うちは一族のレッドアイズ・ブラック・ブレット   作:gurasan

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厨二の星

 ガストレア戦争から十年。里見蓮太郎は高校生でありながらプロモーターとして働いていた。そして、今日も今日とて仕事の入らない天童民間警備会社にイニシエーターの少女、延珠と共に顔を出していた。

 依頼があるとのことだったが、その説明の前に依頼人をブッ飛ばしてしまい、報酬を貰い損ねたことで会社の女社長である木更から叱責を受けていたのが先ほどまでのこと。

 

「里見くんはうちは流暗殺術って知ってる?」叱責が終わり、ふとした拍子に木更がそんなことを言った。

「あ? なんだよいきなり」唐突な問いに蓮太郎は眉を潜める。

「知らないのね」いかにも失望しましたとばかりに木更は肩を竦めて見せた。

「悪いかよ」蓮太郎は眼を逸らして開き直る。

「妾は知っているぞ」と延珠は胸を張るようにして言った。

「ホントか?」蓮太郎の眼は疑わしそうな目をしていた。

「嘘ではない。妾達の間では有名だぞ」と少しむくれて延珠は言う。

「そうね。延珠ちゃんたちとは繋がりが深いかも」

「イニシエーター関連ってことか?」

「まあ、そうね。ただ私達も無関係なわけじゃないわよ」

「東京警務部隊だろ」

 民警を取り締まる民警。それが東京警務部隊であり、その構成員はほとんどはうちは一族で構成されていた。

「あら、里見くんのことだからてっきり知らないと思ってたわ」

「さすがにそれぐらいは知ってるっての」

 民警を取り締まる権限を持つ以上、警察以上に民警にとって厄介な組織。あまり表に出てこないとはいえ、民警ならば知っていて当然である。

「うちは流暗殺術は知らなかったくせに」

「……で、そのうちは流暗殺術がどうしたんだよ?」

「うちはの武術は昔こそうちの天童式に劣らないものだったって話だけど十年前の時点ではっきり言って廃れた状態だったわ。なんでだと思う?」

 ちなみに天童式はその強さこそ本物だが100年強しか経っていない武道であり、正しい例を挙げるならば司馬流とかではないだろうかと蓮太郎は思ったが、そんなことをいえば木更が烈火のごとく怒り出すのは想像に難くない。

 君子危うきに近寄らず。ツッコミは無用だろう。

「後継者がいなかったとかじゃねえのか?」

「お金がなかったからではないか?」

 

「「「……」」」延珠の言葉に三人はしばし押し黙る。

 

「……二人とも正解よ」他人事ではないとばかりに木更は真面目な表情で言う。「かつての平和な時代になって、科学技術が発展して、暗殺術なんてものは必要とされなくなった。そして、うちは流暗殺術はうちはの人間にしか使えなかったこともあって武術で食べていくことも出来なかった。この二つが主な要因でしょうね」

「うちはの人間にしか使えないって秘伝とかいう意味じゃないんだよな?」木更の言い方から蓮太郎は彼女の意図を読み取った。

「ええ。そもそもうちは一族は他の人間とは構造が違うのよ」

 木更の言葉に延珠が一瞬暗い表情を浮かべた。

 人とは構造が違う。呪われた子供達が差別される一番の要因だ。せめて赤い目でさえなければ多くの呪われた子供たちが迫害されることなく、命を救われただろう。

「かつて中国では経絡なんてものがあるとされていたけど彼らは経絡系と呼ばれる独自の器官を持っている。それがイニシエーターにも匹敵する身体能力を生み出していると言われているわ」

「……なあ、なんでその経絡系ってのがあるって分かったんだ?」と蓮太郎は半ば答えが分かっていながらもきいた。

「……解剖したのよ」

 答えは予想通りのものだった。

「昔からうちは一族は研究対象としてその身を狙われていたらしいわ。中でも目は鑑賞用としても価値があったらしいから特に狙われていたとか。今は見たいなんて人はモノ好きか研究者以外いないでしょうけど」

