思い出は夕焼けとともに   作:桜花 如月

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Afterglow

 美竹と友達になってから数日後の昼休み。

 青葉たちにそのことを報告したらしく、とても嬉しそうな青葉にまた屋上へ連れてこられていた。

 

「それじゃ〜、友達になったことなので〜……モカちゃん達のバンド、見てもらお〜」

「えっ」

「バンド……?」

 

 ビニール袋から取り出された大量のパンを一定のペースで食べ進めていた青葉が突然そんなことを言い出した。

 バンド、もちろん知らないわけじゃないし腕に巻くやつじゃないこともわかってる。

 そもそも今、大ガールズバンド時代とか言われてるぐらいバンド人気だし、羽丘にも楽器ケースを背負っている人はたまに見かける。

 だからバンド自体は不思議なことではなかったが、美竹がバンドやってる姿が想像出来ない。

 

「どうせすぐ知られるんだし、早いうちに教えた方がいいだろ?」

「巴は気楽でいいよね……」

「蘭、奏に教えて、私たちの曲聴いてもらおうよ!」

「ひまりまで……まぁ、いいけどさ」

 

 嫌がる美竹に対して乗り気な宇田川と上原、そんなふたりに圧された美竹はすぐに意見を変えた。

 あれは諦めたというのが正しいだろうけど。

 

「それじゃ、今この後予定空けといて」

「りょーかい、空けとく」

 

 はぁ……と大きくため息を吐く美竹は昼飯を食べ進める。

 いつの間にか横に来ていたモカが俺の横に座ってパンを食べるのを再開した。

 

「かーくん、ありがとね」

「ん、別に何も……俺も退屈なの嫌だから」

「これであたし達とも友だちだもんね〜」

「……そうだな」

 

 蘭と友だちになったことで自動的に彼女達4人とも友だちになった。

 そして、モカからの感謝、それも受け取る理由はある。

 

 

 ──あたし達がいるけど、そっちのクラスにはまだ知り合いもいないから

 ──だから、蘭に「居場所」を作ってあげて

 ──あたしが手を伸ばすだけじゃ、きっと蘭は……逃げちゃうから

 

「これで良かったのかって思うけどな」

「蘭、入学当日より楽しそうだから」

「なら良かったよ……少なくとも噂は収束してるし」

 

 あれから数日が経ち、「夕凪奏と美竹蘭は友人関係」が上手い具合に噂を抑えていった。

 普通ならそこで「といいながら恋人なんだろ?」みたいな派生も生まれそうだが、友人になったあの日の美竹と俺の行動からその可能性を語る人は少数だけだった。

 ……他にもひとつ、要因はあったのだが。

 とりあえずは何より当の本人が少しでも気が楽ならそれが一番安心できる。

 

「それよりバンド、って?」

「あたしたちのバンドだよ〜、まぁそれは放課後のお楽しみということで」

「気になるけど……ま、わかる事だしいいか」

「そーゆーこと、それよりかーくんのお弁当美味しそうだよね〜」

「……あげないからな?」

「けちー」

 

 パンを食べながらも俺の弁当を凝視する青葉。

 叶恵が作ってくれた昼ごはん、さすがにあげる訳には行かない、というかあれだけ食べてるのにまだ食べようとしてるんだけど、どこに入るのその量。

 断ったらしっかり諦めてくれたのか4人の方に戻って行く。

 この5人のバンド、どんなバンドだろう……? 

