やはり俺の青春ラブコメは短編でもまちがっている。 作:石田彩真
今日は相模南の誕生日……なので、本来この作品は誕生日ssシリーズに投稿するのが筋なんですが、本当に偶然八南を久しぶりに書きたいと思って作った作品なのでこちらのシリーズに投稿します!
でも祝う気持ちはありますよ? ってことでみなみんお誕生日おめでとうございます!
俺の家に相模が入り浸ってるんだが……。
盛り付けをした皿をテーブルに置き、箸とお茶を用意する。
そうすると俺のベッドでくつろぎながら漫画を読んでいた奴が起き上がり、のそのそとテーブルの前に移動してきた。
「おっ、冷やし中華じゃん。良いね〜」
「お前が冷やし中華食べたいって来る前に連絡してきたんだろ」
だからわざわざ買い出しに行ったんだ、と文句を吐きながら彼女の対面に腰を下ろす。
「えへへ、嫌そうに愚痴を言いつつ用意してくれちゃう比企谷、うちは好きだよ?」
「……へいへい」
正面に座る相模は照れたように言い、軽く微笑む。
俺はそれに適当にあしらう。
「いただきまーす!」
礼儀正しく手を合わせ、相模は冷やし中華を食べ始めた。
美味しそうな表情を横目に俺も箸を動かす。
大学生になり一人暮らしを始め約三ヶ月。
俺の部屋には今日も相模が入り浸っていた。
× × ×
そもそも大学が一緒だったことも知らなかったのだが、こうして相模と食事するようになった事の発端は、大学の講義の際話しかけられたからだった。
『あれ、もしかして比企谷?』
そう呼ぶ声に反射的に振り向き、姿を見た瞬間、複数の意味で驚いた。
まず、高校時代決して良好な関係を築けていたわけではない相手が俺のことを呼んだこと。
そしてその相模が友達に断りを入れて、俺の方に近づいてきたこと。
『比企谷……、久しぶり、だね』
そんな感傷に浸って立ち話する間柄では無いわけだが、面と向かって話しかけられれば応じないわけにもいかないわけで。
『ああ、そうだな……、相模』
そこからこういう現状になるまで時間は掛からなかった。
まず、一人暮らしをしてるアパートが近く、今まで気づかなかったが、取ってる講義もいくつか同じもの。
偶然スーパーで鉢合わせをし、成り行きで一緒に夜ご飯を食べ、そこで連絡先を交換し、あれよあれよと一緒に過ごす頻度が増えていった。
そして二ヶ月も経つ頃には……まあお察しの通りというか──。
「ん〜、おいひ〜」
「ちゃんと口の中のもの食べてから喋りなさい。……ってか、そんな美味いか?」
「んくっ、うん美味しい。うち、比企谷の料理に胃袋鷲掴みにされちゃったもん」
「……そうか」
再会し相模と関わってきた時は"らしくない"と思う言動ばかりだと思ってきたが、それなりに一緒にいれば慣れてくる……や、訂正。全然慣れない。
高校との態度の齟齬がありすぎて、今でも俺の目の前にいる相模は俺の知らない別人なんじゃないかと錯覚してしまう。
や、もちろんそんなことはないのだが、昔の相模が今の相模を見たらどういう反応をするかは、おそらく俺と似たような感じかもしれない。
「……比企谷?」
「あ、なんだ?」
「えっと、その……、そんなじーっと見られると、流石に恥ずかしい、といいますか」
「っ、す、すまん」
少なくとも俺相手に頬を朱に染めて照れたような反応するやつじゃない、それを言ったら今こうして一緒に食卓を囲んでいる状況すらおかしいわけなのだが……。
やめた。これを考えると迷宮機関に突入する。永遠抜けることのできない螺旋階段。
なにそれ怖い。
ひとまず冷やし中華を食べることに意識を戻すことにした。
× × ×
「ふぅ〜、ごちそうさまでした」
「どうも」
昼ごはんを食べ終え一段落。
食器を流しに持って行き、新たなお茶を用意して相模の前に置く。
「ありがと、洗い物はうちがやるから置いといていいよ」
「ん、了解」
