うちは一族のレッドアイズ・ブラック・ブレット   作:gurasan

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うちはカガリと呼ばれる少年

 うちはカガリと呼ばれる少年はかつて鈴木大河と呼ばれていた。遠い過去どころか、前世でのことである。

 カガリが二度目の生を受けたのはまるでフィクションのような忍者が当たり前にいる世界。彼は最初こそなにも疑問に思わなかったが、成長し、徐々に前世のことを思いだすに連れて混乱していった。その世界が前世の記憶にあるフィクションと酷似していたからである。

 そして、その記憶の断片を思い出すたびに嫌な予感を感じていた。このままではなにか取り返しのつかないことが起こってしまいそうな、そんな予感。まるで喉に骨がひっかかったような顔をして悩む彼を家族やアカデミーの友人は心配した。カガリは彼らを不安にさせないように考えるのを止め、忍になるための修業に打ち込んだ。それでも夢から覚めたとき、うちはの家紋を見つめているとき、同じ家名をもつ後輩とその兄である先輩の名前を聞いたとき、彼の第六感が警鐘を鳴らすことがあった。

 しかし、結局はその悪い予感の原因を思い出すことはなく、運命の日を迎えてしまう。

 

『うちは一族殺害事件』

 

 うちはイタチと呼ばれる一人の忍によってうちは一族はうちはサスケ一人を残して皆殺しにされた事件。当時、一介の下忍ですらない子供だった彼は訳も分からぬまま殺されてしまう。

 漠然とした無念と後悔を抱いたのは三度目の生を受けてから。なんの因果か三度目の世界は一度目の世界と同じに見えた。

 しかし、彼はうちはカガリと呼ばれ、幼少の頃の彼はうろ覚えながらもその名に嫌な予感を感じていた。まるでフィクションの世界から抜け出せていないような。

 そして、その嫌な予感はまたしても間違っていなかった。

 

 彼が十歳のとき世界は一変する。

 崩れ去るビル群。空を飛び交う戦闘機と降り注ぐミサイル。人を殺す異形の怪物。平和だった日常は街と共に崩れ去り、非日常は地平線まで続く荒れ果てた荒野のように終わりが見えない。

 そんな中、カガリは家族に連れられて異形の魔の手から逃げていた。

 

「カガリ、お前は母さんと逃げなさい」と父は言った。

「嫌だ!」とカガリは叫んだ。

「カガリ、聞き分けなさい」と母は悲痛な表情で諭すように言った。

「絶対に嫌だ!」とカガリはより大きな声で叫んだ。

 

 この世界のうちは一族が前世と同じく特殊な力をもっていることはカガリも知っている。しかし、それが写輪眼とチャクラによるものということは平和なはずだった現代においては失伝し、力もほとんど失われていた。それでもわずかに残ったチャクラにより常人とは比べ物にならない力を持ち、天童式や司馬流にも劣らぬ武を誇る家。正体不明の異形を倒すまではいかなくとも足止めするぐらいは出来る。カガリの父はそう信じ、捨て駒になろうとしているのだ。

 

「そんなの絶対に嫌だ!」

 

 前世でも愛する家族を失ったカガリは父が犠牲になることを認められなかった。いや、前世のことがなくとも認めることはないだろう。それは母も同じ。そのことはその表情が物語っている。

 しかし、事態は切迫していた。キマイラのような様々な生物の特徴が混ざり合った異形の怪物ガストレアがカガリ達の目の前に立ち塞がろうとしている。

 もう一刻の猶予もない。そう感じた母はカガリを無理矢理抱き上げ、走り出した。その動きに反応して襲い掛かるガストレアの前に父が立ち塞がる。

 そのガストレアがステージⅠならば武器がなくともどうにか倒すことも出来ただろう。ステージⅡならば倒せなくとも足止めぐらいならば可能性がある。しかし、そのガストレアのステージはⅢ。

 

 駄目だ。死んでしまう。

 

 カガリはそう直感した。彼の赤い瞳には異形の怪物と父の一手二手先の動きが未来予知のように映し出される。そして、その予測をなぞるように父と異形の動きがスローモーションで流れていく。

 

 また、家族を失ってしまうのか?

