重ちー(偽)のヒーローアカデミア   作:銀の鈴

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THE MOVIE〜二人の英雄〜

 

──初めて、プライベートジェットに乗っている。

 

ハイパームキムキなおっちゃんと、『I・アイランド』という人工島へ向かっているんだ。

 

おっちゃんが、そこで開催される『I・EXPO』の招待券を貰ったらしくて、以前に身体を治したときのお礼のひとつとして誘ってくれたんだ。

 

「私の弟子にも声を掛けたんだが、彼には断られてしまってね。何でも職業体験でお世話になったプロヒーローのもとで泊まり込みで修行をしているそうだ。どうも彼は何かに焦っているようだから心配だよ。もう少し重清少年のように肩の力を抜いて欲しいのだけどね。いやっ、言っておくけど重清少年に助けを求めているわけじゃないからね!! 彼に助言とか要らないからね!! 彼はとても影響を受けやすい所があるから重清少年は遠くで見守ってくれるだけで十分だよ!!」

 

ハイパームキムキなおっちゃんが、とても失礼な事を言っている気がする。

 

まぁ、いいや。

 

ハイパームキムキなおっちゃんの弟子なら脳筋だと思うし、頭脳派な僕の助言が助けになるとは限らないからね。

 

ある意味、ハイパームキムキなおっちゃんの言う通り、僕は遠くで見守っていた方がその弟子の為になるのかもしれない。

 

そういやその弟子って誰なんだろう?

 

ハイパームキムキなおっちゃんの口振りならクラスメイトの誰かかな? 別に興味はないから詮索しないけど。

 

それにしても、いくらプライベートジェットで貸切状態と言っても、身体のデカいおっちゃんと何時間もいたら息が詰まりそうだよ。

 

こう言う時は、前に一度だけ見たゾンビなおっちゃんにメタモルフォーゼしてくれないかな?

 

「ハッハッハ、無茶は言わないで欲しいな。もうあの姿にはなれないよ。まあ、あの姿なら注目を集めないという唯一の利点があったからね。それだけは惜しかったと言えるよ」

 

人気がありすぎて困るってことか。うん、少し前なら贅沢を言ってるな、と思ったかもしれないけど、今の僕には分かるよ。ミルコ特戦隊が、予想以上に人気が出ちゃったからだ。

 

「フフ、そうだったね。それで道を歩くのも苦労するって気持ちはどうだい?」

 

群がるちびっ子達を蹴っ飛ばさないかが心配だよ。どうせなら僕と同じ歳ぐらいの女の子に群がられたい。

 

「ミルコ君は元々、子供人気も高かったからね。それに一気に火がついたと言った所だね。ところで、年頃の女性に囲まれても意外と困るものだよ。特に君の場合は可愛い彼女がいるじゃないか。下手に女の子人気が出たら困るんじゃないかい?」

 

それはそうだけど、男の子の夢として、一度ぐらいは可愛い女の子達に囲まれてキャーキャー言われてみたいよ。

 

「ふむ、なるほどね。男の子の夢としての話なら分かるよ。私も君ぐらいの歳の頃ならそういう憧れを抱いたものさ……ただし、夢は夢のままの方が幸せな場合もあるけどね」

 

ハイパームキムキなおっちゃんが遠い目をしている。うん、この歳まで独身だったんだから、きっと女性関係で酷い目に遭っているんだ。そっとしといてあげよう。

 

僕にはヒミコちゃんがいて良かった。そう自分の幸せを噛み締めながら、僕は到着するまで昼寝をする事にした。ぐぅ…。

 

 

 

 

「マイトおじさま!」

 

「メリッサ! 久しぶりだね!」

 

ハイパームキムキなおっちゃんが、金髪娘と抱き合った!?

 

スクープっ、スクープだ!!

 

隠し子っ、それとも歳の離れた恋人かも!!

 

だけど、一番可能性がムチャクチャ高いのは美人局だよ!!

 

ハイパームキムキなおっちゃん!! こんなとこで人生を棒に振ったらダメだよ!! 目を覚まして!!

 

鏡を見なよ!! こんな若くて美人で眼鏡っ娘で、どこか抜けたとこも感じさせるあざとい美少女が、ハイパームキムキなおっちゃんに好意を向けるわけがないよ!!

 

「えっと、マイトおじさま。この子はマイトおじさまのお知り合いですか?」

 

「ああ、私の教え子だよ。こう見えて雄英高校のヒーロー科だからね。決して不審者じゃないから通報はしないでね」

 

「もう、マイトおじさま。通報なんてしません。この子が言ってたことは全部マイトおじさまを心配しての事じゃないですか。ふふ、でもマイトおじさまをハ、ハイパームキムキなおっちゃんって、フフ…ウフフ、ご、ごめんなさい…で、でも可笑しくて、ウフフフ」

 

笑う金髪美少女。

 

うん、どうやら美人局の類いじゃないみたいだね。よかったね、ハイパームキムキなおっちゃん。

 

「そ、そうだね。うん、これは重清少年に予め説明しておかなかった私の落ち度だ。ゴホン、この子はメリッサ。私の親友である『デヴィット・シールド』の娘だ。このように一度笑い出したら止まらない娘だが、アカデミーの3年生であり、将来有望な科学者の卵だよ。決してただの笑い上戸の変な娘じゃないからね。勘違いしないであげて欲しい」

 

「ウフフフ…ヤ、ヤダ、フフフ…そ、その紹介って、フフフフフ…わ、私が変なこ…フフ、フフフフ」

 

止まらない笑い続ける金髪美少女。

 

うん、珍しいものが見れた。ヒミコちゃんのお土産に写真を撮っとこう。

 

はい、ポーズ。

 

「ウフフフフ…こ、この子…フフフ、変な子ね、フフフ…しゃ、写真って、フフ…フフフフフ」

 

「……重清少年、楽しそうなところ申し訳ないが、そろそろデヴィットに会いに行きたいんだか?」

 

うん、わかった。

 

それでこの笑い続けてる金髪美少女はどうするの?

