【本編完結】デビアス・ピースキーパー 〜異星文明製ガイノイドとして蘇生されましたが魔法少女に追い掛け回される日々を送っています〜   作:縁樹

43 / 118
39 状況変動

 

 

 

()()がありゃァ()り易ィだろ? 周りにゃ呆れる程に『(素材)』が在ンだ。たとえ何度砕けようと、足場は私が作りまくるからよ!」

 

 

 黄道十二門が一柱、『宝瓶宮(アクエリアス)』を冠する魔法少女。流水と氷結を司る権能を持ち、氷蒼の煌めきを放つ【アクアリス・グレイシャー】。

 私と直接の面識は無いながらも『洋上での作戦』ということで白羽の矢が立ち、またほかならぬ彼女自身も参加を望んだとのこと。

 主な役割は足場の構築と、敵『魔物(マモノ)』の足止め。権能に反して熱っぽい言動の、しかし見てくれは未だ中等部程であろう魔法少女だ。

 

 

 

「わ、わたっ、私は……あの、私含めて6名分の浮遊魔法なので……ちょっと、戦う余力が……」

 

 

 転移魔法をはじめ補助的な技能を持つ『神鯨(ケートス)』の魔法少女、私も幾度か言葉を交わしたことがある【ケートス・ヘリオトロープ】。

 彼女の持つ『他者に浮遊能力を付与する』星装によって、主戦力たる面々の行動補助を行う。

 ……しかし高度な魔力制御を要するため、今回は()()のみに専念すると謝罪を述べた、年長に類する(とはいえ高等部程度であろう)魔法少女。

 

 

 

「……その代わり、私達で畳み掛けます。……あれから死にものぐるいで訓練しました。もう『弱い』とは言わせません」

 

「あたしも! 先パイとは違って『プロキオン』しかできないけど……でも! ちゃんとがんばって当てるから!」

 

 

 以前見たときよりもその輝きを増した、それぞれ長弓と長杖の星装を持つ魔法少女……【スコルピウス・ランプブラック】ならびに【マイリア・オーキッド】。

 とりわけ遠距離火力に重きを置いた彼女達の星装ならば、堅牢極まりない【ロウズウェル】の装甲だろうと貫ける……などという保証は無かったはずなのだが、それでも危険極まりない派遣任務の招集に応えてくれた……らしい。

 

 

 

「だからね、わたしが空中でも飛び跳ねれるから、『かくらん』の担当で」

 

「……私が、近距離での制圧に当たります。……もう、アルファさん一人にはさせません」

 

 

 後衛二人のような隠し玉こそ無いながらも、その瞳には並々ならぬ決意を感じさせる前衛担当の二人。

 二振りの短刀を振るい、宙さえ蹴飛ばし跳ねる持ち前の機動力で攪乱に臨む【レポリス・ダンデライアン】。

 そして……いつも通り誇りと責任感を感じさせる佇まいながら、どことなく悲壮な決意を秘めた【パーシアス・エベナウム】。

 

 

 

 

 傲慢極まりない私は、彼女達を『年端も行かぬ未熟な少女達』『日常を守ってやらねばならない存在』『幼く儚い要庇護者』であると一方的に決め付け。

 その鮮やかな雄姿を、気高い意志を秘めた戦いを、これまで目にすることさえ避けていた。

 

 そんな子たちが。私が『儚く弱い』と決めつけていた娘たちが。私の傲りが直視しようとしなかった……想いの力を身に纏う『希望の象徴』たる少女達が。

 この危険な戦場……『隕石落下地点』へと無理やり駆り出されるわけでもなく、自分達の意思で集ったのだという彼女達が。

 

 

 この機体の『全力』をもってしても押しきれず、どころか危うく負傷す(破壊され)るところだった相手を、地球外の異星文明が造り上げた重戦闘機装【ロウズウェル】の()()()()を、こうも明らかに貫いてみせたのだ。

 

 

 

 

「じゃ、わたしが時間稼ぐから! 手短におねがいね【神兵(パーシー)】先輩! 魔法少女【レポリス・ダンデライアン】! いっきまぁす!」

 

「あ、あたしも! 【導犬(マイリア)】、いきますっ!」

 

「……お願いね、美玲(ミレイ)。……【星蠍(スコルピウス)】、これより援護に入ります」

 

「ちょ、待っ――」

 

 

 予想外の援軍、そして予想外の戦果に目を白黒させている私の前で、魔法少女達による怒涛の攻勢が仕掛けられる。

 主だった攻め手を欠いた【ロウズウェル】の攻撃――両肩追加装甲のワイヤーアンカーと左手指の圧縮光弾――程度では、目にも留まらぬ速さで縦横無尽に宙を駆ける【跳兎(レポリス)】の影さえ捉えることが出来ず。

 獰猛さを露わに牙を剥く【跳兎(レポリス)】が抉じ開けたその隙へ、【星蠍(スコルピウス)】の矢と【導犬(マイリア)】の火砲が逃さず喰らい付き、喰い破る。

 

 ……さすがに、初撃で用いた『超新星装(リミットオーバー)』とやらは、そうそう乱発出来るモノでも無いのだろうが。

 しかしそれでも、矢継ぎ早に射掛けられる【アンタレス】と狙い澄ました【プロキオン】による火力支援によって、漆黒の地球外金属装甲は少しずつ剥がされていく。

 

 直接戦闘能力に劣る者の各種能力を肥大化させる機械鎧、『膨張された賤兵(LOW‐SWELL)』の銘を持つ侵略者(インベイダー)が、未来を見据えた少女達によって押し返されていく。

