思い出は夕焼けとともに   作:桜花 如月

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忙しない休日

次の日。

 

ピロリン、という受信音で目を覚ました俺は携帯の画面を見る。

 

『今日の昼、駅前のラーメン屋に来てくれ!』

 

と。

巴からのメッセージが届いていた。

幸い、というかもちろん今日という休みも暇を持て余しているし断る理由もないため二つ返事で了承し昼までの暇をどうしようか考える。

 

「あ、そうだ」

 

昨日の今日で即行動、というのもだいぶ感化されている気もするがこういう時こそ動かなきゃ損、というやつだ。

というわけで暇を潰すために約束の店……の横にある楽器屋に足を運んだ。

 

「あれ〜、かーくん〜?」

「その声は、やっぱ青葉か」

 

のんびりとした、それでいてどこか探るような声で話しかけてきた青葉は片手に大きな紙袋を持ちながら商品を眺めている。

 

「楽器屋なんてめずらしーとこ来るじゃん〜、どったの?」

「ちょっと昨日、上原と話をしたんだ」

「ひーちゃんと?なになに〜?」

「別に特別なことは話して……したけど」

 

元はと言えば青葉からの提案から始まったことなんだけど、というのをのみこんで事の経緯を話す。

 

「なるほど〜、かーくんちゃんと行動に移して偉いね〜」

「なんだよその扱い……それで青葉は何を買ったんだ?」

「あたし?あたしはギターの弦と〜、パン〜」

 

何故か頭を撫でようとする青葉の手を振り切りながら手に持っているものについて聞く。

既に買い物は済ませていたようで、この店がレジ袋としているビニール袋の中には弦──らしい物が入っていて、さらに先程の紙袋の中身を見せてきた。

 

「そこまで聞いてないんだけど…というかその量食べるのか!?」

「そりゃもちのろんですよ〜、それでかーくんは、どうするの?」

「どうする、って?」

「楽器屋に来たなら、バンドでも始めるのかなーって」

「それは……」

 

思い立ったが何とやら、とはいうがまだそこまでやるかは決まってない。

そもそも一緒にやるメンバーもいなければ、ギターを買うだけの金もない、そんな状態でバンドを組むなんて話は出せないだろう。

 

「……まだ、わからない」

「そっか〜、でも……」

 

──かーくんがやりたい事をやるんだよ?

 

青葉はそんなことを言うと「お先〜」といいながら店を出ていった。

なんなんだあいつ……と愚痴っているうちに約束の時間になり外に出ると、巴が青葉と話していた。

 

「お、なんだモカと一緒だったのか?」

「いや、そうじゃないけど……」

「かーくんひどーい、モカちゃんを抜きにともちんと二人でラーメン食べるつもりでしょー」

「「パンあるのに!?」」

 

パンを食べながらめちゃくちゃわかりやすい嘘泣きをしてる青葉はチラチラとこっちを見てきていた。

巴にも確認をとって結局三人でラーメン屋の列に並ぶ。

 

「それで、なんで俺?」

「暇してそうだったから」

「酷いな、事実だから何も言えないけどさ」

 

高校生にもなって何かやることがあるかと言われれば何も無くて休日は暇している。

そのため友人からの誘いは断らないし断れない。

 

「というか青葉だって暇してるじゃん」

「鈍いな〜」

「何故そうなる!?」

 

ギターの弦を買うという目標のついでにパンを大量に買っている青葉にも誘いがいってそうなものだけど、先程の言葉からして誘ってなかったぽい。

そこを指摘すると何故かからかわれてしまう。

 

「ま、話は食べながらということで」

 

巴がそう言うとやっと俺たちの番になっていてそのまま席に案内された。

結局青葉も付いてきて三人になったが、別に気にすることでもないため普通に注文する。

青葉はパンが大量にあるにもかかわらず俺たちと同じ量を頼んでウキウキしている。

 

 