 

 

 

 

 この後、昼休憩が終わったあと4人と別れ美竹とともに教室へ戻り授業を受けてあっという間に放課後。

 俺は美竹に連れられて学校を後にした。

 

 向かった先は学校から少し離れたとこにあるライブハウス「CiRCLE」。

 外にカフェテリアがあるかなり大きめの建物にすました顔で入っていく5人の姿を見て少し驚いたが置いてかれないように追っていく。

 

「いらっしゃい、みんな」

「まりなさん、どうも」

「そっちの子は……?」

 

 中に入ってすぐにある受付にいた黒髪ロングの女性に美竹が軽く挨拶をした。

 こうやって話してるあたり、かなり常連みたいで、その中に紛れてる俺を不思議そうに見てくる。

 

「夕凪奏、美竹達の同級生です」

「私は月島まりな、よろしくね……奏君ね、蘭ちゃん達のお友達ってところかな?」

「そんなとこです」

 

 友達、という言葉に美竹がなにか言おうとしたのを青葉が止めてくれた。

 美竹も何かに気づいたのか口を閉じてそっぽを向いた。

 はたから見たら何してんだって言われそうだが、月島さんは面白いものを見たような顔をしている。

 

「それで今日はスタジオ練習?」

「はい、高校入ってからしばらく時間なかったので……あと、奏にあたしたちの歌聞いてもらうために」

「そういうことなら今ちょうど空いてるから使っていいよ」

「ありがとうございます〜」

 

 慣れた会話でいくつかある扉の一つを開けてその中に入っていく。

 中には機材があり、しっかりとしたスタジオになっている。

 

 

「準備するからそこ座ってて」

「ごゆっくり〜」

 

 美竹と青葉が背負ってきたケースを下ろしながらそう言ってきた。

 お言葉に甘えて彼女達の向かい側に座って待っているとそれぞれがギターやベースを取り出してアンプに接続し音を鳴らしていく。

 所謂音合わせというやつなのか、各々が自由にかき鳴らして楽器の状態をチェックしていく。

 その間に鳴る音だけでもかなりそれぞれの技量がどれほどなのかがわかる。

 

 なんて評論家みたいなことを考えていると音が止み全員が準備を終えた。

 

「……それじゃ、聞いて、あたしたちの曲」

 

 ドラムの宇田川がドラムスティックを4回鳴らし、それが合図となり演奏が始まる。

 

 青葉と美竹のギターから始まり上原のベース、羽沢のキーボード、宇田川のドラムと続いて音を奏でていく。

 前奏らしきとこを終えて美竹が歌い始めると青葉のギターが強くなる。

 

『当たり前のようにこんなにも近くでつながってて欠けるなんて思わないよ』

『決めつけられた狭い箱じたばたぶつかってもどうにもなんないことはわかり始めたし』

 

 学校でのツンツンした話し方からは想像できないほどの歌声で綴られていく歌詞が聞いてるこちらの胸に響いてくる。

 そして、曲調が一気に盛りあがっていきサビに入って。

 

『あの日見た黄昏の空照らす光は燃えるスカーレット』

『繋がるからこの空で離れてもいつでも』

 

 すぐに歌われたその言葉を聞いた途端、ある日の情景が浮かんできた。

 

 あれも、この曲のように夕焼け時で──

 

 

 

 

「かーくん、どうしたの〜?」

「青葉……?」

「奏、なんで泣いてんの」

 

 サビが終わりいつの間にか演奏が止まっていて俺の周りに5人が囲むように立っている。

 そして、俺の頬には涙が伝っていた。

 

「ごめん、変なとこ見せて」

「わたしたちは大丈夫、とりあえず深呼吸して落ち着こ?」

 

 羽沢がペットボトルに入った水を渡してくれてそれを少し口にして飲み込んだ後に数回深呼吸をする。

 どうして泣いてたのか理由は明らかだけど、なんであの情景が浮かんで涙を流したのかまではわからない。

 忘れることの無い思い出だからこそ、美竹達の歌と重なって思うところがあったのだろう。

 

「……ありがとう、落ち着いたよ」

「それなら良かった」

「美竹たちは練習続けてくれ、ちょっと外の空気吸ってくる」

 

 落ち着いた、なんて口ではいくらでも言えるもののまだ少しザワついてるこの気持ちを落ち着かせるためにスタジオを後にする。

 後ろから宇田川や上原の止める声が聞こえた気がしたが、青葉によって阻止されたらしく誰も着いてくることは無かった。

 

 

 

 

 外に出た俺はまた深呼吸をして心を落ち着かせる。

 するとCiRCLEの扉が開き月島さんが俺の横に立った。

 

「1人で出てきて何事かと思ったけど、何かあった?」

「心配かけてすみません、ちょっと美竹達の歌聞いてたら幼い頃のこと思い出しちゃって」

 

 どうしたのかと思えば突然飛び出していった俺を心配しての事だったようで、慌てて追いかけてきたらしい。

 この人、受付離れて大丈夫なのか……? 

