重ちー(偽)のヒーローアカデミア   作:銀の鈴

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シーズン4(ヒーローインターン編)

 

──ミルコヒーロー事務所とヒーローインターンの契約を正式に行なった。

 

僕らいつものメンバー三人以外でインターン採用になったのは、梅雨ちゃんと三奈ちゃん、響香ちゃん、そして透ちゃんの四人だ。

 

「トガヒミコです。改めてよろしくお願いします。重清くんの護衛は任せて下さい」

 

「八百万百ですわ。これからもよろしくお願い致します。残念ながら機動兵器は現在メンテナンス中です。実際にはメンテナンスなど必要ないのですが、車でいう法令点検のようなものです。受けなければ私有地以外では使用禁止になります。本当に残念ですわ」

 

「ケロ、蛙吹梅雨です。今日からお世話になります。得意なのは水辺の活動になります。地上での活動でも応用できる能力はあるので、足手纏いにならないように努力します」

 

「えっと、芦戸三奈と言います。溶かすことしか出来ません! とにかく頑張ります!」

 

「耳郎響香です。索敵には自信があります。戦闘は努力します!」

 

「葉隠透です。重清君の敵は確実に暗殺してみせます」

 

「よし、葉隠は自重しろ。他の新しい奴らはそう緊張するな。過度な緊張は筋肉を硬直させるからな。適度にリラックスしてろ。ただし、そこのソファで転がってる重清みたいにダラけ過ぎたら容赦なく蹴っ飛ばすからな」

 

『はいっ!!』

 

ミルコ姉さんの言葉に皆は一斉に返事した。

 

皆、やる気に満ちているね。

 

実はこれだけクラスの女子達が固まったならいっそのこと女子全員が集まるのもいいかなと思ってお茶子ちゃんにも声を掛けたんだけど、彼女には断られてしまったんだ。

 

『いやー、そこに混じって誤解されたら困るから、私は遠慮するね』

 

うん、よく分からない理由だった。

 

まぁ、無理強いするような話じゃないからいいんだけどね。

 

『オイラは行きた――ゲボォッ!?』

 

『トガの蹴りが峰田の鳩尾に!? なんだ鳩尾か。よう、峰田よかったな。トガの怒りはまだ冷めてないみたいだけど、お前の股間を狙わないだけの慈悲はあるぞ』

 

『矢安宮よ。我ら男子も遠慮しよう。流石にそれ以上の人数は迷惑だろう』

 

常闇君の言葉は尤もだった。

 

職場体験と違いヒーローインターンは給料が発生する。

 

正規のサイドキックより能力の劣る学生が大挙して押し掛けたら迷惑でしかない。

 

総勢七名のヒーローインターンを受け入れてくれたミルコ姉さんには感謝しよう。

 

よし、少しでもミルコヒーロー事務所の経営に貢献したいから地図に印を付けよう。

 

「ミルコ姉さん、この壁に貼ってる大きな地図に印を付けてもいいかな? うーんと、今日は3箇所ぐらいかな。泥酔させるのはやめておくね」

 

「……そういや、この地域はヴィラン被害が極端に低かったな。確かそれは10年ぐらい前からだったはずだ。それで重清は高校一年だな。こいつが個性に目覚めたのは……よしっ、別に気にしてもしゃあねえな! 重清、マジックで描こうとするな。あっという間に地図が真っ黒になるだろ。ほら、この付箋を貼ってくれ」

 

ミルコ姉さんが付箋を渡してくれた。

 

そうか!

 

マジックで書いちゃうと、次に書く時に区別がつかなくなっちゃうね。

 

僕はペタペタと付箋を貼っていく。

 

「よし、今日は全員でパトロールに行くか。手頃なヴィランがいたらお前らに任せるからな。気を緩めるなよ」

 

ミルコ姉さんの言葉にクラスの皆は真剣な表情になった。

 

うん、頑張ってきてね。僕は護衛のヒミコちゃんと一緒に事務所を守り通してみせるから安心してね。

 

実はクレイジー・ダイヤモンドが具現化した影響で新しい能力が生まれたんだ。

 

その能力は『護衛』だ。

 

少数しか指定できないけど、護衛相手を指定する事で50mを超えて遠隔治癒できるようになったんだ。

 

うん、ヒーローインターンを行うに際してミルコ姉さんと相談して設定を変えたんだ。

 

インターン中だと危険なことも多いだろうから皆の安全を守るためだ。

 

「仕方ない奴だな。それは自分が事務所で待機しときたいからだろ。重清、お前もついて来い。機動兵器でのパトロールじゃなく、徒歩でのパトロールだ。まだ経験してないだろ」