「それで、奏」

「どうした、改まって」

 

お冷を貰い一気に飲み干した巴は軽く咳払いをしてから俺の目を真っ直ぐ見てそう言った。

真剣な雰囲気で、何を言うのかと身構えていると──

 

「あこと一緒に遊んでくれてありがとう」

「俺は別に、そんな大層なことはしてないけど」

「だとしても、あこがいつも《かなちゃん》とそのお兄さん、つまり奏のことを嬉しそうに話すからさ」

 

なんだそんなことか、と思ったが口には出さず。

あこがうちに遊びに来てからというもの、なにかと遊びに来たり叶恵と遊びに出かけたりしていた。

たまに一緒になって遊んだりしたが、特になにかしたかと言われるとそんなことは無い。

 

「それなら俺も感謝してるよ、巴とあこの呼び方どうしようとか考えてたし」

「そう、それ!それだよ!」

「ともちん盛り上がってる〜」

 

──一緒に呼ばれたと思うから、名前で呼んで!

 

そうあこに言われたから名前で呼ぶことに関して躊躇いを持たずに普通に呼べている。

別にそんな重い過去があって名前を呼べないとかではないが、それでもああいう一言があると気持ちが軽くなるし実際軽い。

 

「モカちゃんも名前で呼んでほしいけどな〜」

「青葉はダメ」

「ひどーい」

 

そんなやり取りの中届いたラーメンを食べてまた少し談笑してから俺と二人は別行動……かと思えば、そのまま三人で商店街に足を運んだ。

 

「あれ、上原と美竹?」

「げっ」

「蘭〜、どったの〜?」

 

商店街にある花屋の前を通り過ぎると、見覚えのある後ろ姿がふたつあったため声をかけた。

なんかすごく嫌そうな声を出された気がするが、青葉がすぐに横から聞くと「ちょっと、見てただけ」と何故か照れながら美竹は説明してくれた。

 

「蘭の家は華道がすごーく有名な所なんだよ〜」

「あ、モカ!……別に、それがきっかけじゃないから」

「よよよ……怒鳴られた〜」

「「今のはモカが悪い」」

 

実は〜、と前置きを添えて青葉が美竹の家のことをサラッと説明した。

美竹はどこか嫌そうにしながらも、その手は優しく花を愛でている。

そして青葉が被害者かのように嘘泣きをすると上原と巴がツッコミを入れて青葉が「かーくんヘルプー」と俺の影に隠れようとして肩を掴んできた。

 

「こーら、やめなさーい」

「味方がいなーい」

「こんな休日に集まるなんてね」

「あ、それなら……」

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませー!……って、みんな一緒?」

 

江戸川のこの商店街まで来て、それもみんないるとなればここしかない。

上原が閃いた!と声を上げてそう言ったため、5人で羽沢珈琲店にお邪魔することに。

 

「いつの間にか大所帯だね〜」

「いーじゃん、こういうのも」

「そうだね、蘭ちゃん?」

「なんであたしに聞くの……」

 

各々注文を終えてゆったりとカフェの空気のような穏やかな会話を繰り広げる。

気づいたら接客じゃなく俺たちと同じテーブルに座った羽沢も入れて6人──Afterglowと俺が揃った。

そして、何故か4人は美竹に視線を向ける。

 

「……悪くない、と思う。こういうのも……」

「出た〜」

「ちょっと、やめてよモカ」

 

まんざらでもない、そう言いたそうに美竹は悪くない、そう呟いた。

メンバーはそれを聞いていつものだと楽しそうにしている。

 

「……ははっ」

「ん?どうした奏?」

 

この場の雰囲気につい笑みをこぼす。

 

「いや……楽しいなって」

「そうでしょ〜」

「なんでお前が自慢げになるんだ」

 

今までは感じなかった友人との忙しない休日というのは、本当に楽しい

そう思える充実した時間を過ごした、心からそう思う。

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