【本編完結】デビアス・ピースキーパー 〜異星文明製ガイノイドとして蘇生されましたが魔法少女に追い掛け回される日々を送っています〜   作:縁樹

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状況俯瞰 6

 

 

 

 現行の『魔法少女支援施策』とは、具体的にどのようなものなのか。

 

 

 それは例えば……魔法少女達の様々な活躍を纏めたポータルサイトの運営であったり、企業のプロモーション活動への参画であったり、雑誌やネットメディアで特集記事を組んだり、インタビューや撮り下ろし写真を掲載したり……一種の『広報活動』と括れてしまえるだろう。

 尤も、魔法少女によって『向き』『不向き』が分かれているとのことで……プロモーション活動やらインタビューやらを断っている魔法少女も少なくないという。

 

 あくまでも、魔法少女たちの本分とは『魔物(マモノ)に対する抑止力』であり、それら広報活動への参画は義務付けられているわけでは無いという。

 

 

 

 

「最初期は……単純に、魔法少女達の活躍を報告するだけのものでした。どの地域にどんな魔物(マモノ)が出現し、どの魔法少女が対処し、勝利を収めたのか。……それらを一括して纏め、実際に活躍した魔法少女へ『お礼』や『感謝』などの言葉を贈りやすくするためのもの。……そこから、始まりました」

 

「……まァ実際、悪か()ンだよ。私らだって別にアイドル()ってるワケじゃ無ェけどよ、感謝の言葉を送られて悪い気はしねェし。……直接助けた名も知れぬ子供から、直接『ありがとう』って送られて来んだぜ? そら『頑張ろう』って気にもならァよ」

 

「えぇ……目的はまさに()()でした。……未成年に重荷を背負わせるのだから、せめて感謝の言葉を繋ぐ手助けをしようと。最初は単純なメッセージの送付に始まったポータルサイトでしたが、やがて『より感謝の気持ちを贈れるように』と送金の機能が追加され…………そこからでしたね」

 

「取材、インタビュー、とか……あとコマーシャルとか…………わ、私っ、そのときまだ初等部でした、けど……私にも、たくさんっ、頼まれるように……びっくりしました」

 

「魔法少女の周りで(カネ)が動く。……このシノギは『(カネ)になる』って、広告屋連中が嗅ぎ付けたんだろうな。私はそん時ゃ()だ『覚醒』してなかったが……あからさまに『魔法少女』相手のインタビューやら特集記事やら何やらが増えてったのは覚えてる」

 

 

 

 最初は純粋な感謝の気持ちを贈るために……彼女達の活躍を身近に感じてもらうためにと設立された、『魔法少女』支援のポータルサイト。

 

 やがてそこに送金機能が追加され、少なくない金額が動くことが明るみに出たことで……様々なメディアや広告屋連中が動き出し。

 

 やがて彼女達『神秘的な力を操り人々のために戦う魔法少女』を崇める者たちが……そのままの意味での『偶像(アイドル)』として扱い始め、直接的に()()を行い始めたのだという。

 

 

 魔法少女達の活躍……魔物(マモノ)対策からコマーシャル起用に至るまで、それらを纏めて人気の高さを数値化し、順位付けを行うことで競争を煽り。

 

 それぞれの魔法少女の支援者達に、より一層の()()を呼びかけ寄付を焚き付け、そしてちゃっかりと()()()を跳ね。

 

 ほんの僅かな動きでも逃さず付き纏い、ウケが良いネタを求めて目を光らせ、一挙手一投足を見逃すまいと追い立てる。

 

 

 そういった一連の、大々的なムーブメントを経て……いつしか現在のような『日常風景』が出来上がっていったらしい。

 なるほど彼らにしてみれば、あくまでも『応援している魔法少女の人気が更に高まるように』との想いが動機なわけだ。これは容易く沈静化するものではあるまい。

 

 

 

「我々としても…………やはりその、頑張ってくれている子たちに……露骨な『順位付け』などは、あまり行いたくは無いのですが……」

 

「順位を上げるためにと活躍の場を増やすとなれば、当然魔物(マモノ)相手に危険を冒す可能性も高くならァな。……そこに気付いたときにはもう手遅れ、既に『大人気コンテンツ』だった、ッてワケよ」

 

「ポータルサイトの運営を、当時の対策委員会が外部に委託してしまったのが、大きな転換点というか…………こういう言い方は本来宜しく無いのでしょうが、完全に悪手でしたね」

 

「外部の連中は内情を詳しく知らねェだろうからな。……魔物(マモノ)と直接戦うのみが『活躍』じゃ無ェ、ってのに」

 

「わ、私たち『一課』は、実務補助も、多いですし…………その、あまり目立たない、ので……」

 

「かといって、内部の活動内容を外部組織に逐一共有するわけにもいかず……無用な梃子入れは『政治的圧力』だなどと騒がれかねません」

 

 

 

 競争に歯止めを掛けようにも……既に件のポータルサイト周りの管轄は、分岐した外部組織へと渡ってしまっているらしい。

 対外的なプロモーションを専門に行っているその外部組織には、純粋な善意で『魔法少女たちの手助けになれば』と活動している者も多く居ることだろうが……だからこそ、容易に『やめろ』とも言えない。