 

落し物として、交番に預けておく?

 

「お、落し物!? わ、私が落し物……フフフフフ…や、やだ……フフフ、お、落し物って…フフ」

 

僕が拾い主ってことで、あとで三割貰えるかな?

 

「ウフフフ…わ、私が三割…この子に貰われちゃう…フフフフフ……パパに…フフ、怒られちゃう…フフフ」

 

そろそろ飽きてきたから笑い娘をハイパームキムキなおっちゃんに担がせた。

 

さあ、デヴィットおじさんの所へ行こう!!

 

「そ、そうだね」

 

──笑い娘はハイパームキムキなおっちゃんの肩に担がれたまま笑い続けていた。

 

 

 

 

おっちゃん同士が再会して喜び合っていた。

 

僕は正気に戻ったメリッサに叱られていた。

 

「もう、歳上を揶揄うなんていけないことよ」

 

「うぅ、僕は落し物を届けただけなのに…」

 

「ンッ……だ、ダメよ。笑わせようとしないの」

 

流石に二回目だと笑わせられなかった。

 

「メリッサ、随分と仲良くなったようだね」

 

「パパ、そうね。重清君とは冗談を言い合える仲になったわ」

 

うん、メリッサの三割は僕のものだから、もう二人はマブダチと言っても過言じゃないよ。

 

「そ・れ・は・か・ご・ん・よ」

 

メリッサに頬を軽くつねられた。僕は頭を振ってその魔の手から逃げると、ササッとハイパームキムキなおっちゃんの後ろへと避難した。

 

「デヴィットおじさん。娘さんの教育に少しだけ失敗しちゃったね。パパが大好きなのは可愛いけど、ちょっと暴力的だよ」

 

「重清君、そんなこと言う子はメッしちゃうわよ」

 

僕はデッカい背中を盾にして、メリッサから身を守る。

 

「重清少年、私の背中に隠れるくらいなら言わなきゃいいと思うのだが?」

 

えー、こんな金髪美少女と軽口を叩き合える機会なんて、もう二度と無いかもしれないんだよ。

 

当たり障りのない世間話でお茶を濁すより、言いたいこと言い合って楽しく会話をしたいよね。

 

僕はハイパームキムキなおっちゃんの背中によじ登りながら言う。

 

よし、もうすぐ肩に到着するぞ。

 

「ねぇ、マイトおじさま。この子っていつもこんな感じなんですか?」

 

「そうだね。普段はもう少し――」

 

「あ、やっぱり今は旅先だから――」

 

「――もう少し騒がしいかな。今日は知らない人が多いからね。彼も緊張をしているのだと思うよ」

 

「旅先でハイテンションになっているんじゃないんですか!?」

 

メリッサが目を丸くする。

 

ところで、いつまで立ち話をするのかな? おっちゃん同士で積もる話もあるだろうし、僕は適当に島内の見学に行ってくるよ。

 

「それなら私が案内をするわ。ふふ、重清君一人だと絶対に騒ぎを起こすと思うからね。お姉さんがお目付役も兼ねてあげる」

 

「うん、ありがとう。メリッサは優しいね」

 

「え!? も、もう、いきなり素直な子にならないで!」

 

「ハハハ、中々に愉快な子だね。――矢安宮君。オールマイトから話は聞いているよ。君のお陰で古傷が完治したと。本当にありがとう。親友としてずっと御礼を言いたかったんだ。オールマイトを、平和の象徴を救ってくれて本当にありがとう! この恩には必ず報いるよ。私はこう見えてサポートアイテム研究に関してはそれなりのものだと自負している。君が私の力を必要としたときはいつでも声を掛けて欲しい。これが直通の連絡先だよ」

 

デヴィットおじさんから一枚のカードをもらった。金属製の名刺みたいだね。

 

うん、頼みたいこと云々は別にいいけど、デヴィットおじさんの気持ちは受け取ったよ。良かったね、おじさんの親友が元気になって。平和の象徴が光を取り戻せて。これからもオールマイトの役に立つ発明品をいっぱい作ってね。

 

「矢安宮君…いや、重清君! もちろんだよ! オールマイトの、いや全てのヒーローの役に立つ発明品をこれからも作り続けるとも!!」

 

デヴィットおじさんは力強く頷いてくれた。

 

 

 

 

「マイトおじさまは、お怪我をされていたの?」

 

あれ、メリッサは知らなかったんだ。

 

うーん、こういうのは本人の許可がないと言うべきじゃないんだ。ごめんね。

 

「え、急に真面目な子になっちゃったの!?」

 

僕は口が堅いんだ。秘密の多い男だからね。

 

「フフフ、そうね。重清君は秘密の多いミステリアスな…フフフフフ」

 

せめて最後まで言い切って!

