階を現在遂行中なのだ。

 

 

 

「…………彼らは、元気か? 何か問題は?」

 

「……え、と…………湿度、水け、を……感じてるみたい、です。……それ以外、は……特には」

 

「まぁ、日本だしな。そこかしこに帯水層は通ってるだろうし……水は、苦手か? 彼らは」

 

「いえっ、大丈夫……です。……鉱物とは違って、吸収できない、から……水中は、嫌いみたい、です、けど……湿気は、べつに、なんともない……って」

 

「そっか、助かる。……例のブツ、持ってきてあるから。作業の合間にでも、喰わせてやってくれ」

 

「…………はいっ!」

 

 

 

 親株たるシシナから離れた子株は、現在進行系で古井戸の底にて掘削任務の真っ最中である。

 指揮者から『無闇に掘削範囲を拡げないように』と厳命されているとはいえ、こうして珪素生命体としての能力を存分に振るえるというのは、彼らにとって久し振りのことであるらしい。

 

 また……地球上の生命にとって過酷ともいえる環境で働く彼らにとって、私達の蓄える『クソマズ金属豆腐』は大層なご馳走とのことであり。

 趣味と実益を兼ね、ついでに『おやつ』まで支給されるこの掘削任務に対し、彼ら【イー・ライ】のモチベーションは思った以上に高いのだとか。

 

 

 地球外生命体に地球の大地を侵食させることに対し、思うことは無くはないのだが……親株(シシナ)には忠実に動いてくれているので、恐らく問題はないだろう。

 ……それに、いざとなったら【イー・ライ】全体への強制信号『ワーニングコード』を行使するまでだ。非常に荒っぽく平和的とは言い難い邂逅ではあったが、一度刷り込まれた上下関係はそうそう覆るものではない。

 

 

 

「順調そうなら、べつに良い。スーが例の『魔法』をモノにするまで、もう(しばら)くは掛かるだろう。……デカい目標はあるにはあるが、すぐ眼前に危機が迫ってるわけでも無いんだ。気楽にやってくれ」

 

「はいっ。…………そう、伝えて……おき、ますっ」

 

「ああ。……じゃあ、私はこれで」

 

「かあさま、かあさま! ワタシは『おひるね』提案します! ニニちゃんのスーといっしょ! ほかほかのおひるねを提案します!」

 

「ふふふっ。……わたし、は、畑に居ますので……おうち、どうぞ」

 

「………………感謝する」

 

 

 家庭菜園に精を出すシシナと、古井戸の底で掘削を続ける【イー・ライ】諸兄に感謝を告げ、私達は勝手知ったるシシナさん家へとお邪魔する。

 転送先として度々世話になっている一階客間と、よくお茶をご馳走になる居間、そしてお昼寝に利用させて貰う縁側なんかは、もうだいぶ慣れたものだ。

 

 ……さすがに彼女のプライベートスペースを侵すことは無いが、それでもかなり負担をかけているのは間違いない。

 クソマズ金属豆腐以外に、ちゃんと彼女へのお礼の気持ちも用意しておくべきだろうと、私は個人的なタスクリストへと追記を行う。

 

 

 

「かあさま、はやく、はやくっ!」

 

「はいはいわかったわかった。……まったく、そんなにお昼寝が気に入ったのかね」

 

「あいっ! かあさま、おひるねのお顔、かわいい判断します! んへへ!」

 

「………………………………そうかぁー」

 

 

 

 少なくとも、今の私には……この子の笑顔を崩すことなど、できやしない。

 お気に入りの家族(ニニちゃん)を抱っこして横になる、ウチの可愛い娘に急かされる形で、私はとりあえずこの平穏を享受することに全力を注ぐのだった。

 

 

 

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