便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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 今回のイベントストーリー……やばくないです?僕はてっきり、レッドウィンターがレッドウィンターするシナリオだと思って気楽に読んでたんですが……とりあえず、まだ読んでない人は早く読みにいってくださいね!!

ところで、カイさんの煽りのやり口どっかで見た事あるなーって思ったんですよ。自分は先の展開を見据えている様な口振であえて、相手が大切にしているものを引き合いに出すやり方。

お前や、バイステンダー!!


最後の夜

「レイヴン諸君には本作戦時、有事に備えてキヴォトスの防衛を担当して貰う。空を飛ぶ箱舟は私に任せたまえ」

 

『……旦那。私らの力は護るよりも破壊向きだ。そっちに同行した方が得だと思うんだが』

 

「だからこそだ。確かに箱舟を落とさなければ全ては終わるかもしれない。だがね、我々が箱舟を落としたところで帰るべきキヴォトスが失われていては何も意味がない。この作戦は戦力を傾け過ぎる訳にはいかないのだよ」

 

 レイヴン9の不服さも理解はするが、君達は私が最も信頼出来る暴力装置である為、ペロロジラによって防衛室の戦力が削がれてる今、独自の判断で動けキヴォトスを守る事が出来る君達をこちらに引き抜く訳にはいかない。

 

『だけどな……聞いたぞ。その作戦、成功率が3%しかないらしいじゃねぇか』

 

「ほぅ。私達が失敗するとでも?」

 

『旦那のことだから成功するとは信じてる。けどな、私らが一番心配してるのは旦那だ……アンタは全てを見渡してるみたいに動ける凄い人だが、その為に自分を犠牲する事を厭わない。極論、世界が救えるなら自分の一人の命くらい安いと思う悪癖があるからな』

 

 神秘を得ているのだから以前よりは心配しなくても良いと思うのだが、どうやら私は誰が見ても危なっかしい存在らしいな……

 

『旦那が勝ち戦だと言ったのを忘れた訳じゃない。けどよ、そこにはちゃんと旦那も居るんだよな?』

 

 歴戦の傭兵集団レイヴン、その中でも一際優れているレイヴン9にしては随分としおらしい声ではないか。

 電話越しではあるが、彼女の立派な翼が萎れ俯いている姿が目に浮かぶよ……さて、道具に心配されている様ではまだまだだな私も。

 

「無論だ。私は便利屋68を去るつもりはないし、お前達がキヴォトスの青空を飛ぶのを眺めるのを止める気もない。全てをこの掌に収めたままキヴォトスを救おうとしている強欲者だからな」

 

 私も萬屋セラとして、物語の壇上に登った以上大団円のハッピーエンドには私の存在も必要不可欠だろう──此処まで来て、バッドエンドで締め括られる物語など認めんさ。

 

『ッッ、たくっ、この旦那は。わーったよ。アンタがそこまで言うなら私らがきっちりキヴォトスを守ってやる。だから生きて戻って来いよ』

 

「ククッ、約束しよう。無事に生きて戻りレイヴン諸君には特別手当をきっちり支払うとな」

 

『ハハッ!!じゃあ旦那の財布を空っぽにするぐらいはしゃぐとするか!!』

 

 通信が切れる。

 レイヴン9よ、特別手当を何かしらの高級料理、しかも食べ放題と思っていないかね?……まぁ、それを彼女らが望むのなら与えるのが雇用主のとしての務めか。

 

「……ねぇセラ。その口説いてる様な物言いは止めた方がいいと思うよ」

 

「口説く?そんなつもりは一欠片もないが」

 

「はぁ……」

 

 マジマジと私を見ながら意味深な深い溜息は止めたまえカヨコ課長。

 私はかけるべきと思った言葉を嘘偽りなく、かけているだけで誰かと恋仲になろうなどという気持ちは微塵もないのは真実なのだから。

 

「私は皆と一緒にアビドスに行くけどセラは『先生』のところ?」

 

「あぁ。よく分かったな」

 

「車の鍵を持ってない時点で察しがつくよ……ねぇ、良い機会だから聞くんだけどセラはもし、キヴォトスが滅ぶのなら最期に何をする?」

 

