遠くに、青い輝きが見える。…どうやら彼は、本当に人の可能性を信じ抜いたらしい。
こうしていると、可能性を信じきれずに堕ちた自分が惨めに見えてしまうな。
『そう自らを卑下してはいけない。むしろ堕ちるしか道がなかった中で、よく私を演じ切ったものだ。』
赤き彗星が輝きながらそう言った。
運命を定められ、今までただひたすら彗星を演じ続けた身だったが、本人に言われると救われるものだな。
…しかし、一度くらいは一人の人間として過ごしてみたかったものだ。
『…そうか。では、観客として良いものを見せてもらった礼をしておくとしよう。』
…それは、どういう…?
『なに、君の演じる役を私から君自身に戻すだけだ。君だって、
赤き彗星は、そう笑いながら言った。
…気遣い感謝する。
『構わないさ。…ではさらばだ、
その彗星の言葉と共に、私の視界は赤い光に包まれていった。
♢
「……スラスター、問題なし。AMBAC機構、問題なし。 …機体に問題は見られない。この機体ならば私に十分ついてこられるだろう。」
『それはよかった。…ではMSN-06S、テスト飛行を終了、直ちに帰投して下さい。』
「了解した。」
オペレーターとの通信を切断し、カタフラクトデッキへの帰投航路に向かってスラスターを起動する。
小惑星地帯に差し掛かるが、私とこの機体ならば問題はあるまい。
「…だが、まさか再びこれに乗る時が来るとはな。」
あの青い光を見届けてから、何年が経っただろうか。
ジオン残党元首魁、フル・フロンタルは地球の衛星軌道上を、この愛機と共に飛んでいた。
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「おかえりなさいませ、大佐。」
カタフラクトハッチに愛機を止め、コックピットから降りると、そこにはフロンタルの部下であるアンジェロが立っていた。
「アンジェロ。…大佐呼びはここではやめろと言ったはずだが。」
「はっ、…しかしながら私の中ではあなたは大佐のままですので。」
「…そうか。」
彼はフロンタルが大佐ではなくなった現在でも、彼を大佐と呼び続け慕っている部下だ。
地球人差別をしないフロンタルの部下と言うことで、彼自身も忌諱な目で見られているが、彼はそれを気にも止めず、こうして部下として働いていた。
「そういえば、皇女殿下はどちらに?」
「は、本日はスレイン殿の部屋に居られるはずです。」
「わかった。…私もそちらに向かうとしようか。」
そう呟くと、アンジェロは少し驚いたような顔をする。
「大佐自ら赴かれなくても、私に任せていただければ…。」
「いや、仕事のためだけということではない。単純に私も興味があるのさ。」
そう言って、フロンタルは格納庫から外に出るために歩き出す。
アンジェロもそれに従い、フロンタルの後をついていく。
フロンタルは現在、皇女第1親衛隊としてその部隊の指揮を任されている。
護衛は本来彼の部下の仕事であり、彼自身の仕事ではないのだ。
「過去の私は地球に興味はあった。だがそれを調べる機会はなかった。だから彼の話は興味深いのだよ。」
地球。かつての世界で彼は、その地球を支配し、私欲を肥やしていた地球連邦に対して反旗を翻していた。
しかし地球に降り立った経験は一度もなく、故に彼は、過去に一度も降り立つことのできなかったその地に興味があった。
「む、むむ、大佐がそこまで仰られるとは。」
アンジェロが何か焦ったような声を出しているが、フロンタルはそれを無視して講師である銀髪の少年と、その解説を聞いている自身の上司である少女を思い浮かべる。
若者たちがにこやかに笑い合っているその姿を思い出し、少し笑みを含めながら歩き出す。
「ここでは地球についての資料など、種子島での戦闘資料くらいしかないものでな。君も一度聞いてみるといい。なかなか面白いぞ?」
「ぬう、あの銀髪小僧め…少し牽制しておかねば…」
「アンジェロ?」
なにやらボソボソと呟いているアンジェロは、声をかけられると彼は慌てたように咳払いをしてから言った。
「た、大佐がそこまで仰られるのでしたら、私もいってみようと思います。」
「そうか。では今からでも行くとしよう。」
「もちろんです!」
そうして彼らは皇女殿下と教師役の少年…スレインがいるであろうところへ向かって行った。
♢
「本当に美しい星、何度見ても心を奪われます。貴方も懐かしいですか? スレイン。」
床一面に広がる青い星の姿を見ながら、少女は隣に控える少年に言った。
「えっと…それは…まぁ…。」
しかし彼は、地球で過ごした記憶はないだろう。いくら地球出身とはいえ、幼い頃に少し過ごしただけの星だ。父親の話を聞いて少し知っている程度のものだろう。
だからなのか、その返事は少し困っているような声色のものになっていた。
「照れることはありません。たった二ヶ月留守にしただけでもうヴァースが懐かしいですもの。地球、私たち人類の発祥の地。私もこうして見るのが楽しみだったのです。」
しかし少女…アセイラム姫の方は、そんな彼の心情を気にすることはなくそう言って笑った。
どうやら本当にこの星に来るのが楽しみだったようだ。