 

でもまぁ、メリッサだけ仲間外れは可哀想だし、さっきのデヴィットおじさんもメリッサの前で、僕に御礼を言ったって事は教えても構わないって事かな。

 

でも、聞いた内容は、誰にも言わないでね。ここだけの秘密だよ。

 

「はい、絶対に言わないと誓うわ。平和の象徴に関わる事だもの」

 

平和の象徴…?

 

あぁ、僕が秘密にして欲しいのは、平和の象徴に関する事じゃなくて、僕が個性を使った事だよ。もちろん、私有地での事だし、雄英高校絡みだけど、個性の無断使用は法律違反だからね。一応は内緒にしておきたいんだ。

 

「えっと、わかったわ。私とは理由がずれているけど、絶対に秘密にするわ」

 

メリッサの言質をとった僕は、うろ覚えのハイパームキムキなおっちゃんが負っていた怪我の状態を思い出しながら彼女に伝えていった。

 

「おっちゃんは……お腹…確か脇腹の辺りを怪我してたんだ」

 

「お腹を…それで怪我の程度はどれぐらいだったの?」

 

「えーと、腕を突っ込んだような傷跡があったかな」

 

「そんな! それだと内臓にまで傷は届いてたんじゃ!」

 

「うーんと、そうだね。たしか胃を全摘出したんだよ」

 

「胃を!? それほどの手術をしたの!」

 

「あぁ、そうそう、確か下手な手術を繰り返したから後遺症が半端ないとか言ってた」

 

「マイトおじさまの手術をヤブ医者にさせるなんて!?」

 

「あとは……呼吸器官にも損傷があるって言ってたような」

 

「……ねぇ、あなたがマイトおじさまの治療をしたのよね?」

 

「そうだよ、僕の個性で治癒したんだ」

 

「そうよね。それなのに、どうしてそんなにあやふやな答え方なの?」

 

「えー、それは仕方ないよ。だいぶ前の話だし、記憶だけに頼って話せばこうなるよ。メリッサだって、昔の研究内容を資料なしで急に説明してみろって言われたらこうなると思うよ」

 

「あ…ごめんなさい。君の言う通りだわ。私にとってはマイトおじさまは大切な人だから…少しナーバスになってたみたい。本当にごめんなさい」

 

「うん、別にいいよ。僕も当時は何となく聞いてただけだから、元々よく覚えてなかったからね」

 

「それで治療できるの!?」

 

「僕の個性は、物体と生物を元通りに直す(治す)能力だから、その時点での怪我の状態とかは関係ないんだよ」

 

「元通りに……治療というよりも復元、巻き戻しに近い個性なのかしら?」

 

「どうなんだろ? 難しいことは分からないけど、将来は食いっぱぐれのない優れた個性だから気に入ってるよ」

 

「ふふ、食いっぱぐれって…そんな凄い個性なのに…ふふ、重清君は面白いわね」

 

メリッサは可笑そうにしてるけど、ここで笑い転げないでね。今はハイパームキムキなおっちゃんがいないから、メリッサを拾って帰れないよ?

 

他の人に拾われちゃったら、僕の分を合わせてメリッサの六割は他人の物になっちゃうから大変だよ。

 

例えば、食事に行ってもメリッサが食べる物は多数決だ。僕はメリッサがスタイルを維持できるように精進料理を選ぶからね。

 

もう一人の持ち主によっては一生、メリッサは精進料理だけになっちゃうね。

 

メリッサの決め台詞が『私の身体は精進料理とメガネで出来ているわ』になっちゃうよ。

 

「うふふ、眼鏡は顔の一部ではありません。それに私の三割も重清君の物ではないわ。拾ってくれたお礼はそうね。私が発明したサポートアイテムを一つプレゼントするね」

 

「やったー! 金髪美少女からのプレゼントだー!!」

 

「もう、パパの研究室でも金髪美少女って言っていたけど、本当にそう思っているの?」

 

「ん? メリッサは可愛いよ。僕のヒミコちゃんの次ぐら…いは、梅雨ちゃんかな? その次はミルコ姉さんだね。その次はモモちゃんだし、そのまた次は三奈ちゃん、それとも透ちゃんかな? その次は響香ちゃんを入れないと拗ねちゃうよね。ああっと、お茶子ちゃんもだ。メリッサはその次ぐらいには可愛いよ!」

 

「えーと、それって褒めてるの?」

 

「僕にとっての可愛い順番だからね。だから、客観的視点でいう金髪美少女という意味だとメリッサが一番だよ」

 

「もう、微妙に喜び切れない言い回しね。でも、身近なガールフレンドを優先するのは良い事だわ。調子のいいプレイボーイは好きになれないもの」

 

「プレイボーイ…一度ぐらいはそう言われてみたいかな?」

 

「ダーメ。それはダメよ。男性はね、パパみたいに女性に対して一途じゃなきゃいけないのよ。一途な男性はとても魅力的なのよ。私のパパを見れば分かるでしょう。世界一素敵なパパだもの!」

 

──僕は思った。娘ができたらメリッサみたいなファザコンに育てたいと。

 

 

 

 

メリッサに『I・アイランド』を案内してもらっていると、A組の同級生を何人か見かけた。

 

