クソデカ激重感情に気が付かない一般TS最強ロリ   作:れもんぷりん

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 久しぶりの投稿ですね。
 他の作品を書くのが忙しくて・・・
 今週はクソロリ投稿の週なのでバンバン出していきますという訳で初投稿です。


ニーニャ・アレクサンドラ
転校生って期間限定アイドルだよね。


 

 カチカチ、と時計の秒針が回る音が聞こえる。

 時刻は深夜二時。

 

 俺は身体に奔る“何か”を感じ取り、ゆっくりと覚醒した。

 この感覚は本当に久しぶりだ。

 

 基本的に一度眠ったら朝まで起きない俺だが、例外がある。

 それは感知。

 

 ここ、上坂府の花園市は俺の領域だ。

 犬やライオンが持つテリトリーと同じ様なものなのである。

 だからと言って、別に誰が何処にいるだとか、何かが起きているだとか、そういうのは分からない。

 

 ただ一つ。

 

 俺に脅威を感じさせる程の“強者”が。

 この花園市に足を踏み入れたという事実だけを嗅ぎとった。

 

 そういう輩は大体が不思議な力を使う。

 それも悪人ばっかりだ。

 問題を起こさなければ良いが……。

 

 少し夜の街を巡回するか。

 昔もやってたし。

 

 そんな危険な奴らを放っておいて、リカちゃんやお母さん、お父さんに何かあったら大変だからな!

 

 でも今日は流石に眠いしぃ〜、明日からで良いよね、うん。

 いや、でもヒーローの俺が見回りをサボるなんて……それも眠いからというどうしようもない理由で?

 そんなの許されていいのか!?

 

「ふぐぅっ! やだよぉ、ねみゅいよぉ」

 

 布団にくるまり、ベッドの上を二転三転ころんころん。

 うわ〜いやだいやだ! こんな天国から抜け出さないといけないなんて、神様はちょっと試練与えすぎだよぉ!

 

「俺はひーろー、俺はひーろー。そうだろ? 俺はヒーローなんだぜ?」

 

 俺の尊敬するヒーローであるクモクモマンも街を巡回してたんだ。

 後輩ヒーローの俺がやらなくてどうする!

 

「よし! 頑張るぞ!」

 

 俺はついにベッドの呪縛から逃れた。

 お母さんを起こさない様に抜き足差し足、クローゼットの前まで向かう。

 

 取り出したのは真っ黒なフード付きのパーカーに、藍色のジーパン。

 ベルトを身につけ、赤いスニーカーを履いてトントンと整える。

 ネックレスチェーンをシルバーリングに通して首に掛け、サバイバルナイフをベルトにぶら下げた。

 

 髪を短く纏め、フードの中に放り込む。

 ここまですれば、俺は男の子と間違えられるだろう。

 

 最後に仕上げだ。

 俺が夜に徘徊する不良少女だとバレる訳にはいかない。

 となると、やっぱりあれだろう。

 

「俺のお気に入り、スカルちゃんだぜ」

 

 クローゼットの奥の奥、一番下に置かれた服で隠してあるシューズケース。

 それを取り出して、開ける。

 

 中に入っていたのは髑髏を模った仮面である。

 そこまで高い物ではないので付けた時の感触は良くないが、視界はそこまで狭まらない素晴らしいアイテムである。

 それを顔に当て、付属のバンドで頭に装着。

 

 完璧だ。

 これが俺のヒーロースタイル。

 俺が小学二年生の頃から変わらない、徘徊の時の正装である。

 

 正直、自分でもかなり気に入っている。

 めちゃくちゃかっこいいじゃないか。

 ダークヒーロー感もあって最高にイカしてるぜ。

 

 小学六年生の時は受験勉強で忙しくて見回りを出来なかったから、これを被るのは五年生以来になるかな?

 久しぶり相棒。お前の感触、思い出してきたぜ。

 ちょっとだけ肌に食い込んで痛いんだよね。

 

「行くか」

 

 窓を開け、夜の街へ飛び出す。

 ここからはお喋り厳禁。声を聞かれれば流石に性別がバレるからな。

 

 こん時の俺は常に臨戦態勢。

 周囲に警戒の膜を張ってる様なもんだから、奇襲は勿論助けを呼ぶ声も見逃さないぜ?