少年…スレインの方も、彼女の綺麗な笑顔に釣られて笑う。
「ねぇスレイン、空も青くて海も青いと言うけれど、前から不思議だったんです。地球では水や空気に青い色が着いているのでしょうか。」
「いえ、水や空気は透明です。ただそれらが大量に積み重なると光の屈折が起こり、あの星はそれによって青く見えているのではないかと…。」
「光を歪めるほど沢山の水や空気……凄いですね!想像もつきません!」
スレインの答えに、アセイラム姫は本当に楽しそうに笑う。
まるで一輪の美しい花のように笑うその姿は、誰の記憶にも残るものだろう。
その時、部屋の扉が開き、二人の男が入ってくる。
「やはりこちらにおいででしたか、姫。」
金髪をゆるくカールさせ、そして赤い仮面をかぶっている男。
「あ、フロンタル卿!」
「そろそろお時間ですので呼びに参りましたが…先日とは陸の形が違うように見受けられる。」
「そうなんです! この前とは別の地域を見せてもらっていたのです!」
「ほう? 興味深い。 説明を頼めるかい、スレイン君。」
フロンタルが地球を見ながらそう言った。
慌ててスレインはそれについて説明する。
「あ、はい。 えと…。」
そこからスレインは、矢継ぎ早に質問をしてくるフロンタルの相手に夢中になっており、気がつけばかなり時間が経っていた。
そして喋り通しだったせいで明らかに疲れているスレインとは反対に、フロンタルとアセイラム姫は満足げだった。
「ふむ、やはり面白い星だな、地球は。そうは思いませんか、皇女殿下。」
「はい! 2週間後の効果がとっても楽しみです!」
「全くです。 …しかし、その日を楽しみにして体調を崩されては本末転倒。そろそろ良い時間です、寝所に。」
フロンタルにそう言われたアセイラム姫は、驚いたように 「もうそんな時間ですか!?」 と言った。
「ええ。私としたことが、呼びに来たというのにスレインの話に聞き入ってしまったばかりに。このままではエデルリッゾに私が叱られてしまいます。」
「そ、それは大変です! …では、スレイン。また次もよろしくお願いしますね。」
「はっ。」
そうして、アセイラム姫はそのまま部屋から退出していき、後にはスレインとフロンタル、そしてフロンタルと共に来ていたアンジェロが残された。
アセイラム姫を見送った後、フロンタルは振り返ってスレインの方を見る。
「今回の話も非常に興味深かった。 何せ火星では聞けない話ばかりなのでね。いつもありがとう。」
「いえ、恐縮です。」
スレインは深く頭を下げる。
スレインにとってはアセイラム姫とともに地球について興味を持ち、スレイン自身にも優しく接してくれているこの男にむしろ礼を言いたいと思っているが、なかなかその機会は訪れていなかった。
「では、私もこれで。次回の講義も楽しみにしている、スレイン君。」
「はっ、お待ちしております。」
そう言ってフロンタルはでていき、アンジェロもそれを追うようにして出ていく。
最後にアンジェロに睨まれたような気がするが、スレインが気にすることはなかった。
♢
「アンジェロ。どうだった、彼の話は。」
「はっ、大佐のおっしゃる通り非常に興味深い話を聞くことができました。」
アンジェロの言葉にフロンタルは満足げに頷きながら、自らに設けられた執務室へ向かっていると、正面から誰かが歩いてくる。
短く整えられた同じ金髪の男、この白の主人でもあるクルーテオ伯爵であった。
どうやらスレインのいる部屋へと向かっているらしかった。
彼は皇女殿下を敬愛している騎士の一人だ、おそらく皇女殿下を迎えに行っているのであろう。
しかしフロンタルが声をかけたことによって、すでに彼女は新所へと戻っている。
フロンタルはそのことを伝えようとクルーテオに声をかける。
「クルーテオ卿、皇女殿下ならすでに寝所にお戻りだが?」
「…そうか。 すまない、私では彼の方を動かすことができないのでな、いつも助かる。」
「構わない。それが親衛隊としての勤めでもあるのだからな。」
「フ……やはり君は私にとって最も信頼できる同志だ。」
そう言うとクルーテオはフロンタルに背を向けて言った。
「…皇女殿下を、よろしく頼む。」
「…もちろんだ。」
その返事を聞いた彼は、少し笑うとそのまま来た道を引き返して行った。
「…言われなくてもわかっているさ、クルーテオ。あの方は私が守る。…それが、私の理想につながるかもしれないのだから。」
空と地上を対等にする。それがフロンタルの、過去から続く理想であった。
彼は皇女、アセイラム姫の目指す道がその理想につながると信じている。だからこそ、彼は親衛隊の隊長となったのだ。
窓に映る宇宙を眺めながら、彼は改めて誓った。確実に彼の方を守り抜く、と。
戦いの火蓋が切られるまで、もう間も無く。
FGOのアカウント引き継ぎコード発行を忘れたままアプリ消してアカウント消滅しましたが私は元気です。
アルドノア・ゼロ、久しぶりに見たらすごく面白いよね。という感じでいつも通りノリと勢いで描き始めました。もっと流行ってくれ。
まあいつも通りそれなりの評価もらえたら続くしダメそうなら打ち切りますんでおなしゃす。