やはり俺の青春ラブコメは短編でもまちがっている。   作:石田彩真

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こんにちは、石田彩真です!
前回、結衣ちゃんの誕生日ssを書いてちょっと書き足りなかったので新たな短編を投稿します!


八結
あたしが大好きなヒッキーのお話。


 あたし、由比ヶ浜結衣は同じクラスで同じ部活に所属しているヒッキーかと比企谷八幡のことが好きである。

 や、好きだけでは言い表せない。

 大好き……うん? 大大大好き。

 これも違う。

 愛してるだと流石に重い気がするから大をいくつ付けても足りないくらい好きとだけ伝えておこう。

 

「むぅ、ヒッキー居ないし」

 

 放課後、ほんのちょっと帰りの挨拶を優美子たちとしてただけなのに、振り向くとヒッキーはもう自分の席から消えていた。

 同じ部室に行くんだから待っててくれても良いのに、と思いつつ鞄を背負い早歩きで部室を目指す。

 部室前に辿り着き、少しだけ乱れた息を整える。

 そして元気よく扉を開けて一言。

 

「ヒッキー、ゆきのんやっは、ろ?」

 

 挨拶が途中で途切れてしまう。

 部室にいたのはヒッキーだけでゆきのんは見当たらなかった。

 しかもヒッキーは夢の中へと旅立ち中。

 

「…………」

 

 寝顔かわいい。

 や、違う。そうじゃない。

 ヒッキーの寝顔が貴重すぎて思わず至近距離で見つめてしまったが、色々聞きたいこともあるので、眠りについたばかりであろうところ悪いと思いつつ、優しく肩を揺すって呼び掛ける。

 と、ゆっくりと身体を起こした。

 

「ん、由比ヶ浜か」

 

 んぁ、と猫のような伸びをしてから首の関節を鳴らす。

 そして口元を隠すようにして大きなあくびをしていた。

 

「ヒッキー、おはよ」

「……ああ」

 

 まだ眠さがあるのかしきりに目元を擦っている。

 その姿に愛おしく感じて抱きしめたくなるも、そんなことを意味もなくしたらヒッキーにどんな態度を取られるか分からないので我慢した。

 

「ヒッキー、ゆきのんは?」

 

 あたしが質問すると、ヒッキーは立ち上がり紅茶の淹れようとする。

 

「さっきまでいたんだが雪ノ下さんに呼び出されてな、ため息吐きつつ帰っていった。……由比ヶ浜も飲むか?」

「あ、うん、ありがと」

 

 そうか、陽乃さんか。

 それならゆきのんも断れないだろうし、仕方が無い。

 

「……あれ? じゃあなんでヒッキーいるの?」

「依頼者がいつ来るか分からないから下校時刻まで待機してろって言われてな。……それに先帰ったらお前が困惑するだろ」

「いやいや、連絡くれれば良いじゃん」

 

 言うと、ヒッキーはさっと顔を逸らし、「えっ、連絡? いや無理だろ。どんな文面送れば良いか分からないじゃん」と呟く。

 別にありのままを送れば良いのになー、と考えるけれどヒッキーのその慣れてなさにすらあたしは可愛さを見出してしまう。

 

「ふふっ」

「……なんだよ」

「べっつにー」

 

 ああ、楽しいなこういうの。

 こうして何気ない会話をどうでも良い感じで話せるのがたまらなく楽しい。

 あとヒッキーがどう思うかは分からないけれど、あたしとヒッキーが部室で二人きりになるのは珍しいことなのですごく嬉しかったりする。

 紅茶を淹れ終えたヒッキーが机にそれを置いたので、あたしはお礼を言いつつ、椅子を引いて普段とは少しちがう場所で席についた。

 

「なんか近くね?」

「えー、そうかなー」

 

 普段はゆきのんの近くに椅子を置いてるけれど、今日はヒッキーの近くに寄せている。

 

「まあいいじゃん。ゆきのんいないし、二人だけなのに席が離れてたら寂しいじゃん」

「……別にいいけど」

 