 

 カガリの脳裏に前世での両親の死にざまと自身の呆気ない死が鮮明に蘇る。何かが落ちる音、母の来るなという叫び、暗い室内に広がる鉄の匂い、月明かりを微かに反射する水溜りのような……、そして、暗転する視界が最後に移した倒れ伏す両親。

 その姿が今世の父と重なってゆく。

 どうにかしたい。どうにかしなければならない。他の誰かではない自分が。何もできなかった前世とは違うことを証明しなければならない。

 カガリは全身にチャクラを巡らせた。まだ出来上がってない身体ではチャクラの後押しがあったとしても不十分。むしろ成長する身体に悪影響を及ぼすだろう。それでも彼の頭は前世の短い間で学んだことを急速に思い出し、体現しようとしていた。縄抜けの要領で母の腕を抜け出し、母の制止を振り切って真正面からガストレアと対峙する。

 勝てない、逃げられないのは百も承知。だが、うちは一族として大切な家族が殺されるのをなにもせずに見ていることなど出来るはずがない。

 刹那、カガリの瞳に三つの勾玉模様が浮かび、新たな獲物へと目を向けたガストレアは幾本もの杭によって地面へと縫い止められた。

 

『魔幻・枷杭の術』いわば金縛りである。

 

 殺せてはいない。だがガストレアはもう動けないだろう。拍子抜けするようなあまりに呆気ない幕引き。しかし、そんなことは気にならない。

 

「父さん!」

 

 カガリと母は父の元へと駆け寄った。

 

 

 

 

 かくして二度目の生とは違い、彼とその家族は生き延びた。ガストレアと呼ばれるようになる怪物が侵攻し、住んでいた街が激戦地となろうとも生き延びることが出来た。それだけでも進歩したといえるだろう。

 後にガストレア戦争と呼ばれるこの戦いは人類の敗北で終わり、人は地上の支配者ではなくなった。

 平和な世ではうちは一族特有の写輪眼が覚醒することはほとんどない。なぜなら身内や友人など大切な者を失うことによる喪失感や自身への失意が写輪眼への覚醒を促すからだ。故に現代では稀に覚醒したとしても人生半ばを過ぎていることがほとんどである。事実、カガリの両親は写輪眼に目覚めていなかった。それどころかチャクラも無意識に使っているような状態。

 しかし、ガストレア戦争によりカガリ以外のうちは一族も写輪眼に目覚める者が出始めた。中でも前世というものを持っていたカガリは先祖返り、または原作通りともいえるほどの力を受け継いでいる。

 その力のおかげでどうにか生き延びることが出来たカガリ。しかし、降りかかる試練は終わりではなく始まりにすぎなかった。

 

 

『呪われた子供達』

 

 

 ガストレアにより多くの、否、全ての人々が何かしらを奪われた。それは家族であったり、友人であったり、財産であったり、夢であったりと様々だが、一様に何かを奪われた。そして、その奪われた人々は当然ガストレアを憎む。壊された街を見るたび、呼びかける誰かがいないことに気付くたび、怒りと悲しみを糧に憎悪と恐怖が膨れ上がっていく。

 無事だったとしても精神を病んだ者も多く、ガストレアに似た赤い瞳を見るだけでトラウマがフラッシュバックしてしまう。その症状はガストレアショックと呼ばれた。

 そして、ガストレアウイルスに感染した人間から生まれた子供達はウイルスに対して抗体を持ち、即座に異形と化すことなく人と同じ姿形でありながら常人ではありえないほどの身体能力やなんらかの特殊能力、そしてガストレアと同じ赤い眼を持つ。

 その存在は神が人類に与えたガストレアへの対抗手段であると同時に憎きガストレアの同属という憎悪の対象でもあった。どちらにせよ真っ当な人権が保障されることはなく、呪われた子供達と呼ばれる彼女達は人の輪に入り命がけでガストレアと戦うか、人の輪から外れ野たれ死ぬかの二択しかないといっても過言ではない。