 

うぬぬ、仕方ない。何事も経験だもんね。

 

「(ねえねえ、聞いちゃダメな会話してない?)」

 

「(今更だろ。それにここにいるメンバーなら他言の心配はないって信頼の表れだから、ウチは嬉しいけどね)」

 

「(うん、そうだね。それに重清君の秘密を漏らそうとする馬鹿がいれば、私が絶対に殺すから安心してね)」

 

「(葉隠が怖いよ!? あ、あれ? 葉隠ってこういう奴だったっけ?)」

 

「(ある意味では心強いけどミルコさんが言っているように自重してね。貴女がそんな行為をしたら重清ちゃんが悲しむわ)」

 

「(うん、分かった! 重清君に害なす奴は生まれてきた事を後悔させる程度に抑えるね!)」

 

「(やっぱり葉隠が怖いよ! でも、矢安宮を傷つける奴を許さないのは同意だよ!)」

 

「(もう、あまり気負わないでよ。矢安宮はウチらが守ってあげないといけない様な弱い男じゃないんだからね。むしろウチらが守られる方だよ。その事を念頭において行動しなよ)」

 

「(矢安宮は頼りになるもんね! 納得だよー!)」

 

「(うん、重清君は無敵だもんね。油断さえしなければ敵なしだよ!――だからこそ重清君の隙間を私が埋める)」

 

「(ケロ、本当に自重してね。重清ちゃんが悲しむのは許さないわ)」

 

「(うん、本当に大丈夫だよ。私もずっと重清君の側にいたいもん。証拠を残すようなヘマは絶対にしないよ)」

 

「(全然大丈夫じゃないヤツだー!!)」

 

「おいっ、お喋りはそこまでだ。パトロールに行くぞ!」

 

ミルコ姉さんの言葉で、僕らは四人一組になって気合を入れた。

 

『――行くぞ!!』

 

 

 

 

予定以上にヴィラン確保が捗ったから少し遠出をする事になった。

 

「パトロールというよりも散策に近いのです」

 

「そうですわね。この辺りは来たことがありませんわ」

 

「この辺りまでくると他所のヒーロー事務所の縄張りだからな。あまりデカい面して歩いていると文句を言われる場合もあるから注意しろよ。まっ、出会ったときに礼儀正しく挨拶しとけば大抵は問題ない」

 

「ケロ、ヒーローにも縄張りがあるのね」

 

「ヒーローは基本的に仕事の奪い合いだからな。特に稼げる副業を持っていない奴は必死だから現場で揉めやすいぞ」

 

「ヒーローも副業を持たないと生活が大変なのね。世知辛いわ」

 

「そうだな。幸いうちは色々とイベントで声が掛かるし、グッズ販売でも稼げてるからな。事務所として余裕はあるから心配はいらないぞ」

 

「ミルコさんは子供人気が高いからぬいぐるみも種類が豊富ですよねー!」

 

「そういえば少し前に音楽関係のイベントでミルコさんを見かけた事あります。一曲だけ歌ってましたよね!」

 

「ああ、最近は特に子供向けのグッズが増えたな。えらいデフォルメされて可愛らしくされたぬいぐるみなんかは本当は勘弁して欲しいぜ。耳郎はあのイベントに来てたのか、あんときは普通に警備の仕事だったんだ。つい私のファンだっていう司会者に乗せられて歌っちまった」

 

「グッズかあ。透明の私だと難しいなあ」

 

「透ちゃんならお化粧をしてウィッグでも被れば今すぐにでも美少女ヒーローとして――」

 

「あわわわっ!? 重清君っ、私の素顔については内緒だってば!! 恥ずかしいから言わないで!!」

 

「あ、ごめんね」

 

「え? え? 葉隠ってそんなに美少女なの!? っていうか矢安宮は葉隠の素顔を知ってるのー!?」

 

「うん、知ってるよ。別に皆も見たいなら簡単だよね。ファンデーションを――」

 

「そんな裏技を教えちゃダメー!!」

 

慌てた透ちゃんに口を押さえられる。

 

「そっか。言われてみると簡単な方法があったんだ。葉隠、私の化粧品を貸すから今度あんたの素顔を見せてよ」

 

「ううん。肌に密着したらすぐに透明になるから無理だよ」

 

「はいはい。すぐにって事は短時間なら見えるんだよね。それでいいから見せてよ」

 

「もうっ、重清君のせいで私の素顔が見られそうだよ! 責任をとって!」

 

「うーん。じゃあ今度の休みに透ちゃんが食べたいものを奢るって事でいい?」

 

