便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

119 / 144
なんだこの最終回味あるサブタイは。当然、まだ続きます


プレナパテス決着──そして遠き旅へと

 プレナパテスという男の旅の終着点があるのだとすれば、それは間違いなくこの我々の世界なのだろう。

 ナラム・シンの玉座と呼ばれるこの空間で涙を流し、絶望に沈むプレナパテス世界の『シロコ』嬢を守る様に『先生』達の前に立ち塞がり、包帯が巻かれたあまりにもか細いけれど、その手は多くの神秘を守り続けた男の確かな力が宿る手を上に掲げ膨大なエネルギーを溜め込む姿は正に先生と呼ぶに他ないな。

 そして、『私』が守り札として託していたのであろう二人の生徒が今までの生徒よりも影に近い状態でプレナパテスを護っている……恐らく、蒐集した時にはほぼ死んでいて得られた神秘が少なかった者達なのだろう。

 

『──』

 

 滅びてなお、目の前の現実に抗うプレナパテスにはこれほど相性が良い生徒も居ないだろうな。

 小鳥遊ホシノの盾を蹴り飛ばし、無理やり防御体勢を崩すとそこへ容赦なく追撃を放つ朧な影はその詳細が不明ではあるものの拾い上げた栞に記録された情報が私に答えを訴えている……あれは『錠前 サオリ』だと。

 

「イテテ……おじさんの盾を蹴り破るとかちょっと足癖悪いんじゃない?」

 

“セリカ、シロコ!!ホシノを援護して”

 

「「了解!!」」

 

 本来はゲリラ戦を得意とする『錠前 サオリ』だがこの場では得意のゲリラ戦を展開するには広さが足りない以上、苛烈に攻め立てるしかないがその自己を顧みない動きは相互を的確にサポートしている此方の陣営との相性は悪く、今もセリカ嬢達の攻撃を受けて怯んだ所を小鳥遊ホシノのショットガンを受けてプレナパテスの近くまで吹き飛ばされている。

 

「ひか「アリス、危ない!!」わわっ、ありがとうございますケイ!!」

 

『──』

 

 そしてもう一人の生徒は的確にこちら側の最高火力であるアリス嬢の動きを封じる為に、乱戦の最中でも的確に片手持ちにした狙撃銃で狙っており、今もトンプソン・コンテンダーのリロードをしていたケイが気が付かなければ、頭に一発貰っていたことだろう……しかし、ケイよ随分と使い勝手の悪い銃を得物に選んだな。

 

「セラが傍観に回っていて良かったというべきですね……流石に『アル社長』相手はあの人にとって荷が重すぎる」

 

 そうでなくともこの身体ではキツいがね。

 朧げな姿ではあるが、私が萬屋セラである以上、決して間違えることのない相手『陸八魔 アル』が此処に来て最後の敵となるとは……ククッ、『私』めセンスが良いではないか。

 しかし、流石の『アル』と言えどアリス嬢の攻撃を防ぐ事に専念している為か、或いは多勢に無勢なせいかその身体には多くの弾丸が被弾し先程の『錠前 サオリ』同様に追い詰められていく。

 

“リロードの隙を狙われない様に常に連携を意識して!手の空いた人から火力をプレナパテスに集中、こっちの準備が終わる前にあの高エネルギーを撃たせないで!!”

 

 未来視の光景と同じ『先生』の指揮により、危なげなく戦いは進んでいきやがて『錠前 サオリ』と『アル』が膝を突き、大きな隙を晒した事で火線が一気にプレナパテスへと集中し溜めていたエネルギーが僅かに霧散し──その時はやってきた。

 

『発射準備完了!!先生!!指示をお願いします』

 

“了解!!お願い、リンちゃん!!!!!!!!”

 

『誰がリンちゃんですか。ああもう……ウトナピシュティムの主砲、発射!!』

 

 箱舟に突撃した時よりも、かなり威力が低下したものだがそれでも個人を狙い撃つには過ぎたる一撃がプレナパテスを飲み込み……空間を揺らす程の高エネルギーが消え去るのと同時に、二人の影生徒も消えゆっくりとプレナパテスが地面へと倒れ伏した。

 

「……見事だ『先生』この戦いは我々の勝利だ」

 

 拍手をしながら彼等の元へと合流し、『先生』の隣に立つ。

 

“……そうだね。でも──”

 

「感傷に浸るのなら後にしたまえ。ケイ」

 

「はい。リオから脱出シーケンスの権限を預かってきてきます。これを『先生』に譲渡するので皆さんを脱出させてください」

 

 流石はリオだな。

 この忙しさの中でもしっかりと脱出手段を用意しているとは。

 

