「―――敵戦車撃破!!」
ここは、ドイツ ライン=ルール地域。ティーガーⅠ237号車"ステファン"を駆るナチス・ドイツの軍人、ペーター・マチアス・ミューラーはそう叫ぶ
彼等が駆る"ステファン"はジャーマングレーの塗装に、砲身には戦車を撃破したキルマークが描かれていた。ドイツ戦車らしく、堅実な性格である。ただ、意外と撃たれ弱いみたいだが………
「シャイセ!!早く撤退した方が良いだろ!」
"ステファン"の操縦手、ケルツは叫んだ。ミューラーとは1941年のトブルクからの付き合いであり、軽口を叩けるほど仲が良い。ただし、ハンドルを叩いたりするなど扱いが雑ではあるが………
「駄目だ!撤退するな!戦え!」
"ステファン"の砲手、シュローダーは撤退するなと言う。彼はピカピカの新兵だ。ケルツ曰く『犬みたいに』とミューラーに付いて回っている。やる気に満ち溢れた良い新兵ではあるが、中身はコテコテのナチス崇拝者であり、たまに狂信的になってしまう。砲手としての腕は新兵の割に確かなもの、行進間射撃は出来ないことはないが、苦手みたいだ
だがしかし、司令部からの撤退命令で、本隊を目指す為に橋を渡ろうとした時
ドカーン!!
「橋が爆破されてる―――!?」
目の前で橋が爆破。それに巻き込まれ、"ステファン"は頓挫。履帯が切れてしまった
「………橋の爆破が早かったな」
「チッ………最初から見捨てるつもりだったのかよ………!」
ケルツはもう戦意を喪失していた。そして戦車を降りてとぼとぼ歩いていく
「戻れケルツ!」
「俺達は信じてきた!神が救ってくれると!だが周りを見てみろ。全てが無意味だ」
と絶望の言葉を投げかけ、逃げ出した………が
タタタン!!
近くからの発砲音………撃ったのはシュローダーだ
「団結こそが強さ!そう仰ったのは貴方です!」
「ケルツ!!」
ペーターはケルツに駆け寄るが、時既に遅かった。シュローダーはMP40を手に単独で連合軍兵士と戦闘を繰り広げた
ケルツの言葉と死、シュローダーの狂信が決め手となり、ペーターは襟首に付けられた鉄十字を捨て、連合軍兵士に降伏した
しかし、黙って見ていない者も居た
「Nein!」
シュローダーはやめろと叫び、半狂乱になりながら自分が持っているMP40をペーターに向け………
タタタン!
「………とは思ったが、まさか生きてるとは」
彼は生きていた。いや、別の人生として生きていた。
「………ケルツ」
この名前を出すのは久々だった。この子になってから数年………もう高校二年生だった
"彼女"は那須 友梨奈(なす ゆりな)。ペーターの二度目の人生である