アルバイトをしてたり、パビリオンに参加してたりしてた。

 

そんな中、警備ロボットが何体もサイレンを鳴らして走り回っていた。意外と治安が悪いのかな? ここの前評判だと、どっかの刑務所並みにセキュリティーがしっかりしてるって聞いてたんだけど。

 

「ううん、違うわ。あのサイレンは急病人の救護時のものよ。『I・EXPO』開催で人が普段より多く集まっているから病人の数も増えているのね。こればっかりは仕方ないことだわ」

 

「そっか、ああ、そこにも倒れている人がいるよ。酒臭いから酔っぱらいだね。いくら大きなイベントだからって羽目を外しすぎだよ」

 

「もう、いい大人が見っともないわね。もっと、子供のお手本になって欲しいわ」

 

メリッサと大人達のダメさ加減に呆れていると、突然声を掛けられた。

 

「重清さん、こんな所でお会いするなんて奇遇ですわね」

 

「おっす。今日はトガと一緒じゃないんだな」

 

「あれー、こんな美人さんと何をしてたのかなー? トガちゃんを泣かせたらあかんよ?」

 

モモちゃんと響香ちゃん、そしてお茶子ちゃんの三人だった。

 

僕は『I・EXPO』を見に、ハイパームキムキなおっちゃんに連れて来てもらったんだ。

 

こっちのお姉さんは、おっちゃんの親友の娘さんだよ。今はこの島内の案内をしてもらっていたんだ。

 

それで三人も『I・EXPO』を見に来たの?

 

「はい、我が家で出資をしている企業から招待券を頂いたので、皆を誘いました」

 

残念ながら招待券は全員分には足らなかったから、厳正な抽選の結果、響香ちゃんとお茶子ちゃんがモモちゃんと来ることになったそうだ。ちなみにヒミコちゃんは最初から抽選には不参加だ。

 

実はヒミコちゃんは、ミルコ特戦隊の営業で仲良くなった女子園児と、彼女の自宅でお泊まり会をしている。

 

他人には興味の薄いヒミコちゃんだから、これはとても珍しい事だ。女子園児を見るヒミコちゃんの優しい眼差しには驚かされたよ。

 

ヒミコちゃんにとって良い変化だと思うけど、同時にとても心配でもあるから一緒にお泊まり会をしたかったんだ。だけど、ヒミコちゃんから――

 

「女子高校生が知り合いの女子園児とお泊まり会をするのは、とても微笑ましいエピソードですが、男子高校生だと途端に犯罪臭がするのです」

 

――と言われて断念した。うぅ…僕は純粋に心配をしているのに…。

 

「あらあら、可愛らしいレディ達ね。彼女達は重清君のガールフレンドかしら。ふふ、重清君はモテるのね」

 

メリッサが目を輝かして聞いてきた。

 

「初めまして、私は八百万百です。重清さんとは同級生ですわ。そして同じヒーロー事務所に勤める約束も交わしているとても親密な間柄でもあります。以後お見知りおきを」

 

「えっと、耳郎響香です。矢安宮とは同級生です」

 

「麗日お茶子です。私も矢安宮君とは同級生になります」

 

「まあまあ、全員が雄英のヒーロー科なのね。凄いわ、こんな可愛らしいお嬢さん達が未来のヒーローなのね」

 

なんだかメリッサは、二つしか歳は変わらないのに近所の話好きなおばちゃんみたいだね。

 

ぎゅぅ。

 

メリッサに頬をつねられた。

 

体罰はいけないと思う。

 

 

 

 

夜のパーティーでは、ハイパームキムキなおっちゃんがいきなり挨拶をする事になった。

 

流石はナンバーワンヒーローだけあって、いきなりだったのに卒なく挨拶をこなしている。

 

その挨拶の途中で、会場の警備システムが動き出した。

 

パーティーに参加していたヒーロー達が次々に拘束されていく。

 

僕はメリッサの手を引いて、近くにいたデヴィットおじさんの後ろに咄嗟に隠れた。

 

ハイパームキムキなおっちゃんは何してんの!?

 

パーティー会場の前方に設置されたステージでは、ハイパームキムキなおっちゃんも拘束されて倒れていた。

 

しっかりしてよっ、ナンバーワンヒーロー!!

 

「大丈夫!! 私に任せなさい!! この程度の拘束など!!」

 

「動くなっ、オールマイトォ!! ヒック、他のヒーロー共もだァ、一歩でも動くとォ街中の一般人がァ、ヒィック、死ぬことになるぜェ…ウィック、クソっ、昨夜の酒が抜けねえ!」

 

会場の出入口から武装した男達が雪崩れ込んできた。

 

その中のボスっぽい酔っぱらいがオールマイトの動きを制止した。

 

その声と同時に、周囲のモニターには街中の様子が映し出されていく。警備ロボットの数が異様に多い。あの数が一斉に一般人を攻撃し出したら、僕のハーヴェストでも止めれないと思う。

 

「一般人を人質に取るとはなんと卑怯な!! お前達の目的はなんだ!!」

 

「黙れッ!! ヒック、ヒーロー共はァ大人しくしていろォ!! 余計な動きを見せたらァ、一般人が死ぬぞォ!!」

 

その言葉にヒーロー達は動けなくなる。

 

よし、僕とメリッサはこのまま目立たない様にデヴィットおじさんの後ろに隠れていよう。

 