 そして、不幸にもこの世界のうちはの家系は常人ではありえないほどの身体能力と特殊な能力、そして赤い瞳を持っていた。

 そんな類似性にカガリは「なんでイシュヴァール人タイプなんだよ、せめてクルタ族タイプでいいだろ」と嘆いたという。

 呪われた子供達は皆女性であり、さらによく見ればガストレアの瞳とは違うことが分かる。しかし、奪われた人々が冷静に赤い瞳を観察することなど出来るはずもない。彼らは呪われた子供達と同じく迫害を受け、殺されそうになったことも多々あった。

 だが、ここでカガリは起死回生の一手を打つ。

 

「カラーコンタクトをつけよう」

 

 カガリの一言により、両親はすぐさまカラーコンタクトの製作を頼んだ。しかし、赤い眼をしているだけで取り合ってもらえない世の中。一先ずサングラスをかけながら業者と交渉し、時にカガリが写輪眼による瞳術を用いて無理矢理カラーコンタクトを創り上げさせた。

 それは長期使用に耐えるハードタイプであることに加え、光対策としてスポーツなどで使われるサングラスのような効果もある。

 もしも、呪われた子供達だった場合、ここまでスムーズにはいかなかっただろう。彼女たちはほぼ確実に捨て子といっていいため、親の庇護もなければ金銭など持っているはずもない。例え持っていたとしてもまともに相手にされないだろう。

 そして、カガリ達は考える。

 このコンタクトを呪われた子供達に提供すれば普通の孤児として匿えるのではないかと。

 ガストレアの襲来により、呪われた子供達でなくとも孤児は大勢いる。ただの孤児であるならばその子供を保護したとして称賛はされど批判は受けないはず。

 未だ失っていなかった常識観念と同じ扱いを受けたことで抱いた親近感からカガリ達は呪われた子供達を保護し始める。

 中には心に傷を負った子供も少なくない所か全員が大なり小なり心に傷を負っていたが、写輪眼を使ってでも無理矢理彼女らを保護した。強引な手だったが、時間が経つに連れて心を閉ざしていた子供も心を開くようになっていく。そうやって子供が増えていけば生活費も増えていく。

 ただ、幸いにもカガリが仕事に困ることはなかった。

 世界が変わってから数年、人類はモノリスと呼ばれる巨大な黒い壁の内側に引きこもり、民警と呼ばれる対ガストレアの組織を結成した。彼らの仕事はガストレアを狩ること。そのために試験を突破しライセンスを取得した者はプロモーターと呼ばれ、呪われた子供たちをイニシエーターと呼ばれるパートナーとしてガストレアと戦う。その際、プロモーターは高い戦闘力を誇るイニシエーターの精神的な支柱兼司令塔とならなければならないのだが、差別意識やプロモーターのほとんどがチンピラっぽく民度が低いため、十全に役目を果たしているとは言い難いとカガリは思っていた。

 そんなプロモーターにシンリは属して、いない。

 理由は単純で稼ぎが悪いからである。加えてカガリとしては家族や新たな妹たちを守るためなら命がけでガストレアと戦う覚悟はあるが、命がけで金を稼ぐ気はない。家族を残して死ぬわけにはいかないからだ。

 ではどうやって金を稼いでいるか?

 答えは写輪眼を利用した犯罪である。

 たとえばバラニウムと呼ばれる対ガストレア用の武器などに使われる金属を合法または非合法に採掘して取引している輩や浸食抑制剤を扱う国際イニシエーター監督機構、略称IISOの人間などを催眠眼で操ったり、弱みを吐かせて脅迫したり、ときに彼らの仕事に協力したりなどして金を巻き上げていた。

 このことは母も黙認している。むしろ無事だったうちはの親戚を集め、巻き上げた金で孤児院を運営し、学校代わりに勉強や自分で身を守れるようにと護身術(実際にはカガリが前世より忍者してると思うほどの暗殺術)を子供達に教え、ガストレア戦争に伴い写輪眼に目覚めた者をカガリの補佐につけるぐらいには協力的である。