 人の眼を観賞用として飾る。余りのおぞましさに蓮太郎は顔を歪めた。が、知り合いにそういうことをしそうな人間がいることを思いだして、苦笑いを浮かべる。

「話を戻すけど彼らの暗殺術は前提として超人的な動きが出来ないといけないの。だから一般に広まらなかったってこと」

 超人的な動きが前提条件。蓮太郎はすぐ横に座る延珠を横目で見た。それに気づいた延珠は笑顔を向ける。蓮太郎は苦笑いを浮かべた。

「そう。イニシエーターはその条件を満たす。それでもって、うちはの里なんて呼ばれる地区に外周区に住んでいた子供達が集められているのは知っているわよね」

「まさか……」

「ええ。彼らは子供達にそのうちは流暗殺術を教えているらしいわ。あくまで表向きは護身術としてね」

「それってIISOは認めてるのか?」

 IISOの活動の一つはイニシエーターの育成だ。うちは一族の行動はそのお株を奪うような行為である。本来ならどんな武術を学ぼうが個人の自由だが、よくも悪くも世界の中心である呪われた子供達となると話は変わる。それも集団でとなると尚更だ。

「黙認してるみたいね。孤児院自体は聖天子様からも正式に認められているし。あっちに民警を取り締まる権限を与えられている以上、民警では太刀打ちできないでしょうね」

「それで、それがどうかしたのか?」

「そのうちはの里で臨時の先生または保育士をして欲しいって依頼が来てるのよ」

 蓮太郎はそれをきいてうちはの里の調査かと考えた。

「依頼者はどこだ?」

「うちはよ」

「あ? どういうことだ?」

 民警と警察の仲が悪いのは周知の事実だが、民警を取り締まる警務部隊に民警が良い感情を持つはずがない。それはあちらも分かっているだろうになぜ民警に依頼したのか?

「さあね。でも民警の中にはうちはが子供達に対して無条件で門出を広げていることからイニシエーターを送り込んで内情を探らせるなんてこともあったらしいわ」

「過去形なのは?」

「そのイニシエーターが戻って来ないからよ。場合によってはプロモーターもね」

「キナ臭い話だな」

 警務部隊が出来る前からプロモーターが行方不明になるケースは少なくなかったが、行方不明のほとんどがうちはの仕業だったという噂もある。

「里見くんが報酬をちゃんと受け取っていればこの依頼も受けなくて済んだかもしれないのに。ほんと甲斐性無しなんだから」

「その話はもう終わっただろ」

「それで、どうするの? 今回はまだ選択権があるけど」

 依頼を受けるか受けないか。蓮太郎は悩んだ。呪われた子供達を保護しているという点を素直に受け取るならば少なくとも延珠に危険はないだろう。しかし、呪われた子供達を集めて、洗脳し、兵に仕立てあげようとしているのだとしたら……。

「なにを悩んでいるのだ?」

「お前、話きいてたか?」

「うむ。教師が足りなくなったから教師をして欲しいのだろう? 蓮太郎が教師役になれば問題ない」

「いやだからその依頼の裏になにがあるか……」

「蓮太郎は知らないかもしれないがうちはの人達は良い人たちだ。優しいし、皆を助けてくれた。悪い人たちじゃない」

「世の中には良い人そうに見えて悪い奴もいる」

「……」延珠は悲しそうな顔をして蓮太郎を見る。

「でもまあ、会わずに決めつけるのはよくないよな」蓮太郎はバツが悪そうに顔を逸らして言った。

「……蓮太郎。さすが妾のふぃあんせだ」

「いや、違えから」

「はいはい。依頼は受けるってことで良いわね?」木更が注目とばかりに手を叩いて確認をとる。

「ああ。うちはのことはこの眼で確かめる」

「それじゃあ、三人で行きましょう」

「「三人?」」蓮太郎と延珠は間の抜けた声を上げた。

「なんか給食が出るらしいのよ。それも希望があれば三食も」

 目を輝かせて言う木更に蓮太郎は、飯だけ食って自分は帰るつもりじゃないだろうなと邪推した。

「ちなみに契約期間は一月更新。シフトは応相談で拘束時間は二時間からだけど緊急時の抜け出しはOKみたい。時給換算するとなんと2000円。でも交通費は出ないらしいわ。その代り寝泊まり可みたい」

「バイトじゃねえか。いや給料は高いけど」

 蓮太郎は一応高校生である。そうなると行けるのは土日の二日間。終日八時間働くとして一日一万六千円。それが八回で月額約十二万八千円。しかも食う、寝るに困らない。むしろ学校を止めて週休二日にすればと考え、背筋が凍るような笑みを浮かべる生徒会長の顔が思い浮かび、蓮太郎は考えるのを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 男は逃げていた。辺りは闇に包まれ、廃墟が乱立している。

