クソデカ激重感情に気が付かない一般TS最強ロリ   作:れもんぷりん

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 後々曇らせも出すかもしれません。と言う訳で初投稿です。



救世主ってお酒の名前みたいだね

 

 俺は暴力が嫌いだ。

 何だか心がざわざわと騒いで、落ち着かなくなる。

 あの張り詰めた空気が、息の詰まりそうな揺らめきが、吐き気を催す程嫌いなんだ。

 

 特にイジメみたいな、一方的な暴力は大嫌いだ。

 寄ってたかって一人を傷つける。

 

 そんなの、許せない。

 

 俺はヒーローが好きだ。

 彼らはいつだって助けを求める人々の所へと駆けつけて、俺の嫌いな争いを諌めてくれるから。

 

 彼らが振るう暴力と、悪の敵が振るう暴力は、突き詰めると同じものだ。

 だけど俺は、明確に一つ違うところがあると思う。

 

 ヒーローは何時だって、誰かを背にして戦っている。

 俺はそんな彼らに憧れた。

 

 

「よく頑張ったね」

 

 だから俺は、目の前で行われていた一方的に過ぎる暴力の中に飛び込んだのだ。

 

 俺が抱きしめた少女は泣いていて。可哀想で、俺まで悲しくなってきて。

 でも俺は、その涙の止め方を知らなかったから。

 

 恐る恐る、ゆっくりと、彼女の頭を撫でた。

 手に伝わってくる髪はサラサラで、場違いなのは分かっているが、少しドギマギしてしまう。

 

「痛かったな。苦しかったな。辛かったな」

 

 嗚咽を漏らす少女を強く、ただ強く抱き締める。

 

「大丈夫。今から俺がお前のそばにいる」

 

 縋りついてくる少女を守りたいと想った。

 救いたいと想った。

 

 何より、彼女に。

 この少女に。

 

「だから泣くな。お前に涙は似合わない」

 

 泣いてほしくない、そう想った。

 

 

◆

 

 

 安心する。

 私を強く抱き締める腕にどうしようもなく心を動かされる。

 

 もう誰も信じないと決めたのに、みっともなく期待してしまう。

 またどうせ裏切られる。心の中で罵詈雑言を浴びせられる。

 

 信じられない程に寒かった。

 温かい腕の中にいる筈なのに、極寒の中一人取り残されているかのような感覚に陥った。

 

 そんな私を繋ぎ止める様に、誰かが私の体を更に強く抱きしめる。

 

 期待させないで。

 

 もう裏切られるのは嫌だ。

 

 もう失望されるのは嫌だ。

 

 もうバケモノを見る様な目で睨みつけられるのは嫌だ。

 

 でも、離さないで欲しかった。

 こんな私を、一人にしないで欲しかった。

 相反する二つの感情がぶつかって、心がぐちゃぐちゃにかき乱されて。

 

 今にも弾け飛んでしまいそうな私の体は、ただ優しく受け止める誰かだけを感じていた。

 

「大丈夫。今から俺がお前のそばにいる」

 

 泣き喚く赤子を諭す様に、ゆっくりと告げられる言葉に嗚咽が漏れ出る。

 本当なんだろうか?

 

 いいや、そんな訳がない。

 きっとこの誰かさんだって、私が持つ特別な力の事を知ったら離れていくんだ。

 

 今にも壊れそうで、叫び出しそうな体を必死に抑えつける。

 もう、どうすれば良いのか分からない。

 

「だから泣くな。お前に涙は似合わない」

 

 柔らかな何かが私の目元に溜まった涙を拭い取った。

 それは手だ。温かくて、柔らかくて、どこまでも優しかった。

 

「言いたい事がある。違うか?」

 

 そう問われて、口から出そうになった言葉を必死に飲み込んだ。

 今までずっと言いたかった事。

 体が張り裂けそうな程叫びたかった事。

 

 けど、どうしても言い出せなかった事。

 

「聞かせてくれよ。お前の想いを」

 

 ゆっくり、ゆっくりと閉じていた目を開く。

 視界に映ったのはどこまでも美しい少女の宝石の様な金色の瞳で。

 

 その瞳に魅せられた。

 

 その頼もしさに見惚れた。

 

「……けて。助けて! 助けてよ!」

 

 感情が抑えきれなくなって、秘めていた言葉が溢れ出す。

 

 誰も私を助けてくれなかった。

 

 皆んな私を遠ざけた。

 