 そんな仕事と生活を続ける内にうちはは多くの要人や資産家を傘下に持つ組織として。カガリはその組織の裏ボスのような扱いになってしまっていた。

 さらに他のエリアからも集められた呪われた子供たちは数年で百を超えていた。一応は普通の孤児として保護しているものの、気付く者は気付いてしまう。

 そして、気付いた者は戦慄する。

 うちは一族は廃れているとはいえ、そこそこ名の知れた武家だ。彼らは特殊な能力を持ち、ガストレアが現れて以来それがより顕著になっていた。そのうちは一族が一堂に会し、百を超える呪われた子供達に暗殺術を教えている。さらに裏ではバラニウムの取引を行い、IISOとも秘密裏に繋がっていた。

 

 これはなにかある。なければおかしい。

 

 そんな噂がまことしやかに囁かれ、ついには慈善事業すら邪推される始末。

 カガリ達うちは一族は頭を抱えた。

 善意で始めたはずの活動がここまでややこしい事態を引き起こすとは。やはり犯罪者相手とはいえ犯罪に手を染めたのがいけなかったのか。しかし、今更手を洗うことも出来ず、その犯罪によって子供達の生活が守られているのもまた事実。むしろ、犯罪者から巻き上げた金で子供達を救うことのなにが悪いのか。

 彼らは一つの結論をだした。隠しているからいけないのではないかと。

 倫理的にはそこまで間違っていないのだからいっそのこと公表すればいいのではないかと。

 カガリ達は孤児院の子供達が呪われた子供達であることを正式に公表し、バラニウムの裏取引やIISOの汚職・癒着などを東京エリアの統治者である聖天子陣営すなわち政府に公開した。

 東京エリアは初代聖天子の頃から呪われた子供達との共生のための法案などが挙げられており、他のエリアに比べれば呪われた子供達への差別意識は低い方である。故に今までのことも情状酌量の余地ありとして大目に見てくれた上で誤解も解けるだろう。あわよくば正式に活動が認められるかもしれないと嘆願した。

 しかし、彼らの公開した情報は孤児院の子供達が呪われた子供達であるということ以外、今代の聖天子には伝わっておらず、表にも出回っていない。

 なぜか?

 視点を変えてみよう。

 政府は一枚岩でないどころか、各エリア間のバラニウムを巡る利権争いや聖天子暗殺計画が持ち上がるほどガタガタである。当然ながら汚職や癒着も凄まじい。そして、この時代の汚職や癒着といえば金になるバラニウムの採掘・取引や戦力である民警、そして民警と関わりが深いIISOなどが中心となる。そんな彼らの元に黒い噂の絶えないうちは一族から汚職・癒着の証拠をまとめた情報を公開するという届出があり、しかもそこには活動を合法化したいという旨が加えられていた。

 

 完全に脅迫である。準備が整ったので表舞台に出ようとしているとしか思えない。

 

 こうして、裏ルートだったバラニウムの取引は正式なものと認められ、一部の人物としか繋がりがなかったIISOと正式な契約を結ぶこととなり、孤児院は呪われた子供達の養成施設として援助を受けるようになる。孤児院はより大きくなりカガリの前世に存在したうちはの里のように、外周区ではないものの東京エリアの片隅が丸ごとあてがわれた。

その前世うちは一族のように特別扱いされているのか、それともハブられているのか判断しにくい状況にうちは一族影の首領と噂されるカガリは首をひねる。

 

「どうしてこうなった?」

 

 勘違いが現実となった瞬間だった。

 




 次回予告

 カガリは私怪しい者ですと主張しているかのような仮面男と出会う。

「私のイマジナリィ・ギミックを見切るとは」
「(こいつ厨二病か?)」


 天童民間会社がうちはの里の真相に迫る。

「うちは流暗殺術?」
「ええ。彼らは子供達にそのうちは流暗殺術を教えているらしいわ。あくまで表向きは護身術としてね」
「それは違うぞ!」
「「!」」
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