【本編完結】デビアス・ピースキーパー 〜異星文明製ガイノイドとして蘇生されましたが魔法少女に追い掛け回される日々を送っています〜   作:縁樹

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 魔法少女達に『ランチ』にお呼ばれして、同時にスーのお披露目を済ませた日から、また幾日かの空白を経て。

 私の『お願い』を持ち帰ってくれた【宝瓶(アクアリス)】から、昨日満を持しての連絡が届き……私は都内某所のとある官庁施設にて、とある人物を紹介して貰えることとなった。

 

 残念ながら【宝瓶(アクアリス)】本人は学業の方面で用事があり、同行して貰うことは出来なかったが。

 本人には話を通しておいてくれるらしく、受付に要件を伝えれば呼び出してくれるだろう……とのこと。

 

 ここまで段取りを整えてくれて、本当に助かる。やっぱり面倒見の良さが半端無い。

 

 

 ……ただまぁ……今現在、私の不安を掻き立ててならないのは。

 都合を付けてくれた【宝瓶(アクアリス)】から、通話にて告げられた『担当者の(かた)』の肩書が……ちょっとばかし不安を感じるものだったからなのだが。

 

 

 

「…………あの、突然失礼します。私は、あの……い、イノセ…………えーっと…、『アルファ』と申します」

 

「あいっ。ワタシ、『ディスカバリー』申します。この子『ステラ』申します」

 

「はい。お早うございます。本日は『お約束』でのお越しでしょうか?」

 

「えー、っと…………はい。……あの……」

 

 

 

 ……いや、信じろ。あの【宝瓶(アクアリス)】がそんな下らない悪戯(イタズラ)をするわけが無い。

 

 一見すると荒唐無稽に見えることでも、きっと何らかの意味があるに違いない。

 ここは彼女のことを信じて、伝えられていた名を答えるべきなのだ。

 

 

 

 

 

「…………あの……『伝説の勇者』さん、って……居られますか?」

 

「はい。(かしこ)まりました。少々お待ち下さい」

 

「いるの!? 本当に!? ……あっ」

 

「ふふふっ。居りますよ。ご安心下さい」

 

「………………すみません」

 

 

 受付の女性は受話器を手に取りどこぞへと連絡を取ったかと思うと、程なくして内線を切り私達へと向き直る。

 今日ここに至るまで疑問だらけだった『伝説の勇者』さんとやらは……どうやら本当に実在し、そして私達と顔を合わせてくれるらしい。

 

 

「……大変お待たせ致しました、アルファ様。()()()がお会いになるとのことですので、こちらをお掛け頂きエレベーターにて13階『()()()()()』へとお進み下さい。ボタンの近くの読み取り機にビジターパスを(かざ)して頂きますと、自動で13階まで上っていきますので」

 

「待っ…………えっ? あ、あの……『伝説の勇者』さん、って……」

 

「はい。伝接……伝承接導課課長の、ユシア・ネウヤフォリトがお待ちしております」

 

「………………なる、ほど。…………ありがとうございます」

 

「ふふっ。畏れ入ります」

 

 

 

 ……今にして思えば、これは【宝瓶(アクアリス)】なりのちょっとした悪戯(イタズラ)心だったのかもしれない。

 重要なアポイントメントの詳細を、わざわざ音声通話で伝えられたのだ。急いでいたのかと勝手に納得していたが、几帳面な彼女にしては()()()()()手法であるという印象もあった。

 

 ……斯くして、私の直感はまだまだ捨てたものでは無かったらしい。

 文面にしてしまえば『伝説』ではなく『伝接』ということも、『勇者さん』ではなく『ユシアさん』だということもバレてしまう。

 目当ての人物にはしっかり繋ぐことが出来、それでいて絶妙に勘違いするようにと、わざわざ口述を選択したのだろう。……困った娘さんだ。

 

 

 

『……なるほど。貸与されるキーによって輸送設備の動作を制御、到達目的地点が管理者側によって選別される誘導動線構造……効率的であると判断致します』

 

「んゥー! 自動で階層移動、ヒトは『らくちん』であるので、良いと思います!」

 

「そいつは良かった。……重量オーバーの音、鳴らなくて良かったわ」

 

 

 三人合わせて四百キロ超、密かに不安を抱いた私の心配をよそに、エレベーターは順調に高度を上げていき。

 やがて私達の目的地であり、貸与されたビジターパスにて侵入できる唯一のフロアである13階へと辿り着き……滑らかに扉が開かれ。

 

 

 首からネームタグを下げた長身の男性の、見る者を安心させるようなにこやかな笑顔に……私達三人は出迎えられた。

 

 

 

 

 

「改めまして……ようこそ、異聞探索省へ。私は新地開発部、伝承接導課、『ユシア・ネウヤフォリト』と申します。お会いできて光栄です、【イノセント・アルファ】様、そして【ディスカバリー】様。…………と……」

