「『ヤクトラが硬いッ!!』」
シュローダーが105mm砲を再び撃つが、傷を付けたぐらいだった。
「『このままだとこっちがやられるぞペーター!』」
「『分かってる!みほの指示に従え!』」
と、ハートマンが急いで装填してシュローダーが撃つ。
「今の向こうと此方の差は18対8。それと、所々に列の乱れがある。これだけ崩せれば………………」
Ⅳ号のペリスコープから外の様子を窺っていたみほは、そう呟いた。
「良し、此処から撤退します!」
「ええっ!?ですが西住殿、前方から黒森峰が上ってきていて、退路は塞がれてます!」
撤退を決めたみほに、優花里がそう言う。
「大丈夫。黒森峰の列が乱れてきてるから、其処を突けば………………」
『西住ちゃん!例のアレ、そろそろ始める?』
そう言いかけた時、単独行動を行っていたカメさんチームから通信が入った
「はい!」
杏からの問いに、みほは力強く答えた。
「おちょくり作戦、始めてください!」
『あいよ!お任せあれ!』
そうして、会長からの通信は切れた。
「よぉ~し………………小山、河嶋。準備は良い?」
「「はい!」」
「良し、それじゃあ………………おちょくり開始!」
会長の指示で、柚子はヘッツァーを発進させて作戦を開始した。
その頃、1輌のヤークトパンターが走っていた。そのヤークトパンターは、カメさんチームの待伏せ攻撃を喰らい、本隊から離れて修理を終えたばかりだった
「ふぅ、何とか修理が間に合った~…………さて、早く本隊と合流しなきゃ!」
ヤークトパンター車長の直下さんこと小島エミは本隊と合流すべく急いでいた。すると
「ん?何の戦車………………ってああ!?」
後ろを振り返った視線の先に居た戦車は、先程自分の戦車の履帯を破壊した、カメさんチームのヘッツァーだった。
「またあんな所から出てくるなんて………………7時の方向に例のヘッツァーよ!方向転換を急いで!」
「ほいっ」
エミは操縦手にそう命じ、操縦手が大急ぎで方向転換しようとするものの、それも虚しく杏から砲撃を喰らい、履帯に命中。また行動不能に陥れられるのであった。
「うわぁーっ!?コレさっき直したばっかなのにぃーッ!」
履帯を破壊されたヤークトパンターに、エミは悲鳴を上げる。
「おのれェーッ、ウチの履帯は重いんだぞォーーッ!!」
その横を涼しげに通り過ぎていくヘッツァーに、エミは腕を振り回しながら叫んだ。
「へっへーんだ、そんなの知ったこっちゃないね………………そんじゃ、突撃ィーッ!」
からかいながら会長は相変わらず車内に持ち込んでいる干し芋片手に前方を指差して叫ぶ。彼女等が向かっているのは、黒森峰の本隊。其所に乗り込み隊列を徹底的に乱すのが、おちょくり作戦だ
「それにしても、あんな凄い戦車の軍団に単身で乗り込むなんて……………」
「友梨奈達じゃあるまいし……今更ながら、無謀な作戦だな………」
「こう言うのって、敢えて突っ込んでいった方が安全なんだってよォ~?」
会長は何処からか持ち出した雑誌を片手に摘まんでみせた。
「それは後にしましょうか………………」
会長に呆れながらも、柚子はパンターとエレファントの間に挑発するようにヘッツァーを停めた。
「んなっ!?」
それを見ていた他のパンターGの車長は、突然現れたヘッツァーに驚く。
「11号車、15号車!脇にヘッツァーが居るぞ!」
その指示を受け、ヘッツァーの左隣に居たパンターは一旦後退して、走り出したヘッツァーを狙おうとするものの、直ぐ傍にエレファントが居た。
「くっ!相討ちになるから撃てない!」
流石に同士討ち出来ない一行は、混乱状態に陥る。
『此方17号車!自分がやりま…………ッ!』
1輌のラングがヘッツァーを狙おうと旋回するも、大洗チームからの砲撃を側面に受けて撃破される。
『申し訳ありません!やられました!』
『な、なら私が………!』
『待て!Ⅲ突が向かってくるぞ!』
黒森峰チームは完全にどうすることもできなかった
「『黒森峰隊、ヘッツァーのおかげで混乱状態だ。チャンスは今かもしれん』」
「『よし……総員気合いを入れろ。あの火中の中に突っ込むのは確実だ!』」
そして、無線が入る
『右方向に突っ込みます!全車両、全速前進!』
みほからの指示が飛び、大洗チームの戦車は一斉に坂を下り始める。
『レオポンさん、先行してください!王虎さんは後衛を!』
『あいよ!盾ならお任せってね!』
「了解した」
みほの指示で、レオポンチームのポルシェティーガーがⅣ号の前に出て突き進む。ラングが発砲するも、100mm厚の装甲に阻まれてしまった
そうして、大洗の戦車は続々と下ってきて、そのまま立ち尽くす2輌のラングの間を通過していく。パンターGが王虎チームに向けて発砲したが、側面の傾斜のきつい部分に当たり跳弾した
極め付きに、最後尾にいた王虎チームが煙幕発射機から煙幕弾を発射し、あたりが煙に包まれた
「いやっほー!」
「ヤレヤレ、アレはスリル満点だな」
ポルシェティーガー操縦手であるツチヤは歓声を上げ、麻子は無表情ながらもそんなコメントを呟く。
「『こんなこと、あまりなかったよな……』」
「『全くだ!操縦士として、最高の気分だ!!』」
ケルツは少し興奮状態だった
『すみません!大洗全車両に逃げられました!』
『何やってるのよ!せめて一両はやりなさいよ!』
王虎チームの放った煙幕弾が未だに残り続けており、うまく動けずに居た。
『体制を立て直して追え、此方も直ぐに向かう』
1人冷静なまほはそう言うが、エリカが先行すると言い出し、そのままティーガーⅡを向かわせる。
「ふむ、副隊長が向かいましたか………………それにしても、あんな道で無茶な走り方をすれば、ティーガーⅡが悲鳴を上げるのに………」
「副隊長、短気ですからね………………」
三郷と搭乗員達は、エリカのティーガーⅡは悲鳴をあげるだろうと予想した。結果は見事的中。履帯が外れ、転輪が転がっていった。その後、エリカ達はティーガーⅡから降りてきて、壊れた部分の修理を始める。
エリカは地団駄を踏みながら何か喚いている。
三郷や、同じティーガーⅡの搭乗員は『やっぱりね……』という表情であった
「(なら、大洗のティーガーⅡは何故履帯が外れなかったのだろうか……?まあ、副隊長との扱いの違いっていうのがあるのかもね………)」
と、思っていた三郷であった