【本編完結】デビアス・ピースキーパー 〜異星文明製ガイノイドとして蘇生されましたが魔法少女に追い掛け回される日々を送っています〜   作:縁樹

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33 服飾資料

 

 

 今回私がこうして、書店へと足を運んだ理由。それを端的に纏めるのならば、ずばり服飾デザイン関連の書籍を漁るためだ。

 こと『調べ物』という意味で考えるのなら、地表で例の有線接続タダ乗り回線で良い(※良くはない)のだが……どちらかというと今回は『資料を調達』して『持ち帰る』ことが主目的となる。

 

 

 高度な通信能力を備えた揚星艇(キャンプ)とて、現代日本の通信規格には適応出来ていない。異星人規格の通信設備しか備わっていないため、そのままでは地球圏内のネットワークに無線接続することなど出来ないのだ。

 あるいは『前世の私』が、そのような通信ネットワーク関連の技能を修めていれば、まだ何かしらの解決策が浮かんだかもしれない。

 しかし現状はなんの打開策も浮かばず、完全にお手上げといったところだ。各地の通信基地や人工衛星と電波を送受信して云々、ということは何となく理解できるが……どんな電波強度、どんな周波数で、どういった内容のデータを送り込めば良いのか、皆目見当がつかない。つまり無理だ。

 

 

 よって現状、揚星艇(キャンプ)通信設備ではインターネットを用いた情報収集を行うことは不可能。知識人の知り合いにも心当たりは無いし、居たとしてもまさか揚星艇(キャンプ)へ連れ帰るわけにはいかない。……となれば、こうして書籍を頼った情報収集を行うほかない。

 どこかしらの図書館を当たろうかとも考えたが、どのみち戸籍が無いのだから貸出手続きも出来やしないだろう。

 また作業にあたり、実際に資料を参照しながら臨みたいので、やはりここは所有権を所持しておきたい。また主な活用場所が成層圏の揚星艇(キャンプ)であることを考えると……やはり購入してしまったほうが手っ取り早い。そう結論を下した。

 

 

 そんな理由からエモトさんに助力を仰ぎ、教えて頂いたのがこちらの書店。

 入店の際に()()()()()()騒動を巻き起こしてしまい、多分にいたたまれない気持ちを抱いたまま探しものをしていたのだが……そんな折。

 店員女性に声を掛けられ、そこで私の捜し物を伝えてみたところ……なんと、わざわざ売り場まで案内してくれたのだ。

 

 お騒がせ客に対して、この丁寧な対応。なんてよくできた店員、寛大な店舗なのだ。

 私に知り合いが多ければ積極的に紹介して回ったのだが……評判の向上に貢献できないのが心苦しい。せめて、ほんの若干ではあるが、売上に貢献していこう。

 

 

 

(んー…………どんなのが似合うんだろうな、この子には)

 

『提案。想定機装造成に関連する設備の不足に由来、可能な限り構造を簡略化させた機装の導入を推奨致します』

 

(ンな事ぁ本人が一番理解(わか)ってるわ。作るのは私だぞ。本音を言うと私だって面倒なデザインは御免被りたいが……かといって野暮(ヤボ)ったいデザインになるのも、それはあの子が可哀想だろう)

 

『同意。分類魔法少女適用時の【イノセント・アルファ】外観仕様は、他『魔法少女』外観仕様と比較し単調な構造であると判断致します』

 

(ダサいって言ってくれても良いんだぞ。理解(わか)ってることだ)

 

『証言。精緻かつ華美である他『魔法少女』と比較し、非常に『ダサい』と判断致します』

 

(…………………………)

 

 

 

 ………………

 

 ……………………さて。

 

 現在私が目を通しているのは、主に西洋方面の服飾史に関する書籍だ。構造を図解入りで示してくれているので、非常に助かる。

 どうやって作られているのか、どんな形状の布地をどのように縫い上げているのか。私が知りたい内容がズバリ書き記されており、まさに『求めていたもの』だと言える。

 

