「大洗め……良い気になるなよ……!」
完全に出鼻を挫かれたアリサ。今は苛立ちながら無線機のダイヤルを回している。元はと言えば彼女の自業自得の筈なのだがそんなことは微塵も考えていなかった
そして、みほの声を拾う
『全車両、128高地に集合してください。現在のサンダースの戦車で、一番の脅威はファイアフライです。危険ではありますが、先に128高地に陣取って、上からファイアフライを一気に叩きます!』
「く………クククッ………アハハハハハハハッ!!彼奴等、捨て身の作戦に出たわね!」
悪役のように笑うアリサ。そして嫌らしい笑みを浮かべながら無線機をとる
「でも、愚かな判断ねぇ………丘を上がったら、此方の良い標的になるだけよ……隊長、大至急128高地に向かってください!」
『え?いきなり何?どういう事?』
ケイは訳がわからないように言う。
「敵の全車両が現在、128高地に向かっています。其所に全車両が集まる模様です」
『ちょっとアリサ、それ本当?どうしてそんな事まで分かっちゃうわけ?』
明らかに疑っているケイだが、アリサは
「私の情報は確実です……!」
『……!……OK!128高知に向かうわよ!全車、Go ahead!』
サンダース戦車隊は128高地へと向かう。勿論嘘なのは後で気づくが
「アヒルさんチームは、サンダースのフラッグ車を探してください。見つけても、その場で撃破しようとは考えず、直ぐに戻ってきてください」
『了解しました!』
「『八九式が先行偵察に向かうみたいだ』」
アヒルさんチームがフラッグ車捜索に向かい前進した
そして128高地に着いたケイ達だが……
『なにもないよ〜!!』
であった。
「そ、そんな筈は……じゃあ大洗の戦車隊は何処に……?」
すると
「「ん?」」
目の前に現れたのは八九式であった。両者固まっていたが
「み、右に展開!急げーーーー!!」
「蹂躙してやりなさい!!」
「報告する?」
「するまでもないわー!撃て撃てえ!!」
自棄っぱちで発砲命令を出したため、M61弾は当たることなく八九式のエンジンルームを通り過ぎた
「此方アヒルさんチーム!敵フラッグ車を0765地点にて発見しました!此方も発見され、現在撤退中です!」
典子が、みほに通信を入れる。
大洗本体でも行動を開始した
「0765地点ですね!なら逃げ回って敵を引き付けてください!0615地点へ、全車前進!」
みほがそう言うと、操縦手の麻子がⅣ号を動かした
「武部さん、携帯で各チームに連絡を!」
「分かった!」
「何やってる!?相手は八九式*軽戦車*だぞ!?」
「あの……八九式は軽戦車じゃなくて中戦車では?」
「そんなことはどうでも良いのよ!!撃て撃て!!」
ハア〜と砲手が静かにため息を吐く。今の状況は八九式が発煙筒を投げており、前の視界は見えなかった。
「視界不良で迂闊には撃てませんよ!」
「そんなこと関係ないわ!良いから撃て!!」
砲手の子はやれやれと思いながら75mm砲を撃つが当たらなかった
「装填!遅いわよ!」
「すみません……砲弾が遠くて……」
装填手が言うとアリサは
「なら機銃で撃ちなさい!」
「ええっ!?機銃で撃つなんてカッコ悪いじゃないですか!!」
「闘いにかっこいいも悪いもあるか!手段を選ぶな!!」
砲手の子は頭を掻くようにしながらM1919ブローニング機関銃を撃つ。
八九式はブローニングの攻撃を弾きながら0765地点を目指す
「『来た。八九式とM4A1だ。シュローダー、引き付けて撃て』」
「『了解しました!サー!』」
『全車、突撃します!但し、カメさんはウサギさんとカバさんで守ってください!王虎さんチームはあんこうについてきてください!』
「『ケルツ、Panzer vor!!シャーマン共に報いる時が来た!』」
「『やってやるぜ!』」
そして、八九式が左に離脱。その時アリサが見たものは
「うわぁぁーーッ!?き、キングタイガーに狙われてる!?後退後退ぃぃーー!!」
「『目標補足、フォイヤ!!』」
シュローダーが引き金を引き88mm砲が火を吹く。撃った弾はM4A1の側面部分を掠るかのように飛んでいった
「き、緊急事態発生!大洗女子学園の戦車全てが、一斉に砲撃を仕掛けてきます!キングタイガーも……!」
『ええ?』
アリサは無線機をとりケイに伝えるが、返ってきたのはケイの唖然とした声
『ちょっとアリサ、それどういう事?さっきと話が全く違うじゃない。そもそも128高地に、大洗の戦車なんて1輌も居なかったのよ?どうなってるの?』
アリサに疑問の声をぶつけた。
「は、ハイ……恐らく無線傍受を、逆手に取られたのではないかと……」
『無線傍受ですって……!?こんの、大馬鹿者ォォーー!!!』
「ヒィッ!?申し訳ありません!」
無線機からケイの怒号が響き渡り、アリサは縮こまった声しか出なかった
『アリサ!アンタ何て事してるのよ!戦いはフェアプレーでやるべきだって、何時も言ってるでしょ!?』
アリサはそれに答えようとしたが、続けざまに大洗の砲撃を喰らい、声が掻き消された
『もう!こうなったら仕方無いわ!さっさと逃げなさい!Hurry up!!』
「い、Yes,ma'am!!」
そうしてアリサは、操縦手に全速離脱の指示を出し、M4A1を急発進させる。
「『俺達は後ろからついて行くだけで良いみたいだな……本隊が合流する前に!』」
ケルツがそう言う。サンダースでの一番脅威といえば、シャーマンVCファイアフライ、ただそれだけだ
「あの子ったら………それにしても、無線傍受なんて事やっといて全車両で反撃しに行くってのも、アンフェアよね………」
他のシャーマンを引き連れ、アリサの救援に向かっているケイは1人溜息をついた。そして暫く走らせていると、彼女にとある案が浮かんだ。
「なら、此方も同じ数で行けば良いか!あっちにはナスのキングタイガーも居るのよね。なら」
そうしてケイは、他のシャーマンに通信を入れた。
「敵は六両だから四両ついてきて!後は適当な場所で待機!」
『Yes, ma’am!!』
『ケイ、私もか?』
「ええ。それに、戦ってみたいのでしょう?ナスのタイガーと」
ナオミはこの時を待っていた。試合初めから友梨奈のティーガーIIと戦ってみたい……そういう衝動に駆られた。彼女達が駆るティーガーIIは黒森峰のとは違う。そう感じ取っていた
「ふっ……Yes.ma’am」
ナオミはニヤリと笑う。
(なんでしょうか……?この殺気というか……?)
シュローダーは得体の知れない何かを感じ取っていたが、それが何かは分からなかった