クソデカ激重感情に気が付かない一般TS最強ロリ   作:れもんぷりん

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 クソデカ激重感情に気がつかないTS系ロリを書きたくて初投稿です。


言葉リカ
やっぱり出会いはこうでなくっちゃダメだよね


 

 何かにとんとんと肩を叩かれている。

 俺は確信した。攻撃されている! ってね。

 

 きっと俺の秘めたる才能に気がついた悪の組織が襲撃して来たんだ。

 何故か上手く動かない体を必死に捩り、抵抗しようと頑張る。

 負けるもんか、だって俺は……

 

 

 

「ひーろー、なんだぞぉ〜。むにゃむにゃ」

「何寝ぼけてんの! 今日は入学式でしょ!」

 

 何だ、この爆音は……

 まさかスピーカー怪人なのか?

 そうかそうか、中々どうして手強いじゃないか。

 

 ふふふ、だが俺の相手ではない。

 なんたって俺はハイパーマンで、戦隊レッドで、その正体は覆面ライダーオニキスなんだ。

 

 正義が悪に負ける訳なかろ!

 

「むにゃ、かかってこいすぴーかーかいじんめ〜」

「・・・いい加減にしろぉ!」

 

 俺が纏っていたマント(布団)が剥ぎ取られる。

 そして頭に激痛。

 

「あいたああああああ!」

 

 そうして俺は目を覚ました。

 目の前には仁王立ちする母親の姿。

 

「あれ? スピーカー怪人は?」

「何馬鹿なこと言ってんの。それよりそろそろ学校の時間よ」

 

 それだけ言って下の階へと降りていく母親を見て、俺はやっと今までの事が夢だったと理解した。

 

「なーんだ、悪の組織は臆病だなぁ」

 

 そろそろ俺の才能に気がついて倒しに来ても可笑しくない頃合いだと思うんだけどなぁ。

 まあいいや。

 

 春に入ってもいまだに朝は少し冷える。

 ベッドから出たくないのは山々だが、俺はヒーローだからな。正義の味方が寒さ程度に負けるわけにはいくまい。

 

「うーん! きょうもかわいい!」

 

 転げ落ちるようにして何とかベッドから降り、四つん這いで移動する。

 部屋に置いてある鏡の前に立って日課の自画自賛。

 

 寝起きにも関わらずサラサラと流れる黒髪にもっちもちの白い肌。

 造り物みたいに整った顔立ちによく映える金色の瞳。

 胸が無いのが残念だが、それは望みすぎというものだ。

 

 正しく天使。

 相変わらずの美貌に惚れ惚れしちゃう。

 

「まだ信じられないぜ」

 

 俺は今時ネットを漁れば掃いて捨てる程いる転生者だ。

 死因はよく分からないが、気がついたら少女の体で転生していた。

 

 前世はフツメン、ぼっち、独身、と三つ揃っていた俺だったが、今世は少し違う。

 なんたって、美少女なんだからな!

 美少女の周りには女の子の友達がいる。これは世界の真理で、当然の事なのだ。

 

 幼稚園、小学校と、なぜか遠巻きにされて友達が出来なかった俺だが、中学校では違う。

 きっと友達を作ってみせる。

 

 目指すは友達100人でうっはうはだぜ!

 

 そして俺は、家を飛び出した!

 

 

 

 

 そうして、一ヶ月が経った……。

 入学式も終わり、オリエンテーションも済ませ。

 今のところまだ友達は出来ていない。

 

 ベッドの上で考える。

 

 なぜだ、なぜ陽キャはあんなに簡単に仲良くなれるんだ!

 今日初めて会った奴とカラオケに行くとか正気の沙汰とは思えないぜ。

 

 でも、俺は自分が悪いとは思わない。

 これまた何故かは分からないが、誰も近寄ってこないのである。

 皆んな腫れ物を触るように遠巻きに見てきて、なんだかショックだ。

 

 くそう! アニメの中じゃ美少女はちやほやでうはうはで最高にイージーなんじゃないのかよ!