 誘い込まれたのだと男は悟った。

 しかし、男は追いかけてくる影を振り切るように走る。彼はまだ諦めていなかった。

 男は元囚人でありながら民警に所属する、それなりに腕の立つプロモーターだった。故に増長し、犯罪を繰り返していたが、大量殺人などの重大な事件を起こさない限りライセンスが剥奪されることはない。それが彼をより増長させる一因となった。

 そして、今日。カッとなってパートナーのイニシエーターに重傷を負わせてしまう。彼は任務中の負傷ということで処理しようとしたが、それは叶わなかった。

 親会社からの命令で上司からクビを言い渡されペアも解消させられたため、IP序列もリセットされてしまう。とうとうブチ切れた男はその上司を殺害して逃亡した。

 そして、今彼は影に追われている。

 違反したプロモーターやイニシエーターを取り締まり、場合によっては始末する対ガストレアではなく、対人戦に特化した組織からの追手。

 男はそれこそ死ぬ気で走り続け、開けた場所へと出る。

 そこへ降り立つ黒い装束と仮面を付けた存在。

 四足獣のように身体を丸めるその人間が地面に着地するのを見届けると同時に男の視界に黒光りするクナイが迫りくるのが写る。

 腐ってもプロモーターの一人である男はそのクナイを手に持つナイフで弾こうとする。だが可笑しなことにそのナイフが男の元へと到達する前に、男の頭が上から掴まれた。クナイを投げ、地面に着地したばかりだったはずの存在によって。

 尋常ならざる力によって男の視界は一回転する。

 

「極死・七夜……(なんちゃって)」

 

 男が最後に見たのは倒れ伏す自らの身体と赤い輝きを放つ瞳だった。

 

 

 

 

 着地と同時にチャクラを足に込め、獣のごとく跳躍し、先に投げたクナイを追い越して相手の頭を掴み、ねじ切る。そんなフィクションの技を再現したカガリは清々しい達成感と共に技の考察をしていた。

 殺傷力は高いが暗殺術というには派手なのが欠点か。後処理が面倒だし。それでも螺旋丸とか千鳥よりはかなりマシなのが不忍たる所以だな。とカガリは仮面の裏で苦笑いを浮かべた。

 在りえないと思いたいがイニシエーターのような強化人間相手には効果的だろう。

 それに極死はともかくとして、七夜の体術のように四足獣の動きを真似るというのは子供達と相性がいいかもしれない。

 勿論、カガリは七夜の体術など知りようもない。しかし、いくつかの技の概要と獣拳ならば知っていた。

 人を殺す術を教えるのはどうかと思ったが、今更なこともあって中途半端が一番危ないという結論に達する。それに最近なにやらキナ臭い。うちはの里に戻ったら一族に提案してみようと彼は心に決めた。

 

「いやはや恐ろしい技。絶技とでもいうのかな。まるでイニシエーターを殺すための技のようだ」

 

 一仕事終えたカガリへと赤い燕尾服にシルクハット、加えて仮面を被った怪しい男が拍手をしながら声をかけた。怪しいを絵に描いたような奴だとカガリは思うが、怪しさという点では前世の暗部を参考にしたカガリの恰好も五十歩百歩である。

「死神と言われるだけのことはある。その力を……」

 仮面男が言い終わる前に仮面目掛けてクナイが投げられる。しかし、そのクナイは見えない壁にぶつかったかのように弾かれた。

「バリア。いや斥力か」クナイの弾かれ方から推察し、ペインみたいな能力だとカガリは思う。

「ほう。私の斥力フィールド(イマジナリィ・ギミック)を初見で見破りますか」

 その言葉を聞いてまさか真の厨二病変質者かとカガリは戦慄する。こいつ銃に名前付けてたりするのかとカガリは訊いてみたくなったが、極死・七夜とか言っちゃった手前厨二病と煽るのは憚られた。

