重ちー(偽)のヒーローアカデミア   作:銀の鈴

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シーズン4(死穢八斎會編)

 

──警察にオーバーホールの件を通報した。

 

ミルコ姉さん達が戦闘をしている様子を、僕のヒミコちゃんがスマホで撮影していたからそのデータも証拠として提出した。

 

気絶させたオーバーホールの部下達も警察に引き渡した。

 

オーバーホール達はヴィラン認定されていなかったからお金は貰えなかった。

 

警察はケチだと思った。

 

二週間ぐらいしたら死穢八斎會が警察に潰された。多くのトップヒーロー達が強制捜査という名の殴り込みに参加していた。

 

ハイパームキムキなおっちゃんも加わっていた。

 

オーバーホールがボコボコにされた上で、容赦なく拘束され救急車で運ばれる様子をテレビで見た。

 

警察は怖いと思った。

 

 

 

 

エリちゃんは僕と同じで希少な治癒系個性の持ち主だ。

 

孤児院などに行けば、そのまま国に強制的に囲われてしまうだろう。

 

そうなれば、国によって馬車馬の様に働かされる未来しかない。

 

同じ治癒系個性の持ち主として、そんな未来は断じて許せない。

 

「エリちゃん! 僕と一緒に治癒系ヒーローとしてノンビリと生きていく道を歩こう!」

 

「うん! 重ちーとずっと一緒だよ!」

 

無邪気に抱きついてくるエリちゃん。

 

こんな可愛い子供をブラックな環境に行かせるものか! と、エリちゃんを抱き締めながら強く思った。

 

ところで、エリちゃんはどうしてヒミコちゃんにドヤ顔を見せているの?

 

 

 

 

エリちゃんを弟子にする事にした。

 

エリちゃんの個性は“巻き戻し”だ。

 

制御できなければ非常に危険な個性だ。

 

僕なら“巻き戻し”が暴走しても、暴走前の状態に元通りに治せる。ハーヴェストに任せれば24時間365日体制で安心だ。

 

「エリちゃんの個性名は『クレイジー・エメラルド』だ!」

 

ババーンと個性名を発表する。

 

「わたしの個性は『クレイジー・エメラルド』だーっ!!!」

 

師匠特権として、エリちゃんの個性名を決めさせてもらった。

 

物体の“巻き戻し”は出来ないからダイヤモンドの名前はつけない。

 

僕は厳しい師匠だな、と自嘲してしまう。

 

まぁ、エリちゃんは気に入ってくれたみたいだ。

 

『クレイジー・ダイヤモンド』と『クレイジー・エメラルド』が重なれば、互いの怪我も治せ合える。

 

ふははは、唯一の弱点が無くなるよ!!

 

ちなみに、エリちゃんの事はハイパームキムキなおっちゃんに頼んだら上手い事してくれた。

 

ハイパームキムキなおっちゃんの養女になって、僕ん家に住み込みで治癒系個性の修行をする形なんだ。

 

もちろん、ママの了承は得ているよ。

 

僕の背中に隠れながら恥ずかしそうに挨拶をしていたエリちゃんを一目見て気に入ったみたいだ。

 

「ハッハッハ! これで少しは借りを返せたかな。重清少年!」

 

前にハイパームキムキなおっちゃんの身体を治した件なら借りを返せた所か、逆に僕が借りを作ったぐらいだよ。

 

「ふむ、平和の象徴を守った。その意味を重清少年は分かっていないみたいだね。だが、それでいいのかもね。君はその自然体で多くの人を救っていくだろう。ナチュラルボーンヒーローとしてね」

 

ハイパームキムキなおっちゃんは、僕の頭に手を置くとグシグシと不器用に撫でた。

 

首が折れるかと思った。

 

仕返しにミルコ姉さんに教わった回し蹴りでハイパームキムキなおっちゃんの太腿を蹴ったら、蹴った足の方が折れたかと思うほど凄く痛かった。

 

ハイパームキムキなおっちゃんはハッハッハッと笑っていた。

 

 

 

 

雄英は全寮制だ。

 

エリちゃんの個性指導の為、自宅から通える高校に転校する事に決めた。

 

ママも『仕方ないわね』と言いながら認めてくれた。

 

ミルコ姉さんに言ったら『まっ、そうなるわな』と肩をすくめていた。僕の行動は予想されていたみたいだ。

 

僕のヒミコちゃんは一緒に転校してくれると言ってくれた。

 

「ふふん! 私と重清くんはずっと一緒なのです!」

 

僕に抱き付きながらヒミコちゃんは機嫌良さそうにエリちゃんにドヤ顔を見せていた。

 

ヒミコちゃんを抱き締めながら僕は思った。

 

ドヤ顔が流行ってるみたいだね、と。

 

 

 

 

「私も当然ですが転校します。雄英にて一人で学ぶよりも重清さんと共に成長していく方がより実りは大きいですもの。もちろん両親の許可も得ておりますわ。両親も重清さんをとても気に入っております。一度ゆっくりと食事でもしながら話がしたいと言っておりましたわ」

