女だと思っていたアイドルが、実は男だと知った日。 作:バカイザー
「あ、ども…。」
「おはよう、笹木さん!」
「俺は佐伯ですよ、星野さん。」
仕事に行く為に家を出ると、隣の家の星野さんとバッタリ出会った。
星野さんはアイドルをやっているらしく、世間でも結構有名なのだそう。
俺はテレビ見ないしアイドルも興味ないから知らない。
星野さんがやってるなら観ようかなとは思うけど、思うだけでそれを実行しようとしたことはない。
多分俺のことだから一生観ない。
星野さんはアイドルをやってるだけあってめちゃくちゃ美人で、初対面の時に綺麗すぎてフリーズしたのは良い思い出。
今はもう慣れてそんなことはない。ないったらない。
そして星野さんは美人なだけでなく、とても可愛い。
毎回名前間違えることさえも最早愛おしい。
彼女のルックスで名前を間違えるのはドジっ子感が出て、俺の好みに刺さりまくった。
この子はとても危険です。
そんなことはおくびにも出さず、今日も星野さんと会話をする。
ちなみに星野さんとの会話は朝のルーティンな。だって毎日会うんだもん。
決して俺が合わせてる訳ではない。断じてない。
「星野さんは今から仕事ですか?」
「そーなんだよね。今日は朝からレッスンがあってさー。」
当たり障りのない会話を繰り返し、俺達2人はエントランスまで会話を続ける。
いつも星野さんが行く方向と俺の行く方向が尽く違うからだ。
まあでもこれくらいの距離感が俺にはちょうどいいと思ってる。
対人相手の仕事なのに、プライベートでも人と関わらなきゃならんのがめちゃくちゃ嫌。
最近「仕事変えよっかな」って本気で思い始めてる。
何処ぞのこどおじ監督が俺を離さないけど。
別に俺芸能界に拘らなくても行くとこ沢山あるし。
芸能界引退した所で困らない。むしろその方が俺、活き活き出来る気がする。
「じゃあ俺はここで。仕事頑張ってくださいね。」
「ありがとう佐藤さん。」
「佐伯です。」
* * *
「…やった。今日も話せたっ。」
顔の下半分を両手で覆い、思わずニヤけてしまう口元を隠す。
いつも用がなのに
そして毎回佐伯さんと逆方向に5分程歩いてから家に帰る。
一応2人の子供にはウォーキングだと嘘を付いてる。
最初は本当にウォーキングに行く為に家から出てたけど、今は違う。
今は佐伯さんに会う為。
朝以外は会えないから、ちょっとでも佐伯さんと会っていたい。
話してたい。目を合わせてたい。顔を見たい。
これが恋愛感情と呼べるのかはわからない。
けどこれだけはわかる。
彼の前では、可愛いドジっ子な星野アイで居たいってことは。
佐伯さんに可愛いって思われたい。
綺麗だって思われたい。欲情して欲しい。
「あー、今日もイケメンだったなぁ…。」
あの顔を活かして、役者さんとかなればいいのに。
そしたら仕事でも会えるかもしれないのに。
もっと佐伯さんに会いたいのは、私だけか。
* * *
「ん?これって次の映画で合ってる?なんか違くない?」
監督の部屋でしていた編集作業がひと段落終わったので近くにある脚本を覗くと、前回見た時と展開が違っていたのが気になって、監督に聞いてみた。
「あー、それな、早熟を使おうと思って。」
また変な奴をねじ込んだのか、このオッサン。
まあ子役なら有馬かなの良さ、演技の上手さが引き立つから良いかもな。
「その監督が早熟って呼んでる子供、ソイツの演技の上手さってどれくらいよ?」
どちゃくそ下手なら有馬かなが目立つし良い。有馬かな以上でも、それはそれで新鮮で面白くて良い。
だけど中途半端なら論外だろ。最悪すぎるシーンになる。
「早熟の演技は見たことないが、アイツは不気味だ。上手くやるだろ。」
また適当なことを…。
役が不気味な子供役でも、それを汲み取れるかは別だろ。アンタそれをわざわざ言うタイプでもないし。
溜息を吐いて、俺は再び編集作業に入る。
この人とマトモに会話してたら疲れる。この人ホント言葉足らずだから…。
これだから独身のこどおじは嫌なんだ。
「そういやお前、この映画出る?」
俺がさっき見ていた映画の脚本を俺に見せてくる監督。
え、絶対嫌なんですけど。
「いや俺はテレビに出るとかそう言うのはちょっと…。」