「わーい! じゃあね、休日前の夜に駅前のホテルでディナーがいいな! 外泊届は提出しておくね!」

 

「却下ですわ!! 代わりに私が高級デザート食べ放題に連れて行ってあげます!! 腹がパンクするまで食べまくりなさい!!」

 

「えぇ? ヤオモモは関係な――ううん、わかった。それで手を打つね!」

 

「(ヤオモモの鬼の形相……腰が抜けるかと思った)」

 

「(意外と凶暴だった葉隠があっさり引くぐらいの迫力があったねー!)」

 

「(重清ちゃんが視線を向ける一瞬前に満面の笑みになった早技の方が怖かったわ)」

 

「(モモちゃんの額に『鬼』と書くのはどうでしょうか?)」

 

「ハハハ、なんかこうやってお前らと歩いていると高校時代に戻った気分だぜ。ついこの間まで高校生だった気がするんだがもう随分と経っちまったんだよなぁ」

 

「ん? ミルコ姉さんが女子高生に戻りたいなら僕が――ングング」

 

ミルコ姉さんを女子高生だった頃に戻すよ。と言いかけたらそのミルコ姉さんに口を塞がれた。

 

「(お前はヤバい話を迂闊にするんじゃねえよ!)」

 

コクコクと頷いたら口を塞いでいた手を離してくれた。

 

「(ねえねえ、本気で聞いちゃいけない話をしてない?)」

 

「(シッ! それ以上は喋っちゃダメだよ!)」

 

「(……周囲の人間で今の話を聞いていた者はいないようです)」

 

「(タイミングが良かったみたいね)」

 

「(ハァ、頭が痛い話ばかり出てきますわ)」

 

「(ふふ、重清くんは意外性の男ってことですね)」

 

「(ヒミコさん。貴女、段々と悩み事を私に押し付けて思考を放棄していませんか?)」

 

「(そんなことはありません。私の頭の中は重清君のことで満たされているのです)」

 

「(重清さんの悩み事で満たされているのでしょうか?)」

 

「(はい! 常に新しいイチャイチャの仕方を考えて悩んでいます!)」

 

「(ぶっ飛ばしますわよ!!)」

 

「(モモちゃんが怖いのです!!)」

 

「でも、ミルコ姉さんの制服姿を見てみたかったな」

 

「あん? 私の制服姿なら写真があるぞ。見たいのなら事務所に帰ったら見せてやるよ」

 

「やった!! 私服姿や水着姿とかもあるよね!!」

 

「いやまあ、あるけどさ。そうグイグイこられると見せるのが恥ずかしくなるというか」

 

「ううん、大丈夫だよ。ミルコ姉さんの水着姿は恥ずかしくないからね。僕の宝物にするね!」

 

「おいおい、誰も写真のデータまでやるとは言ってねえぞ」

 

「そういえば、重清ちゃんはよく写真を撮っているわね」

 

「重清くんは写真好きなのです。沢山の写真データは外部漏洩しないようにネットワークに接続されていないパソコンにしか保存していません」

 

「外部漏洩されたら困る写真って大丈夫なのかしら?」

 

「そんな大した写真はありませんよ。重清くんが焼き餅焼きなだけです」

 

「アタシ達の写真もよく撮ってるよねー。でも可愛いポーズのリクエストとかされても困っちゃうよ」

 

「芦戸はそんなこと言いながら色々とポーズをとってるじゃん。見てて上手いと思うよ」

 

「えへへー。これでもダンスをやってるからね。魅せ方ってやつを勉強してるんだー」

 

「ふーん。実はウチも芦戸の真似をして一人でポーズの練習をしたりするんだけど、どうも芦戸みたいに決まらないんだ。何かコツがあるの?」

 

「あーと、アタシと同じポーズをしてるの?」

 

「うん、そうだよ。こういうやつとか」

 

「……アタシがよくするポーズだね」

 

「うん。でも同じポーズが出来てると思うんだけど、芦戸みたいにしっくりこないんだよね。何が原因だと思う?」

 

「……えっと、筋肉のつき方とかかな? ほら、アタシはダンスをやってるからねー!」

 

「そっか! うーん、ウチももう少し鍛えようかなぁ」

 

「(あのポーズは胸や腰のラインを強調させるから耳郎には不向きだよって教えてあげた方が良くない?)」

 

「(ケロ、思ったことはなんでも言う私でも言えないわ。それは他人が言ってはいけない事なの。自分で気付いてもらうしかないわ)」

 

「(ハゲにハゲって言ってはいけないのと同じだね。うん、私も黙っておこう)」

 

こうして歩いていると、ミルコ特戦隊のファンに時々サインとかを求められる。

 

写真撮影で決めポーズも求められるけど、やっぱり四人だと物足りないね。

 

うーん、事務員さんの代わりは誰がいいかな?

