【本編完結】デビアス・ピースキーパー 〜異星文明製ガイノイドとして蘇生されましたが魔法少女に追い掛け回される日々を送っています〜   作:縁樹

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天災渦導 2

 

 

 

「ほ、ホントに? 本当にもう大丈夫なん?」

 

「もぉー……大丈夫だよぉー。まったく、おペイちゃんは心配性だねぇ」

 

 

 

 先程の襲撃事件から一幕開けて……私達は現在彼女たちの拠点の一つ、近畿第一支部へと足を運んでいた。

 現在は快癒したとはいえ、地球外生命体の『侵食』を受けた【護竜(ドラコニス)】の術後経過をもう少し見ておいたほうが良いだろう。そう判断してのことである。

 

 ……決して、【麗女(カシオペイア)】に泣き付かれたからでは無い。

 不安そうにしながらもディンに抱きついている件に関しては……今回ばかりは、大目に見てやるとしよう。

 

 

 

「まず何より……迅速な情報提供、ありがとうございます、【イノセント・アルファ】さん。……お陰で『手遅れ』にならずに済みました」

 

「傷一つ残さず治したのは、あなたの力だ、【オフューカス・エクリュス】。私は……第三者の襲撃、彼女の怪我を……未然に防げなかった」

 

「そ、そんなの……! あんな事態、全くもって予想外です。アルファさんのせいなんかじゃありません」

 

「そうだよぉ! 単に私が……私がヘマしちゃっただけで」

 

 

 

 ……いや、違う。私はあの敵の正体を、既に知っていた。

 さすがにここまで早々と仕掛けてくるとは思わなかったが、アレが『どういうもの』であるかの情報は持っていたのだ。

 

 

 とはいえ……それらは当然、非公式とはいえ国家機密に該当する情報である。真っ当な手段で手に入れられるようなものでは無い。

 出処を問われれば黙する他なく……ゆえに自らに面倒事が降り掛かるのを避けるためにと、共有することもなかった。

 その結果、顔見知りである【護竜(ドラコニス)】を危険に晒し……危うく再起不能に陥らせるところだった。

 

 幸いにも――スーが入手していた魔法少女所属拠点リストおよび公的スケジュール、そして連絡先の登録された通信機器(スマホ)を最大限活用し――ディンが【医神(オフューカス)】および【神鯨(ケートス)】の協力を迅速に取り付けてくれたお陰で、なんとか事なきを得たものの。

 あの侵食性珪素生命体に『食い付かれ』たのだ、最悪の事態だって充分に有り得たのだ。

 

 

 

 ――ラシカ連邦暗部の極秘研究、『天遣い(シーリン)』計画とは。

 かつてラシカ連邦領内に落着した隕石、そこに附着棲息していた地球外生命体を用いた、生体兵器製造および運用計画全般を示す作戦コードであるらしい。

 

 地球上に存在しない身体組成を持つその『地球外生命体』は、有機物・無機物問わず高い侵食・併合性を備えた珪素生命体である。

 自らの体を伸ばして周囲の物質を侵食し、身体と同化させて機能拡張を行う。同化吸収した部位は自在に形状を変化させることが出来るが、規模を拡張すればするほど動きは緩慢になっていくようだ。

 

 

 そんな珪素生命体の攻性技能をヒトに組み込み、戦闘能力を持たせた者を生み出すことが計画の目的であり。

 そんな唾棄すべき計画によって生み出された、地球外生命体の力を持った生体兵器こそが……先の戦闘で会敵した『天遣い(シーリン)』であるという。

 

 

 ……私達は、それらの情報を所持している。

 だからこそ、早急に【医神(オフューカス)】の協力を仰ぎ……彼女にしか出来ないであろう処置――侵食された患部を『除去』した上で組織を快復させる、などという物騒な荒業――を提示することが出来た。

 神話に語られる『医神(アスクレピオス)』の名は伊達ではないようで、患者に苦痛を与えることなく、見事な手際で処置を完了してみせた。

 もし彼女の協力を取り付けることが出来ていなかったら……私は今以上の、深い後悔に苛まれていたかもしれない。

 

 

 しかし……厄介なのは『私が所持する情報を素直に共有しても良いのか』という一点だ。

 スーによって回収された情報は多岐に渡り、元となった地球外生命体の特性や、運用上の欠点等を纏めた極秘研究資料の数々まで。

 加えて、ディンによって齎された最新情報……先の襲撃者の現在の拠点や、そこに出入りしている者の顔写真まで。

 

 既に王手を掛けられるレベルの情報は、私の手元に揃っているのだが。

 それらを開示したところで『何故そんなことを知っているのか』と問われることは間違いないだろうし……そうなればスーの存在とディンの機能、そして私の正体までもを明かさねばならないだろう。