 

「そういうことだったんだ、てっきり蘭ちゃん達になにか言われたのかなって」

「そんなことはさすがになかったですね……というかどんなイメージ持ってるんです」

「蘭ちゃんツンツンしてるから、強く言っちゃうこともあると思うの」

「それはまぁ、否定出来ないですね」

 

 本人のいないとこですごい話してる気がするけど、実際美竹は時々言葉が強くなることがある。

 それでもさっきみたいに優しいとこはちゃんとあるんだけど。

 

「あの子たち……『Afterglow』、どう?」

「評論家みたいなこと言えないですし楽器の知識も何も無いですけど、引き込まれる音楽でした、それよりAfterglowって?」

「あの子達のバンド名だよ、まだ聞いてなかったんだね」

「トントン拍子でここまで来たので」

「なら今日……はもう遅いし明日にでも本人達から聞いてみたら?」

「そうさせてもらいます」

 

 Afterglow、意味は夕焼け……か? 

 美竹たちのバンド名、歌詞にも夕焼けが出てきたぐらいだし特別な意味があるんだろう。

 次にバンド練参加させて貰えたら聞いてみようか。

 

 

 なんて考えていたら後ろの扉が開いてみんなが荷物を持って出てきた。

 月島さんが言ったように時間が遅い、といってもまだ5時半過ぎでちょうど夕焼けが見える時間帯。

 

「悪い、俺のせいか?」

「違う、あたしの親が早く帰ってこいってうるさくて今日はもう終わり」

「蘭のお父さん厳しいからな……」

 

 俺が戻ってこないからそのまま練習やめたのかと思い聞いてみたら向こう側の事情だった。

 一安心していると月島さんが中に戻っていき、全員で挨拶を終えて帰路に着いた。

 

「なぁ、美竹」

「なに」

「あんな姿見せといてあれだけど、その……またバンド練習に参加させてくれないか?」

「参加したとこで何すんの」

「何か出来るわけじゃないけど、何かで役に立ちたい」

 

 美竹たちの曲を聴いて心が動かされた。

 ただそれだけの理由だし、これから練習に参加して何をするかなんて決めてない。

 

「なにそれ……みんなは?」

「奏なら何か気づくこととかありそうだしアタシは賛成」

「私も賛成だよ」

「はいはい! 私も!」

 

 呆れながらも他のメンバーに賛否を聞いた美竹に対して宇田川、羽沢、上原の順で賛成した。

 そして、最後の1人は……

 

「モカちゃんもさんせ〜、かーくんならそう言ってくれると思ってたから」

「……どういうことだ?」

「ふっふっふ、ひみつ〜」

 

 なにか含みのある言い方をしたが青葉も賛成したことにより満場一致でOKとなった。

 それを聞いた美竹は呆れたように大きくため息を吐いてから俺の方を向いた。

 

「……みんながOKって言ったけど、くれぐれも邪魔しないでね」

「もちろん、そんな事しないよ」

「じゃあ、これからあたし達の……Afterglowのサポーターとしてこき使うから」

「望むところだ」

 

 仕方なく、といった表情をしながらも美竹は手を差し出してきた。

 文句は言いつつも受け入れてくれたようで握手を交わした時には少し笑っていた。




めちゃくちゃお久しぶりです、失踪はまだはやい

かなり期間空いてしまいましたがプロローグ含め第4話、やっとバンドリっぽさを出した気がする



お気に入り、感想評価貰えると作者が舞踊ります。
それではまた次回。
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