「(ね、ねぇ、念の為に聞くけど、重清君は戦闘力に自信はあるのかしら?)」

 

ヴィラン達に目をつけられないように身を縮こませていると、メリッサが小さな声でそんな事を聞いてきた。

 

「(ヒーロー科の女子の中に透明の個性の子がいるんだ。その子と本気で取っ組み合いをしたら軽く負ける自信ぐらいならあるよ)」

 

「(そ、そうなのね……透明の個性、つまり身体能力は普通の女子高生よね。うん、ここは大人しくしていましょう)」

 

「(それがいいよ。こういうとき、メリッサみたいな可愛い子が抵抗しようしたら、悪党達にあっさりと返り討ちにあった挙句、エッチな事をされるのがお約束だもんね)」

 

「(こら、こんな時にふざけないの)」

 

「(えぇ、僕は純粋にメリッサを心配してるんだよ。正義感に駆られて先走ったりしたらダメだよ)」

 

「(重清君……そういう心配は普通は私がするものじゃないかしら? あなたはヒーロー科なのよね)」

 

「(僕の役割は衛生兵だと思って欲しい。又は軍医だね)」

 

「(戦闘向けの個性じゃないにしても、何だかヒーロー志望らしくないわ)」

 

「(適材適所だよ。個性関係なしに、僕は文科系だから暴力は苦手なんだ)」

 

「(つまり暴力は苦手なのに、それでも重清君はヒーロー志望なのね……私も小さい頃はヒーローになりたかったの。でも無個性だったから自分がヒーローになることは諦めたわ。その代わり、パパみたいな科学者になってヒーローを助けるヒーローになろうって決めたの)」

 

「(メリッサは無個性だったんだ)」

 

「(えぇ、そうよ……でも今はもう割り切れているわ)」

 

「(ねぇ、メリッサ)」

 

「(うん…)」

 

「(テーブルの上のご馳走を食べたら目立つかな?)」

 

「(えぇ!? ここでそういうセリフが出るの!?)」

 

「(え…? あ、そっか!)」

 

「(あ、違うの! もう気にしてな――)」

 

「(メリッサ、トイレなら僕が壁にな――)」

 

「(ち、違うわ! ……ちょっと待って、もし本当にトイレだったら、ここでさせる気だったの!?)」

 

「(違うんだよね? うん、よかった)」

 

「(うぅ…よくないけど、よかったぁ。ハァ…もう、重清君は困った子なのね。あまり女の子にイジワルなことを言ったらダメよ。――ふふ、でも重清君にしたら無個性なんて話題にもならない普通のことなのね。昔、マイトおじさまの言葉で、私はコンプレックスを乗り越えられたわ。そして、そのときの様々な想いを熱意にかえて、私は科学者になる道を歩み始めたの。だけど、もし幼い頃にあなたが側にいたら、私は無個性なんて気にしない普通の女の子になっていたかもね。そうなると科学者にもなろうとは思わなかったかもしれないわ)」

 

「(ううん、メリッサはやっぱり科学者の卵になってたと思うよ。だって、昼間に島内を案内してくれたとき、メリッサが一番楽しそうに説明してくれたのは科学技術に関する事だった。メリッサは無個性云々とか関係なく科学技術が大好きになってた筈だよ)」

 

「(うん、ありがとう。そう言ってもらえて何だか嬉しいわ。うん、重清君の言う通りね。私は科学技術が大好きだもの)」

 

メリッサが嬉しそうに微笑を浮かべたとき、ヴィラン達の酔っぱらいボスがこちらに向かって歩いてきたのが見えた。

 

「(メリッサ! ヴィランがこっちに来た)」

 

「(っ!?)」

 

デヴィットおじさんの背後に置いてあったテーブルの下に、僕はメリッサと共にもぐり込んで身を隠す。

 

酔っぱらいボスは、デヴィットおじさんの近くにいた知らないおっちゃんに何か声を掛けている。

 

あっ、酔っぱらいボスが知らないおっちゃんを連れて行こうとした。それをデヴィットおじさんが止めようとしている。

 

しまった!!

 

メリッサだけじゃなくて、デヴィットおじさんにも正義感を出さないように忠告すべきだった。

 

ああっ!? デヴィットおじさんが知らないおっちゃんの代わりに連れて行かれちゃうよ!!

 

「(パパっ!?)」

 

うわっ!?

 

顔を青くしたメリッサが、テーブルの下から飛び出そうとしてる!

 

うん、大好きなパパがヴィランに連れて行かれそうなら我慢は出来ないよね。

 

将来、娘ができたらメリッサみたいなファザコンな娘に育てたい僕としては、メリッサの行動を止めるのは気が引ける。

 

よしっ、僕も覚悟を決めよう!!

