便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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臨戦ホシノ、シロコテラー共に一天井で確保出来ました。
いやぁ、収まるべきところに収まったってストーリーでしたね。スオウ派閥の私としては色々と彼女が気になりますがさて……


打ち破るは何処までも美しい輝き

 地の底から鳴り響く様な重低音は祈りを聞き届けられなかった無垢なるシスターの慟哭か。

 それとも神などという不確実で非現実的存在を妄信し、取るべき時に武器を取れずに全てを失った己の愚鈍さに対する怒りか。

 

「シスターの割に狙いが良いじゃねぇか!」

 

「『マリー』さんは優秀な方ですから!」

 

 いずれにしろ後悔を多分に含んだ『マリー』の弾丸は戦い慣れているレイヴン9や、シスターフッドの長であるサクラコの動きを的確に捉え放たれ、銃声が鳴るたびに回避を強制される。

 

「甘いんだよ!!」

 

「そこですっ!」

 

 そして飛び退いた二人を狙う様にユスティナ聖徒が襲いかかるが、レイヴン9はストックを活かして突き飛ばし連携を崩したところを一纏めに弾丸で撃ち抜き、サクラコも負けじと地面に足をつけた瞬間にクルリとダンスの様に回りユスティナ聖徒を撃ち倒す。

 消えゆくユスティナ聖徒の塵の向こう側、『マリー』はそんな二人を冷え切った瞳で見つめると両手を広げ、黄金の二丁拳銃を一度水平にしてから見せつける様に構える。

 

「ッッ……逆さ十字架……『マリー』さん。それが貴女の選んだ道なのですね」

 

 返事は銃弾によって齎される。

 サクラコへ向けて二丁拳銃を放つのと同時に、無数のユスティナ聖徒が再出現しレイヴン9へと殺到する。

 

「ッチ、狙いはサクラコかよ!」

 

「……私は大丈夫です。持ち堪えてみせますから必ず助けてくださいね──レイヴン9さん」

 

 ユスティナ聖徒の波に飲み込まれていくレイヴン9の視線の先で、サクラコはただ優しく微笑むと瞬きの瞬間には覚悟の決まった鋭い表情へと変わり自分へと放たれた二丁拳銃の弾丸を避け、詰め寄ってきた『マリー』と武器をぶつけ合わせる。

 

『……』

 

「『マリー』さん。休みましょう?」

 

 サクラコは力を込めて『マリー』を弾き飛ばすと、愛銃である『浄化の織り手』を構えて彼女が救われる様にと祈りを込めて弾丸を放つ。

 種別としてアサルトライフルに分類される彼女の銃から放たれる弾丸は、その数・威力共に優れており『マリー』は直撃を貰うかと思われたがシスター服に見合わない身軽な動きでこれを避けると片手撃ちというデメリットを感じさせない速射がサクラコへと放たれた。

 

「ッッ!!なるほど、スリットですか」

 

 戦う為の選択としては妥当と言える動き辛いシスター服には、足の動きを邪魔しない様に深いスリットがあり身を屈めている『マリー』の足が露出していた。

 サクラコは『マリー』の攻撃を避けきれずに身体で受け止め、苦悶の表情を浮かべるが痛みに耐えながら『浄化の織り手』を動きを止めている『マリー』に向けて放つ。

 

『……』

 

 二丁拳銃を盾の様にしながら銃弾の雨を受け止める『マリー』

 サクラコは気がついていたのだろう。二丁拳銃、それも揃って大口径の衝撃を小柄な『マリー』が受け止め切るにはしっかりと重心を落とし、重く深く構える必要がある事に。

 両者痛み分けとなった事で、仕切り直しの意味も込めてかサクラコのリロードのタイミングで『マリー』が後方へと下がる。

 

「……流石に痛みますね」

 

 ズキリと痛みを告げてくる脇腹にそっと手を伸ばし、顔を顰めるサクラコ。

 そんな彼女とは対照的に眉の一つも動かしていない『マリー』は慣れた手つきで二丁拳銃のリロードを済ませるとふっとその姿を消した。

 

「ッッ!?何処へ!!──アグッ!?」

 

『……』

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()『マリー』の痛恨の一撃がサクラコの腹部に放たれる。

 ヘイローが明滅を繰り返すほどの一撃を受けて、フラフラと下がるサクラコへと更なる追撃の為に距離を詰めようとする『マリー』であったが、そんな彼女を邪魔する様にワイヤーの音が鳴り響く。