「……それとセラ。貴女の分は必要ないでしょうとリオが言っていたのでありませんが、もちろん用意してるんですよね?」

 

「ククッ、安心したまえ。私にはやるべき事があるのでな」

 

「……そうですか」

 

 ジトっとした視線を向けられるが笑って受け流せば、呆れた様な溜息を吐かれてケイは『先生』へと視線を移し、脱出シーケンスの権限を渡す。

 だが、その間に気を持ち直したのか再び、ボロボロの状態でプレナパテスが立ち上がり『先生』の方を見てから私を見て、ほんの僅かにゆっくりと頭を下げた。

 

“ッッ……”

 

「尊敬の念を抱かずにはいられないなプレナパテス」

 

 生徒達は『彼』の行動に気が付かなかったのか攻撃を加えていくが、手早く『先生』が脱出シーケンスを使い次々と生徒達を脱出させていく。

 美食研究会、ゲーム開発部、ケイ、セリカ、ノノミ、シロコ、そして最後に小鳥遊ホシノを脱出させるとプレナパテスは『先生』へと何かを託すべく、一歩前に出た。

 

「……君の役目を果たすと良い『先生』」

 

“分かった。ありがとうセラ”

 

 一歩下がった私には二人の『先生』が最後にどんな話をしているのかは分からないが、骨の髄まで『先生』である彼らの事だ話すべきことなど生徒の事に決まっている。

 そう予想した私は合っていた様で、本来自分に使うべき最後の脱出シーケンスを『先生』は彼方の『シロコ』嬢に使ってしまった。

 

「ククッ、無事に引き継げた様だな」

 

“……うん。ほら、セラも早く脱出して。此処は危ないから”

 

 今、一番危険な状況に置かれているのは自分だと言うのに清々しいまでに成し遂げた顔をしているな『先生』……全く、生徒の為なら何処までも自己犠牲を厭わない危うい男だ。

 

「そんな男だから私もこの後を任せる事が出来るというものだ」

 

“セラ?一体何を……”

 

 『先生』の質問には答えずに今度こそ、倒れて崩れ落ちたプレナパテスの下へと歩いていき彼が身に付けていた仮面を拾い上げ、右目につけている鷹の仮面を外し其方を『先生』へと投げ渡す。

 

「私はこれから少々、旅に出てくる。『先生』がプレナパテスと決着を着けた様に私も決着を着けなければならない相手が居るのでな。その仮面は必ず帰ってくるという誓いの証として持っていてくれたまえ」

 

“……どうして君がそこまでするんだい?普段なら彼方は彼方、こっちはこっちってスッパリと分けそうだけど”

 

 アトラ・ハシースの箱舟が崩壊に向けて大きく揺れる……完全に壊れてしまえば私の目的も果たせなくなってしまうが、今は彼の質問に答えるべきだろうな。

 

「貴方がプレナパテスの思いを引き継いだ様に、私にも届けなければならない思い出があるのさ。それに……未来視を失う直前にプレナパテスが私を訪ねたのはきっと自分ではどうしようも出来ない『私』を救って欲しいからだろうなと。ククッ、同じ立場なら貴方もそう願うだろう?『先生』」

 

“……そうだね。君に少なくとも心を許した私なら君も救われて欲しいと願う。だって、友達には笑っていて欲しいからね!”

 

「ククッ、それは私も同様だ。だから──『先生』君も必ず生きて地上に戻ってくれたまえ。カイテンFX Mk.∞∞のプラモを渡す約束があるのだからね」

 

“ふふっ、そうだったね”

 

 互いに笑い合い、覚悟を決めてから私はプレナパテスの仮面を身に付けホルスの義眼を最大出力で稼働させる。

 アトラ・ハシースの箱舟は壊れているとは言え、多次元解釈を可能とし過去も未来も関係ない謂わば、『世界から最も浮いた存在』であり、私が生み出したホルスの義眼は異なる世界軸すらも見渡す事が出来る瞳……この二つが揃い、プレナパテスの仮面と『栞』という彼方の世界に縁深い品が揃っている今ならそう悪くない確率で彼方の世界を観測出来る筈だ。

 

「──見えたぞ」

 

 そして観測出来ているのなら、私もまたそこにいる──何故なら、世界とは観測主が居て初めて成立するのだから。

 それでも安定しない分は、アトラ・ハシースの箱舟の力を使い無理やり安定させ次元の隙間を開く。

 

「では行ってくる『先生』」

 

“いってらっしゃいセラ”

 

 軽い挨拶を交わし、私は次元の隙間へと飛び込んだ。




感想や此処好き待ってるぜ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。