思い出は夕焼けとともに   作:桜花 如月

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はじめまして

 Afterglowのサポーターになった帰り、叶恵から『友達もご飯食べることになったから買い物お願い!』とメッセージが送られてきたため自宅の近くにある商店街に来ていた。

 この商店街には喫茶店やパン屋、他にも色んな店が並んでいて幼い時から何度も利用させてもらっている。

 そして今日は並んだ店の中から『北沢精肉店』を選んだ。

 

「いらっしゃいませ! 今日は何にするの?」

「今日もコロッケ、いつもよりちょっと多めにお願い」

 

 店番をしていたのは同い年の北沢はぐみ、この店の店長の子で看板娘をしている。

 定期的にくるため注文聞く前から準備しようとする彼女を止めてちゃんと商品を示しさらに追加があることも伝えた。

 

「なにかあったの?」

「叶恵の友達が家に来てるみたいで、その子の分も欲しいんだけど」

「そっか、なら4個ぐらい増やしておくね」

「ありがと、また来るね」

「うん、ありがとうございました!」

 

 いつもより多い注文数に不思議そうな反応をされたけどちゃんと説明したことで納得してくれて特に深い話をすることも無く帰路につくことに。

 

 

「羽沢珈琲店、会った時から思ってたけどもしかして……」

 

 帰る途中、角にあった喫茶店の店名が目に入りそんなことを呟いた。

 親が忙しかったり幼かったこともありあまりこの商店街で行われるイベントに参加してなかったり、そもそも北沢精肉店以外はあまり行ってない。

 だからこの珈琲店が本当に思ってる通りの人物がいるかもわからない。

 

 なんてことを考えながら自宅へと向かっていく。

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 自宅に着き玄関の扉を開けると普段妹が使ってる靴以外にももう一つ見たことないくつが置かれていた。

 叶恵の友人と言われても基本相手の家に行く方が多いため今日は珍しい。

 そんな叶恵と友人はリビングにいるようで俺が帰ってきたことにすぐ反応した。

 

「あ、おかえり!」

「お邪魔してます!」

「うん、ただいま」

 

 リビングへ向かうと叶恵とその友達がソファーから立ち上がりこっちへ走り寄ってきた。

 元気よく寄ってきた叶恵の友人は紫色の髪に左右に小さいサイドテールを提げた子で、叶恵と同じように目をキラキラさせている。

 

「はじめまして、叶恵の兄の奏、よろしく」

「あこはね、宇田川あこ! かなちゃんの友達です!」

「宇田川……?」

「お兄ちゃん?」

 

 元気よく自己紹介を返してくれたこの子の苗字を聞いて脳裏にあの元気ハツラツな同級生の姿が浮かぶ。

 まだ出会って数日だけど、この元気なところや初対面からグイグイ来る感じは似ている。

 

「もしかして君、お姉さんいる?」

「うん、いるよ! ……います!」

「別に敬語じゃなくてもいいよ」

「じゃあかなちゃんと同じように話す! ……それでおねーちゃんがどうしたんですか?」

 

 敬語じゃなくていいと言ったことに頷きながらも飛んできた質問は敬語になっていた。

 初対面だしすぐに敬語が抜けると思ってなかったし、そんなことよりも気になることを先に解決しておきたい。

 

 

「……の前にご飯食べるか」

「あ、そうだね話すのはそれからでいいよね」

「賛成!」

 

 話せば長くなりそうなためひとまず買ってきたコロッケを食べることに。

 準備する時間もないためコロッケ以外はサラダぐらいしか用意出来ないが、急な話だったため仕方ない。

 適当にご飯をよそって席につき箸を進める。

 

 

 

「これ、商店街のコロッケだ!」

「正解、帰りに寄れるとこだから買ってきた」

「すごい美味しいよね」

「うん!」

 

 そんな会話をしながら食べ進めていきいつもより少し多めに買ったコロッケが全部なくなり洗い物も終わらせたところで話題はさっきの話へ戻る。

 