 なんてこったい、これじゃあ俺は宝の持ち腐れ。

 前世のフツメンの部分が美少女に置き換わるだけの平凡な人生になっちまうじゃないか。

 

 俺の脳裏に稲妻が走る。

 そんなんじゃダメだと心が叫んだんだ。

 

 平凡な人生だって悪くなかった。

 独身でも俺は全然楽しかった。

 

 けど、友達がいないのは本当に悲しくて、寂しかった。

 そこだけが俺の後悔だったんだ。

 

 友達を作ると決めただろ?

 俺はヒーローなんだろう?

 その程度できなくてどうする!

 

 俺はやる、やってやるぞ!

 

 思い立ったが吉日。

 俺はベッドから跳ね起き、今まで一度だって手にしてこなかった化粧道具を握りしめた。

 

「おかーさん、化粧教えて!」

 

 母はいきなりオシャレにやる気を出した俺に驚いた顔を浮かべたが、次第にその口角を上げていった。

 当然だ。だって母はずっと俺を着飾らせたかったんだから。

 

 俺は抜群に素材が良い。そりゃあもう、一千年、一万年に一人の逸材だと自負している。

 一度だって化粧はしてこなかったし、服だって女っ気のないものばかり着用していた。

 俺は原石だったのだ。磨かれていない、磨かれる予定のなかったダイヤの原石。

 

 恥ずかしかった。

 今も精神は男に近い俺が可愛くなる努力をするという事が。

 

 だがそんなことは言っていられない。

 友達が欲しいんだ。今、俺は変わらなきゃいけないんだ。

 

 素材を活かすナチュラルメイク。制服なのは変わらないが、可愛らしいヘアピンを一つ。

 人生で初めて髪を梳き、軽く香水を付けた。

 

 鏡の前でにっこり笑顔。

 衝撃を受けたね。

 

 これはもう兵器だ。

 この可愛さは立派な凶器だよ。

 前世の俺がこんな美少女に話しかけられたら爆発して跡形も残らないね。

 

 これなら話しかけた人の心の壁をぶち壊し、友達になれる筈。

 後は一欠片、話しかける勇気だけ。

 

「行くぞ!」

 

 希望を胸に、一歩踏み出した。

 

 

 

 

 木洩日ツナナという少女がいる。

 

 彼女が通っている花園中学校は小学校からの繰り上がりではない。

 ちゃんと受験して入らないといけない私学である。

 

 つまり、木洩日ツナナの周りの人間は全員入れ替わっているという事。

 そうして小学校の六年間、中学校の僅か一ヶ月間。

 彼女と関わった人間は皆、同じ反応をした。

 すなわち、近づけなかったのだ。

 

 それは圧倒的な可愛さ故か? それとも彼女が放つ何か不思議な雰囲気がそうさせるのか?

 いいや、そうではない。

 

 彼女に近づこうと、友達になろうと考える人間などそれこそ星の数ほど居た。

 特に男子はそれが顕著であったし、女子でも彼女の美貌に見惚れる者は後を絶たなかった。

 

 だが結果は惨敗。

 

 近づこうとすると足が竦むのだ。

 首元に死神の鎌が当てられている様な、彼女の人差し指に心臓をつつかれている様な。

 

 強迫観念の様に襲いかかる死の気配。

 ほんのすぐ横に寝そべる死が感じられる様な気がして。

 

 誰も彼女に近づけない。近づかない。

 進めば死ぬと、誰かから囁かれているのだ。

 

 木洩日ツナナの周囲は危険領域である。

 これが暗黙の了解となるほどだった。

 

 

 

「おはようござーます!」

 

 そんな彼女が更に美しさを増し、天真爛漫な笑顔で教室の扉を開けるまでは。

 

 

 

 教室の中にいた誰もが視線でお互いを牽制し合った。

 今の彼女からは今まで感じられた“恐ろしさ”というものが感じられない。

 

 つまり、今の彼女は手が届く位置にいる絶世の美少女。

 何かの拍子で付き合えるかもしれないと考える男子、今のうちにお近づきになっておきたいと思う女子。

 見えない戦いが始まった結果、誰もツナナに挨拶を返すものはいなかった。

 

 だめだったか。そう肩を落とすツナナを誰が責められようか?