 

モモちゃんも一緒に転校してくれると言ってくれた。

 

「私も転校するわ。というよりも母から電話で叱られたわ。『一度面倒を見始めたのなら最後までちゃんと面倒を見てあげなさい! そうじゃないと重清君が可哀想でしょう! 梅雨が放っておくとどうなっちゃうか分からない子なのよ! ヒーローなんてどこの高校に行ってもなれるでしょ! 一緒に付いていってあげなさい!』と言っていたわ。ふふ、重清ちゃん。後で二人っきりでお話をしましょうね」

 

梅雨ちゃんも一緒に転校してくれると言ってくれた。うん、しばらくは二人っきりにならない様に気をつけよう。ちなみに梅雨ちゃんのママはとても優しい人だったよ。

 

「転校の手続きはいつするの? 私はいつでもオッケーだから一緒に手続きに行こうね!」

 

透ちゃんが当たり前の様に一緒に転校してくれると言ってくれた。

 

「アタシも転校するよー! 事情を説明して一生懸命に説得したらパパもママもいいよって言ってくれたー!」

 

三奈ちゃんが一緒に転校してくれると言ってくれた。ありがとう、両親を説得してくれたんだ。

 

「ウチ、本気で一生懸命に考えたんだ。もしもこのまま矢安宮と別れたらどうなるんだろうって。3年後、たぶんウチはずっと憧れだったヒーローになっていると思う。でも、ウチの隣には矢安宮はいない……想像したら寂しくて涙がでた」

 

響香ちゃんの瞳から一筋の涙が溢れた。

 

「ウチね、あんたの隣にいるのが好きなんだ。バカ話を一緒にして、思いっきり笑い合って、この世の理不尽に対して必死に抗って、何気ない日常を懸命に生きて、いつの日か、一緒に死ぬその日まで。ねぇ、矢安宮――ウチを隣にいさせてくれる?」

 

「うん、僕とずっと一緒に――」

 

それ以上は言葉に出来なかった。

 

胸に飛び込んできた響香ちゃんを受け止めて、そのまま彼女が泣き止むまで頭を撫で続けた。

 

 

 

 

「モモちゃんなんかよりも遥かに強敵なのです」

 

「私なんかより、と言われるのは心外ですが、ヒミコさんの懸念には同意しますわ。まさか一番最後まで友達面をされていた響香さんが、あそこまで甘え上手とは思いませんでしたわ」

 

「そっち方面では最後尾のモモちゃんにも察せられるぐらい響香ちゃんは危険なのです」

 

「えっ!? お待ち下さい!! 私が最後尾なのですか!?」

 

「え? もちろんそうですよ」

 

「あのですね、それは悪い冗談ですわよね? 私の好感度はヒミコさんの次ですよね? 現在は、もしもヒミコさんが拾い食いをされて運悪く食中毒で急死された場合、私がヒミコさんポジションに自動的に収まる状況ですよね?」

 

「思わずぶん殴りたくなるセリフですが、今は我慢します。モモちゃんの言うポジションに一番近いのは響香ちゃんだと思います。姉ポジションの梅雨ちゃんがその気になったらツートップかもしれません。状況次第では芦戸ちゃんがアホ可愛い娘っぽい感じで懐に潜り込むかもです。ダークホースとして葉隠ちゃんがシレッとベッドに潜り込んで既成事実を作る危険性もあります。モモちゃんは……えっと、仕事上の相棒として末長く重清くんを支えてくれると嬉しいです!」

 

「不本意ですわ!!! せめてライバルとして敵視して下さい!!!」

 

 

 

 

校長先生に転校の話をしに行ったら妥協案を3つ出された。

 

ひとつ。実家通いでもいいよ。

 

ふたつ。寮に弟子の部屋を準備するよ。

 

みっつ。状況によって、ひとつ目とふたつ目を組み合わせて自由にしていいよ。

 

三つ目を選択した。

 

転校する手間を考えたらこっちの方が楽でいいよね。

 

実家通いだと僕のヒミコちゃんと離れる時間が長くなる。

 

寮にエリちゃんの部屋を準備してもらっても、僕が授業中だと一人ぼっちにさせてしまう。

 

それなら三つ目しか選択肢はない。

 

普段は実家でママと暮らしてもらう。僕も頻繁に実家に泊まろうと思っている。

 

休日とかに寮に泊まらせれば、ちょっとしたプチ旅行みたいでエリちゃんも楽しめるだろう。

 

うんうん、弟子の事を色々と考えて、僕って師匠っぽいよね。

 

もうすぐ短期留学で来日するメリッサには、個性制御を補助するサポートアイテムを頼んだ。

 

『ふふ、お姉さんに任せてね。重清君の弟子なら私にとっても弟子みたいなものだもの。重清君が格好つけて渡せるセンスの良いサポートアイテムを開発してみせるわ。楽しみにして待っててね!』

 

二つ返事で請け負ってくれた頼り甲斐のあるメリッサだ。

 

 

 

 

エリちゃんの個性目当てで、ヒーロー公安委員会の一部が不穏な動きをしていると聞かされた。

 

ハイパームキムキなおっちゃんがその動きを抑えるべく動いているけど、強引な手を使うかもしれないから注意するようにと言われた。

 

「(ハーヴェストよ。不穏なヒーロー公安委員会の男が近付いてきたら、泥酔させて、真っ裸にひん剥いて、下品な落書きを身体中にして、繁華街に捨てておいて。女性だったらいつもの様に泥酔させて道端に転がしておいて)」

 

《了解です。ついでに男だったら身体を操って裸踊りもさせます》

 

うん、ハーヴェストは優秀だね!!

