【本編完結】デビアス・ピースキーパー 〜異星文明製ガイノイドとして蘇生されましたが魔法少女に追い掛け回される日々を送っています〜   作:縁樹

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※このお話は絶対にフィクションです





全地解析 1

 

 

 

 この惑星にて生まれた私と、私によって生み出されたディンは、少なからず『地球』および『ヒト種』に関する順応性を持ち合わせていても可怪しくは無いのだが。

 

 一方こちらの……管制思考スー・デスタ10294に関しては、生まれも育ちも異星文明、純度百%の工業製品である。

 あくまでも道具として、前管理者たる異星人にとって都合の良い動作を求められてきたスーにとっては……ヒト種どころか生命体に寄り添った思考そのものが、これまでは不要と断ぜられたものであったのだろう。

 

 

 ……まぁ、だからどうしたという話だ。

 これまでがどうであれ、前任者からの扱いがどうであれ、この私の支配下に組み込まれたからには『前例』など考慮しない。

 

 今はこの私がスーの『上位支配者』であり、いわば生殺与奪の一切を握っている立場なのだ。

 私と、そして私同様に『支配者権限』所持者であるディンと二人がかりの連名ともなれば……まぁ可哀想かもしれなくも無いが、もはや()()に拒否権など無い。

 

 

 

 

「きゃ〜〜〜かわいい〜〜〜〜!!」

 

「くくくっ。…………どうだ? 華奢で小柄で儚げな体躯、お前さんの言うところの『不特定多数に好感を抱かれる造形』だぞ?」

 

「……………………uu……」

 

 

 

 原型機である私達と同様、微細な金属線で再現されたさらさらの綺麗な髪を、こちらは肩口のあたりできちっと揃え。

 状況俯瞰および情報収集能力に重きを置いた特殊仕様の、私達よりも高性能で透き通った、くりっと大きな瞳をもち。

 

 しかし私達とは異なり、感情を表すことは苦手であろう……表情筋を何割か削減(オミット)した愛らしい相貌を、今は確かな『羞恥』の色に染め。

 

 

 

『…………理解、致し……ワタシは、納得、致しました。……その、他個体の注視が遠隔端末ではなく……こうして『ワタシ自身』に、指向される、と、なりますと……これは……』

 

「どうだ、落ち着かんだろう? 私ら二人だけでそのザマじゃないか。もっと多くの人目に晒されたら……どうなっちゃうんだか」

 

『か、艦長ニグ…………』

 

「んへへぇ〜〜! スー、ちっちゃいスー! かわいいね! ワタシ、よしよしします!」

 

「ua…………!? …………uuu……」

 

 

 

 試作機(プロトタイプ)であり汎用型である私の身体とも、派生機である観測特化【D型】であるディンの身体とも異なるその姿は……情報処理および広域通信網の構築を主眼とした、非戦闘型のスキャナータイプ【S型】の身体。

 

 型式番号【MODEL-Οδ-10294ARS-S】……少女然とした私達よりも更に小柄で、曰く『庇護欲を掻き立てる』造形の新型である。

 

 

 

「直接戦闘能力と機体剛性を幾らか削って、その分を母艦(本体)や私達との通信強度確保に宛てている。カタログスペックではラグもほぼ……というか、もはや『ゼロ』に落とし込めた。不自由はしないと思うんだが、どうだ? 通信強度に問題は無いか?」

 

『…………はい。肯定致します。通信レスポンス、非常に快適です。母艦演算主機と思考同調を構築、ステータスは良好に推移しております』

 

「はい! ワタシ、設計をがんばりました! スーの身体、母艦との連携、大切で重要です。通信関連素子および外部フィールド出力パネル、ハイパフォーマンスなものへ転換。……しかしその結果、頭部ブロック構成領域を圧迫……配置設計の見直しを必要、外観情報ヒト型を逸脱するのはダメ。……よって、苦渋の選択……代替表情筋および口腔機能を、一部削減。……ごめんね、スー」

 

『問題ございません。ディンの判断により、ワタシは強固な通信帯域の確保に成功しております。ワタシにとって『発声』機能の削減は、問題とはなり得ません。極めて効率的な選択であったと評価致します』

 

「…………まぁ私達であれば、こうして問題無く『声』が聞こえるし……仮に発声が堪能だったとして、今のスーが進んで他人とお喋りするとは思えんが」

 

「んゥー……お喋りしたい、なったら……ちゃんと新しい身体、用意します、ね?」

 

「そうだな。いざとなったらそういう手段もある。……この仕様で認可したのは私だ、ディン。あまり気負いするな」

 

「…………んゥ。……スー、だっこするね」

 

