【本編完結】デビアス・ピースキーパー 〜異星文明製ガイノイドとして蘇生されましたが魔法少女に追い掛け回される日々を送っています〜   作:縁樹

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12 調達任務

 

 

 僚機である【D型】の完成が間近であるとはいえ、完成したところで直ぐさま実戦投入できるわけでも無い。

 スーも言っていたように、あの子はまだ管制思考が未成熟である。今の状態では探査や戦闘はおろか、そもそも覚醒(起動)さえも(まま)ならない。

 

 他ならぬ模倣元である私が、覚醒(起動)するまでに半世紀近い時間を必要としたのだ。

 さすがにそこまでの年月は要さないだろうが……多少ノウハウを活かせたとて、所要時間をゼロにすることは不可能だろう。

 このままでは下手したら……覚醒まで数年単位の年月を必要とします、なんて言われるかもしれない。

 

 

 ただまぁ、そこのところは多少なり考えがある。要するに『人格を構成するための様々な判断材料』を多く入力してやり、思考ルーチンのシミュレーション効率を上げてやれば良いわけだ。

 よって、こちらの問題はそこまで深刻では無い。仮に私が何もせずとも、最終的には時間が解決してくれる。

 

 

 

 その一方で、私が動かなければ絶対に解決しない、絶対的に深刻な問題となっているのは……その、つまり、えっと……()()である。

 

 

 

 

『証言。艦長ニグが執着する『ヌノ』と呼称される繊維加工素材は、当艦ファクトリー内製造設備における製造は不可能であると判断されます。よって代替案として、疑似皮肌組織を延展成形した単層軟滑皮膜を提案致します』

 

「嫌だよアレ何かツルッてしてるしヌメッてしてるしヒヤッてすんだもん。百歩譲って服代わりにするのはまだ我慢できるけど、さすがに肌着は無理だってアレ。いくら伸縮性あって丈夫っつっても吸水性無ぇだろアレ」

 

『提起。服飾分類『ハダギ』における吸水性能の必要性について。また前提として服飾分類『ハダギ』実装の必要性について、艦長ニグへ説明を要求致します』

 

「必要性、ってそりゃ……汗、とか…………あと、おしっ、……にょ、…………排泄、その……体液、とか……?」

 

『確認。地表探査機【MODEL-Οδ-ARS】および派生機種【-D】型において、『ハダギ』着用該当部位における恒常的な液体類排出は考慮されておりません。一方で非常時対応、特に股関節部『ハダギ』着用該当部位においては、機体過熱等緊急時の冷却液イジェクトの際の妨げとなる可能性が高いものと提起致します』

 

「オイ待て私は知らんぞ何だその機能! 過熱時に冷却液が漏れるって初耳なんだが!? ってか別にそのタイミングだけズラしゃ良いんだよ即ジョバる訳でも無ェだろうが!」

 

『追記。派生機種【-D】型においては、増設を行った胸部高感度複合多目的レーダーおよび保護用軟性緩衝材付近の『ハダギ』着用該当部位において、同様に過熱等緊急時の冷却液が』

 

「だァから『漏らす』ときだけチョイとズラしゃ良いんだって!!」

 

『記録。異常発熱時等緊急時には服飾分類『ハダギ』を排除し、排熱ならびに冷却液イジェクトを行うものであると再定義致します。服飾分類『ハダギ』実装目的として、冷却液イジェクト初期段階での機体外廃液拡散防止のためであると判断。液体保持能力に乏しい単層軟滑皮膜はその用途を満たすものでは無く、また当艦ファクトリー内における製造設備において、提示された性能を充たす資材の生産は不可能であるとの結論を報告致します』

 

「知ってたわァー……!」

 

 

 この(フネ)の設備は、そこそこ有用なものが揃っているのだが……大前提として異星文明の価値観によるものが大部分を占めている。

 異星人どもはヒト種の子どもに比べやや小型であり、二本の足と二本の腕にそれぞれ四本ずつの指を持ち、頭部はヒト種の大人よりもやや大きい等と若干の差異はあるものの、現在の私でも概ね不自由せず活用できる程度の利便性は備わっている。