 

 

 

 

機動兵器がメンテナンスから戻ってきた。

 

授業で機動戦士モード対全員との模擬戦を行うことになった。一度に全員とやるのは二回目だ。

 

「ハッハッハ!! 皆も新たな必殺技を覚えたり仮免許をとってインターンで経験を積んだりしているからね。きっといい勝負が出来ると思うよ!」

 

ハイパームキムキなおっちゃんが良い笑顔でそんな事を言った。

 

もちろん、仮免許をとれなかった爆豪君が歯軋りを始めて苛立っている。轟君は俯いて落ち込んでいた。

 

そしてモモちゃんが周りにいた生徒達が思わず飛び退くぐらいの殺気を放って、ハイパームキムキなおっちゃんを睨みつけている。

 

僕の位置からだとモモちゃんの後ろ姿しか見えないけど、真正面からモモちゃんを見ているハイパームキムキなおっちゃんが少し慌てている。

 

「いやっ、八百万少女!! 今のは別に機動戦士モードを侮った発言じゃないからね! 成長した皆のやる気を更に引き出す為の発言だから怒らないでね!」

 

「いいえ、わたくしは怒ってなどいませんわ。わずかに成長なされた程度で、機動戦士モードに伍すると思われた自分自身の過去の甘さを悔いているだけです。それで提案なのですが、今回の模擬戦では重清さんの遠隔治癒を模擬戦中の皆さんに行う許可を頂きたく思います。それで模擬戦中の事故で亡くなる可能性は皆無ですわ。今回は機動戦士モードの全力全開というものをお見せできますわ――いえ、もうひとつ提案します。男子生徒と女子生徒は分けての模擬戦をお願いします。そうですわね、最初は女子生徒からでお願いします。この女子戦は重清さんに操縦をお任せしますわ。次に男子生徒です。この男子戦はわたくしが操縦します。これで重清さんが仲の良い女子生徒を気遣い、途中で模擬戦をやめる可能性がなくなりますわ」

 

「何をする気かなっ、八百万少女!?」

 

結局、モモちゃんの意志は固くハイパームキムキなおっちゃんが折れる形で模擬戦は始まった。

 

 

 

 

──女子戦が始まった。

 

公平を期すために透ちゃんを“見る”のをやめる。このことは透ちゃんにも伝えている。

 

「さあ、いくよ! 皆の全力を見せてね!」

 

まずは小手調べで、硬質ゴム弾をランダムにばら撒く。

 

「クッ、狙いを定めていないから逆に避けにくいんよ!?」

 

「ケロ、距離を空けたままだと何も出来ないわ! 私が突っ込んで囮になるからその間に皆は距離をつめて!」

 

梅雨ちゃんが硬質ゴム弾を半ば勘で避けながら近付いてきた。

 

ランダムだった硬質ゴム弾の一部を梅雨ちゃんに向けて、彼女の移動方向を誘導するように射出する。

 

梅雨ちゃんは皆から少しずつ離れていく。

 

他の皆は少し弾幕が薄くなった隙をついてジリジリと近付いて来ている。

 

「アタシが酸を纏って壁になる! みんなはアタシの後ろについて来て!」

 

三奈ちゃんが全身をスライムのような酸で覆った。スライムに当たった硬質ゴム弾は一瞬で溶けてしまう。相当に強力な酸だ。

 

どうやら身体に密着する部分は溶解度の低い酸を薄く纏っているみたいだね。

 

三奈ちゃんに向けている硬質ゴム弾を丸型の物から貫通力の高い弾丸型に変える。

 

「うそっ!? 少し弾が入ってきた!!」

 

うん、ゴム製だとやっぱり途中までしか穿てないね。だけど、一点に集中したらどうなるかな。

 

弾道をブラさずに三奈ちゃんに向けて撃ち続ける。

 

弾丸は少しだけスライムを穿ったあと溶けるが、粘性の高いスライムはすぐには穿った跡を埋めることが出来ない。

 

弾丸は少しずつ、スライムの核となっている三奈ちゃんに近づいていく。

 

「あわわわっ!? ええっと!! ええっと!!」

 

「芦戸っ、パニくるな!! ウチが弾丸を一旦蹴散らすからその間に対策を考えろ!」

 