 

 のんびり行こうか。

 この街にいた悪党はもう大体狩り終えているだろうしな。

 

 うーん平和だ。

 やっぱり平和は良き良き。心が和むねぇ〜。

 

 

 

 

「何? この異様な空気」

「確かに少し妙ですね。“静か”すぎる」

 

 ニーニャはメイドのウララと共に花園市へ足を踏み入れた。

 ウララはニーニャが幼い頃からのメイドであり、フラグメンツの補助隊員でもある。

 ニーニャが信頼して側に置く唯一の人間だった。

 

 そんな彼女らが花園市に入った瞬間感じ取ったのは、異様な静けさだった。

 ただ静かなだけではない。

 

 誰も彼もが息を潜めているかのような。

 いつもは我が物顔で街を歩くヤクザも、コンビニの前にたむろするヤンキーも、裏で薄暗い事をしている未確認であろう異能者も。

 

 ガタガタと震えながら、頭から布団を被って“何か”が通り過ぎるのを待っているような。

 

「異様な街だわ。調査が必要ね」

「えぇ、ですが今日は寝ましょう。組織が保有する一軒家へ案内します」

 

 ニーニャは指令により、明日から花園中学校へと編入する。

 目的は『名前のない死神』だが、普通に勉強もしてくるように言われているのだ。

 

 端的に言って、死ぬほど忙しい。

 そもそも、昨日の夜十時指令を受け、そこから車に乗って深夜二時に着である。

 

 アホだ。

 フラグメンツという組織は疑いようのないブラックであった。

 

 その為、ニーニャにも疲れが蓄積しているだろう。

 ただでさえ、色々と言われることが多い子なのだ。ゆっくり休んで欲しい。

 そう考えたウララの言葉である。

 

「明日から調査を開始しましょう。昼は学校があるし、やっぱり夜ね」

「えぇ、お手伝いさせて頂きます」

 

 彼女らは夜に舞う。

 こうして、奇妙な夜想曲が奏でられようとしていた。

 

 

 

 

「……ナちゃん、ツナちゃん! 学校遅れるよ!」

「ふにゅ〜、いまおきるからぁ」

「それ八回目だよツナちゃん!」

 

 くぅ、寝かせてくれリカちゃん。

 昨日、俺は結局深夜四時まで見回りをしていたんだ……

 

 眠すぎて、動けないぃぃぃ〜

 

「もう、ツナちゃんってば。仕方ないなぁ」

 

 ん?

 なんだ?

 

 服を脱がされて……そのままさわさわと肌を撫でられた。

 そして服を着させられて……、これって制服?

 おぉ、ありがとぉ。

 

 ん?

 もしかして俺、おんぶされてる?

 

「はい、ツナちゃんあーんだよ。あーん」

「ぅぅ、んにゅ、……あーん」

 

 何か口に入れられた?

 ぱくっ。

 

 お、おいひぃ!

 

「あ、あいがとぉリカちゃん……」

「もーう! ツナちゃんってば、私がいないと駄目だね」

 

 うぅ。恥ずかしい。

 こんな年にもなって、中学生のリカちゃんに面倒を見られるなんて……

 でも実際……

 

「うん。俺、リカちゃんがいないとだめだめだぁ」

「────っ!!!!!!!!!」

 

 うんうん。

 気がついてたけど、やっぱりそうみたい。

 俺にはリカちゃんがいないとダメだな!

 

 あれ?

 リカちゃんが喋らなくなっちゃった。

 もしかして怒らせちゃったのかなぁ。

 

 …………

 

 はっ!

 また意識が落ちていた。

 

 周りが煩いなぁ。

 教室かな?

 

「あ、ツナちゃん起きた。ちょっと動かないでね」

「お、おう」

 

 どうやらリカちゃんは俺の髪型をセットしてくれているらしい。

 これはいつもの事だ。

 リカちゃんは俺の髪を弄るのが好きなんだって。

 俺も助かるので、最高にwinwinだ。

 

「……はい! 出来たよ」

「いつもありがとおリカちゃん!」

 

 なんだか嬉しくなってぎゅーっ!

 あぁ、リカちゃんってばちょーあったかい。

 

 一緒のベッドに入って、抱き枕にしたいくらいだよ。

 ま、身長差的に抱き枕になるのは俺の方かもしれないが。

 まぁリカちゃんも嫌だろうな。こんなチンチクリンと一緒に寝るのは。

 

「そ、そんな! 言ってよ! 直接言って!」

 

 リカちゃんが何か言っている。

 まあ結構独り言が多いタイプだしな、リカちゃんは。

 

 そんなところも素敵だぜ!

 

 

 「そこ。イチャイチャするのは程々にしておけよ〜。ホームルーム始めるぞ」

 

 担任の先生が声を掛けてきた。

 周りを見れば、皆んなの視線はこちらに釘付けだ。

 

 な、なんだ!

 俺が寝てたのがそんなに面白かったのか!

 まあ普段から完璧な優等生を演じているこの俺が? 寝ていたら? ちょっと気を惹いちゃうかもだけどね?