 

「(メリッサ、僕も一緒に行くから冷静になるんだ)」

 

僕はメリッサの手を強く握ると、彼女の耳元で囁く。そしてメリッサを連れてトコトコとデヴィットおじさんの後をついて歩く。

 

メリッサは、僕の突然の行動に目を丸くしながらも大人しくついて来てくれた。

 

最初に連れていかれそうになっていた知らないおっちゃんは寝転がってた。この人も酔っぱらってるよ。

 

ヴィランに連れていかれるおっちゃんと子供二人。

 

ボスの命令を受けた連行役のヴィランは一瞬だけ首を傾げたけど、酔っぱらいボスと同じように、このヴィランも昨日の酒が残っているみたいだった。特に深く考えずに『ヒック…あれ二人だったんじゃ…三人だったか?……まあいいか』とか言いながら歩き出した。

 

うん、こういう場合は堂々としてれば何とかなるものだね。

 

「(重清君の声を聞いたら安心できた――この子の手、こんなに大きいんだ。すごく温かくてパパみたい)」

 

──メリッサの小さな呟きは、僕の耳には入らなかった。

 

 

 

 

ヴィランに連れていかれた保管庫で、デヴィットおじさんは保管庫のセキュリティを破るように命令をされた。命令したヴィランは後で戻ってくると言い放つと、千鳥足で休憩室の方へと消えていった。

 

ヴィランの目的は他ならぬデヴィットおじさんの研究成果だった。

 

デヴィットおじさんはキーボードを一生懸命に叩き始めた。

 

それを後ろから見学しながらメリッサは文句を言っている。

 

「パパの研究成果を奪おうだなんて、そんなの酷いわ!」

 

「いいんだよ、メリッサ。どうせ、上層部から研究中止を宣告されたやつだからね。それにオールマイトの為の研究だったけど、その彼はすでに復活したから研究する必要も無くなっていたんだ」

 

「パパ……うん、分かったわ。ところで、パパ。どんな研究をしていたの?」

 

「ああ、どうせ奪われるから教えてあげるよ。だけど他の人には内緒だ。重清君もいいね」

 

「大丈夫よ、パパ。重清君は研究に興味がないもの。さっきから私に寄りかかって眠りかけているぐらいよ」

 

「……すごい度胸だね。その心臓の強さだけならオールマイト以上だと思うよ」

 

「ふふ、そうね。それにさっきも衝動的に飛び出そうとした私を止めてくれたわ。あのとき飛び出して騒ぎを起こしていたらどうなっていたか分からないわ。冷静に対処してくれたこの子はやっぱりヒーロー科ね……ふふふ、まさかそのまま普通に付いていくとは思わなかったけどね」

 

「ハハハ、しかしこれで重清君は、オールマイトの恩人だけではなく、メリッサの恩人にもなったわけだ。彼には必ず恩返しをしなくちゃならないね」

 

「この子がマイトおじさまと私の恩人……うふふ、なんだか変な気分だわ。でもそうね。恩返し…と言うとピンとこないけど、彼って少し危なっかしい所もあるから、そういう面を支えてあげたいわ」

 

「ほう、メリッサがそんな事を言うとはね。……孫はまだ作らないでおくれよ」

 

「パパっ! そういう意味じゃないわ!」

 

「ふふ、すまない。少しふざけ過ぎたようだね。よし、セキュリティを解除したぞ」

 

ん?

 

デヴィットおじさんが、保管庫から箱を取り出した。中身は何かな?

 

「これは、個性増幅装置だよ。怪我で個性が弱っていたオールマイトの為に研究していたんだが、その怪我は重清君が完治させてくれたからね。今では無用の長物さ」

 

なるほど、個性増幅装置か。

 

この時、僕はピンときた。

 

この世界は、ジョジョ世界が混ざった世界だ。そして今、僕の目の前にジョジョ世界でなら“スタンド”に当たる、この世界の“個性”を増幅する装置がある。

 

ジョジョ世界でならそれは、『スタンドの弓矢』の事だ!

 

うぉぉぉ!!!

 

きっとこれはスタンド使いとしての宿命だ!!

 

僕は以前、漠然とハーヴェストを成長させる必要があると感じたことがあった。確かあれは職業体験に行く前の事だった。

 

ヒミコちゃんから護衛のハーヴェストを外すわけにはいかないと考えたときに感じたんだ。結局はハーヴェストを成長させる手段がなくてそのままになっていたけど。

 

今、その手段が目の前にある。

 

──両足を大きく開き、上体を僅かに傾ける。左手で顔を隠すが、その指の間からは黄金の精神を感じさせる瞳が輝いていた。

 

「ゴゴゴゴゴゴゴゴ。これは僕の宿命だろう。この先の未来にて待ち受けているであろう『吐き気を催す邪悪』と戦う力をここで得よ。宿命が僕にそう語っている。デヴィットおじさん!! 個性増幅装置(スタンドの弓矢)をここに!!」

 

「おや、重清君は使ってみたいのかい? 研究では副作用の類いは見つからなかったけど、まだ未完成品だよ? まぁ、どうせヴィランが戻ってきたら渡さないといけないから、重清君が使いたいなら今の内に使ってみると良いよ」

 

「ふふ、重清君は厨二病なのね」

 

「メリッサ、男の子にはそういう時期があるものさ。お姉さんとして優しく見守って上げなさい」

 

「うん、わかったわ。パパ――ねぇ、パパにもそういう男の子の時期があったの?」

 

「ノーコメントだ。メリッサ」

 

「ふふ、男の子って可愛いのね」

 

「……」

 

デヴィットおじさんが、箱から個性増幅装置(スタンドの弓矢)を黙って取り出して僕の頭にセットしてくれた。

 

「…じゃあ、スイッチを入れるよ。気分が悪くなったらすぐに言うんだよ」

 

デヴィットおじさんがスイッチを入れた。

 

その瞬間、僕の身体の奥底から『力』が溢れてきた。

 

──なんだか健康に悪そうだったから直ぐにハーヴェストにパスをした。

 

「(ハーヴェストよ。僕の身体の奥底から溢れる力を使って良い具合に成長してね)」

 

《了解です》

 

心の中でハーヴェストに指示をする。声を出したら『喋るのストップ』って最近のハーヴェストは言うようになったんだ。反抗期かな?