スライムの後ろにいた響香ちゃんが飛び出してきて、その腕をこちらに向けた。

 

「ハートビートサラウンド!」

 

指向性のある音波によって三奈ちゃんに向けていた弾丸が軌道を外れていく。

 

ギャングオルカがやったように音波は音波によって相殺できる。そして機動兵器には音響装置も装備されている。

 

こちらも指向性のある音波を発して響香ちゃんの音波を打ち消した。

 

「流石は矢安宮だねっ、もう対応された! 芦戸っ、何か考え……なに踊ってんの!?」

 

「理由があるの!!」

 

スライムの中で三奈ちゃんが踊っていた。

 

なるほど。

 

三奈ちゃんがスライムの中で踊ることで、スライムが震えて弾丸の傷跡を埋めてしまう。それにスライム自体も流動することで同じ部分に弾丸が当たらなくなった。

 

ここで、突然メインカメラがブラックアウトした。

 

サブカメラに切り替える。

 

メインカメラの状況を確認すると、透ちゃんのヒーロースーツがカメラを覆っていた。

 

サーマルカメラで見ると人型がメインカメラに取り付いているのが分かった。

 

今は戦車型だから人型に変形する。

 

変形する振動に耐えて、透ちゃんはメインカメラに必死にしがみついていた。

 

人型に変形したら後は簡単だ。透ちゃんを潰さないように細心の注意を払って掴んでしまう。

 

透ちゃんのヒーロースーツをメインカメラから外すと、そっと透ちゃんの肩にかける。

 

「えへへ、捕まっちゃった!」

 

捕まったのに、なぜか嬉しそうな透ちゃん。

 

これで一名、脱落だね。

 

少しだけ気を抜いた瞬間だった。

 

フワッと機動兵器が持ち上がった。

 

「やった! 初めて触れられた!」

 

お茶子ちゃんの無重力だ。

 

外を確認すると、機動兵器の足元にお茶子ちゃんがいた。その胴には梅雨ちゃんの伸びた舌が巻かれていた。

 

どうやら今の隙を突いて、梅雨ちゃんがお茶子ちゃんを一気に移動させたんだね。

 

機動兵器に飛行型がなければこれで詰みでもよかったけど、飛行型になれば無重力はほぼ関係ない。

 

飛行中に突然無重力になればコントロールを失なうかもしれないけど、最初から分かっていれば制御は出来るよ。

 

機動兵器を人型から飛行型へと変形――その前に透ちゃんを無力化しておこう。

 

機動兵器内部から人の手と同じ大きさのロボットハンドを二つ出す。これで倒したヴィランに手錠を嵌めるんだよ。

 

実際の現場で機動兵器の外に出てヴィランと相対するのは危ないと思ったから、今回のメンテナンスの時に頼んで付けてもらったんだ。

 

ワキワキと動かしながら透ちゃんにロボットハンドを近付ける。

 

「いやーん。重清君にイタズラされちゃうよぉ」

 

とても嬉しそうな透ちゃん。って、イタズラはしないよ!?

 

突然の衝撃を受けた。

 

ドスンと機動戦士が地上に落下した。と思ったらバチバチっと機動兵器全体から火花が散った。

 

お茶子ちゃんが無重力を解除して、響香ちゃんが接触して音波攻撃をしたって所かな。

 

一番頑丈な搭乗席エリアにまでは音波攻撃は届かなかったみたいだけど、制御機器は壊れたみたいだ。

 

うん、油断しちゃったね。

 

だけど、故障なんか一瞬で直せるよ。

 

右腕を伸ばしてチョンと当てれば――

 

「そこまでです。重清くん」

 

細くて綺麗な指が、僕の右手の指を絡めとる。

 

僕は彼女を抱き締める。

 

「捕まっちゃった。僕のヒミコちゃん」

 

「はい、捕まえました。私の重清くん」

 

僕達は見つめ合って微笑み合う。彼女を愛しいと思う気持ちが溢れそうだった。

 

「二人とも真面目にやって下さい!」

 

『──ごめんなさい』

 

不機嫌モードのモモちゃんに、僕らは素直に謝った。

 

 

 

 

モモちゃんが機動兵器に搭載されている安全装置の解除手続きを行なっている。

 

「――対凶悪ヴィラン用特別兵装使用許可申請」

 

【申請受付中――申請受理。許可に伴う特記事項。治癒系ヒーロー立会必要】

 

「――治癒系ヒーロー個人名『矢安宮重清』立会」

 

【特記事項確認中――対凶悪ヴィラン用特別兵装使用許可申請承認。特別兵装封印ロック解除。対象ヴィランを撃滅せよ】

 

「――了解」

 

 

──男子戦が始まった。

 

「峰田君、ゴム弾の発射口にモギモギを投げ込むんだ!」

 

飯田君がセオリー通りの指示を行う。

 

峰田君のモギモギは今までに破壊されたことがない。それを発射口に詰められたらもう硬質ゴム弾は発射できない。

 

