あの後すぐに解散し妹と合流して起きた出来事を全て話して、なんやかんやあって翌日。
高校生活2日目にして俺はクラスメイトに囲まれていた。
と言っても2人だけで、後は何かとチラチラこっちを見てくるだけ。
なんでこんな扱いを受けてるのかと言えばそれは隣に座る美竹が原因なんだが。
「すっごい噂になってるぜ?」
「朝から聞いてるよ、1年生の間でありもしない話まで広がってるんだろ」
「まぁ仕方ないですよね」
「他人事だな……」
朝登校してすぐに俺の席に駆け寄ってきたのは
2人は昨日の時点で仲良くなったらしく、そんな仲良し2人が噂になってる俺のとこへ来たわけで。
そりゃ、初日から女子5人に囲まれて歩くやつなんて、話題にならないわけが無い。
それも、その女子のうちの一人がホームルームをうつ伏せで過ごした赤メッシュのパッと見不良な美竹となれば、初日からそいつと一緒にいるという所が周りからしたら不思議だったらしい。
目撃者が複数人いて、そこから話は広がっていってあっという間に変な話まで噂が立っている。
これで先輩から「面白い奴がいる」とかで目をつけられなければいいんだけどな。
「で、なにしてたんだ?」
「それはさすがに言えない」
「本人がそれだから変な噂も立つんですよ?」
「2日目から最悪だよほんとに」
「あんな態度の人と気軽に話せる人がいるってなれば、仕方ないですよ」
桜丘が目線を送った先は周りの空気に圧されて居心地の悪そうな美竹。
視線に気づいたのかこっちに向いた。
「……なに」
「あー、なんでも?」
「ならこっち見ないで」
「おー怖」
「は?」
「まぁ落ち着けって」
美竹と桜丘の間で明らかに悪い空気が流れ始めたのを感じた俺はそれを止めるために間に入る。
高校生活2日目にしてクラスメイト間で壁ができるのは俺としても避けたいところだ。
まぁ多分手遅れだけどさ……
「あんたのせいで変に視線感じるんだけど」
「俺のせいじゃないだろ」
昨日の今日で立った噂には俺も迷惑してる。
別に青葉や他と話したことを後悔はしてないけどありもしないことを広められるのが特に嫌だ。
それは美竹も同じだろう。
そんな中、俺たちの周りの生徒はこちらに視線を向けていた。
──ほら、やっぱりそういう……
──えー、美竹さんとでしょ? あんな不良みたいな……
「「……っ!」」
誰が言ったのかは分からなかったが確かにそんな会話が聞こえた。
美竹も聞こえたらしく体が小さく跳ねさせたあと突然席を立ち教室を出ていった。
「おい!?」
「追えよ、奏」
「……悪い、先生には適当に理由付けといてくれ」
授業開始前なのに出ていった美竹を止めようとしたが間に合わなかった。
まずあの発言をしたクラスメイトを探そうとしたが桜丘と萩尾が行けと言わんばかりの雰囲気を出してたから俺も教室を出て美竹を探しに行こうとした。
「あ、かーくん〜、どしたの?」
「青葉……悪い、美竹が……」
教室を出てすぐ、隣のクラスから出てきた青葉と鉢合わせをした。
簡潔に説明を終えると「また……」と呟いて寂しそうな表情を浮かべた。
「かーくん、蘭のこと……」
「任された以上は絶対に辛い思いはさせない」
「……うん、お願い」
昨日青葉にお願いされた、それ以上にさっきの美竹の表情がすごく辛そうで放っておけるわけがない。
授業サボることになっちゃうけど、今はそこを気にしてる場合じゃないんだ。
どう思われようが構わない、俺なりに美竹に手を伸ばそう。
そう決めた俺は青葉に伝えられた「居場所」に向かった。
蘭side
屋上
最悪だ。
中学の頃と同じようにまた、逃げた。
元はと言えばあいつが声掛けてきたからこうなったんだけど。
……いや、モカ達とクラス別になったからって落ち込みすぎたあたしにも問題はあるけど
それでも話しかけてきて、それをモカ達に見られて、ここに連れてきて自己紹介までしちゃって。
それを見られたからこうやって変な噂がたって、クラスメイトにあんなこと言われて。
周りの空気とその言葉で耐えきれずにこうやって屋上に逃げた。
モカやみんなに心配かけてるかもしれない、そう分かっていても無理だった。
──美竹さんって、やっぱりちょっと怖いよね
……うるさい。
──やっぱりあの2人……
……違う。
あいつは、奏はそんな関係じゃない。
