【本編完結】デビアス・ピースキーパー 〜異星文明製ガイノイドとして蘇生されましたが魔法少女に追い掛け回される日々を送っています〜   作:縁樹

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資源調達 2

 

 

 

 まず最初に、明らかにしておかなければならないわけだが……今回ディンの目的地であるこちらの店舗にて、私は『買物』をする予定は無い。

 いわゆる『冷やかし』というやつであり、褒められる行為とは言えないのだろうが……そこは何というか、申し訳ない。

 

 

 可能なのであれば、前向きな導入を検討したくもあるのだが。

 我々の本拠点の環境を鑑みる限り、さすがにそれは難しいといえよう。

 

 高高度に停泊中の揚星艇(キャンプ)にも、地球外縁軌道上の母艦(スー・デスタ)にも……適切な重力環境の構築、および地球上大気の再現は、残念ながら成されていない。

 そんな環境下ではさすがに、地球上に生息する生物を招き入れることなど、到底不可能といえよう。

 

 

 

「わぁーーーー………………」

 

「…………スー、映像保存は」

 

『ご心配には及びません。艦長ニグ視覚素子を通しての映像記録を、本艦アーカイブへと保存遂行中です』

 

「よくやった。……偉いぞ」

 

『………………ありがたき』

 

 

 入店前に私が、それはそれは入念に言い含めた『ガラスを絶対に割らないように』『出力制御に細心の注意を払うように』との言いつけをしっかり守り、ショーウィンドウにぺたっと両手とおでこをくっつけて。

 レンズのように(……というか実際カメラレンズそのものなのだが)透き通った瞳と、恐らくは各種センサーをフル稼働させて、ガラス越しのその姿をくいいるように見つめている。

 

 

 ころころと転がるように身動ぎする、全身を毛で覆われたその姿。

 自由気ままに動き回ったり、時折小さな舌を覗かせて水を飲んだり、大きくあくびをしたり昼寝をしたり。

 

 私達が現在お邪魔している複合商業施設内、ペットショップ『ファンシービレッジ』にて……愛らしい子猫に夢中なディンに夢中になっている私という、些か複雑な状況が展開されていた。

 ……はぁ、やはり我が娘は可愛い。

 

 

 

 魔法少女【星蠍(スコルピウス)】ことソノダさんの協力のもと、最近はもっぱら読書にお熱であるディンであったが、なんと先日ついに『猫』という生物に興味を抱き始めた。

 厳密に言うと、人間以外の生物全般……主に陸上動物に興味を抱き、その中でも愛玩動物に括られる『猫』が一押しであるらしい。

 

 奇遇なことに、私も猫派である。……まあ当然のように『犬』も好きなのだが、両者を並べられたら僅かな差で『猫』に軍配が上がってしまう。

 ……いやしかし、これは『奇遇』というか……単に私の魂由来のデータが影響を与えただけなのだろうか。……まぁどうでも良いか。

 

 

 ともあれ、そういった経緯で『猫』に興味を持った彼女の知的好奇心を満たすため、実物の『猫』が拝めるペットショップ見学を企み、ここに至ったというわけだ。

 ……動物園では、さすがに家猫の見学は叶うまい。また猫を飼っている知人など、心当たりが在ろう筈も無い。

 

 

 

「…………わぁ、…………はぁ〜〜…………」

 

 

 現物を見る、という目的のみに限れば、ペットショップでも問題なく果たすことは出来よう。

 しかしながら申し訳ないのだが……我々は売上に貢献することが叶わない、完全な冷やかし客である。

 

 ……実際のところ、特殊すぎる我々の立場からして、お迎えすることはやはり難しい。

 低重力や無重力の閉鎖空間において、長期に渡る飼育記録など在りはしないのだ。生育に悪影響は無く安全である……と言い切れるデータも、当然無い。

 

 やはり彼らにとっては、慣れ親しんだ地上で生きるほうが幸せだろう。

 あれ程までに焦がれている相手を『見るだけ』なのは、少々以上に酷であろうが……クドリャフカやフェリセットの轍を踏ませるわけにも行かないだろう。

 

 

(……ペット、って……スーの前の管理責任者、飼ってたらしいな。『ニグ・ランテート』って名前だったんだろ?)

 

『はい。三級智類に相当する半有機動体、惑星地球における類似存在を定義しますと、『作動肢を持たないオオトカゲ』が近しいかと』

 

(ツチノコかよ! ……でもまぁ、爬虫類って意外と目付きってか、顔立ちが可愛かったりするからな)

 

『ちなみに視覚素子は頭部中央に大型のものが一基、通常は尾部の熱紋探知素子にて周囲知覚を行い、視覚素子から獲物の活動阻害作用を持つ害波を放射する技能を持ちます』

 

(バジリスクかよ!! 畜生(チクショウ)がバケモノ由来なのかよ私の名前!! 本当(ホント)に殺しといて良かったわ前任者!! なんて悪趣味な奴だ本ッ当に!!)

 

『…………種族名『繧ュ繝・繧■繝ゥ繝■■繧■』ですが、母星ルサ・ト・コン内一級智類支配層において、広く流行していた愛玩動体であると証言致します』

 

(いいかスー、早く地球に馴染め。そんなバケモノのことは直ぐに忘れろ。お前も猫や犬を可愛いと感じるようになるんだ。信じてるからな)

 

『……ご期待に沿うよう、最善を尽くします』

 

 

 

 バケモノの話はさて置いて……あそこまで子猫にぞっこんなディンの欲求を満たしてやれないことが、残念でならない。

 私達に地上での拠点があれば解消できるし、色々と便利になるのだろうが……物件や土地の売買は戸籍情報が無ければどうしようもあるまい。

 この国の生まれでない私達が下手に欲張れば、例えば不法入国や不正滞在等の罪に問われかねないし、そうなれば反論の余地は無い。

 

 

 ……賢いディンは、それら全てを承知の上だ。

 私達には愛玩動物(ペット)を飼うことが不可能であるということをしっかりと認識した上で、こうして焦がれているのだ。

 

 何か、なにか妙案はないものか。

 私達の拠点環境で飼育出来、手で触れて可愛がることが出来、無機質な閉鎖環境でもストレスを感じることが無く、ケガや病気を滅多にしない……そんな都合の良い愛玩動物(ペット)など。

 

 

 

 

 

(あー…………ある、って言ってもいいのか? コレは……)

 

 

 脳裏をよぎったのは、とあるひとつの手段。

 地球上のほとんどの生物にとっては適さない環境でも飼育(?)でき、さほど手間も掛からない愛玩動物(ペット)(?)。

 

 私は妙案だと思っていた()()なのだが……。

 

 

 

 

 

 

「ゥウーー…………ほわほわ、ちがう。ワタシ、否定します」

 

「そっかぁー……」

 

 

 

 まぁ……そうだよな。

 正直なところ、そんな気はしていた。

 

 

 

 

 

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