「それであこのおねーちゃんがどうしたんです?」

「実は……」

 

 食後、ソファーに座った2人に早く話してと促されたため入学してから今日までのAfterglowとの出来事を簡潔に話す。

 Afterglow5人と友人になったこと、そのバンドのサポーターとして練習に参加することを主に伝えた。

 叶恵は驚いた様子で、肝心の彼女は何故か喜んでいる。

 

「おねーちゃん達の演奏、凄いかっこいいですよね!」

「うん、Afterglowの音楽はかっこよくて熱を感じる」

 

 途中で泣いてしまったが、それは置いとくとしてAfterglowが奏でる音楽は胸を震わせる、そんな熱があった。

 音楽の知識なんてまるでないし評論家になるつもりも無いが、彼女達の音は強く響くものがある。

 

「サポーター……って何するの?」

「そこは何も決めてない」

「何も決めてないのにサポーターになったの!?」

「あこはいいと思う!」

 

 サポーターという肩書きがどんなことをするのか気になった叶恵に聞かれたものの本当に何も決めてない。

 とはいえ、何もしないというわけじゃないしそんなことをする気もないし美竹が許してくれないだろう。

 だからこそ、今は何も無いけどこれからサポーターとしてできることを探していくつもりだ。

 

「何も決めてないけど、彼女達の音楽を支えていきたいから、どうするかは今後決めてくよ」

「じゃあまたそのAfterglowってバンドの演奏聞かせてね」

「許可が降りたら」

「おねーちゃんに聞けばOKって言ってくれると思うよ?」

「宇田川がOK出しても美竹がどう言うか……」

 

 俺が練習に参加することにさえ嫌な目をされたから叶恵も参加したいってなったらどうなるかはわからない。

 もちろん青葉や上原はいいって言いそうではあるが、やっぱり問題は美竹だろう。

 そんなことを考えていると2人とも不思議そうな表情を浮かべていた。

 

「宇田川だとどっちかわからないよ?」

「そうだよお兄ちゃん、あこちゃんとお姉さんで混ざっちゃうし二人いたら大変だよ」

「と言われても……」

 

 別に拘ってる訳では無いし理由がある訳でもないけど、相手を名前で呼ぶのには少し抵抗がある。

 初対面の人に対しては尚更名前で呼ぶことはあまりしない。

 兄弟姉妹がいる相手と話す機会もあまりなかったためこういう事態になることもなくて今まで苗字呼びを続けていた。

 

「あこはあこ、おねーちゃんはおねーちゃんで呼び方変えて欲しいです!」

「あこ、でいい?」

「はい!」

 

 叶恵の言う通り二人でいるところに遭遇したら苗字呼びだとどっちに話しかけたか分からなくなるだろうし、名前呼びをすることに。

 巴も名前で呼んだ方がいいだろうけど、呼んだら他の4人にも名前呼びして欲しいと言われそうな気がする。

 彼女達を名前で呼ぶのにはもう少しだけ時間をもらおう。

 

 

 話してるうちにすっかり時間が遅くなっていたため俺から巴に連絡をしてあこが泊まっていくことに。

 俺と2人、交代で風呂に入り寝る前に少しだけUNOや他のボードゲームで遊んだ後2人は叶恵の部屋に行った。

 俺も眠気が襲ってきたため自室に入り布団に横になる。

 

 

 Afterglowのサポーターとして、彼女たちへ何をできるのか、改めて少しは考えた方がいいのかもしれない。

 気負いしすぎても身体に毒なのはわかっているけど、それでも少しは考えてしまう。

 

「居場所、ね」

 

 初めてあった日、青葉に言われたその言葉を口にしたあと俺は眠りについた。




お久しぶりです。

今回さらっと出たはぐみが蘭達と同い年と言われても未だに混乱する

ちなみに叶恵とあこは同じクラスです。


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