 

「──私の親友を随分と可愛がってくれてるじゃねぇか」

 

 ユスティナ聖徒を全て撃ち倒したレイヴン9の勢いが乗った鋭い蹴りが『マリー』の頭部には一切の加減なく放たれ、『彼女』の軽い身体はボールの様に飛んでいった。

 

「立てるかサクラコ」

 

「……ッッ、えぇ。まだ戦えます!」

 

「一気に決めるぞ。トドメはお前がやれ」

 

 フラフラとしかし昂る闘志はそのままに立ち上がるサクラコをレイヴン9は心配そうに一瞬見るが、すぐに意識切り替えて立ち上がる『マリー』へと視線を移す。

 自分を心配してくれている事、『マリー』との決着を任せてくれた事にサクラコは感謝しながら意識をしっかりさせ『浄化の織り手』を構える。

 

『……』

 

 彼女達の雰囲気を察した様に『マリー』が再び、逆さ十字に構え暫しの沈黙が流れた後に、三人は揃って駆け出す。

 

『……』

 

「おらぁ!!」

 

 『マリー』がサクラコへと向けて放った弾丸を自らを盾にする様に割って入り、自身の銃で受け止めるレイヴン9は大きな翼を最大限広げ、サクラコの姿を覆い隠すと頑丈に作ってくれた雇い主に感謝しつつ『マリー』に向けて銃弾を放つ。

 

『……』

 

 ヒエロニムスを通して供給される力で、既に先程のダメージを回復している『マリー』は軽い足取りでレイヴン9の攻撃を避けるが、そんな彼女の腰にクルクルとレイヴン9のワイヤーショットが巻きつきくんっと引っ張られる。

 

「こいつはちょっと重たいぞ?」

 

 レイヴン9との距離が縮まり、彼女の腰が入ったストックによる鋭い突きが『マリー』を襲い──直撃を避ける為に二丁拳銃の一つ……『マリー』の世界でヒナタの遺体から借り受けた銃がその手を離れる。

 

『……』

 

 自由意志など持たない筈なのに宙を舞う銃に手を伸ばす『マリー』……皮肉な事に信仰を捨ててもなお、残った友への想いが『彼女』の敗北を招いた。

 

「サクラコぉぉ!!」

 

「これで……眠ってください『マリー』さん!!」

 

 何処までも敵意ではなく、救われる様にと優しい祈りが込められたサクラコの弾丸が『マリー』に放たれ、『彼女』は最期にまだ生きているヒナタを見て儚げに微笑むと小さく祈る様に消えていくのだった。

 

「どうか……安らかな眠りを」

 

 

 

 

 

 

「えい☆」

 

 小石を放り投げる様な軽い声と共に放たれた隕石がバルバラ数体を纏めて消し飛ばす。

 圧倒的なまでの神秘の暴力を振るうミカは、バルバラとアンブロシアスというユスティナ聖徒の中でも特級の戦力達を相手に前にしてもなお止まることはない。

 無論、かつての彼女であれば優れた力があったとしても数の暴力に屈していただろうが──

 

「はっ!」

 

「お任せを!!」

 

 ──今はサオリとミネがいる。

 アリウススクワッドの面々もサオリを軸に、巧みな連携で立ち回りミカの撃ち漏らしを的確に片付けミネは桁外れの突進力でミカの隙を突こうとした敵を吹き飛ばす。

 

「あっははは!!なにこれ!すっごい戦いやすーい!」

 

「合わせているこっちの身になれ!」

 

『お二人とも仲が良いのは結構ですが、そろそろ向こうも仕掛けてきますよ』

 

 ハナコの言葉通り、動くことのなかった『ハナコ』が動き出し何か彼女達には分からないハンドサインを行うとバルバラが遮蔽物に身を隠しながら彼女達を囲う様に展開し、アリウススクワッドの面々がそれを阻止しようとするがアンブロシアスが文字通りの盾となって防ぐ。

 

『ミネさん!!』

 

「えぇ。皆様、私の周りに!」

 

 ミネの周りに全員が集まった瞬間、バルバラ達の一斉射撃が行われまるで銃弾の嵐の中にいる様な状況へと変化する。

 幸い、ミネの盾によって一方向分攻撃が防がれている為、瓦礫を利用しギリギリの安置を作る事には成功しているが長く保たない事はこの場の全員が理解していた。

 