僕なら峰田君の頭に戻すことができるけど、機動兵器の発射口まで行こうとは思わないからね。

 

「よっしゃあ!オイラに任せ――」

 

──チュイン。

 

そんな音を立てて、峰田君のモギモギを握っていた右手が消失した。

 

「うぎゃぁぁぁっ!? オイラの手がぁぁぁ!!!」

 

傷口を押さえて、噴き出る血を止めようとする峰田君。バタバタと暴れる様子を見るにまだまだ元気一杯だ。

 

うん、まだ治癒しなくても大丈夫そうだね。

 

「ウォーターカッターですわ。研磨剤を混ぜた水を超高圧で射出すれば、鋼鉄ですら容易に貫通します」

 

ゴクリと誰かが唾を飲み込む音が聞こえた。

 

「へ、へへ……面白え。俺の硬化の強度を――」

 

「──氷結弾」

 

撃ち込まれた弾頭が、喋っていた切島君の太腿に当たりあっさりと砕け散る。砕けた弾頭の中には液体が入っていてそれが切島君の下半身を濡らした。

 

「なんだ、水か? ぐわぁっ!? 濡れたとこが痛えっ!!!」

 

濡れた下半身が凍りついていく。切島君は冷たいというよりも痛みを感じているようだ。

 

立っていられずに倒れる切島君にモモちゃんは告げる。

 

「液体ヘリウムです。−269℃という極低温の液体は硬さだけでは防げませんわ」

 

ポシュッと唐突に機動兵器から何かが射出される。

 

「ぬうっ!? 我を絡めとるのか!」

 

それは大きく広がり常闇君を包み込んだ。

 

「電磁ネットです。あなた方がいつまでもボサっと突っ立っていたので、つい射出してしまいました」

 

「ぐぉぉぉおおお!! し、痺れと痛みでダークシャドウの具現が出来ぬだと!?」

 

バチバチッと音を立てて常闇君の全身から煙があがる。これがただの熱による攻撃ならダークシャドウを具現化出来ただろう。

 

人の神経や筋肉は全て電気信号で動いている。外部からの強力な電気攻撃を受ければ繊細な個性使用は出来なくなる。

 

電気系個性の持ち主が強個性だと羨ましがられる理由の一つだ。

 

「みんなっ、とにかく動くんだ! 先の女子戦を思い出せ!!」

 

飯田君が叫んだ言葉で男子達が一斉に動き出した。

 

それを確認したモモちゃんが嗤った。

 

「フフフ、さあ、死に物狂いに踊りなさい。機動戦士モードの本気をその魂に刻みつけて差し上げますわ」

 

 

 

 

「重清ちゃん。あーん」

 

「あーん。もぐもぐ、ごっくん。梅雨ちゃんの手作りクッキーすごく美味しいね」

 

「ふふ、ありがとう。重清ちゃんは本当に美味しそうに食べてくれるから作った甲斐があるわ。あら、口元にクッキーのカケラがついているわよ。取ってあげるわね」

 

「うん、ありがとう」

 

梅雨ちゃんは僕の口元についたクッキーのカケラを取ってくれた。そのクッキーのカケラは捨てるかと思ったらそのままパクっと食べた。

 

「うん、上手く焼けているわ。クッキーを焼くのは久しぶりだったから少し心配だったの。それに家族以外でご馳走したのは重清ちゃんが初めてだったから緊張したわ」

 

そう言って微笑む梅雨ちゃん。少し頬が赤いけど暑いのかな? いつもより搭乗席の人口密度が高いから冷房が効きづらいのかもしれないね。

 

「梅雨ちゃんお手製のクッキーはとっても美味しいよ。梅雨ちゃんの家族が羨ましいな」

 

「ふふ、嬉しいわ、ありがとう。でも弟なんかは私の手作りクッキーなんか飽きたみたいで、今ではもう食べてさえくれないわ」

 

「梅雨ちゃんの弟さんでも説教したいな。こんな美味しいクッキーを食べないなんて……ううん、その分だけ僕が食べれるからラッキーかな。梅雨ちゃん、弟さんの分は僕が食べるからね。これからはいっぱい焼いてね」

 

「そうね。重清ちゃんが食べてくれるなら――愛情をたくさん込めて焼くわね」

 

「うん、ありがとう!」

 

スピーカーから聞こえてくる男子達の悲鳴がうるさいけど、機動兵器内の搭乗席で僕達は寛いでいた。

 

男子戦の前に、女子達には機動兵器の搭乗席に退避してもらったんだ。

 

外で見学をしてたら流れ弾は怖いからね。

 

「ヤオモモ、口田には演習試験のときに借りがあるんだ。悪いけど手心を加えてあげてくれないかな?」

 

「口田さんにはペットのウサギを抱かせて頂きましたわ。物静かで礼儀正しい方ですわ。はい、承知しました。彼には普段通りの硬質ゴム弾だけにしておきますね」

 

「あっ、それなら砂藤の奴にも優しくしてあげてー! いっつも手作りのお菓子をくれる良い奴だもん!」

 