 

何にしても健康に悪そうだった『力』がハーヴェストに流れていくのを感じる。

 

「どうかな? 個性が強まっている感じはするかい」

 

「うーん、まだみたい。もう少し時間が掛かるのかな」

 

「ふむ。実験では即効性があったんだけどね。個性の種類によるのかな?」

 

「パパ、出力が弱いんじゃないかしら」

 

「いや、この装置は自動で出力が変わるんだよ。そうだ、重清君。個性を使ってみたらどうかな」

 

「そっか。使わない状態だと、増幅するものがないもんね」

 

何となくデヴィットおじさんがさっきまで叩いていたキーボードに立つ。

 

──“クレイジー・ダイヤモンド”

 

えっと、どうしようかな。故障してるわけじゃないから直すとこもないし、そうだ! ヴィランのハッキング前の状態に戻せないかな?

 

保管庫のセキュリティと警備システムもネットワークで繋がっていると思うから試してみよう。

 

「ドラララララララララァーッ!!!」

 

「パパ、重清君がキーボードをバンバンと子供みたいに叩いているけど意味があるのかしら?」」

 

「ふむ、あれが彼の個性の使い方なんだよ。オールマイトを治すときも同じ様に叩いてたらしいよ。きっと彼の中では流れるような見事な動きで拳を放っているイメージだろう。いいかい、メリッサはお姉さんなのだからね。そこの所をちゃんと汲んであげなさい」

 

「ふふ、本当に困った子ね。男らしいところを見せてくれたと思ったら、すごく子供っぽい事をするのだもの。きっと、彼は誰よりも素直な心を持っているのね。……素直過ぎて悪い女の子に騙されていないかしら? そういえば、彼のガールフレンドも来ていたわね。ここはお姉さんとして、あの娘達の性根を見定めてあげた方がいいわね」

 

個性を使ってる影響だと思う。ハーヴェストに流れる『力』が増大していく。

 

よし、もっと個性を使うぞ!!

 

ドラララララララララァーッ!!!

 

おぉっ!!

 

どんどん流れる『力』が増えていくよ!!

 

ハーヴェストよ、成長できそう?

 

《成長中です。個体数の増加確認。射程距離延長を確認。新能力獲得を確認。各個体のステータスアップ失敗を確認。個体のステータスは上限値のため成長出来ません》

 

やった、新能力獲得だ! でも、ハーヴェストは小っちゃいからこれ以上のパワーアップは無理なんだね。巨大化したらハーヴェストの良さが無くなると思うし難しいね。

 

まあいいや。ハーヴェストの強みの総数と射程距離は成長しているんだ。お楽しみの新能力は後でゆっくり確認するとして、このまま成長できる所まで成長させよう。

 

ドラララララララララァーッ!!!

 

僕は一生懸命に頑張る。ハーヴェストに流れる『力』が増えていく。

 

テレレレッテッテッテー!

 

そんな幻聴が聞こえる。

 

ハァハァと呼吸を乱しながらも僕は連打を頑張る。つ、疲れた…。

 

このまま永遠に続くと思ったハーヴェストの成長期もやっと終わりを迎えてくれた。もう汗だくだよ。

 

《現時点での成長限界に達しました》

 

ハーヴェストの言葉と同時に、個性増幅装置(スタンドの弓矢)もその役割を終えた。

 

──プツン。

 

そんな音を立てて個性増幅装置(スタンドの弓矢)は、永遠の眠りについた。

 

僕はソッと頭から個性増幅装置(スタンドの弓矢)を外すと箱の中に戻した。

 

うん、これで外見上では壊れているかは分からないね。

 

僕なら直そうと思えば直せるけど、個性増幅装置(スタンドの弓矢)を他の人に使われて、万が一スタンド使いの才能に目覚められたら怖いから壊れたままにしとこう。

 

デヴィットおじさんは、どうせヴィランに奪われるものだし、中止させられた研究成果だから知らない顔をしてくれた。

 

メリッサは、なんだか慈愛に満ちた目をして、ハンカチで汗を拭いてくれた。なんだか梅雨ちゃんに似てると思った。

 

よし、キーボードに最後の一発もしておこう。

 

「ドラァァァァッ!!!」

 

──ぽこん。

 

そんな音を立てて『I・アイランド』の警備システムは復旧した。

 

 

 

 

終わってみれば、結末は呆気なかった。

 

拘束を解かれたヒーロー達によって、ヴィラン達は捕縛された。

 

大半のヴィランは酔っ払っていた。なんでも前日にヴィランのボスが景気付けで、飲み会を催したけど、いつもなら平気な酒量にも拘らず二日酔いになったしまったそうだ。

 

あの店の安酒のせいだ!! と喚くヴィラン達の姿がテレビで放送された。それで前日にヴィラン達が飲み会をした店は『ヴィランをも倒す安酒店』の異名を得て繁盛をしているらしい。

 