「しかし、随分な挨拶だ」

「仮面を付けている奴にはろくな奴はいない」

「なるほど。君が言うと説得力がある」

 あん? ケンカ売ってんのか厨二野郎、と言いたいのを堪えてカガリは仮面男を睨みつけた。

 カガリの付ける仮面に穿たれた二つの穴から赤い光が漏れる。仕事の時は売名行為のため隠していない写輪眼によるものだ。

「ふむ。それが噂に聞くうちは一族特有の赤い瞳か。実に良い眼をしている」仮面の男は茶化すように口笛を吹いた。

 その次の瞬間、カガリの身体が真っ二つに別たれる。

 彼の背後にはいつのまにか一人の少女が二本の小太刀を振り抜いた態勢で立っていた。

 先の口笛は彼女への合図。彼女はカガリの背後にある廃墟で機会を伺っていたのだ。

「……切れなかった」少女は呟き、目の真にある真っ二つになった頭のない死体を見やる。

 肝心のカガリはもぎ取った首と一緒にどこかへと消えていた。

「変わり身の術というわけか。うちはが忍の系譜というのも嘘ではないらしい。それにしてもこのご時世に忍者とは」

「バパ、切らなくていいの?」と少女は一定の方向へ身体を向けたまま言った。

姿は見えなくとも直感でカガリが逃げた方向が分かるのだろう。今にも飛び出しそうなほど気が高ぶっている。

「いいさ。今はまだ、ね」男は仮面に描かれた模様のように笑みを浮かべる。「それにしても生首か。サプライズにはいいかもしれないな」

 

 

 一方のカガリは厄介な奴らに目を付けられたと溜息を吐いた。一応目を合わせた際、家族に手を出さず、これからも自分に接触するよう暗示をかけたが、狂人相手にどこまで効果があるか分からない。

 カガリはもう一度溜息を吐き、供養した生首に手を合わせる。

 どんな人間も死ねば仏。死んだら罪が許されるなんてことは認められないが、死が重いこともまた事実。

 来世では真っ当な人間として生きられるようにとカガリは祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 うちはの武術は忍のそれであり、対ガストレア戦よりも対人戦向きである。そこでうちは一族は民警をとりしまる民警、その名も東京警務部隊として東京エリアの治安維持活動を任されることになった。

 この前世との妙な符合はガストレア戦争前にうちはという家名に抱いていた予感のようにカガリをひどく不安にさせた。

 そこでカガリはほとんど失伝したチャクラ運用術を一族全員に伝授することを決意する。

 その運用術とはカガリが幼少の頃から考え、試行錯誤を繰り返した血と汗と涙の結晶だった。

 

 

 ガストレア戦争を生き延びたカガリは将来のために一族や他の流派から武術を教わるだけでなく、チャクラの運用術を身に着けようとした。とはいえ彼もチャクラの全てを完全に理解していとは言い難い。前世ではアカデミーを卒業前に死んだのだから当然だ。

 そこで役に立ったのが成長とともに鮮明に思い出せるようになった前々世での記憶。

 まずチャクラとは身体エネルギーと精神エネルギーを合わせたものであり、前者は八極拳でいう勁に近く、後者は武道の気に近い。他の漫画や小説で例えるならハンターハンターの念であり、ドラゴンボールの気であり、レギオスの勁である。経絡系が存在することから一番近いのは勁脈が存在するレギオスかもしれない。

 そして、カガリはナルトで描かれた修行法だけでなく他の作品での修行法を吟味し、現代まで伝わっているうちはの武術と合わせればなんか良い感じになるのではないかと考えた。

 

 しかし、言うは易く行うは難し。

 

 両親にチャクラの概念を説明するだけでも苦労し、

「チャクラだと? たしかヨガで身体に複数ある中枢のことだったか」

「いや、それとは違くて、どちらかといえば気とか勁みたいなやつなんだけど」

 

ナルトに登場する木登りや水面歩行や、

「木登りというより壁登りだな」

「カガリ、ご飯だから早く降りてきなさい」

 

レギオスに登場する勁息をもとにした気息とボールを用いた修業、

「あれ? 気息って仙術チャクラなんじゃ……うん、やめよう」

「座禅を組んでいたんじゃなかったのか?」

 

 形態変化を習得するためにハンターハンターの穴掘り修行や変化系修行などなど思いつく限りの修行法を試した。

「なんでカガリさんも採掘に?」

「穴掘りも修業のうち。そんなことより後一息で休憩だ。朱理ちゃんに会えるぞ、ロリコンの常弘くん」

「ろ、ロリコンちゃうわ。じゃなくて違います」

「君も大分ネタに染まってきたね」

 