 虐められても、殴られても蹴られても、私だけは当然の様に無視されて。

 

「もう嫌だ! 誰か、誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、任せろ」

 

 

 目の前の少女は緩やかに微笑んで。

 その時から私は、どうしようもなく彼女に囚われてしまったんだ。

 

 

◆

 

 

 その場は異様な雰囲気に包まれていた。

 

 虐めの現場というのは基本的に観衆の目がある場所であることが多い。

 誰もが見て見ぬふりをして、その暴力を止めようとしない。

 

 人目につかない場所で行われる虐めは、虐めている本人達も、“自分が悪い事をしている”という感覚を持っているものなのだ。

 

 そして言葉リカを虐めていた三人は、自分たちが悪い事をしているなんて微塵も思っていなかった。

 目の前にいるバケモノは虐められて当然だ、と心の底からそう思っていたのだから。

 

 廊下の隅っこで行われていた醜悪な行為。

 止める者はおらずとも、チラチラと観察する人間はいる。

 そしてそこに割り込んだ見慣れぬ一人の少女。

 

「おいおい、誰? お前」

「何? ヒーロー気取り?」

「きっしょ! 笑えるわ〜」

 

 三人が吐き散らす罵倒を意にも介さず言葉リカを慰めるツナナを見て、余程苛立ったのだろう。

 彼女らが得意とする暴力に走ろうとして。

 

 できなかった。

 

 なにか、自分は恐ろしい“何か”に触れようとしている。そう直感したからだ。

 

 気がつけばツナナの金色に輝く瞳が三人を射抜いていた。

 

 一歩踏み出せば殺される。

 今、自分のこめかみには銃口が突きつけられている。

 

 何の誇張もなく、彼女らはそれを鮮明に感じ取った。

 

 彼女らは怒りに触れたのだ。

 他ならぬ、木洩日ツナナの怒りに。

 

 木洩日ツナナ、彼女は平凡である。

 容姿が素晴らしく良いという事以外はむしろ駄目人間であるかもしれない。

 

 スポーツはそれなりに出来るが、勉強はダメダメ。

 家事なんてもっての外だし、朝は弱い。

 歌は下手だし、コミュ障を患っていて、時間をきちんと守れない。

 自分勝手なところも多いし、この年になって本気で自分が覆面ライダーだと信じている。

 

 端的に言って彼女はダメダメだ。

 才能もなく、何かを成した訳でもない。

 

 ただひとつ、彼女が天から授かった贈り物がある。

 

 それは、殺しの才。

 

 この地球上の全ての生物の中でぶっちぎりの危険度。

 

 何かを害する力という点において、木洩日ツナナに並ぶ生物などいない。

 

 木洩日ツナナ、彼女は殺しの天才だった。

 

 

「散れ。目障りで、醜悪で、不愉快だ」

 

 

 ただ一言発しただけ。

 だというのに何だこの震えは?

 

 ガタガタと震えている。気がつけば冷や汗が止まらない。

 それは三人に限らず、周りでイジメの現場を見ていた人間全員に向けられていた、明確な“殺気”だった。

 

 ドロリと体に絡みつくほど濃密で、それでいて心臓に深く突き刺さっているのかと錯覚するほど研ぎ澄まされた一つの害意。

 それが物理的な衝撃を彼女らに感じさせた。

 

「十秒待ってやる。それまでに失せろ」

 

 それだけ言うと、ツナナはまたリカを慰める事に意識を傾けた様だった。

 彼女達を縛っていた重圧が緩まる。

 恐怖で冷え切った体に鞭を打ち、その場の全員が逃げ出した。

 

 そうして残されたのはツナナとリカの二人だけ。

 

 授業の始まりを示すチャイムが鳴る音だけが響いていた。

 

 

 

◆

 

 

 ちょっと睨んだだけで三人は逃げ出してしまった。

 なーんだ、今から俺のすーぱーぱわーを見せてやろうと思ったのに。

 

 テレビを見てヒーローの動きを勉強した俺は最強なんだ!

 いつでも覆面ライダーキックを放ってやれるぜ!

 

「どうだ? 落ち着いたか?」

 

 それより目の前の少女だ。

 まあ少女と言っても俺より身長高そうだけど……。

 

 いいや、俺はまだ成長途上なんだ!

 これから大きくなるんだもん!

 

「ふ、ふふ……」

 

 何故か笑われてしまった。

 まさか、俺のチンチクリンっぷりに笑いが堪えきれなかったのか?