 

 

 

「ドラ子ちゃん、それって……敵の『魔法少女』、ってコト?」

 

「…………どう、なんだろ。……見た目は女の子に見えた……けど……」

 

「わ、わたしは【護竜(ドラコニス)】さんの方しか見れてなくて……すみません」

 

「んーん、気にしないで。おかげでほら、こーんな綺麗なお肌に戻ったわけだし」

 

「……あの、アルファさんは……何か、知ってたん……ですか?」

 

「…………いや……何故そう思う?」

 

「いえ、あの……ご気分を害されたなら、すみません。…………わたしへの指示を、具体的に下して頂けたので……助かりました」

 

「………………あぁ」

 

 

 

 応急処置を行うにあたり、我々が【医神(オフューカス)】へと共有した、例の珪素生命体の特徴。その一つとして挙げられるのが『電気的な刺激に弱い』というものである。

 傷を負わされ、そこから『侵食』が始まったとして、電流を流すことで珪素生命体そのものを麻痺させ、一時的にではあるが『侵食』を止めることが出来る。

 

 

 【護竜(ドラコニス)】の救護処置にあたり、時間稼ぎに当たったディンの動きと、私からの『伝言』を覚えていたのだろう。

 ……このあたりは、仕方ない。私とて(つつ)かれることは承知の上で、それでも【護竜(ドラコニス)】の身を優先したのだ。

 

 彼女の負傷は……元はと言えば、私達の自己保身が招いたといえる。

 これ以上の負傷者を増やさないためにも、不干渉を貫き続けるわけには行かないだろう。

 

 

 

「…………以前、噂話程度に……聞いたことがあって」

 

「う、噂話……?」

 

「あぁ。……身体を金属のように変化させ、相手を侵食する。……そんな力を秘めた……改造人間の噂」

 

「改造、人間……」「あの子が……」

 

「あくまでも噂話程度だったからな。実物なんて遭遇したこと無かったし……『電気的な刺激に弱い』ってのも、確証があった訳じゃ無い」

 

「……でも、実際に効果はありました。ディンさんの『雷魔法』と、アルファさんの知識のおかげで……とても効果的に処置できた、と思います」

 

「…………それは……良かった」

 

 

 

 ……開示できる情報は、今のところはこれくらいだろう。敵の能力の正体が『地球外生命体』だということは……流石に現実味が無さすぎる。私が知っていては不審であろう。

 そのあたりの背景は、また後程……何かしらの匿名手段を探して、直接大人達へ伝えたほうが良いだろう。

 

 

 取り敢えずは、敵への対処方法を共有し……注意を促す。今できることはこの程度。

 

 あとは……私達が動けば良い。

 

 

 

「……じゃあ、あとは頼む。……【医神(オフューカス)】、しばらく負担が増えるかもしれないが……」

 

「大丈夫です。対処法さえ教われば、もう怖いものなしです。……わたしが、みんなを治してみせます」

 

「心強い。……感謝する」

 

「…………! はいっ!」

 

 

 

 名残惜しそうに見送る魔法少女達を振りほどき、私とディンは彼女らの拠点を後にする。

 追い掛けてくる者が居ないことを確認し、大きく跳躍して一気に高度を稼ぎ、自身に高深度の【隠蔽】を展開。人知れず目的地を目指す。

 

 

 あくまでも保険として、彼女らに『天遣い(シーリン)』の対処法を共有したが……もちろん彼女らに対処を任せきりにするわけでは無い。

 

 敵拠点の所在という大きなアドバンテージを得、かつそれを容易に共有できないという点。

 ……また敵組織の性質から鑑みるに……こればかりは、私達が動いたほうが確実だろう。

 

 

 この国に生まれ育った子では無いにしろ。遠い異国の、縁もゆかりも無い、名も知れぬ子であったにしろ。

 ……未来ある少女を『道具』として仕立て上げ、使役するなど……唾棄すべき所業だ。

 

 

 

『艦長ニグ。対『シーリン・ハイヴ』戦術パラメータ検証を完了致しました。対応ワーニングコードの構築遂行率は、現在82%です』

 

「上々だ。……よくやった」

 

『…………いえ。当艦としても、良いように使われるだけに甘んじる彼奴には……思うところが御座います』

 

「……そう、か。……心強いな」

 

『恐縮です』

 

 

 

 ……さて、恐れ知らずな異国の工作員どもよ。

 私達()()の地雷を踏んだ、招かれざる客諸君よ。

 

 そのまま母国の平和維持に専念していれば良かったものを……この国に足を踏み入れ、私達の前に現れたのが運の尽きだ。

 

 

 私の……私達の自己満足に、無理にでも付き合って貰おう。

 

 

 

 

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