便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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便利屋組との絆ストーリー的なものを


ハルカの思い出──飾られる雑草

「ふむ。買い出しを効率よく終わらせるにはあそこのショッピングモールで日用品を済まして、武器弾薬をブラックマーケットだな」

 

「す、すみません。買い出しの運転手をお任せしてしまって」

 

「なに男の時からの付き合いだ。馴染んだこいつをそう簡単には任せたくない……そう、私の我儘さハルカさん」

 

 ハンドルを指でツッ〜って撫でてるだけなのですが、セラさんがやると妙な色気があるというか私なんかに微笑みが向けられてるのがなんだか申し訳なくなります。

 

「あ、あのセラさんは消して欲しい人とかいますか?宜しければ今回のお礼として私が吹き飛ばしておきますので」

 

「ククッ、ハルカさんらしいな。生憎と私個人が消したいと思う人間は居ないから安心したまえ。それよりもっと肩の力を抜きリラックスして隣で適度な話し相手になってくれる方が私にとっては嬉しい限りだな」

 

 これが大人のいえ、今は生徒ですから元大人の余裕というやつでしょうか。

 私なんかの事を微笑ましそうに見て、ゆっくりと深呼吸を促す仕草は見慣れたものでほぼ反射的にふわっと全身の力を抜いてしまいます。

 

「シートベルトはしたかな?」

 

「は、はい。しました」

 

「よし。では行くとしようか」

 

 スムーズな動きで走り出した車は手こずる事なく本線に合流し、すぐに一定のスピードで走行を始めセラさんはミラーで他の車と周囲の治安を気にしながら、エアコンを程よい温度に調整してくれます。

 スピーカーから流れる音楽はクラシック音楽で、静かな旋律が車の心地よい揺れと共に眠りを誘いますがそれが私にはとても落ち着けるものなので、安心して地図を開き渋滞などの情報に目を通す。

 

「こ、この先は特に渋滞などもない様ですね。ヴァルキューレや学園の治安組織の出動も今のところはないです」

 

「それは良かった。D.U.地区はシャーレがある事もあって比較的に治安が良いが一度荒れれば手を着けられてないからね」

 

「ですね。この前もアル様達と一緒に近くに出来たケーキ屋に寄る筈だったのですが、美食?を名乗る方々が騒ぎを起こしたとかで結局、食べれませんでした」

 

「ふむ。この辺りのケーキ屋と言うと……あぁ、ショートケーキとモンブランが有名な店だったかな。トリニティから出店してるという」

 

「そ、それです!流石はセラさんですね。わ、私なんかが言わなくてもご存知でしたか」

 

「ククッ、アルバイトは雇い主に好かれてなんぼだからね。君達の口に合いそうな店は欠かさずチェックしているとも」

 

 確かにメモ帳などを片手にケーキ屋さん巡りをしているセラさんは不思議な事に想像が出来ます。

 セラさん、私なんかとは比べ物にならない綺麗な顔立ちですしきっとテラス席に座って、優雅にケーキと珈琲を飲んでいればとても絵になりそうですね。

 

「良ければ今度一緒に行くかね?勿論、アル社長達には内緒で」

 

「え、えぇ!?わ、私なんかがアル様達を差し置いてケーキ屋なんてお、恐れ多いです」

 

「なにアル社長達に最高の土産を贈るための下見だと思えば良いさ。ハルカさんはいつも、爆弾を仕掛ける時に最適な場所を調査してから仕掛けてくれるだろう?それと同じさ。ちょっとばかり、私の方から駄賃としてケーキをご馳走するがね?」

 

 今度はまるでムツキ室長が悪戯を成功させた時みたいな無邪気な子供っぽい笑みを見せるセラさん。

 出発の時の艶かしさとはまた違う横顔も彼女の魅力なのだろうと思ってしまい、気がつけば私は楽しみですねと返事をしていました。

 

「あ、あの!セラさんが迷惑だと感じればいつでもお駄賃とかは払いますので」

 