 さらに偶然知り合った別の転生者から評価を貰い、修正し、

「再不斬さん、どうか弟子にしてください!」

「今は将監だ。こっちの条件を呑むなら考えてやる」

「将監さん。だれですかその人?」

 

 そして、ようやく完成した。

 

 そんな同じうちはとはいえ簡単に教えることを禁じられていた秘伝を明かす決意を固め、一族の年長者たちもそれを了承する。

 

 新生うちは流(暗殺)護身術の誕生だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 繰り返している、と将監は思う。再不斬と呼ばれていた前世、無音殺人術と首切り包丁を使い、人を殺していた。

 今も変わらない。前世と同じく口布を巻き、首切り包丁がバラニウムとかいう金属になって、殺しす相手が人に加えてガストレアなんて怪物が増えただけ。結局、自分にはそういう道しかなかったということだろう。

 自分には地獄がふさわしい。前世で忍の世界が似合わなかったように白にはこんな地獄のような世界は似合わない。だから、この世界に白はいないだろう。将監と呼ばれるようになった男はそう思っていた。

 実際、今の所自分を前世の名で呼ぶ人間はいない。

 

「将監さん」

 

 しかし、今世での名を呼ぶ少女はいた。少女の名は夏世。プロモーターになる際、送られてきたイニシエーターだ。彼女はイニシエーターの中では身体能力が高い方ではなく、代わりにずば抜けた知能をもつ。ゆえに戦闘ではなく事務仕事などを任せていた。そのことに夏世は不満があるようだったが、仮に彼女が戦闘力に秀でていたとしても将監は自分一人で充分だと言っただろう。将監にはそれだけの実力があったし、前世で白を忍の世界に巻き込んだことに対する負い目のようなものもある。だからこそ、ガストレア化の危険を冒すような戦闘に参加させなかった。

 差別意識からイニシエーターを道具扱いするプロモーターが多く、そういう人間を見ると、忍に必要なのは道具だと言って、心を殺していた前世の自分を見るようで無性に気分が悪くなる。そして、ほとんどの場合その相手を殺してしまう。三桁というIP序列がなければライセンスを剥奪されていたかもしれない。

 残されたイニシエーターたちをどうするか悩んでいた時、前世で因縁のあるうちは一族が呪われた子供達の保護しているのを知った。

 なぜそんなことをするのかと考え、そういえばあいつらも赤目だったと彼は思い出す。

 相手を見極めるためうちはカガリとも話し、術などを教えるかもしれないという契約をもとに信用に足ると判断した将監は、丁度良いとばかりに夏世を含めたイニシエーターをうちはの里に預けた。

 しかし、誤算があった。

 

「ただの道具としてで構いません。だから、どうか傍に置いてください」

 そう言って夏世は眼に涙を浮かべながら頭を下げてきたのだ。

 

 まさか前世での白と同じようなことを言われるとは思わなかった将監は面食らってしまう。にやにやと笑みを浮かべるカガリが鬱陶しくて首切り包丁を振るい、背を向けた。

「付いてきたいなら勝手について来い」そう言う他なかった。

「は、はい」夏世は満面の笑みを浮かべて将監の隣へと走り寄る。

 

 

「俺の知り合いはロリコンばっか」

「……前払いだ。一つ術を教えてやろう」

「へ?」

 

『水遁・水龍弾の術』

 

「じょ、冗談だってばばばばああああぁぁぁ……」

 流されていくカガリはドップラー効果のような悲鳴を残してフェードアウトしていった。

 




 次回予告

 うちはの里へやってきた蓮太郎たち。そこで待っていたのは鬼の男とイルカの少女だった。

「今日からお前達に無音殺人術……」
「護身術です。将監さん」
「……今日からお前達に無音護身術を教える」
「おい延珠。あいつ今殺人術って言ったぞ」
「先生がそんなこと言うはずなかろう。きっと気のせいだ」

「こいつは首切り包丁といって……」
「ほら! 今度は首切りとか言ってるぞ!」
「蓮太郎だってドクロカブトとか言っているではないか。どっちも頭のことなのだろう?」
「轆轤鹿伏鬼(ろくろかぶと)だ!」
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