 ここへ至るまでにも何冊かに目を通し、なかなか良い成果が得られそうだと感じてはいたのだが……そんな中でも()()は素晴らしい。

 衣装を構成するパーツの形状と、その組み合わせ方。構造さえ理解してしまえば――勿論、素材は例のアレ(異星人用医療スキン)にならざるを得ないが――恐らく、再現することが可能。

 

 懸念であった肌触りに関しても、今となっては下着を上下とも調達できたことで、完全に払拭されたと見て良さそうだ。

 ピタッとヌメッとヒヤッとしたあの絶望的な肌触りを、軽減あるいは防げるだなんて……下着とはなんて素晴らしいものなのだろう。

 

 

 

(コレか、コッチか……コレなんかも似合(にあ)、っ…………参考に出来そうだな。……どう思う?)

 

『提起。分類『ブレー』に類する双筒分岐型機装は――』

 

(衣装な。もはや機装じゃない)

 

『了解。該当物品分類を再定義致します。提起。当該衣装は製造にあたり高度な技術を要するものと判断致します』

 

(だよなぁ。……となるとやっぱスカート系? でもはしたない格好はさせたくないし……ロングスカート系となると…………このへんか。うわ似合いそう)

 

『同意。個体『ディン』との外観的親和性は高く、要求性能を総合的に満たすものであると判断致します』

 

 

 ぱらぱらとページをめくりながら吟味を繰り返し、調達すべき書籍を見繕っている私の隣。

 色とりどりの背表紙や賑やかな表紙がずらりと並ぶ書架を眺め、ニコニコとお行儀よくしている娘を、ちらりと見やる。

 

 

 私とは異なり……彼女は戦闘行動時においても、そこまで高速で機体(身体)を駆動させることはしない。

 遠距離では【プロスペクター】による狙撃、中近距離では浮遊する【クレメンタイン】からの刺突や鞭撃で自衛する構想である。

 

 ……つまり、四肢の可動の妨げとなる布地があったところで、大した問題にはならないだろう。

 むしろ清楚で静粛なロングスカートドレスタイプの装束は……一部私よりも『大き』な魅力を湛えるこの子に、とてもよく似合うと思う。いや間違いない。

 

 

 それにしても……この子は、本当に良い子だな。

 やはり見た目や言動は幼く見えても、その内面はきちんと一人前の自意識を確立できているのだろう。

 

 店内ではしゃぎ回る幼子をおとなしく見つめ、ときに手を振りほほえみ返しながら……しかしそれでも私の傍を離れず、我慢強く『じっ』と待っているのだ。

 

 

 

「…………ディン、退屈してないか? 時間掛かってごめんな」

 

「ぅ、………………、……………」

 

「あぁごめん、喋って良いぞ。小さい声でな」

 

「……ぅー。だいじょぶ、ワタシ、見た目にぎやか、視覚的刺激は楽しい。所感を共有します」

 

「えらいなぁー、いい子だ。……何か欲しい本あるか? 買ってこうか?」

 

「…………ぅ? ワタシ、取得要求物品……自由指定の許可?」

 

「ああ。私はもう少し()()に居るから。お店の中なら、私から離れてても良いから……ディンが興味あるもの、探してくると良い。ケガしな……させないようにな」

 

「んゥ! 単独行動、いってきます!」

 

「…………静かに、な?」

 

「…………んぅ」

 

 

(スー、悪い。頼めるか?)

 

『了解。管制思考末端を当該機『ディン』へ分岐。作戦行動(オペレーション)『みまもりサーチ』を開始致します』

 

(助かる)

 

 

 

 私の方では、購入予定物品の精査も既に終えている。私の服飾センス向上に向けて、期待を込めた一冊だ。

 

 あとはこの場で時間を潰しながら、ディンが()()()()を選び終えるのを待ち、纏めて会計を済ませて任務完了というわけである。

 

 退店時の防犯ゲートに関しては……先刻お騒がせしてしまったこともあり、会計後に店員が付き添ってくれることとなった。

 最初から最後まで手を煩わせてしまい、申し訳ない。

 

 

 

 このお礼は……全部纏めてで、重ねて申し訳なくはあるのだが。

 

 この街、この国の平和を担保することで、勝手ながら返済とさせて頂こう。

 

 

 

 

 

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