思い出は夕焼けとともに   作:桜花 如月

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プロローグ、物語の始まり。


プロローグ

 眼前に広がる茜色の光景。これは確か……幼き日に観た夕焼け空。

 

 そうだ、この時隣に誰かいたんだ。名前も知らない1人の女の子が。

 

「やくそく! いつかまた、会えたらその時は──」

「──うん、やくそく」

 

 あれがいつだったのかは覚えていない。でも、眩い残光の中で向けられたあの笑顔は、いまだに忘れない──

 

 

 

 


 

 ジリリリと朝の寝起きには少しうるさく感じる時計が鳴り響く。

 事実、寝てても鳴ったら体がビクッとなるぐらいにはうるさいのだが確実に起きるにはこの音量じゃないと二度寝の危険性があるから仕方ない。

 それにしても、だ。

 

「またあの夢……最近よく見るな」

 

 俺、夕凪奏は最近寝てる時に同じ夢を見る、いつの日に見たか覚えてないけどその綺麗な景色と隣にいた少女、その場面だけが頻繁に夢に出てくる。

 あの子が誰で、いつどこで見たのかさえ記憶にないのにあの一瞬だけは鮮明に記憶に残っているのが不思議だ。

 

「ま、気にしてもしょうがないか」

「そーだよお兄ちゃん」

「……ノックしろって言ってるだろ?」

「今回はちゃんとしましたよー、それより朝ご飯出来てるから早く降りてきてね」

 

 妹の叶恵が制服姿で俺の前に立っていた。

 割と文句言われても仕方ない音量のアラームだったが、一切気にしてる様子はない。

 

 

 

 

「それで、2人ともまだしばらくは帰ってこないんだな」

「せっかくのお兄ちゃんの入学式なのにねー」

「ま、仕事なんだから仕方ないだろ」

「でもさー……」

 

 叶恵の作った朝食を食べながら机の上の書き置きを読む。

 俺たちの両親は色んな所へ出張することが多く、滅多に家に帰ってこない。

 中学の卒業式は何とか来てくれたし、ちょうど大きな仕事が入ったと書いてあるから気にしても仕方ないと思うんだけど、叶恵としてはこういう日だけは祝いたいみたいだ。

 

「なら、私だけでもお兄ちゃんを祝う!」

「忙しいんだから、無理しなくていいよ」

「むー……絶対なにかしてあげるから、待っててね!」

「はいはい……って、もうこんな時間か」

 

 中学3年生で受験だとかで忙しい叶恵になにかしてもらうのは申し訳ない、と言いながらも今こうやって朝食は作ってもらってるんだけど……

 両親が基本的に留守な以上は役割分担しないといけないとわかってるけど叶恵はなんでもやりたいからって毎回自分でやってしまう。

 そんな妹も頑固なところがあるから1度言うと止まらない、だからこっちが折れる。

 そんな話をしていたら叶恵が家を出る時間になった。

 

「じゃあ、私は先に行くね」

「ん、俺も行くよ」

「今日そんなに早いっけ?」

「たまにはゆっくり叶恵と行きたくてな」

「ふーん……じゃ、行こっか」

 

 同じ学校にいた時も叶恵とは部活などで登校時間はズレていた。

 そして今日もいつもと同じように先に出るのだが、俺も一緒に家を出る。特に何か理由は無いが、何より今日は高校入学の日だから、そんな日ぐらいはゆっくり景色見て登校するのもいいだろ。

 灰色のブレザーを着てカバンを手に提げて靴を履く。

 これが、これから毎日の当たり前な流れになると思うと少し億劫な気もするけど、そんなことを初日から気にしたらつまらない。

 

「さ、行くか」

「うん、と言っても途中で別れちゃうけど」

「……ん? 何言ってるんだ?」

「え、だってお兄ちゃん高校は……あ、羽丘じゃん!」

「そうだぞ、今日から俺も羽丘だ」

「なら一緒に行けるね!」

 

 叶恵が忘れてた、という顔を見せる。

 入学決まったその時に喜んでたのにどこに行くかは忘れてたみたいだ。

 どこに行くと思ってたのか聞きたいが、俺の家から行けるのはせいぜい羽丘か……もうひとつの花咲川ぐらい。

 最寄りは羽丘で、叶恵が中等部に通っていたから受験することにした。

 

「共学になってくれて良かったね」

「そうだな……おかげで遠いとこ行かなくてよかった」

「それにお兄ちゃんと一緒だもんね!」

「忘れてたくせによく言うよ……」

 

 俺が今日から通う高校、羽丘学園。

 元は女子校でここ最近の諸々を考慮した結果今年度から共学になった。

 中高一貫で基本的にはエスカレーター式で高校生になるが、進学校ということもあって外部入学もそこまで珍しくは無い。

 まぁ、男子生徒は確定で外部受験になったんだが。

 

「叶恵は楽そうでいいよなぁ……」

「そのまま入れるとは言っても勉強しないで入れるわけじゃないからね?」

「はいはい、わかってるよ」

「むぅ……」

 

 受験の苦労は中々、1年間勉強ばかりしてたと言っても過言では無い、いや少し盛ったけど。

 そんな愚痴に何故か拗ねた叶恵を横目に歩いているとあっという間に3年間通う学校の前に着いた。

 

 

 

「でっか」

「お兄ちゃん1度来てるでしょ」

「そうだけど、改めて見るとさ」

「私も今でもでかいって思ってるよ、それより入ろ?」

「あぁ……」

 

 さすが進学校というか、中高一貫だからというか、でかい。

 まぁ中等部と高等部で校舎が別れてて敷地も一応区切られてるみたいだからそりゃでかいんだけども……

 平然と中に入っていく妹の背中が妙に大きく感じる。

 

「それじゃ、とりあえずはここで」

「ん、また夕方」

「高校生活楽しんでねー!」

「ありがとな」

 

 中等部の方にバタバタと走っていく叶恵を見送ってから改めて高等部の方を見る。

 満開の桜に彩られた道の先にあるアーチ、それをくぐれば広がるのが高等部の校舎。

 ここが、これから俺が高校生活を送る場所。

 きっと何も起きない平凡な3年間になるだろうけど、それもまた青春とやらだろう。

 そんな思いを胸に秘めてアーチを──

 

 

「……まだ一時間もあるわ」

 

 早く来すぎたせいでまだ入学式まで1時間もある。

 ちらほら生徒は見えるが明らかに入っていい雰囲気じゃない。

 

「ま、ゆっくり待つか……」

 

 

 こうして、スタートダッシュを決めすぎて少し躓いた気がする俺の高校生活が───

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった…………」

 

 平凡とは程遠い、そんな高校生活が始まるのであった。




はじめましての方ははじめまして。
BanG Dream!二次創作、書いてみました
といいつつ、こちらの練習兼ねて短編集を先に書いてるのでそちらもよければ。


羽丘学園
原作(ガルパ、アニメ)では女子校、今作は大人の都合で共学化。
奏の年度から共学になったので先輩たちは女子生徒だけ


次回
「出会い」
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