 

 

 スポンサーとして名を連ねる数々の大企業や、魔法少女達に所縁(ゆかり)のある地方自治体および政治家達や、扱う『魔法』の分野に関連性の高い学術機関など。

 良くも悪くも活性化した『魔法少女支援施策』の輪と、その後押しによって発展を続けていく『魔法』テクノロジーの歩みは……もはや『漫画』や『ゲーム』『アニメーション』等に代表されるような『国策』の一つとして、重要施策に挙げられる程だという。

 

 現状、こうして大きな成果を叩き出してしまっている以上……例えば『魔法少女の支援は禁止します』と打ち出したところで、もはや止めることなど出来ないだろう。

 

 

 全ては……自然災害による被害が多く、肥沃で広大な土地にも埋蔵資源にも乏しい我が国が、諸外国と対等以上に渡り合うため。

 魔法少女達の平穏な日常と、国際社会におけるわが国の躍進とを(はかり)に掛け、二つのうち『どちらを選ぶか』と問うたところで……国の舵取りを行う議員達の過半は、何だかんだと理由を述べながらも後者を選ぶのだろう。

 やっと手に入れた資源、『魔法』技術という天恵を喜んで手放す程、この国は慈善性に溢れているわけでは無いのだ。

 

 

 

 

「…………ですので、アルファさんの抱かれた疑念は……えー、これは支部長としてではなく、あくまで個人としての意見となるのですが……『至極(もっと)もである』と、私は考えます」

 

「………………そう、か」

 

 

 

 最初は純然たる『善意』と『厚意』から始まった支援の枠組は、規模を増し成長していくにつれて複雑に絡み合い……いつしか国そのものの命運を担う程にまで、大きく成長していった。

 ここまで大きく裾野を拡げてしまっては、なるほど確かに制御しきれるものではあるまい。

 

 

 魔法少女達の活躍を応援することが日常風景と化し、自身が応援している魔法少女の情報を仕入れることに余念が無い社会。

 稀に、ごく一部の過激な支援者が過激な手段に走ることもあるが……基本的には人々の善性に基づいて支援(ファン)活動が行われており。

 上手いこと『娯楽コンテンツ』としての整備が整えられた現代においては……その『ユーザー』達と上手く付き合いながら、距離感を保ちながら活動していくしか無いのだろう。

 

 

 

「私ゃもう慣れた……ってか、割り切ったがな。何だかんだで実際、私らへのバックもキッチリ届けてくれるし。ぶっちゃけ相当な額よ」

 

「おっ、お便りも……ちゃんと、メッセージも、届けてくれます……し」

 

「いや……当たり前だろ。そこさえおざなりにするようだったら、もう存在価値なんざ無いだろう。速攻で殴り込みに行ってたかもしれん」

 

「ハハッ。……怖いこと言うねェ、白銀(しろがね)ちゃんは」

 

 

 

 複雑に絡み合った利権の根は、もはや一介の役人に解くことなど不可能だろう。

 幸いであるのは、こうして『娯楽コンテンツ』としての扱いを享受せざるを得ない彼女ら『魔法少女』達も、なんだかんだで納得して恩恵を受けることができているという点である。

 

 国からの手当とは別途、コンテンツ側からの支援金も受け取れるらしく、また根幹の機能である『メッセージ』送付も未だに現役。

 そこへ寄せられるお礼や激励の言葉は、多くの魔法少女たちにとって確かな活力の源となっている。

 

 加えて……様々な企業タイアップや、アイドルさながらの交流イベント、地方巡業からの出張講義などなど。それらプロモーション活動とて、そもそも的外れというわけでも無い。

 魔法少女達の地位向上、イメージアップに一役買っているのは……それは確かな事実なのだ。

 

 

 

「…………この国の人々、全員が全員、その『娯楽』を手放しで楽しんでいるわけじゃ無い、と」

 

「えぇ。私や、対策本部の面々を始め……『娯楽』としての扱いに疑問を抱く者は、決して少なくありません」

 

「……その一点が知れただけ、私の思考が異端じゃ無いと知れただけでも……なんというか、救われた気分だ」

 

「ハハッ! ()ァーにを(おっしゃ)るアルファさんよ。……救われてんのはコッチだってのによォ。……なァ?」

 

「はいっ! ……あ、ありがとうございますっ、アルファさん!」

 

「………………こそばゆいな」

 

 

 

 行き過ぎた問題行為に及ぶのは、ほんの一握りに過ぎず。

 殆どの国民は、感謝やそれに基づく感情のもとで『魔法少女たちの励みになれば』との想いを、確かに抱いている。

 

 スーに裏取りをさせるまでもなく……二人の魔法少女の反応を見るに、それは確かなことなのだろう。

 

 

 確かにこの国は、魔法関連技術の普及を積極的に行い、生活を豊かにすることを目指してきたが。

 魔法少女達に対する敬意と感謝の念も、そこには確かに存在していたのだ。

 

 

 ……それであれば。

 

 

 

「では…………私達に、手伝えることは……何かありますか」

 

 

 私は。私達は。

 この身に授かったこの力を、彼女たちのために振るうことが出来るだろう。

 

 

 

 

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