「ククッ、このタイミングで凄い事を聞くな君は」

 

 事と次第によっては皆の戦意を落としかねないぞ全く……まぁ、オペレーター担当になった者達は皆、最後の夜を過ごしているからウトナピシュティムの本船にいるのは我々だけだが。

 さて、キヴォトスが滅ぶのなら何をするかか……考えるまでもなく答えは決まっているな。

 

「そうだな。もしもそんな日が来るのなら私の持ち得る全てを使ってでも君達をキヴォトスから逃すとも」

 

「……そっか。じゃあ安心した」

 

「ん?」

 

 我ながら今の言葉の何処に安心する要素があったというのだろう?

 首を傾げながら横に立つカヨコ課長を見れば、彼女は髪を耳にかけながら小さく微笑みながら私の頬に手を触れながら答えた。

 

「明日、キヴォトスが滅ぼないって分かったから」

 

「……ククッ、君も人の事を言えないと思うがね?」

 

 私が言葉で口説いていたとするならカヨコ課長は行動で口説きに来ているではないか。

 

「ふふっ、私は信じてるだけだよ。『先生』を、皆を──セラを」

 

 ススっと手が進み、身につけている私のイヤリングに触れ優しく耳と一緒に撫でてからゆっくりともったいぶる様に離れるカヨコ課長。

 まるで自分を私に刻み込む様な素振りだったせいか、いつもよりも触れられていたという熱が残っている様な感覚が妙にこそばゆい。

 

「では私もその信頼に応えなければならないな」

 

 仕返しという訳ではないが、同じ様にカヨコ課長の頬に触れそのまま手を伸ばし、お揃いのイヤリングを同じ様に撫でれば擽ったそうに身を揺らしカヨコ課長の白い肌が僅かに赤くなるのが分かった。

 

「……やっぱり悪い人だねセラは」

 

「ククッ、私の本質はそう簡単に変わらないとも」

 

 互いの熱を惜しむ様に私達は離れ、それぞれ会おうと決めている者達の元へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カチ、カチと机の上に置いた普段使い用の腕時計が時を刻む音が私しか居ない空間によく響く。

 こういう音って使ってる時は全然気にならないのに、こうして一人になって気を休めたい時に限って凄く気になるんだよね。

 だからって、時を刻むのを止めたらその後が不便すぎるからやらないけど。

 

“ふぅぅ……緊張するな”

 

 高鳴る心臓と落ち着かない指はこういう時に私は英雄ではないと教えてくる。

 先生として生徒達を何があっても見守る覚悟を決めてはいるけど、今回みたいに世界滅亡の危機とかはちょっと聞いてない……生徒達を信じているから大丈夫だとは思っているけど、それはそれとして不安が拭えないのだ。

 

──もしも、私が失敗したらどうしよう?──

 

 私は皆よりとても弱くて、銃弾の一発でも当たれば死んでしまう。

 アロナが守ってくれるとはいえ、場所は上空75,000m上空だ……ボタンが一つ掛け間違うだけで私は死ぬ……私が死ぬのは正直、そこまで怖くはないけどそのせいで生徒達が道を違えるのが怖い。

 

“……向こうの『バイステンダー』が見せてきた生徒達の影がこんなにもチラつくなんてね”

 

 何も知らなければ皆を信じて、この震えを押し殺す事も出来たけどあんなにも分かりやすく、失敗した『私』の結果を見せつけられればただの人間である私の覚悟なんて揺らいでしまうというものだ。

 

“ははっ、皆の前なら隠せてたんだけどなぁ”

 

「──ほぅ。何が隠せていたのかね?」

 

“うわぁぁぁぁ!?!?”

 

「ククッ、良いリアクションをありがとう『先生』」

 

 い、いつの間に部屋に入って「つい先ほどだ。ちなみにノックをしたぞ」──あぁ、そうなんだってしれっと心の中を読まないでくれるかな!?