お客としてぐうたらしてるだけでなく、分担作業で手伝ってくれたりするから入り浸るのを拒否出来なかったりする。
まあ最初に断らなかった時点で、遅かれ早かれこうした関係に落ち着いてたのかもしれない。
「あっ、比企谷。明日はうちバイトだからお昼はいいや」
「最初から用意しとくつもりは無かったが」
「もう、すぐそういうこと言う。……今日の夜はうちが作るから」
「や、だから……」
「あとで一緒に買い物行こうね」
「…………はぁ」
ため息を吐きつつもそれが演出でしかなく、面倒くさい振りをしているだけだというのは俺が一番よく分かっている。
多分、正面にいる相模も微笑んでいる事から俺が本気で嫌がってないことは気づいていることだろう。
「比企谷はなに食べたい?」
「……オムライス」
言うと、吹き出したように笑う相模。
「比企谷、子供だね〜」
「うるせ」
初めて相模に振舞われたオムライスが美味しかったからとは、揶揄われる要素を増やすだけなので口が裂けても言えない。
豚汁もつける? と聞かれたので俺はそれに頷く。
「じゃあ買うものは豚肉と人参と、……卵はうちにあるから後で取りに行けば良いとして──」
手早くスマホにメモを打ち込む相模。
「オムライスにかけるソースは何がいいとかある?」
「前作ってくれたのはホワイトソースだったよな?」
「うん、結構得意なんだ〜」
「んじゃ、それで」
「了解」
今の場面だけ切り取ればまるで彼氏彼女かのようなやり取り。
だがしかし、当たり前だが俺たちはそんな関係ではない。
強いて関係性を表すなら、高校が一緒で大学も一緒の知人、くらいなものだろう。
「比企谷、またうちのこと見てるし」
「あっ、や……すまん」
「別に良いけど。……何か言いたいことでもあった?」
小首を傾げて聞いてくる相模にどう答えたものか迷う。
今まで相模に流されてきて言及する機会を逃してきたが、もしかしたら今がそのチャンスなのかもしれない。
俺は息を吐き、なるべく冷静に頭で言葉を並べてから言葉を紡いだ。
「その、だな。急で悪いんだが、俺たちってどういう関係だ?」
「えっ⁉︎」
…………うーん。
聞き方がマイナスですね。
オブラートに包んで尋ねるつもりが、思いの外整理出来てなくてダイレクトに聞いてしまった。
相模も困惑した様子で視線を右往左往させている。
そりゃそうだ。いきなりこんなこと聞かれても答えられるわけがない。
俺は首を振り口を開く。
「悪い、忘れてくれ」
そもそも俺は今のあやふやな関係は別に嫌いじゃない。
明確な名前がついてしまうよりも余程楽に感じる。
ただまあ、相模が俺と同じ気持ちとは限らないから少し気になっただけで。
俺がお茶を飲むと相模もそれに倣い、お茶を口に含む。
そして──、
「うちはその……、比企谷と、もう少し先の関係に進むのも、悪くないかなぁって思ってる、けど」
「…………」
「ほら、その……、恋人、とか」
そう言ってきた。
自惚れないよう考えないでいた関係性について、目の前の彼女は口にした。
それはどれほどの勇気が必要だったのか、相模の潤んだ瞳を見れば明らかだ。
ちらちらと俺の反応を伺う相模。
今のが告白ならば俺は返事をするべきなのだろう。
が、生憎と、そこまで短絡的に行動出来ないのが俺なのだ。
だからまあ、ひとまず。
「……考えとく。答えが出たら、その時は俺から、な」
これを伝えるだけで精一杯だった。
「っ……! う、うん!」
しかし相模は俺の返答に心底嬉しそうに破顔し、力強く頷く。
それを見て俺は思うのだ。
多分、俺たちの関係が良い方向に変わるのはそう遠くないな、と──。
……八南、これからもちょくちょく書いていきたくなったな笑
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