「じゃあ適当に役作って入れとくわ。」
「おい人の話聞けよこどおじ監督。」
* * *
「あれ、斉藤さん?」
「惜しい星野さん。佐伯です。」
何故か映画の撮影現場でお隣の星野さんと遭遇。
あ、そういやこの人アイドルだったな。映画の撮影もするか。
今時のアイドルってすげー。
「なんだお前ら。仲良いな。」
「お隣さんとは仲良くするのがマナーですよ、こどおじ監督。」
「お前最近そればっかだな。」
一度言い出したら何回でも言いたくなる言葉ってあるよね。
こどおじって言いやすいし。意味は最悪だけど。
「星野さん。今日は宜しくお願いしますね。」
「はい!こちらこそ宜しくお願いします。」
そう言って綺麗な御辞儀をする星野さん。
うーん、こういう所が好感持てるんだよなー、星野さん。
自分の容姿に頼りっぱじゃない所が佐伯的にポイント高い。
星野さんへの挨拶も程々にし、俺は監督の所に行って「早熟と呼んでた子供の撮影した映像を観させてくれないか」と頼んだ。
その子と有馬かなの演技で俺の演技も変わってくるからね。
2人が映っている短い時間を何回も何回も見返す。
言葉の途中で切って早送りしてみたり、途中で巻き戻ししてみたり色々。
逆再生もした。
そして出た俺の感想は1つ。
クッソ良い。少年の方めちゃくちゃ気持ち悪くて最高。
あの異色感が堪らん。それでいて有馬かなの演技を潰してない。
有馬かなは良くも悪くも正統派。そんで少年の方は特異点って感じ?
なんか常識をぶっ壊された感あるわ。
多分それって、芸能界に居なかったからこその視点なんだろうな。
面白い。
よーし、いつかこの子使お。
「監督、何回も観たからもうわかる。他の人の都合が大丈夫なら撮影開始しよう。」
「後5分まて。経ったら開始する。」
「了解。」
監督の隣に用意されていた椅子に座り、周りの景色を堪能する。
すると監督から質問を投げかけられた。
「どうだった?早熟。」
「最高だったよ。才能の塊。」
「だろ?」
そう得意気に話す監督を見て、懐かしい気持ちになる。
昔はよく俺よりも人気が出た映画とかを俺に見せびらかして自慢してたな。
今は流石にもうしなくなったけど。
「あの少年、名前なんてーの?俺も使いたいんだけど。」
「アクアだ、アクア。」
「アクア?何芸名?」
「知らん。多分本名だろ。」
うげ、アクアが本名ってどうなの?
親が付けてくれた名前だし変えられないから他人がアレコレ言うのもどうかと思うけどさ…。
流石に子供恥ずかしいだろ。人間でアクアなら覚えられやすいだろうけども。
まあ、良い名前ではある。俺がアクアって名前なら地獄。アクア顔でもないし俺。
* * *
無事撮影が終わり、疲れ切った俺は誰かと話すこともなく帰宅。
出来る筈もなく…。
「相模さーん!!一緒に帰ろ。」
「星野さん、アイドルが男と一緒に帰るのは如何なものかと思いますよ。」
そう説教口調で言ってみた。
でもそれで諦めないのが星野アイというアイドルである。
「大丈夫!私そこら辺ちゃんとしてるから。」
「出来てませんが??」
この人ちゃんと出来てると思ってるの…?
え?俺と朝話すのも結構アウト寄りなんですけど??
この子大分危ないわ。色んな意味で。
「とにかく、俺と帰るのは禁止です。一緒に帰るなら同性、もしくは所属事務所の方とです。アイドルなんですから、男と帰るのは良くないです。」
「…はーい。」
「じゃあここで失礼します。」
星野さんを宥め、星野さんに一言断りを入れてその場を離れた。
そして監督から呼ばれたのを思い出し、俺は帰るのを辞め、監督の所に向かおうとした。
が、星野さんに腕を掴まれ、この場から離れられない。
「星野さん?離してくれませんか?」
「…やだ♡」
「え?やだって…。」
掴んでいた俺の手を自分の股間に持っていく星野さん。
辞めろ、それだけはやっちゃダメだぞ、星野さん!!
「…な、にがっ!?」
「ね、大丈夫だよ…?」
星野さんの股間をスカート越しに触ってしまった。
うん、なんで俺に触らせた?帰るのダメって言ったから?
「これで一緒に帰っても、問題なし。」
「その前に色々問題あるんですけど、星野さん。」
オリ主の苗字は「
名前の方はまだ非公開ということで。