廿五まで 生き過ぎたりや 傾奇者 作:主馬
天文21年(1552)清州城にて。
海津(葦津)の戦いで坂井大膳を相手取り、見事勝利を収めた織田信長は戦勝祝いの宴会を開いていた。
信長の部下や家臣が酒を片手に宴会を楽しんでおり、信長もまた然りである。
そんなゆるゆるでぐだぐだな雰囲気の中、信長はとある話題を小耳に挟んだ。
「風の噂を聞いたのだが……このような話は貴殿に伝わっておるか? なんでも、上州の傾奇者が関東一帯を纏め上げていた馬を手に入れ、己が乗馬に仕立てたというのじゃ」
「なんじゃその話は? 少なくとも、某が耳にしたことなどないぞ。それに、話自体も眉唾じゃ。あの凶悪なる馬が……それも傾奇者如きに心を許すなど有り得まい」
「……それがどうやら真実の話らしくてな。その傾奇者に関わった者が皆、口を揃えてあの御仁を怒らせぬようにと申しておる」
「……真か?」
「恐らくな」
「……まぁ、それでも我らが信長様に勝てるわけではないであろう?」
「…違いない!」
「「ガッハッハ!!」
そう話を締め括った武士達は再び酒を煽った。
信長は酒の回った脳をフル回転させながら思考する。
関東一帯を纏め上げていた馬を捕まえて、あまつさえ自分の乗馬にした、と。それが普通の馬ならどれほど良かっただろうか。だが、そんな信長の思考に反して薄く赤い頬が吊り上がり、面白そうな笑みを浮かべている。
元々、信長も『関東の悪魔』の話は聞き及んでいたし、もし尾張にまで活動圏を広げるのなら自らの手で叩き潰そうとも考えてた。
ただ、その傾奇者の話が本当なら……それは……もう、なんとも。
その話が本当なら、前田慶次という男の内包する力が約2万の軍に匹敵、凌駕するという事になる。馬鹿げた話だ。
この数と戦術が戦を制す時代で、たった一人『前田慶次』というジョーカーがいるだけで盤上が丸々ひっくり返るのだから。相手からしたらたまったものじゃないだろう。実際、信長もそんなことが起きたらブチ切れる自信がある。
勿論、眉唾物の話だとこの話をバッサリ切り捨てる事も出来た。
―――が、それをするには些か状況証拠が揃いすぎていた。
一つ、ここ最近の野生馬の動向。
悪魔の馬が縄張りにしているのが上州の北側であり、徐々に徐々に南側へと縄張りの範囲を広めていっている。
となれば、その悪魔の馬から逃げる為に更に南へと逃げる訳で……。
そして、美濃(岐阜)から軍馬を買い取る際に軍馬の数がやけに多かったので、出所を聞いてみたら信濃(長野)と答えていた事。そして、ここ最近になって急激に軍馬の仕入れの数が減少した事。
二つ、巷での噂話の種類。
町民の噂話など信勝や家臣たちとの会話で気にも留めていなったが、確かにその傾奇者の話や悪魔の馬の名前が度々出ていた気がする。
そして、今こうして武士が酒の肴にするほど広まっているのなら……そういう事なのだろう。
最後に傾奇者の増加傾向。
可笑しいと思っていたのだ。前年と比べて傾奇者からの被害が右肩上がりで増加している等と。
それもその傾奇者が影響し、なにかと中途半端な傾奇者達が現れているのも辻褄が合う。
信長が考えれば考える程、悪魔の馬を自身の乗馬にしたという事実の信憑性が、現実性が上がっていく。
信長はその火照った頭でうんうんと唸る。そして、現状の打開策を思い付いた。
―――「そうじゃ、わしが実際に会って確かめて、危険そうだったら臣下にすれば良くね?」と。明らかに酔っている。
信長は自身の考えに「流石わし。天才じゃな!」という言葉を彷彿とさせる笑みを浮かべ、再び、しかし満足気に酒を呑み干した。余談だが、後日信長は二日酔いに大いに苦しんだ。弟の某信勝は「そんな姉上もイイ……」と興奮し、夜の肴にした。カオスである。
―――後に、この選択が信長の人生に大きく影響を与え、本来の歴史とは大きく乖離させていくことになるとは誰も知らぬ事であろう。
おき太さん二枚ぬきしました。
Fooooooo!!
千利休の外見について(震え声)
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サーヴァント時の見た目
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生前(大男)の見た目