 言って、ヒッキーは紅茶を啜る。

 あたしもそれに倣い、ちょびっとだけ口に含んだ。

 ……あっ、美味しい。

 完璧すぎるゆきのんと比べるのは流石に可哀想だけれど、それと遜色無いくらいヒッキーが淹れてくれた紅茶は美味しかった。

 

「ヒッキー、紅茶淹れるのも上手なんだねー」

「まあ、家だと専らコーヒーだが、小町がたまに紅茶飲みたがるからな」

「やっぱり小町ちゃん基準なんだ」

「はっ、当たり前だろ。小町以外の何を基準にすれば良いんだよ」

「いや、もっと自分を持とうよ」

 

 分かっていたことだけれど、ヒッキーの小町ちゃん好きは上限が無い。

 そこでもしヒッキーに彼女が出来たらと考えてみる。

 けどダメだ、ヒッキーに彼女とか嫌だ。

 なるなら……なれるならあたしがなりたいのに。

 そんな変な想像をしてしまい涙ぐみそうになるのをなんとか堪え、紅茶を一気に飲み干す。

 

「そ、そんな美味かったか?」

「えっ? ……あ、うん超おいしい! 一家に一台ヒッキー紅茶淹れマシーンが欲しいよね!」

「腐った眼の機械とか誰得だよ」

 

 あたし得だよとか言ったら、ヒッキーはどんな顔をするのだろう。

 きっとテンパって早口で訳もわからない捻くれた言葉を言い放つかもしれない。

 そんなヒッキーもまたかわいい。

 ……はぁ、ダメだなぁ、あたし。

 どんなヒッキーでも可愛く見えちゃって仕方が無い。

 もちろんかっこいいと感じることも多少はあるけれど、それでもヒッキーの言動の大半が、あたしの中では可愛いの割合で占めている。

 今だって抱きつきたくてウズウズしている身体を抑えるのに必死だ。

 

「……由比ヶ浜?」

「えっ⁉︎ な、なに⁉︎」

「や、なんかこっち見てぼーっとしてたから」

「あ、ご、ごめん」

「別に……、なんも無いならいいんだが」

 

 見惚れてたのがバレて少し恥ずかしい。

 これ以上見すぎると流石に怪しまれそうなので、時計に目をやる。

 いつの間にかそれなりに時間が経っていて、もうちょっとで下校時刻になる。

 ヒッキーと楽しく二人きりで過ごせてた時間ももう少しで終わり。

 もうちょっと一緒にいたい、はわがままかな。

 

「そろそろ帰るか」

「えっ、あ、うん。そうだね」

 

 カップを片づけカバンを背負う。

 そしてヒッキーと一緒に部室を出た。

 

「じゃあな」

「あっ」

 

 挨拶をし、鍵を返しに行くためか、ヒッキーは職員室の方へと足を進める。

 あたしはなんとなく、少しだけ距離を空けてその後を追う。

 と、少し歩いてヒッキーがこっちを振り返った。

 

「……なんでついてくるんだ?」

「えっと……迷惑、かな」

 

 少し萎れた声で言う。

 と、ヒッキーは顔をそっぽに向ける。

 

「別に良いんじゃね、知らんけど」

 

 そして前を向き再び歩き出す。

 あたしはやっぱりずるい女だ。

 ああ言う言い方をすればヒッキーは拒絶しないって分かってるから。

 でも、それでも拒絶されなかったことを嬉しく思ってしまう辺り、あたしは少しいやかなりチョロい。

 表情筋が柔らかくなるのを自覚しながら、早歩きでヒッキーの隣に並ぶ。

 一度こちらに視線を向けたがヒッキーは何も言ってはこない。

 

「えへへ」

「……なんだよ」

「べっつにー」

 

 ヒッキーが好き。大好き。大大大好き。

 だからもっとちゃんと頑張ろう。

 あたしが今から遠い未来でもヒッキーの隣に居られるように。居続けられるように。

 うん、頑張る。いっぱい。

 あたしは改めて決意した。

 

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