 

そうだ! メンバーの交代制にしようかな。

 

そうすれば、交代で休暇も取りやすいよね。

 

──ぽすん。

 

そんな事を考えている時だった。

 

路地裏から飛び出してきた子供がぶつかってきた。

 

「あっ、大丈夫? 怪我はないかな?」

 

「え…? 重ちー?」

 

ぶつかったのは包帯だらけの女の子だった。

 

僕はその子を抱き上げた。

 

「もう大丈夫だよ。この僕がいる。そんな怪我なんか吹っ飛ばしちゃうからね」

 

包帯だらけの女の子を抱き締める。

 

「重ちー、重ちー、重ちー!! お願い…助けて!!!」

 

腕の中で泣きじゃくる女の子。

 

「大丈夫だよ。僕が――ううん、僕達が助けるよ!!」

 

ミルコ姉さんに視線を向ける。

 

ニヤリと笑って頷くミルコ姉さん。

 

事務員さんの代わりはまだいないけど、ここは不完全でも決める場面だ!!

 

「ドララララッ! 僕の拳で直せ(治せ)ないものは無い! 復活ヒーロー重ちー参上!!」

 

次はヒミコちゃんだ!!

 

「あなたの隣人は本物? それとも偽物? その正体は誰にも見破れない。千変万化の変身ヒーロートガ参上なのです!」

 

三番手はモモちゃんだ!!

 

「煌めく光は叡智の光! 輝く光は科学の光! 創造の光は人類史の軌跡! 万物ヒーロークリエティ参上ですわ!!」

 

最後はミルコ姉さんだ!!

 

「一蹴必殺!! 問答無用!! たしかミルコはソロヒーローだったはずだと? いつの話をしてやがる!! ウサギさんは寂しかったら死んじまうんだよ!! ラビットヒーローミルコ参上だ!!」

 

そして包帯だらけの女の子を囲むように決めポーズ──四人バージョンスペシャルファイティングポーズを決める!!

 

『重ちー!! トガ!! クリエティ!! ミルコ!!みんなそろってミルコ特戦隊!!!』

 

ドドドドーン!! と、モモちゃんが咄嗟に創造してくれた花火が打ち上がる。

 

「うわあ!! 本物のミルコ特戦隊だー!!」

 

怯えた様子だった包帯だらけの女の子が笑顔を見せた。

 

僕は女の子の身体から包帯は外した。

 

「え…? 傷が無くなってる」

 

「もう一度言うね。もう大丈夫だよ。この僕がいる。どんなものだって吹っ飛ばしてあげるからね」

 

クレイジー・ダイヤモンドを具現化させる。

 

そして、その拳を女の子が現れた路地裏へと向けた。

 

「――いやぁ、うちの娘がぶつかったみたいですみません」

 

路地裏から現れたマスクを付けた男。

 

──僕の首に回している女の子の腕にギュッと力が込もった。

 

 

 

 

結果を言うと女の子──エリちゃんの親を騙ったマスクを付けた男は逃してしまった。

 

包帯だらけのエリちゃんがプロヒーローに助けを求めた。

 

それだけでエリちゃんを保護する名目は十分だ。

 

エリちゃんを保護するとミルコ姉さんが宣言すると、マスクを付けた男は僕らを路地裏に誘い込み襲いかかってきた。

 

マスクを付けた男──死穢八斎會の若頭のオーバーホール。ミルコ姉さんが知っていたけど、その個性は生物や物体を分解・再構築する。

 

うん、とても危険な個性だ。

 

分解してから再構築しなければ砕けたまま死ぬからね。

 

でも砕けて死ぬまでの一瞬の間で治癒すれば、何も問題はないって事だ。

 

周辺の物体を分解・再構築して攻撃に使おうとしても僕が元通りに直す方が早い。

 

こっちはハーヴェストを含めてこの場だけで500体以上いる。数の暴力って最強だよね。

 

「ククク、身体が粉微塵に砕ける経験は初めてだ。お前らも良い経験になっただろう」

 

「異議がありますわ! ヒミコさんだけ重清さんの護衛を名目に戦闘に参加せずに砕かれなかったのは贔屓ですわ!」

 

「ケ、ケロ……スパルタだわ」

 

「あ、あはは、痛みを感じる間もなく治癒されたのは不幸中の幸いってヤツなのかなー」

 