「ふふ、そうでしたわね。砂藤さんにはお世話になっていますわ。彼にも硬質ゴム弾の使用だけに留めておきますわ」

 

どうやら口田君と砂藤君の二人は普段の行いのお陰で、モモちゃんに手加減をしてもらえるみたいだね。

 

「委員長はどうするのかしら? モモちゃんは副委員長だから仲が良いと思うのだけど」

 

「いいえ、委員長だからこそ手心を加えては失礼というものですわ。ここは全身全霊をもって叩き潰す所存ですわ!!!」

 

「そ、そうね。それもいいかもしれないわ」

 

モモちゃんから、かつてない程の気合いを感じた。

 

梅雨ちゃんでも迎合するしかなかった。

 

「爆豪はどうするのー?」

 

「暴力的な殿方は好みではありませんわ。この辺りで――あら、つい爆豪さんの両手両足をヒートソードで焼き切ってしまいましたわ」

 

「……え、えーと、切り口が焼けてるから出血死する心配はないよねー!……(ヤオモモが怖いよ!?)」

 

「怖がらなくても大丈夫なのです。モモちゃんは、鬼の本性が漏れ出ているだけですよ」

 

「誰が鬼ですか!!」

 

「なんでもいいから男子達をサッサと殲滅して欲しいな。今日は汗をかいちゃったから早くシャワーを浴びたいよ!」

 

「葉隠ちゃんに一票なのです。汗をかいたままだと重清くんが匂いを嗅いでくるので恥ずかしいです。早くシャワーを浴びましょう」

 

「男共はさっさとくたばりなさい!!!」

 

「ひいっ!? ヤオモモが鬼の形相になったー!!」

 

 

「ねぇ、矢安宮ぅ。ウチって汗臭いかなぁ?」

 

「ううん。臭くなんてないよ。いつも思うけど、女の子の汗の匂いって良い匂いだよね」

 

「もぉ、普段から女の子の汗の匂いを嗅いでたらダメだよ。ウチ以外の女の子だったら嫌われちゃうよ」

 

「響香ちゃんは嫌わないの?」

 

「ふふ、ウチが矢安宮を嫌うわけないじゃん。そりゃあ、矢安宮に汗の匂いを嗅がれたら恥ずかしいけどさ。矢安宮はウチの汗の匂いが嫌いじゃないんだよね?」

 

「うん、響香ちゃんは柑橘系の良い匂いだと思うよ」

 

「うん、それなら構わないよ。ウチが少し恥ずかしい思いをするだけだもん。ふふ、矢安宮が良い匂いって思ってくれるなら、もしかしたら恥ずかしさより嬉しさの方が上回るかも。なんてね」

 

「えっと、それなら響香ちゃんを抱き締めて匂いを嗅いでもいいの?」

 

「もうっ、前に言ったじゃん。ウチに触れる許可を出すって。矢安宮の好きな時に好きなだけ触れていいよ。その代わり、ウチも矢安宮に触れるからね」

 

「響香ちゃん――うん、響香ちゃんは良い匂いがするね」

 

「うふふ、ありがとう。そう思われて嬉しいよ、矢安宮。それでね、矢安宮は安心する匂いがする。ずっと、こうして抱き締められていたいって思う匂いだよ」

 

 

「――これは耳郎ちゃんの首を落としてもいいんですよね?」

 

「ダメだよ!? トガちゃんの気持ちは痛いほど分かるけど!! 耳郎の首を落としたら重清君がとんでもなく悲しむよ!!! たぶん立ち直れない程のショックを受けちゃうよ!!!」

 

「ウググッ、それは納得の理由なのです。重清くんにとっては雄英に入学してやっと出来た友達です。こ、ここは我慢の子なのです」

 

「耳郎はさー、なんだかんだ言って一番の甘え上手だよねー」

 

「ケロ、なんだか甘い空気だわ。私では真似できないわ」

 

「梅雨ちゃんも大概だよー!? 梅雨ちゃんは甘えられる側だけど、相当に甘い空気を出してるからねー!!」

 

「なるほど、他人からだとそう見えるのね。自分ではそんな意識はないのよ。きっと響香ちゃんも同じだわ。ねっ、そういうわけだからヒミコちゃんも機嫌を直してちょうだい」

 

「……無意識の甘えん坊さんだと思えば仕方ないのです。重清くんも同じですからね……ハァ、仕方ありません。多少の妥協はします」

 

「分かってもらえて嬉しいわ」

 

「はい、こうなったら響香ちゃんを幼児に戻して、我が子としてファザコンに育てる覚悟を決めるのです!」

 

「それは決めてはいけない覚悟よ!?」

 

 

 

 

「――かっちゃん!! 今行くからね!!」

 

「クソデクが来るんじゃねえっ!! 罠に決まってんだろうがッ!!」

 

「無理をするんじゃない緑谷君! 今は爆豪君を救うのは無理だ!」

 

「かっちゃんは四肢を失っているんですよ!? 放っておけと言うんですか!」

 