 

「あ〜てぇてぇ」

「なんか良いわ。うん、あの二人、なんか良い」

「俺さ、新しい性癖見つけちゃったかも」

 

「はい静かに〜。今日から転校生が来てくれるんだぞー」

 

 な、なにぃ!

 転校生だとぉ!?

 創作で出てきたら百二十%の確率で美男美女なことで有名なあの転校生!?

 

「じゃあ、入ってくれ〜」

 

 気の抜けた担任の声。

 そして開かれる扉。

 

 彼女が教室に入った瞬間、誰もがその美しさに目を奪われた。

 サラサラと流れる金髪に吊り目がちながら冷静さを携えた蒼い瞳。

 こぶりな口元に形の整った鼻。

 外人らしい美しさを持った、とんでもない美少女である。

 

 ほえ〜!

 すっごい綺麗。

 転校生は美人っていうのは幻じゃなかったのか。

 

「軽い自己紹介をしてもらえるかな?」

「分かりました」

 

 転校生が教卓の前に立ち、キッと前を見た。

 教卓の真ん前に座る俺と目が合い、その瞬間彼女は動揺したようにたじろいだ。

 

 正面からみたら尚更綺麗だな。

 もう芸術品の域じゃんか。

 

「ニーニャ・アレクサンドラ。好きなものは無し。嫌いなものも無し。用がある時だけ話しかけなさい」

 

 う、うっそだろおい!

 そんな自己紹介ある!?

 

 人形の様な容姿から放たれるナイフの様な自己紹介に流石の俺もびっくりだぜ。

 

 お、おいおい大丈夫か?

 それ友達出来ないんじゃないかな?

 

 もしかして少し早めの厨二病患者なのかもしれない。

 俺もそうだから分かる。

 

 恐らくニーニャちゃんはキャラを作ってきたのかな。

 それもかなりインパクトの強いキャラメイキングじゃないか。

 絶対後悔するし、俺だけでも話しかけてやろう。

 

 うんうん、それがいい。

 俺ももう一人くらいは友達が欲しかったところだしな。

 ちょっとクラスで孤立しそうだから、フォローの意味も込めて話しかけに行くとしよう。

 

 

 結局、ニーニャちゃんの自己紹介はそれで終わり、窓際の一番後ろの席に座ることになった。

 主人公席と呼ばれるあそこである。

 

 よーし、話しかけに行くとするか!

 

 

 

 

 今日から学校か。

 正直面倒だ。

 

 あたしは感情がそのまま表に出るタイプだ。

 だからウララはあたしが朝から不機嫌なのが分かるのだろう。

 

「ほらお嬢様。そんな顔をしていてはクラスメイトの皆さんに怖がられてしまいますよ? 折角綺麗なんですから、にっこり笑顔が大事です!」

 

 鼻息を荒くして迫ってこないでくれ。

 怖いって、その獲物を見る様な目がめちゃくちゃ怖いって!

 まあ、何だかんだ言って信頼しているウララの言うことだ。きっと正しいんだろう。

 

「じゃあこれでどう?」

 

 ウララに向かって笑顔を浮かべる。

 

「全然ですね。セメントで塗り固めたみたいです。それならまだ無表情の方が可愛いかもしれません」

 

 一蹴。

 このメイド、全然主人を敬う気持ちが感じられない。

 

「何よ! あんたが言ったんじゃない! これが笑顔じゃないなら何なのよ!」

「お嬢様、誠に僭越ながら申し上げますと、それは笑顔ではなく威嚇でございます」

「はぁ!?」

 

 あーほんとこの駄目イドは。

 仕事は出来るくせしてすぐにあたしを揶揄ってくるのが玉に瑕だ。

 

「よし、良い表情です。緊張していらしたようなので、少し解そうかと思いまして」

 

 ……ふんっ。いらないお世話だわ。

 大体緊張なんてしてないっての。

 

 それに……

 

「で? 本音は?」

「お嬢様って押すと音が出るオモチャみたいで凄く面白いですね。ぷくくくく」

「こらぁぁぁぁ!!!」

 

 口に手を当てて態とらしく笑うウララ。

 む、むかつく!

 

 いけないいけない。

 完全に相手のペースに呑まれていた。

 

 そろそろ出発しないと遅刻してしまう。

 

「じゃ、行ってくるわ」

「えぇ、行ってらっしゃいませお嬢様。お友達をたくさん作ってくるのですよ!」

「一言多い!」

 

 扉を開けて外に出る。

 後ろで手を見送ってくれるウララに後ろ手で手を振りかえした。

 

「……いらないわよ。友達なんて」

 

 その胸に抱える想いを、吐き出すことなく。




 新章開幕。
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