 今までの彼女ならここで心が折れていただろう。

 

 諦めよう。

 もう頑張ったじゃないか。

 ここまでしてダメならもう無理だ……と。

 

 だがツナナは今一度、上を向いた。

 もう折れない。だって彼女はヒーローだから。

 本気でそう思っているから。

 

 これから、彼女が折れる事はない。

 そうしてツナナは何を考えたか、いきなり教室を飛び出して廊下を爆走した。

 

 今までの落ち着いた雰囲気の彼女からは考えられない行動に、クラスメイトは困惑を隠せなかった。

 

 

 

 

 

 挨拶電撃特攻作戦は失敗に終わってしまった。

 ならば次の作戦と行こうじゃないか。

 

 俺は一つ目の作戦失敗にめげず、廊下を走り回っていた。

 何も頭がおかしくなった訳じゃない。

 

 これは二つ目の作戦、お手伝い爆撃作戦なのだ!

 

 説明しよう、お手伝い爆撃作戦とは。

 ひたすら学校を回って困っている人を探し、助けることでお友達になろうという作戦である。

 

 これなら流石に俺を無視することは出来ないだろう。

 俺のイメージはこうだ。

 

『だいじょうぶ? てつだってあげる!』

『あぁ、ありがとう! ツナナさんってば優しいのね! 友達になろう!』

 

 きっとこうなることだろう。

 間違いない。IQ200越えの俺が弾き出した結論なのだ。

 

 今からニヤニヤが止まらないぜ。

 初めに俺の友達爆撃の餌食になるやつはどこのどいつだぁ〜!

 

 

 

 

 

「あんたさぁ、何でいんの?」

「気持ち悪いんだけどぉ」

「何? 二度と来んなって言ったよね?」

 

 目の前には三人の同級生。

 小学校から同じだった子達だ。

 

 私はじっと、話が終わるのを縮こまって聞いていた。

 言い返したら殴られる。

 今までもそうだったから。

 

 私は不思議な力を持っていた。

 それは『読心』。文字通り、人の心の声が読める力。

 

 私はその力が誇りだった。

 だってそれは私だけの特別で、凄い力だったから。

 心が読める人なんて私以外見たことも聞いたこともない。

 

 だから私は小学校の頃、友達に自慢したんだ。

 『私は心が読めるんだ!』って。

 

 今思えば、本当に馬鹿だった。

 

 私が本当に人の心を読めると分かった瞬間から、壮絶ないじめが始まった。

 誰も彼もが私を気持ち悪いと罵った。

 優しい顔をして近づいてくる人も、皆んな心の中では私を気味悪がっていた。

 

 不登校になって、慰めてくれた先生も私を気持ち悪いと思っていた。

 本当なら守ってくれる筈の両親も、私の力を恐れていた。

 

 もう誰も信じられなくなって。

 でも、私の力は抑えられる物ではなかった。

 

 周りを見渡すだけで見える。

 こちらに向けられる言葉の凶器が。

 心に孕んだ醜い罵声が。

 

 怖い。

 

 怖い。

 

 中学校からはやり直そうと、私学を受験したのに。

 小学校が同じだった子がいるなんて……。

 結局、私はダメなんだ。

 

「何か言えよバケモノが!」

 

 鋭い痛みが脇腹を走る。

 多分蹴られたんだ。

 自然と涙が出てきて、それを笑う三人の声が頭の中に響いて。

 

 もう嫌だ。

 

 もう何も、見たくない。

 

 そうして私は目を閉じて──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────何か、温かい物に包まれている。

 

 まるで陽だまりの中にいる様に私を抱きしめるその人は、ゆっくりと私の頭を撫でて。

 

 

 

「よく頑張ったね」

 

 

 

 そう、私に言ったのだ。

 

 これが私、言葉リカと。

 

 私のヒーロー、木洩日ツナナの出会いだった。




こもれびつなな、ことのはりか。って読みます。
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