「倒れた爆豪君を拘束もせずに放置しているのは僕らを誘き出す為だ! 今出て行っても狙い撃ちされるだけだぞ!」

 

「だからといって見殺しにしろって言うんですか! 僕が目指したヒーローは誰一人も諦めたりはしない!」

 

「そんな事は言っていない! だが今はチャンスを待つんだ!」

 

「委員長の言うとおりだ。今は爆豪よりも俺を助けてくれ」

 

「轟君は何をしているんだよ!? 君がそんなんでどうするんだよ!」

 

「石を当てられたら痛いんだが」

 

「よすんだ! ドローンに逆さ吊りにされて浮いている轟君に石を投げてはダメだ! 冷静になってくれ!」

 

「し、痺れて動けぬ……我の出番はもう終わりなのか?」

 

「役立たずの常闇君は黙っててよ!」

 

「ゲボッ!?……ガクッ」

 

「八つ当たりで常闇君を蹴るんじゃない!!」

 

 

 

 

「ねぇねぇ、もうすぐ文化祭だよねー。A組の出し物は何にするー?」

 

「女装メイド喫茶とか面白いと思うよ!」

 

「透ちゃん、面白ければ良いってものじゃないわ。ヒーロー科は注目を受けやすいのよ。女装姿を注目された快感で重清ちゃんが新たな扉を開いたら困るわ。これ以上悩みの種を増やしたくないもの」

 

「あはは、矢安宮は案外と目立ちたがり屋さんだもんねー」

 

「それなら、ウチらが男装執事喫茶をやる? メイド姿になれって言われたら恥ずかしいけど、男装なら平気だからね」

 

「耳郎は男装が似合いそうだよねー。女子から人気が出そうだよー」

 

「そうかな? まあ、普段からボーイッシュな服装が多いからね」

 

「そうだね、耳郎はスリムだから執事服が似合うよ!」

 

「葉隠。ウチのどこを見ながらスリムだと言ってんの」

 

「おっぱいだよ!」

 

「よし! 表に出ろ。戦争だ!」

 

「静かにして欲しいのです。重清くんが起きちゃいます」

 

「重清ちゃんが熟睡しているわ」

 

「さっきの女子戦ではすごく慎重に機動兵器を操作していたので、その疲れが一気に出たのだと思います」

 

「重清ちゃん、私達が怪我しないようにとても気を使ってくれていたわ」

 

「アタシ達が活躍できるようにもしてくれてたよねー!」

 

「模擬戦では、重清君に全身を包まれて恥ずかしかったです」

 

「それは人型の機動兵器に捕まっただけなのです」

 

「ふふ、矢安宮ってば、よだれを垂らして寝てるよ。もう、子供みたいだね。うん、これで綺麗になった」

 

「だーかーらー! 耳郎は隙あらば矢安宮にベタベタするの禁止ー!」

 

「それは私も一票を入れるのです!」

 

「私も清き一票を入れるね!」

 

「響香ちゃん、ごめんなさい。私も一票を投票するわ」

 

「ウチ、皆からイジメられてる。助けて、矢安宮ぅ…」

 

「こらー! 矢安宮に泣きつくのは反則だよー!!」

 

「うっさい!! ウチは矢安宮にベタベタしていいって本人から許可をもらっているんだからね!!」

 

 

 

 

「ウグッ!? こ、これは毒か!!」

 

「か、身体から力が抜ける……ここまでか……」

 

「障子君! 尾白君! どうせ倒れるなら機動兵器諸共自爆ぐらいしてよ!! 役立たずにも程があるよ!! 」

 

「緑谷君!? 本当にちょっと落ち着こう!! ヒーロー候補生らしからぬ言動をしているぞ!!」

 

「で、デク……もう、目が見えねえ……最後に聞いてくれ……」

 

「かっちゃん!? 嫌だよ!! 最後だなんて言わないでよ!!」

 

「お、俺は…本当は……お前…の…ことが……ガクッ」

 

「かっちゃーん!!!」

 

「なぁ、そろそろ本当に降ろしてくれないか? 逆さ吊りが辛くなってきた」

 

「うるさい!!!」

 

「グエッ!?」

 

「緑谷君!? 気絶している峰田君を投擲して轟君にぶつけるのは流石にモラルに反しているぞ!!」

 

 

 

 

「そういえば、麗日がいないんだけど?」

 

「ケロ、ガンヘッドの事務所へ向かったわ。夜のパトロールに呼ばれているそうよ」

 

「お茶子ちゃんって、災害救助系のヒーローを目指すって言ってたのに、ゴリゴリの武闘派になってるよね」

 

「ガンヘッドと波長が合うみたいだよー。ガンヘッドはゴツい見かけとは裏腹に乙女な性格なんだって!」

 

「ふふ、ミルコさんと性格を入れ替えたら、お互いに完璧だったと思うのです」

 

「そ、それは、えーと……うぅ、トガー! コメントしずらい事を言うなー!」

 