 

 

 

 

「……びっくりしましたか? 【アルファ】さん」

 

「っ、エ……【神兵(パーシアス)】?」

 

「あ、もしかして今『エモト』って呼ぼうとしてくれてました? そんなに私のこと恋しかったんですか?」

 

「【神兵(パーシアス)】、これは……どういう、つもりだ?」

 

「スルーですか? 相変わらずですね? まぁ今は急ぎですし……いいでしょう」

 

 

 肩をすくめ『やれやれ』とでも言いたげな表情を引っ込め、今現在は少なくとも優勢に見える三人をちらりと見遣り……『神兵(ペルセウス)』の魔法少女は口を開く。

 あの災厄を押し留める力を得た経緯、そして彼女たちが今日ここへ至った経緯を……ところどころ(つか)えながらも、懸命に伝えていく。

 

 

 

「……当日まで、黙っててって言われてたんですけど……あのあと私、会ったんです。……()()()()()()に」

 

「―――ッ!!!」

 

「……やっぱり、そうなんですね。あの子……『空から敵が降ってきたら、()()()()に力を貸してあげてほしい』『きっと()()()()()()()()から』って。……どういうことかなって、よく解ってなかったんですけど……隕石が降って来るって聞いて、みんな大騒ぎで。…………そしたら、ッ!」

 

「お前が飛んでった光を見っけて、皆大騒ぎだったンだぜ? 一人で何とかするつもりだったンだろ、【イノセント・アルファ】。……ンな危なっかしい身体で、本当……ホンット、よく無茶しようと思えるわ」

 

「あ……【アクアリス・グレイシャー】、で……相違無いよな? 『宝瓶宮(アクエリアス)』の。……記憶力には自信がある、すまないが初対面だと思うんだが……『こんな身体』、って……何を言っているんだ?」

 

「………………まァ……そうだな。初対面。……あぁ、確かに言葉は交わしたコトぁ無ェわ。気にすンな、私が一方的に見掛けただけだし……それに、不躾だったな。胸……いや、身体(カラダ)の問題は……色々と、デリケートだし、よ」

 

「…………? 胸、の……?」

 

 

 思わず胸に手を伸ばし……そこで初めて、己の装束の一部が破損していることに気づく。

 

 恐らくは先程、【ロウズウェル】のワイヤーアンカーに裾を盛大に引っ掛けられた際……私の進行方向とほぼ真逆への力が作用したことで、さすがに生地(医療スキン)が耐えきれずに破断していたのだろう。左側の肩のあたりが破れ、【神兵(パーシアス)】に選んで貰った胸部下着が丸見えになっており、露出的にはなかなかに危うい事態となっている。

 

 ……いや、生地(医療スキン)の破断というよりかは、どちらかというと縫い合わせた部分が千切れたのだろうか。……どうでもいい、どのみち破れたことに変わりは無い。

 とにかく、現状所持している唯一の戦闘衣装がこのザマだ、今後の活動のことを考えると、これは正直いって非常にマズいだろう。無残に破れた胸元を固く握り締め、思わず顔が渋面を形作り、唇が引き縛られていき……

 

 

「……ッ! やっぱり! 本当に大丈夫なんですか!?」

 

「だァから言わんこっちゃ……!! 無理すンなこの大馬鹿(バカ)娘が! オイコラ(ぼう)っと見て無ェで降りて来い【神鯨(ケートス)】! 早くコイツをフン縛れ!」

 

「は、はいっ!」「な、ッ!? ……わぷっ」

 

 

 

 事態に付いていけず目を白黒させる私は、後方に待機していた【神鯨(ケートス)】へと引き渡され……その胸に抱き留められる。

 

 戦闘中に場違いだとは思いながらも、その豊かな感触に思わず愛娘(ディン)のことを想起してしまい。

 僅かな期間とはいえ、確かに温かく楽しかった日々を思い起こし……自然と顔が歪んでいく。

 

 

 

「……私達に、任せてください。アルファさんが魔物(マモノ)を一手に引き受けてくれてたおかげで……その間、徹底的に訓練できましたから」

 

「傷病患者は大人しくしとけ。……私だってなァ、伊達に黄道十二門背負(せお)っちゃ居ねンだよ」

 

「ま、待って……! 待って、くれ」

 

 

 

――…………ゥ? か、ァ、……さま?

 

――だいじょぶ。ワタシ、観測仕様! 観測みる、おシゴト!

 

――あい! かあさま随伴、作戦名『いい子にする』です!

 

 

 

 私の声が、もうあの子に届かないのだとしても。

 私が愛したあの子が、もう私のもとへ帰って来ないのだとしても。

 

 だとしても。……いや、だからこそ。

 

 

 

「頼む。最期は…………トドメは、私が」

 

「……わかりました」「……あぁ、任せろ」

 

 

 私を抱きしめる【神鯨(ケートス)】の腕に力が入り、ついに堪えきれずに視界が滲む。

 

 それを目にした【神兵(パーシアス)】【宝瓶(アクアリス)】両名も……力強く頷き合い、各々が『魔力(想いの力)』を迸らせる。

 

 

 

「……星装顕現、【ミルファク】【アルゴル】【メラム】……行きますッ!」

 

「星装顕現、【サダルスード】【サダルメリク】! っしゃヤったらァ!」

 

 

 

 拮抗どころかやや優勢であった戦線に、満を持して投入された二人の特記戦力。

 

 太平洋上に築かれた氷山を取り巻く、異星からの侵略者を巡る戦場は……終わりを迎えようとしていた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。