 

「いやなに、思いっきり顔にどうして此処に?と書いてあったからな」

 

“全く気が付かなかった……”

 

「真剣な表情で考え事をしていたのでは仕方あるまいよ。私で良ければ話を聞こうか?」

 

 明かりのついてない月明かりだけが頼りの部屋で、こちらを見て揶揄う様に笑うセラは元が男性であるとは思えないほどに美しいとこの時ばかりは思ってしまった。

 

“……それは……”

 

 でもそのせいでセラを『先生』として格好のつけたい相手と見てしまい、言葉に詰まってしまう。

 普通の生徒とは違うセラだからこそ、頼れる事もあるのに私はその選択肢を取れなかった──そんな私の見栄をセラは澄み渡った青空の様な蒼い瞳で見抜いたのか私に向かって歩き出し、ベットで腰掛ける私の後ろで此方に寄り掛かる様に座った。

 

「生憎と声は男の時の様にはいかないが、これなら君の目の前に君が守るべき生徒は居ないぞ」

 

 ……狡いなぁ、狡いよセラ。

 

“……私は完璧じゃないし、救世主じゃないからさ。こうやって一人になると不安なんだ。特に今回は向こうの誰かさんが失敗を突きつけてきてたからさ”

 

 気がつけば弱音を私は口に出していた。

 『先生』として不甲斐ない言葉を後ろの彼女はどう思うだろうか?なんて強い不安に駆られたけど、背中越しに伝わってくる熱がそんな不安を掻き消してくれる。

 

「私はまだまだこれからもキヴォトスを満喫するつもりだ。便利屋68の皆と一緒に騒がしくも愛おしい時間を過ごしリオやケイと取り留めもない話をして、レイヴン達と仕事を共にし関係を持った生徒達とそれぞれの日常を過ごす──無論、私にも恐怖がない訳ではないさ」

 

 ほんの少しだけ寄り掛かる重さが重くなる。

 

「だがね、それ以上にこれから送るであろう未来を私は見ているのだ。奇跡の様な美しい取るに足らない日常を過ごせると、当然そこには『先生』もいるから安心したまえ」

 

“……セラは怖くない?自分が間違えないか”

 

「ククッ、面白い事を聞くな『先生』!人は誰しも間違えるものだ。正解を選んだつもりでも見返して見れば間違いだったなんて事は良くある。だからこそ、間違いは許され我々は共に背中を預けているのだろう?──我々は今できる最善を選び続けるしかないのさ。『先生』がそれを間違えたとしても安心しろ。此処には私が居て生徒達がいる。『先生』一人の間違いなぞ、我々が取り戻してやるとも」

 

 あぁ……なんというかとてもらしいなと思った。

 バイステンダーは傍観者としてキヴォトスで綴られる物語を愛していたからこそ、セラとなった今でもキヴォトスの皆を愛して信じているんだ──この物語は必ずハッピーエンドに辿り着くと。

 

“そうだね。私は一人じゃなかった。そんな簡単な事を忘れていたよ”

 

「ククッ、致し方ないさ。不安という毒は容易く視野を狭めるからな」

 

“ふふっ、確かにそうだね。ねぇ、セラ?君が良ければこのまま話をしない?”

 

「ふむ?それは構わないが休息をしっかり取らなくて良いのかね?」

 

“睡眠も大事ではあるんだけど、今はなんか君とたわいもない話をしていた方が良い気がするんだ”

 

「──ククッ、それは光栄だな。では『先生』のキヴォトス最後の夜を同伴しようではないか」

 

 背中合わせで表情なんて見えないけど、きっとセラは満面の笑みを浮かべているんだろうなって分かる快活な声だ──君がこうして支えてくれて良かった。

 きっと私は今日この日の月明かりの優しさをずっと、この先未来永劫忘れないんだろうなと思えるそんな時間だった。

 

“それじゃあ、行こうか”

 

「英気は十分という訳だな──では、我々の青春の物語を取り戻しに行こうではないか」




以前、山海経にバイステンダーが居たらキサキの後ろに佇む怪しい大人になってると想定していましたが、今回の話を受けて本当に違和感なお前ってなってます。
イメージが強くなった分、キサキとの絡みがどうしようね……って感じですw書くかは不明ですが。

感想や此処好き待ってるぜ!!
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