 

 だがしかし、異星文明においては『機織(はたおり)』という概念が存在しなかった(もしくは淘汰された)ようで、身体を保護したり物品を包んだりといった用途に用いられるのは、だいたい単層軟滑皮膜――シリコンシートのような柔軟性を備えた、なんかツルッてしてヌメッてしてヒヤッてする金属色のシート――の加工品で賄われていた。

 材料を繊維状に加工したものを縒り合わせて太い繊維を形成し、その繊維をズラっと無数に縦配置し、それらを手前と奥とへ交互に寄せるとともに横糸を通し、また縦糸の位置を入れ替え横糸を通し……等といった複雑な機構を用いずとも、材料を延展して『ベローン』って一発成型したほうが圧倒的に効率が良いのだろう。

 

 だが、まぁ……そのメタリックシリコンシートでは、当然保温性や吸水性は望むべくもないわけで。

 機能性に関しては、遺憾ながらスーの証言に反駁の余地が無いわけで……つまりこれは私の『こだわり』でしか無いのだが。

 

 

 

「まぁ……何だかんだで耐久性は規格外だし、外側はアレで仕方無いにしても……肌着くらいはさぁ、ヒト製品をさぁ……」

 

『提案。惑星地球において生産されている当該物品、服飾分類『ハダギ』を接収し』

 

「接収はさすがに言い過ぎだが、まァその方向で考えたいんだよな……」

 

 

 

 

 


 

 

 作戦の概要を説明しよう。

 

 雇主(やといぬし)はいつもの私。目標は、地球文明日本国の服飾小物、通称『肌着』……或いは『下着』の入手だ。

 肌着や下着は、清潔で美しく健やかな生活を送るための、ヒトとしての矜持そのものだ。

 しかしながら今回必要としているものは、女性用……しかも恐らくだが、幼い女性用の下着だ。

 こんな機体(カラダ)と成り果ててはいるが、未だ男性としての自意識を残した私にとって、下着売り場なんざ未知の領域だ。

 魔物(マモノ)さえ容易く消し飛ばす私であっても、まったく歯が立たない。かといって頼みの綱の母艦ファクトリーは無能。それ故に、これまで私の頭痛の種だったわけだ。

 

 それを調達しろと言うからには、勿論理由がある。

 機動性能に優れ、また胸部や股間部を衆目に晒さぬことを意識しながら戦闘行動を行える私であれば問題は無いのだが……懸念となるのは、僚機たるD型の存在だ。

 私以上の厄介な(ワンダフル)機体(ボディ)を持ちながら、その行動を統括する管制思考は未熟そのもの。

 異星文明由来の管制思考ルーチンには不安しか感じられない上、加えて機体そのものの機動性能はさほど高くないという。

 つまるところ……見せないような立ち居振る舞いが、恐らくは非常に困難であろう。

 

 作戦(描写)には細心の注意を払い、万全を期す必要がある。

 (あらかじ)弱点(危険な)部位を保護しておくことで、万全の防御(健全)態勢(体制)を構築。

 今後の作戦(執筆)行動(活動)を継続し易くなるとともに、不幸な事故(警告指導DM)を先んじて回避できるというわけだ。

 

 ただ……本作戦の遂行における最大の障害として、惑星地球日本国における物品取引制度への介入が困難である、という点が挙げられる。

 勿論、実力行使で簒奪することは不可能では無い。が、良くも悪くも顔が知れてしまった私にとって、それは悪手以外の何物にもなり得ないだろう。

 つまりは、何らかの合法的な手段でもって、日本国の貨幣制度へ参入。最終的な目標物である『下着』の入手へと辿り着く必要がある。

 

 正直、前途は多難だ。……最悪、悪目立ちするだけで終わる可能性もある。

 だがそれでも、見返りは莫大だ。

 

 悪い話では無いと思うぜ。

 ……連絡を待っている。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

『疑問。艦長二グ思考ルーチン内における口調の変遷について、説明と解説を要求致します』

 

「気にしないで頂きたい。そちらにとっても、悪い話では無いと思いますが?」

 

 

 

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