ハンナ・ウルリーケ・ルーデルの人生は孤児院から始まった。
「はぁ‥‥まったくまさかマブラヴの世界とはなぁ?」
「ハンナちゃん?どうしたの??」
「あ、いや何でもないです」
ルーデルは現代社会からの転生者であった。
前世は普通のミリタリーオタクな男性社会人であったが、景気の低迷等による政情不安によって多発したテロに巻き込まれて死亡。
そして気が付いたらこの世界のルーデルに転生していたという感じだ。
「やれやれ‥‥しかしこのままではいずれBETAに食われるか…それは勘弁願いたいな」
孤児院のシスターによると彼女の父は衛士として戦線に出ていたが搭乗していた戦術機がやられ戦死。
母も基地で働いたそうだがその基地がBETAの波に飲み込まれて消息不明とのことだ。
親戚も彼女を養えるほどの力がなかったので孤児院に押しこんでいったという。
「‥‥両親の敵討ちというわけではないが衛士‥‥目指すか」
そうして彼女は軍学校への入学を希望‥‥したが年齢的に無理なので十二~三歳になるまで待たなければいけなかった。
そして十一歳のある日転機が訪れた。
あまりの損害に西ドイツ政府は軍学校の入隊年齢を引き下げたのだ。
孤児院の生活も悪化する一方だったのでルーデルはすぐさま志願。
彼女の肉体も転生前よりも高性能だったこともあり一発で合格して衛士の道を歩むことになった。
「…なんかズルしている気がするなぁ」
「どうした?ルーデル候補生」
「いえ!なんでもありません」
そして今彼女がいるのは西ドイツ軍の基地である。
元々彼女は来年卒業し、軍に衛士として入隊する予定だったのだが東ドイツの劣勢の影響で前線に送る兵士や衛士の数が足りなくなり、結局士官候補生らや衛士候補生を前線付近の基地に臨時配属させ、実戦経験を積ませた後に卒業・なし崩し的にその基地所属にすることとなったのだ。
「はぁ…それで隊長。また私は居残りですか?」
「ああ、いくら政府や上層部の意向でもまだ候補生のお前を前線に送り込めるか。それにお前は突っ込みすぎるんだよ。何度シュミレーターで撃墜判定食らったと思っている」
「むぅ…」
そう、彼女は前世では普通の学生だったがロボット系のゲームや戦争ゲーム等をよくやっていたこともあってか戦術機の操作の飲み込みは異様に早く、訓練学校では将来を期待されたが前線の衛士たちからは危険視・不安視されていた。
なにせシュミレーターではいつも敵中に突っ込んでは味方をも混乱させ、それでいて何度か撃墜判定を食らったのにまったく反省せず、むしろ突っ込んで作戦成功をつかみ取ることが多くなってくる等別の意味で危なっかしくなってきていたのだ。
前線に出したら間違いなく死にかねない。
「ん?隊長、あのA-10は使わないのですか?」
「ああ。あいつは大柄かつ小回りが利かないからな、今回のような遊撃作戦には向いていないんだ」
「なるほど」
「それじゃあ俺たちは行ってくるが大人しくしていろよ?」
「はっ!!」
そうしてルーデルがお世話になっている西ドイツ軍第44戦術機中隊はF-4ファントムのみの編成で出撃していった。
そしてこれがルーデルが教官と慕っていた上司や先輩らとの最後の会話となったのだ。
次回 初陣