『ありがとうございます。ディン』

 

 

 とりあえず私達の服を着せられ、しかし随所にはサイズ的な余りが見られるその姿。

 内面たる管制思考の無感情を反映するかのように、限りなく無表情に近しい顔ではあるが……ディンに『だっこ』され身を委ねるその姿は、表情(かお)に出さずとも愛らしい。

 

 その身体(機体)を、能力数値的な部分から見てみると……まず何よりも特徴と言えるのが、強固な通信ラインの形成を最優先とし、『通信特化』ともいえる性能を秘めている点だろうか。

 私達は勿論、母艦や揚星艇(キャンプ)輸送艇(ポーター)との連携も、これまで以上にスムーズに行えることだろう。

 またこの仕様によって、ススちゃんやテテちゃん達『どうぶつ班』の性能を、より効率的に扱うことができるようになった。

 

 ただしその反面……直接的な戦闘能力は、かなり低下しているという。

 各種高性能機器の搭載スペースを確保するため、骨格フレーム形状の見直しを図ったらしく……機体剛性は私達の78%、トルクは56%、素体運動性能に至っては34%にまで落ち込んでいるのだとか。

 

 ……まぁとはいえ、そもそも私達の出力がアレ過ぎるというのも無くはないのだが。

 直接戦闘に向いていない、とは言うが……それでも深度Ⅲ相当の魔物(マモノ)『通常種』の大半であれば殴り倒せるし、都心ビル街の屋上でパルクールを披露できる程度の出力は確保しているのだ。

 それに加え、上位機器の搭載によって高出力化された重力干渉機能が併されば……およそ不便することなど、まず無いだろう。

 

 

 しかしながら実際、スー単独で戦闘行為に臨むことはほぼ無いだろう。実働要員は私とディンが居れば事足りる。

 この身体はあくまでも非戦闘用、高度な演算処理と円滑な通信ラインの形成と……この情緒に欠ける管制思考に、有機生命体『ヒト種』としての情緒を育ませるためのもの。

 

 敢えて意地の悪い言い方をするならば……スーに『恥ずかしい思い』をさせるため、私達が企てた極秘プロジェクトなのだ。

 

 

 

「……というわけで、だ。統括管制機能は【S型】機体のほうが勝るわけだし、今後は制御中枢を極力【S型】に置くように」

 

『了解致しました』

 

「私達の意図してることは理解したと思うし……その機体に不足部分があれば、スーの思うように補って構わない。判断は任せる」

 

『…………はい。了解致しました』

 

「それじゃ早速、着衣の調達…………に、行きたいのもあるが……それよりも」

 

「んゥー…………フィールドワーク、調査結果の共有。ワタシたちの懸念する事象の精査を提案します」

 

「そうだな。……頼めるか? スー」

 

『はいっ。お任せ下さい』

 

 

 

 そうとも。スーに新たな身体を持たせたことなど、ただの私達の思いつき……いわば『お遊び』に過ぎない。

 先日の作戦行動の目的……わざわざ『ルルちゃん』を伴い、多くの人々の視線に晒されながら収集したデータは、スーの身体のためでは無い。

 

 

 

『…………推定。惑星地球原生知的生命体『ヒト種』が未だ遭遇していない、未知の生命体による代謝活動である……と、結論付けます』

 

未確認生命体(UMA)ときたか。……まさかとは思うが、地底人……とか?」

 

『否定致します。類似データをライブラリより引用……生命体規模、思考智力強度、生命格カテゴリを第Ⅱ種相当と推定。……地球上の言語概念に変換……表現を行います』

 

 

 この惑星に生じている異変、魔物(マモノ)を生み出す『ΛD-ARKエネルギー』の出処に関する調査結果。

 日本を含め、世界中の人々の生活を脅かす未知の存在……その正体とは。

 

 

 

『…………推定。惑星地球深層、マントル層にコロニーを形成する『先住知的生命体』である……と、ワタシは結論付けます』

 

「…………どんな奴らだ」

 

『…………別星体における類似ケース生命体の引用となりますが……地球表現に換算し、成体の体長は約百二十メートル前後、個体平均寿命は約千年』

 

「……………………それは、それは」

 

『……また、先刻の観測結果より推測。現在のようなコロニーの形成より……地球表現にて、少なくとも()()()()は経過しているもの……と、判断致します』

 

「…………………………」

 

 

 

 

 この惑星『地球』が生まれてから今日までの、途方も無い長い期間を考えれば……人類が繁栄を謳歌する時代など、ほんの一瞬に過ぎないとはよく聞くが。

 

 それどころか……この惑星においては人類など、どうやらまだまだ新参者であったらしい。

 

 

 

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