「わー……待ってるの大変だから早く作戦お願いねハナコちゃん」

 

「お前な……いや、私も解決策が思い浮かばないから同じか。すまない浦和ハナコ」

 

「大丈夫です。どんな傷を負おうとも必ず!私が救護します」

 

 だからこそ、頼るべき相手を信頼すべき相手を彼女達は分かっていた。

 

『皆さん……』

 

 トリニティという居場所が嫌で、嘘偽りに塗れて誰もただの自分を見てくれない世界が堪らなく嫌だったから逃げて逃げて逃げて──それでも居場所を諦める事が出来なかった彼女は今、何処までもまっすぐな信頼を一身に受けていた。

 

 『先生』が居なければ、この信頼すら己で偽っただろう。

 

 彼或いは彼女が居なければ、己を偽り無機質に応じていただろう。

 

 補修授業部の皆と出会って居なければ、こんな出会いには恵まれなかっただろう。

 

 あぁ……自分は何処までも幸運だとそう微笑んでハナコは大人二人にも負けない頭脳をフル回転させる。

 

『──お待たせしました。これから作戦を通達します』

 

 その声は何処までも自信に満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 何かが起きる。

 やはりあの時居たバイステンダーの寵愛を受けし、便利屋68で無ければ望む神秘の輝きは得られないかと落胆しかけていたが、不意な直感が私に囁く──見逃すなと。

 

「もぅ……ハナコちゃんも無茶を言うなぁ!!」

 

 アレは……確か聖園ミカだったか。

 トリニティでも極めて優秀な神秘を誇る娘であったと記憶しているが、幾ら彼女と言えど囲まれ銃弾の雨に晒されている中、全てのバルバラを討ち倒すのは無理だと思うがさて。

 

「祈る……ね!」

 

 自らの頭上に神秘を持って呼び出した隕石を落とし、それをサッカーボールの様に蹴り飛ばしただと!?

 

『──!?!?』

 

「なるほどなるほど!!狙いはヒエロニムスか!!」

 

 ヒエロニムスは今現在、この場に展開されているユスティナ聖徒及び、『バイステンダー』が呼び出した生徒の力の起点となっている……無論、彼女らとて無能ではない為ヒエロニムスには厳重な守りが敷かれているが、隕石を蹴り飛ばすなどという奇行に対応出来る訳がない!!

 

「自我の喪失を狙ったか──!!」

 

『その通りですマエストロさん。不利な盤面は盤上ごと覆してしまえば良いのです。なので、貴方はグレゴリオを使ってヒエロニムスに追撃を』

 

「良いだろう。これを手伝えばもっと良い物が観れそうだからな!!」

 

 グレゴリオのフィナーレがヒエロニムスを襲い、全力で防御体勢を取ったヒエロニムス。

 これによりユスティナ聖徒と『バイステンダー』が呼び出した生徒は明滅を繰り返し、一時的に行動不能に陥る。

 

「いくぞ!!」

 

 そこへすかさずマダムの元人形達がバルバラに襲いかかり、一体一体討ち倒し踏破力に優れた生徒が『バイステンダー』の生徒への道を作り出す……あの不利的な状況を大人の力を借りずに覆すとは。

 

「……これが貴君の言っていた無限の可能性か」

 

 ヒエロニムスが落ち着きを取り戻し、力の供給が戻ったとしても既にあの『バイステンダー』の生徒の前には聖園ミカが辿り着いており、謝罪の様な言葉を口にした後に討ち倒す事に成功する。

 

『──!!』

 

 残されたヒエロニムスが今一度、生徒を呼び出そうとするが……それは遅いな。

 

「ハハッ!合わせろよミカ!サオリ!!」

 

「おっけー☆」

 

「あぁ!!」

 

 ──星の輝きに匹敵する程の神秘を放ちながら、三人の生徒がヒエロニムスへと攻撃を加え爆散する。

 

「素晴らしい……神秘とはこれほどまでの輝きを誇るか!!であれば裏である恐怖もまたより深く輝くという。今の私の複製ではこの輝きには届かない。だが、一つ試みを思いついた……あぁ、感謝しよう生徒達よ。貴君らの輝きは私の芸術を刺激する!!」

 

 万雷の喝采を貴君らには送ろう。

 私の目的は成った……続けると良い貴君らの物語を、そしていつの日か私の作品と競ってくれ。




戦力とメンツが濃すぎたトリニティ……

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