「ところで、インターンに行ってる男子って意外と少ないよね。常闇君と切島君の二人だけだよ」

 

「仮免許に落ちなかったら爆豪ちゃんと轟ちゃんはインターンに行っていたと思うわ。緑谷ちゃんは爆豪ちゃんに遠慮して行ってないみたいね。飯田ちゃんも同じかしら?」

 

「普通なら授業とインターンの両立は難しいのです。ミルコヒーロー事務所は雄英から近いので移動時間が短く、授業に合わせて仕事を組んでくれるから私達は負担が少ないだけです。本来なら一年生ではインターンに行かずに授業で基礎を固めるべきですね」

 

「色々と配慮をしてくれるミルコさんに感謝だよねー!」

 

「うん、矢安宮がいるからだろうけど、ヴィランとの戦闘もガンガンさせてくれるからすごく良い経験になるよ」

 

「戦闘といえば、このあいだのヤクザ者は危険だったね。何度も刺したのに自分で回復するんだもん。あんなのズルイよ」

 

「迷いなく心臓を貫いた葉隠には、あのヤクザ者も言われたくないと思うよ。こいつマジかって顔してたもん」

 

「ケロ、私達はヒーローよ。多少の怪我ならともかく殺してはダメよ」

 

「ちゃんと考えているから大丈夫だよ。脳さえ一瞬で潰さなかったら重清君の治癒が間に合うよ。三奈ちゃんも頭にさえ気をつければ溶かし放題だよ」

 

「そっかー! 強力な酸で手足を溶かしちゃってもいいんだー!」

 

「それはやめた方がいいです。その絵面はとても酷いものになります。きっと、重清くんも引いちゃうのです」

 

「引かれるの!? 溶かすのやめるー!」

 

「それがいいよ。ミルコ特戦隊のイメージもあるしね。ギャグっぽい戦い方ならいいけど、グロいのはアウトだよ」

 

「えっと、ヤオモモが今してる戦い方はー?」

 

「うん、完全にアウトだね」

 

 

 

 

ハイパームキムキなおっちゃんが男子戦を中止させた。

 

とても疲れた目でモモちゃんを見ていた。

 

モモちゃんは――

 

『おーほほほほ! 身の程を思い知ったかしら。自称、未来のトップヒーローさん達。これに懲りましたら身を縮めて教室の片隅で静かに余生を過ごしなさい。その程度の慈悲はくれて上げますわ』

 

――と、絶好調だった。

 

 

 

 

梅雨ちゃんに膝枕をしてもらいながら僕は愚痴っていた。

 

「それでね、ハイパームキムキなおっちゃんが酷いんだよ。凶悪モモちゃんを更生させろって無茶振りをするんだ」

 

「そうね。モモちゃんの更生は重清ちゃんには荷が重いかもしれないわ。重清ちゃんは女子には甘いと思う程に優しいもの」

 

「甘くてもいいの。女の子は甘い匂いがするからね。クンクン」

 

「重清ちゃん。女の子の胸に顔を埋めてクンクンと匂いを嗅いではダメよ」

 

「いいの! 梅雨ちゃんは僕の梅雨ちゃんだもん! それに梅雨ちゃんのモモは柔らかくて温かくて安心するよ!」

 

「もう、重清ちゃんは困った子ね――あ、思い出したわ」

 

「クンクン。何を思い出したの?」

 

「重清ちゃんの転校騒動の時に重清ちゃんが勝手に私の母に――ふふ、あっという間にあんな所まで逃げられたわ。本当に放っとけない子ね。本当に最期の瞬間まで……重清ちゃん、私は貴方と一緒にいたいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 





──重清くんに弟子ができました。

この弟子は頻繁に牽制をしてきます。

『重ちーは絶対に渡さない!』

そんな強い気持ちが伝わってきます。

正直に言ってとても微笑ましいです。

彼女にとって、重ちーは『無条件に自分を愛してくれる存在』なのでしょう。

二人が初めて出逢った日。

それは悲劇を喜劇へと塗り替える――彼女にとっては世界が砕け散る程の運命の日でした。

思わず涙が溢れそうな程の既視感(デジャブ)が、私を襲います。

遠き日、世界は異質でした。

私の当たり前は、世界(両親)にとっては異常でした。

多くは語りません。

申し訳ありませんが、語りたくはありません。

でも、あの出逢った日(運命の日)

私の人生は狂気的な悲劇から、とても大衆的でご都合主義な喜劇へと劇変しました。

デウス・エクス・マキナ(悲劇をぶん殴る重清くん)が登場するのは喜劇だけです。

個人的には恋愛劇がいいのですが、客観的に見てしまうと間違いなく喜劇なのです。

雄英入学以来、私達の喜劇(人生)にどんどん主要登場人物が増えていきます。

たった二人で始まった喜劇は、これからどんなドタバタストーリーを紡ぐのでしょうか?

ふふ、とても楽しみなのです。


──でも、重清くんは私の重清くんなので、他の皆は諦めて下さいね!










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