むしろ、はじめましてでお節介焼いてきただけのめんどくさい奴で。
関係なんてない、赤の他人。
なのに。
──あんな不良みたいな人と仲良くなんて私には無理
あたしのせいで、あいつがああ言われるのが、変な噂がたつのが嫌で。
だから、逃げた。
きっと奏とその横にいた知らない2人も呆れてるんだろうなぁ……。
「……っ!」
屋上にはもちろん誰もいない。
授業中だから当たり前だけど。
そんな屋上は春の暖かい風が吹いて心地よい。
でも今のあたしには少し鬱陶しいかな。
「戻り……たくないな……」
逃げ出したことで尚更クラスの居場所が無くなった。
どう頑張ってもあたしの居場所はAfterglowのみんなといるとこだけ……か。
「サボりは良くないと思うけどな」
「えっ……?」
屋上のフェンスに寄りかかり座っていたら扉が開いてそこから少し息を切らした奏が現れた。
なんで、授業中じゃ……と聞こうとしたけどそれを読んでいたのか奏は「お前に言われたくない」なんて先に言った。
横失礼、と一言伝えてからあたしの横に座った奏は小さく息を吐いてから口を開いた。
「美竹はどうしたいんだ?」
「どうって……」
「クラスのみんなは思いっきり勘違いしてる、もちろん全員じゃないけど」
「茶化してるのもいるでしょ」
「まぁ人の恋ネタなんて傍から見ればうまい話題になるだろうから」
奏はあたしに怒るわけでもなく質問をしてきた。
巻き込まれたのは奏なのに、本人は気にしてない素振りであたしに話しかけてくる。
なんで、あたしなんかと変な噂立てられたのに……。
「なんで、とか思われてる?」
「そりゃ、あたしなんかのために授業サボるの意味わからないでしょ」
「まぁそれはそう、でも俺にとってはやるべきことだから」
「やるべきこと?」
空を見上げて小さく息を吐いた奏は言葉を選びながらもあたしの質問へ回答した。
その横顔は静かに空を見ている。
「美竹がどう思ってるかは分からないけど、俺は美竹のことを友達だと思ってるし、仲良くしたいと思ってる」
「……なにそれ」
「友達だって思った相手が困ってる時、手を差し伸べる、俺はそういう奴だから」
「理由になってないんだけど」
「悪いな、こういうのに慣れてないから……まぁ、要するに──」
奏は考えながら無理やりに言葉を紡いでいく、全部整理してみても意味わからないこと言ってるようにしか聞こえないけど。
「逃げてちゃつまらない、それにお前は──」
──ひとりじゃない、だろ?
「そう、だけど……」
「クラスは別れちゃったかもだけど、そばにいてくれるんだろ?」
わかったように奏はそう言う。
あたしの気持ちも分からないで、偉そうに。
でも、その顔は真剣で。
「俺も退屈は嫌だからさ、美竹──」
彼は続けてこういった。
「友達になってくれ」
と。
「は?」
「まぁそういう反応になるよな……変な噂もたってるし」
「それ、これであたしとあんたが一緒にいるようになれば誤解は広がるだけだけど?」
「……気にしてたらあのクラス内で退屈になるぞ」
「それは……」
彼の言うことは間違ってない。
先輩達にまで伝播していけば相当の苦労はしそうだけど、気にしてばっかいたらあたしは孤立したまま。
そうなれば退屈になるのも当たり前で、もっとあたしはこうやって逃げるだろう。
なら奏と金輪際関わらない方が、と思ったけど……
席は隣だし、モカ達も彼を巻き込んで何かとやるだろうから、避けるなんて無理だ。
なら。
すごく嫌だけど。
出来るのであれば関係はクラスメイトで留めたいけど。
退屈になるなら、逃げてばっかでいるぐらいなら。
「……いいよ」
「え、何?」
「だから、あんたの友達になって
「あげるって……ま、いいか」
そのかわり、振り回される日々になるけど、いいでしょ?
そんな質問を隠して奏から差し出された手を掴む。
「よろしくな、美竹」
「こちらこそよろしく、奏」
こうしてあたしは奏と友達になった。
彼とのこの関係が、あたし達の「いつも通り」を少しずつ鮮やかにしていくことは今のあたし達には想像出来ない。
この後別々に教室に戻ったあたしたちは何故か一緒に呼ばれて担任に怒られた。
お久しぶりです
長い期間お待たせしました
短編少し更新したあと力尽きてました。
MyGoアニメ、いいですね(亀更新の理由)
次回
「Afterglow」
お楽しみに。