 

「俺は木洩日ツナナ! お前は?」

「……リカ、言葉リカ」

「へぇ〜、リカか。じゃあリカちゃんって呼んでも良いか?」

 

 リカかぁ。すっごく良い名前じゃないか。

 可愛らしい名前だし、下の名前で呼びたいと思ったから許可を取ろうと思ったんだけど……。

 

「う、ぐすん、ひぐっ……」

「お、おい、大丈夫か? どこか痛むのか!?」

 

 また泣き出してしまった。

 よしよしと撫でて、服の裾で涙を拭き取ってやる。

 そうするだけでにっこりと嬉しそうに笑うのだから、なんだかこっちまで幸せになってしまう。

 

 今一度、リカちゃんを観察することにした。

 茶色の髪の毛は短く整えられていて清潔感を感じさせる。

 黒い目はクリクリとしていてチャーミングだし、お肌ももちもちで最高だ。

 

 なんだこれ、天使か?

 最高に可愛いんだが……。

 

「な、な……!」

「ん? どうしたんだ、顔真っ赤だぞ?」

 

 何故か顔を真っ赤に染め上げるリカちゃん。

 もしかして熱があるのだろうか? 泣いた後って謎に体が熱くなるし、多分それだろう。

 

「それより授業始まっちゃったな」

「ご、ごめんなさい」

「謝ることないよ。リカちゃんと友達になれたからな!」

 

 そう、俺はつまらない授業なんかよりずっと大切なものを手に入れたのだ!

 

 リカちゃんという友達。

 初めてできたオトモダチだぜ!

 

「と、ともだち?」

 

 リカちゃんは不思議そうに首を傾げ、その後ひどく驚いた様に口をぱかーっと開けた。

 くっ、天使かお前は!

 

「ほんとに、ともだちになってくれるの……?」

 

 不安そうに上目遣いでそう問うてくる彼女に心を打ち抜かれた。

 なんだ、ともだちになってくれるのかって?

 

「何言ってんだ。もう友達じゃねえか!」

「もう?」

「あぁ、お互いに友達になりたいって思ったら、それはもう友達なんだぜ!」

 

 そう言うとリカちゃんは表情をぱぁっと輝かせて、子犬の様に擦り寄ってきた。 

 お〜よしよし、ういやつめ!

 

 お手伝い爆撃作戦大成功じゃんけ!

 やっぱり俺は天才だった!

 

 その後もリカちゃんと楽しくおしゃべりして、意気揚々と教室に戻った俺。

 

 そこに立っていたのはカンカンに怒った担任だった……。

 そういや俺、さぼってたんだったぁ〜!

 

 

◆

 

 

「今日の晩御飯はハンバーグなんだ! 楽しみだなぁ〜」

(はんばーぐ! はんばーぐ!)

 

「ふふっ!」

 

 こんなの、笑ってしまっても仕方ないと思う。

 私を助けてくれたツナナちゃんは本当に裏表の無い良い子だった。

 

 話している事と思い浮かべている言葉がここまで一致する人なんて見た事がない。

 やっぱりツナナちゃんは他のクソ共とは違うんだ。

 

 こんなに良い子なんてツナナちゃんだけだ。

 

 私を助けてくれて、友達になってくれて、可愛いって言ってくれて……。

 

 もう、これって完全に私のこと好きだよね。

 じゃないと、こんなに優しくしてくれる訳が分からないし。

 

 私が持つ力のことは秘密にしておくことにした。

 絶対に無いと思うけど、万が一それでツナナちゃんが私から離れてしまったらもう耐えられない。

 

 それに、この力の事を伝えない方がツナナちゃんの心の底からの声が聞けて楽しいしね。

 

 あぁ、ツナナちゃん。

 ほんとに可愛くて、優しくて、強くって。

 私の理想のヒーローで。

 

 これから毎日ツナナちゃんと一緒に居られるって事だよね!

 考えるだけでニヤケが止まらない。

 

 しかも私がツナナちゃんの初めて(意味深)だって!

 これってもう完全に運命だよね。

 

 あぁツナナちゃん。

 なんで私はツナナちゃんと同じクラスじゃないの? これってもしかして神様の職務怠慢?

 

 そうだ、クラスを替えてもらおう。

 私の虐めの情報を使って担任を脅せば良いよね。

 まずまず、私とツナナちゃんを同じクラスにしない学校が悪い。

 

 ツナナちゃん、私の運命の人。

 

 これからずっとずっと、一緒だね。




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