「クソッ、アイツを殺せなかった。次は絶対に殺す!!」

 

「矢安宮、ウチ怖かったよ。あのまま死んじゃうかと思った」

 

「うん、怖かったね。もう大丈夫だよ」

 

「もしも、ウチが死んだら――矢安宮は泣いてくれる?」

 

「ううん、泣かないよ。だって、僕が絶対に響香ちゃんを死なせないからね」

 

「うん、そうだね。ウチのそばには矢安宮がいてるんだもんね。すごく頼りにしてるからね」

 

「うん、任せて。響香ちゃんは僕が守り抜くからね」

 

抱きついてきた響香ちゃんの頭を撫でで慰める。僕が抱っこしてるエリちゃんはそんな僕達を赤い顔をして見ていた。

 

「あーっ!? 耳郎だけズルいー!! アタシも怖かったよーっ!!」

 

「私も私も!! 私も怖かった!!」

 

三奈ちゃんと透ちゃんも抱きついてきた。

 

僕が抱っこしているエリちゃんごと抱き締められる。

 

きゃーと嬉しそうな悲鳴をあげるエリちゃん。

 

恐らくはエリちゃんにとって恐怖の象徴だったオーバーホールを完封したお陰で、だいぶ彼女が抱いていた恐怖心が薄らいだみたいだ。

 

オーバーホールの部下が戦闘中に現れなかったら確保できたはずだから残念だよ。

 

まあ、その部下は全員が気絶して転がっているから及第点だと思おう。

 

ヒミコちゃん。念の為だと言いながら関節を砕いて回るのは勘弁して上げて。ダメ? じゃあいいや。

 

「よし、警察が来たぞ。こいつらを引き渡したら戻るぞ」

 

「あの、わたしは……」

 

エリちゃんが不安そうにミルコ姉さんに声を掛けた。ギュッと僕の服を掴んでいる手に力が入る。

 

不安そうな顔が至近距離にあった。

 

実はハーヴェストが教えてくれたんだ。

 

エリちゃんの個性は『巻き戻し』だ。

 

僕に似た個性だ。

 

僕に娘がいたらきっとエリちゃんみたいな女の子だと思った。

 

僕はその小さな身体を抱き締めて優しく声をかける。

 

「大丈夫だよ。エリちゃんは僕と一緒だからね。きっとエリちゃんを立派なファザコンに育てて――」

 

「おおっと、エリは何も心配しなくて良いぞ。私が保護をするからな。とりあえず、私の事務所に向かう。今日はもうゆっくりしよう。細かい事は後日に後回しだ」

 

ミルコ姉さんが優しい笑みを浮かべてエリちゃんを僕から奪い取った。

 

うぅ、エリちゃん

 

カムバッーク!!

 

ミルコ姉さんの腕の中で僕を見つめるエリちゃん。

 

柔らかい笑みを見せながら手を振ってくれた。

 

 

──また後でね。重ちー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





──重清くんが女の子を拾いました。

とても危険だと思いました。

え?

死穢八斎會?

いえ、そんな時代遅れのヤクザはどうでもいいです。

重清くんのファザコン計画が発動しそうなのが危険なのです。

これが実の娘ならまだ許容範囲ですが、血の繋がらない娘だとただの◯◯◯◯なのです。

はい、重清くんの名誉の為に伏字にしました。

はぁ、困ったものです。

今はミルコヒーロー事務所で預かっています。という名目でなぜか重清くん家にいます。

ハーヴェストが護衛で500体も詰めているそうです。

過保護も過ぎるのです。

拾った女の子――エリちゃんが重清くんに懐いているのが一番の問題です。

ミルコ特戦隊のファンだったらしく、偶然出会った重清くんへの好感度が最初から高かったのです。

その上、助けられた影響なのか重ちー、重ちーと呼んで引っ付いています。

きっと最初にぶつかった所為で妙な刷り込みでもされたのでしょう。

ミルコ特戦隊のファンなら最初にミルコさんにぶつかっていれば問題は発生しなかったと思います。

正直言って少し目障りではありますが、私が仲良くしている女子園児と仲良くなってしまいました。

私と似ている女子園児。そして、重清くんに似た個性を持つエリちゃん。

そんな二人が仲良くしている姿を見ていると……。

まあ、いいです。

お互いに友達が出来て楽しそうです。

重清くんが犯罪者にならないようにだけ注意しておけば良いでしょう。

さてと、明日はあの子達を連れてピクニックです。

今日は早く眠るとします。

早朝にお弁当を作らなくてはならないので忙しいのです。

では、お休みなさい。










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