 

「端的に言うと……()()()、ですかね。『ステラ』と言います。『スー』と呼んでやって下さい」

 

「あいっ! ワタシも『ディン』と呼んでやって下さい、要請します!」

 

「承知しました、ディン様。そしてスー様と……アルファ様。……改めまして、ようこそお出で下さいました。お噂の程は、かねがね」

 

「……恐縮です。部外者であるにもかかわらず、急な申し出に応じて頂き……感謝します」

 

 

 

 エレベーターホールにて出迎えられた私達は、そのまま応接室へと通される。

 こぢんまりとした部屋にて卓を囲む四名、口を(つぐ)んだままのスーを除き、三人はそれぞれ自らの名を名乗る。

 

 私達が今日ここに足を運んだ理由とは、ひとえに『言葉を用いない相手と意思疎通を図る魔法』についての情報を得るためだ。

 私の喰い付きが予想以上だったのだろうか。ただならぬ様子を察したらしい魔法少女達は、私が必要とする情報を得られるようにと、こうしてキーパーソンと直接対面する機会を設けてくれたのだ。

 

 

 ユシア・ネウヤフォリト……どう考えても日本人のものではない、かといってどこの国の出身なのか想像もつかない、特徴的なその名前。

 一方でその容姿の方はというと……強いて言えば、髪も瞳も明るいブラウンであるという程度。確かに整った顔立ちではあるがさほど異様というわけでも無い、人畜無害そうな男性職員。

 

 異聞探索省内、新地開発部、伝承接導課……主に『魔法』を用いた新技術を模索する部門であるらしい此処であれば、私の望むものが見つかる可能性は大いにあるのだろう。

 

 

 それにしても……機械の身体と化し、技術文明の尖兵と成り果てた私が『魔法』などというファンタジーに興味を抱くことになろうとは。

 そのことに自嘲じみた気持ちが顔を覗かせようとしたのだが……しかし他ならぬ『()()少女』達と交友を深めていたことを思い出し、ふいに納得してしまった。

 

 彼女ら魔法少女が存在し、原動力となる『魔力』だって満ち溢れているのだ。当然、様々な『魔法』だって存在して然るべきだろう。

 魔物(マモノ)と戦う力以外にも、インフラ整備に医療の研究にエネルギー開発にと……ΛD-ARKエネルギー改め『魔法』の力は、大きな可能性を秘めているのだ。

 

 

 

 

「……それで、確か『翻訳』あるいは『意思疎通』の魔法……でしたか? 【宝瓶(アクアリス)】さんは『愛犬とのコミュニケーションのため』と仰ってましたが……」

 

「あー、えーっと………………すみません。正直に申し上げますと……愛犬、ではない……です」

 

「あっと……そうでしたか。……しかし、ご心配には及びません。(くだん)の魔法とはいうなれば、感情の類を相互共有させるものです。感情を抱く動物であれば、一定の効果は期待できるでしょう」

 

「それは…………助かります。是非とも詳しく聞かせて頂きたい、私に出来ることなら何でもします」

 

「………………婦女子が『何でもする』など、そう簡単に口にするものではありませんよ」

 

「心配無いです。ときと場合は弁えてます」

 

「……なるほど、左様でございますか。……差し支えなければ、お教え頂けますか? 何との対話を望んでいるのか」

 

「……………絶対に笑いませんか?」

 

「誓いましょう。我が銘に誓って」

 

 

 

 ここまで情報を集めた私自身、荒唐無稽な話だという自覚はある。

 もちろん、私達の集めた情報と推測が、全て正しいという保証も無い。

 

 私達以上に『魔法』というものに……『ΛD-ARKエネルギー』の力の扱いに慣れている彼らであれば、ともすると事態の解決に向けて有力な助言が得られるかもしれない。

 

 

 ……なにせ、話の規模が規模である。無為に拡散すれば多大な混乱を誘発しかねないが……とはいえ人類の危機となり得る情報を秘匿し過ぎるのは、かえって悪手だと判断できる。

 

 無論、私達の来歴や母艦(スー・デスタ)の存在等は、厳に秘する必要はあるだろう。

 しかし私達は決して、ヒト種ないし地球環境に害を与えたいわけでも、混沌を齎したいわけでも無い。

 相手が識者であるというのならば……むしろ積極的に情報共有を図り、味方として抱き込むべきだろう。

 

 

 

『んゥ。ワタシより、かあさまへ。かあさまの所感に同意します』

 

『ワタシおよび統合管制思考より、艦長ニグへ。提案を支持します』

 

(………………ありがとう)

 

 

 

 心強い味方、二人の家族の後押しを得て。

 

 私達は……私は、覚悟を決めた。

 

 

 

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