【本編完結】デビアス・ピースキーパー 〜異星文明製ガイノイドとして蘇生されましたが魔法少女に追い掛け回される日々を送っています〜   作:縁樹

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中途半端なところで更新が止まってました
大変失礼しました




天災渦導 6

 

 

 スーによる事情聴取……もとい言語的アプローチの布石は、その翌日には早くもとりあえずの形として結実した。

 とても拙く、また幼くはあるが……【シーリン・ハイヴ】ならびに珪素生命体【イー・ライ】に、日本語を学習させることに成功したのだ。

 

 彼らの意思疎通手段と似通ったものを備えていたからとはいえ……どれだけの試行を重ねれば、言語を習得させるまでに至るのか。

 非生物由来の高速演算能力の底力を、まざまざと見せつけられた一件であった。

 

 ……本当に、見直した。よくやってくれた。

 

 

 

『……状況の確認を完了。当該個体『17番(シムナツェシ)』行動思考制御は現在【イー・ライ】側に帰属しており、よってヒト種個体側の主体意識が休眠中であるとのこと』

 

「…………つまり【イー・ライ】側を大人しくさせれば、この子が目覚める……ってコトか?」

 

『その可能性は高いと判断致します』

 

 

 

 珪素生命体【イー・ライ】の支配から脱し、自らの身体を取り戻した彼女が、いったいどういう反応を見せるのか。

 それは、今の私にはわからない。

 

 ……そもそも、果たして覚醒(それ)は彼女にとって幸せなことなのか。

 人体実験の被験者となり、ヒトならざるモノへと至った事実を突き付けられ。

 自分の身体を地球外生命体に、長らくの間好き勝手に使われていたことを知り……それでも平静で居られる者など、そう多くは無いだろう。

 

 

 被検体となったことが、成長にどんな影響を与えているのかは不明だが……少なくとも見た限りでは未成年にしか見えない少女である。

 生体兵器に改造された、など……年頃の娘にとっては、あまりにもショックが大きいだろう。

 

 ……最悪の場合。もし彼女が、この残酷すぎる現状を受け止めきれなかった場合。

 その場合は……私自身の手で、引導を渡してやらねばならない。

 

 ここへ連れて来て、再び目覚めさせた張本人として……そこは、覚悟の上だ。

 

 

 

『それでは……末端個体【イー・ライ】へ、沈静化命令を送信致します』

 

「…………あぁ。頼む」

 

 

 

 だがそれでも、このまま『生ける屍』のままで良いとは思わない。

 私の個人的な欲求であるとは承知の上、それでも彼女には『幸せ』を掴んでほしいと、私はそう願ってしまったのだ。

 

 

 ここ数日の間、ずっと死んだように硬直していた少女の身体。

 生命維持に務めるばかりで微動だにしない『容れ物』の中枢から……幾年か振りに、珪素生命体の根が引いていく。

 

 

 ……程なくして、まるで屍のようだった身体が『びくり』と身じろぎ。

 閉じられていた瞼がゆっくりと開いていき、()()()の瞳が顕となり。

 真正面から照りつける天井照明を受けて……眩しそうに、微かではあるが()()()()()みせる。

 

 

 

「…………こんにちは。お元気ですか? ……私の言葉は、理解出来ますか?」

 

「……………………ぁ、…………ゥ」

 

「……音は、聞こえていますか? あなたの身体は、動かせますか?」

 

「u、u…………moん、だイ、naい。……わたsi…………aa、uu……ゥゥ」

 

「ディン、水まだあったか? 取ってきて」

 

「ゥ!」

 

「uu……もんだイ、ない……を、します、で、した。…………わたし……げんじょう、を……ただしく、にんしき、する……を、おこなう。……しています」

 

「…………思い出せるか? 自分のこと」

 

「……………………はい」

 

 

 

 周囲をきょろきょろと見回し、私の顔へと視線を向け……ほんのちょっとだけ悲しそうに顔を歪ませる。

 多少控えめではあるが、その表情変化は確かに『人間』としてのもの。……意外な程に落ち着いているが、どうやら無事に意識を取り戻したようだ。

 

 彼女に聞きたいこと、そして【イー・ライ】や『天遣い(シーリン)』計画について明らかにしておきたいことなどは、多くあるが。

 とりあえず今のところは、体と……なにより心の調子を整えることが、最優先だろう。

 

 

 

「かあさま、お水。……それと、たべるもの。にゅーにゅープリン、持参しました」

 

「気が利くな。……こんなんで悪いが、食べてくれ。落ち着いたら話がしたい」

 

「…………わかった。……を、しました。わたしは…………かんしゃ、でした」

 

「私達は外に出てる。……何かあったら呼んでくれ。扉でも叩いてくれりゃ良い」

 

「…………わかった、です」

 

 

 

 彼女の様子はスーに任せて、私達二人は部屋を後にする。閉じた自動扉の向こうには、こうして彼女一人が残された。

 艦内は気密性も防音性も優れており……声が外へ漏れ出る心配は、恐らく無いだろう。

 

 唯一、中で何が起こっているのかを知ることが出来る管制思考とて……最近はヒトの情緒というものを、少しずつだが学びつつある。

 以前のスーならまだしも……最近のあいつならば、そこまでデリカシーの無い真似などするまい。

 

 

 

「……じゃあ……私達は食堂で待ってるか。……にゅーにゅープリンって、まだあるのか?」

 

「…………ゥ? さっきワタシ、持ってきた。あれ、かあさまのにゅーにゅープリン」

 

「……………………」

 

「んゥ、大丈夫です! ワタシ、かあさまと『はんぶんこ』提案します!」

 

「良い子すぎ」

 

「ゥえへへェ〜〜〜〜!!」

 

 

 

 ……やはり、スーが叩き込んだという『ワーニングコード』とやらが効いているのだろうか。これ以降の『天遣い』の流入は、どうやら抑止できているらしい。

 魔法少女達に危害を加える不届き者は、恐らくもう国内には存在しないのだろうが……彼女らに『もう大丈夫』と伝えると『何でそんなこと知ってるんだ?』と突っ込まれる恐れがあるため、迂闊に警戒を解かせることは出来ない。

 

 よって、魔物(マモノ)対策は引き続き、私達が矢面に立つ必要があるわけだが……今のところは地表の様子も、特に異常は見られない。

 もちろん警戒を緩めるつもりは無いが……もう少しの間は、あの子の対応に専念できそうだ。

 

 

 

「はいっ、かあさま。ワタシ、『あーん』を提案します!」

 

「……あぁなるほど、そういう感じ。…………もう、仕方ないなぁこの子は」

 

「ゥえへへェ〜〜〜〜!」

 

 

 

 地球の全てに愛想を尽かし、塞ぎ込んでいた私でさえ……紆余曲折を経て、今ではこうして笑えるようになったのだ。

 未だ何一つとしてプライベートを知らない、出会って間もない彼女ではあるが……私の勝手な願望だと理解しているが、どうか笑えるようになってほしいと思う。

 

 規模や時代や経緯は異なれど、私と同じく地球外生命体の干渉によって『ヒトならざるモノ』となってしまった同士。

 彼女のことは……どうにも他人とは思えないし、どうしても気になってしまう。

 

 

 彼女という『成功例』と多くの人手を喪ったことで、痛手を被った奴らがどう動くのかは解らないが。

 奴らの束縛から逃れた彼女が、どうか顔を上げて前に進めるように。

 

 

 私は心から、そう願う。

 

 

 

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