個性増幅装置(スタンドの弓矢)は奪われる恐れを無くすために、全ての研究成果を消滅させたそうだ。13号先生みたいな特殊な個性で消滅させたから、僕でも復元する事は出来ない。とデヴィットおじさんが言っていた。

 

パーティーは台無しになったけど、次の日からは普通に『I・EXPO』を楽しめた。

 

A組の女子達とも合流して、メリッサの案内で普通なら入れないような所にも行けて凄く面白かった。

 

メリッサもヴィラン事件以降、とても優しくしてくれるようになった。ずっと側に付いて面倒を見てくれたんだ。

 

お姉ちゃん気質というか、すごく甘やかしてくれた。

 

だけど、そんなメリッサとももうお別れだ。

 

今日、僕達は帰る。

 

空港までデヴィットおじさんとメリッサが見送りに来てくれた。他の同級生達は別の便で先に帰っている。

 

「重清君、最後にもう一度言おう。サポートアイテムが必要になったらまずは私に連絡をして欲しい。必ず君の役に立つと約束するよ」

 

「ふふ、パパったら張り切っているわね。でも、パパより先に私に連絡をしてね。パパのサポートアイテムは性能は良いけど、デザインが古いわ。高校生の重清君には私が開発したサポートアイテムの方が似合うわ」

 

「おいおい、デザインが古いは酷いな。私のはスタンダードと言うんだ。誰にでも似合うのを意識しているんだよ」

 

「私は重清君専用のデザインをするわ。どう? お抱えの科学者よ。重清君も嬉しいわよね」

 

メリッサが好意的すぎて怖いです。

 

「ふふ、重清君は照れ屋さんなのね」

 

「そろそろ出発の時間だ。デイヴ、メリッサ。今回はパプニングもあったが楽しかったよ。いつかまた会いに来るまで元気でいて欲しい」

 

「ああ、私も楽しかった。オールマイト、また会える日を楽しみにしているよ」

 

「マイトおじさま、お身体にはお気をつけて下さい。もういい歳なのですから無理はせずに…とは言えませんが、怪我をされたら直ぐに重清君に治してもらって下さいね。だけど、重清君でも不摂生による病気は治せないのですから食事と睡眠は十分に摂るように注意して下さいね。ではまたお会いできる日を楽しみにしております。重清くんも元気でね。約束したプレゼントのサポートアイテムが完成したら連絡するわ。楽しみに待っててね」

 

メリッサも研究のし過ぎて身体を壊さないように気をつけてね。プレゼントを貰うまでメリッサの三割は僕のものなんだから大切に扱ってよ。

 

デヴィットおじさんも元気でね!

 

じゃあ、二人ともバイバーイ!!

 

──僕達が乗るプライベートジェットは、僕のヒミコちゃんが待つ街へと向かって飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、パパ」

 

「なんだい、メリッサ」

 

「重清君は、女難の相があるみたいなの」

 

「あぁ、一緒に『I・EXPO』を回ったと言っていたヒーロー科の女子達のことかい。ふむ、意外とモテるみたいだね、重清君は」

 

「重清君は、普段は子供っぽいけど、いざというときは頼りになる男の子だわ。だから、同年代の女の子達が惹かれるのは分かるの。でも、彼みたいな素直で甘えん坊さんは、包容力のあるお姉さんが面倒をみてあげるべきだわ。だって、彼は甘えられるより甘えたいタイプだもの。同年代にそんな包容力を求めるのは酷な話だわ。このままだと周りの女の子達が、彼の重荷になりかねないと思うの。ハァ、仕方がないわ。ここは歳上のお姉さんが頑張って上げるべきね。それでパパ、短期留学ならすぐに手続きは済むわよね?」

 

「なるほど、女難か……強く生きろよ、重清君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





──重清くんが旅行に行きました。

彼と遠く離れるのは初めてなのです。

寂しくないといえば、それは嘘になります。

本当は一緒に行きたかったのです。

だけど、先にあの子とお泊まり会の約束をしていました。

もう少しあの子が大きかったら、あの子を連れて一緒に行けたのですが、今はまだ遠方への旅行は無理なのです。

お泊まり会に、重清くんが参加するとも言ってくれましたが、それは断りました。

あの子が人見知りをするからです。

というのは嘘です。

あの子は、私に似ています。

重清くんに近付けるのは危険なのです。

もしも、あの子が私のように彼のことを――

それを考えると、夜も眠れなくなります。

男子高校生と女子園児のカップルはヤバいです。

しかも、女子高校生と女子園児で両手に花なのです。

犯罪的な見た目になります。

もちろん、冗談です。

……あの子と遊んでいると、重清くんが柔らかい表情を浮かべるのです。

微笑ましいものを見るような目は止めて下さい。

そんな目で見られると背中がかゆくなっちゃうんです。

ハァ…まだエッチな目で見られる方がマシです。

そうです!

いい事を思いつきました!

あの子に重清くんを『パパ』と呼ばせてみましょう。

きっと面白い反応を…………いえ、やめておきます。

冷や汗が止まらなくなりました。

たぶん…いえ、絶対にシャレでは済まなくなる予感がしました。

きっと重清くんは娘を溺愛するタイプです。

そうですね。あの子の代わりに、私が『パパ』と呼ぶことにします。

彼が思いっきり溺愛しても大丈夫なのです。


──パパ、私に恋をして。


私は、パパに恋してるよ──















私となら合法なのです。




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