「迷惑?私がかね?……ククッ、ハハハ!!面白い事を言うものだなハルカさんは。私が君達をいや、ハルカさんを迷惑だと思う事はこの先一生ないとも。なにせ、君達は私にとって掛け替えのない存在だからね」

 

 掛け替えのない存在──その言葉が私には勿体無いと分かっているのに否定する言葉は出てきませんでした。

 だって、その言葉は私が欲しいものだから。

 烏滸がましいとは思っていますし、相応しくないとも思っています……けど、本当に大切なものを噛み締めるように笑顔で話すセラさんの姿を見てしまえばなにも言えません。

 

「おっと。先ずは簡単な買い物を済ませようかハルカさん」

 

「は、はい!」

 

「む?気合い十分というやつだな。良いぞ」

 

 駐車場に車を停めて手が空いていたセラさんが優しく私の頭を撫でてくれました。

 髪の毛越しから伝わる彼女の温かさに思わず笑顔になるとセラさんも笑顔になってくれ、今日はこのまま平和に終わりそうだなーなんて、思ってしまったのが悪かったのでしょう。

 

「きゃぁぁ!?」

 

 買い物を終え、一度昼ご飯でも食べようかとセラさんとお話をしている時に響き渡る悲鳴と聞き慣れた爆音に急いで階下を見下ろしてみれば、入り口だった場所は倒壊した柱で塞がれ、モクモクと黒い煙が立ち上っていました。

 あの煙の量からして爆破に使われた爆薬は必要最低限ですね……建物の崩壊には関与せずに的確に入り口を封鎖できる柱を選んだ辺り爆弾の知識がありそうです。

 

「ハルカさん。客の中に困惑していない者達を数人確認した。恐らくヘルメット団だと思うが」

 

「そ、それなら……最近、噂に聞くボムボムヘルメット団でしょうか。爆弾の設置に無駄がありません」

 

「ふむ……流石に未来視を使っても規模が規模だ。詳細を確認するより私の脳みそが焼き切れるのが先だな。だが、連中の狙いが分かったぞ。このショッピングモールに併設されている銀行を狙った強盗だ」

 

「な、なるほど。確かに普通の銀行を狙うよりは警備が手薄ですし、爆弾で混乱している間なら小規模でも問題ないですね」

 

 以前ならこういう知識はカヨコ課長にお任せしていましたが、セラさんのお陰で色々と学習出来ましたので多少の想像力なら上がったと実感出来ます。

 しかし、例え銀行強盗が上手くいっても入り口を封鎖してしまった以上脱出口が限定されて確保が容易になってしまうのではないでしょうか?

 

「……このまま事態の解決を待っても良いが、我々は一応犯罪者。ヴァルキューレに見つかると厄介だなハルカさん」

 

「そ、それを言うという事は作戦があるんですねセラさん。任せてください!どんなご命令でも命に代えて実行しますので!!」

 

「ククッ、君が命を賭けるまでもないさ。先ず作戦だが──」

 

 こうして私達二人だけの戦いが始まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ、金は持ったな!!急いで逃げるぞ!!」

 

 ボムボムヘルメット団のリーダー、赤いヘルメットにとあるゲームの爆弾がモチーフのキャラクターシールを貼った彼女が現金のたっぷりと入った鞄を掲げると同じようなシールを貼った黒いヘルメットの者達数名がバックを掲げ、現金郵送組を守る数十名の団員達が続く。

 彼女達、ボムボムヘルメット団は潰れたり解散した組織を吸収合併した事で規模が大きくなった事で元々の爆弾知識も相まって、数々の犯罪を成功させてきた者達である。

 

「へへっ、これでまた美味い飯と上等な寝床が確保出来るぜ……いよいよ私らの天下って訳だ!!」

 

 故に彼女達は慢心していた。

 自分達を狩る事が出来るアウトローがすぐ側にいる事など想像もしていなかったのだ。

 

「ガッ!?」

 

「ん?」

 

 彼女達の脱出経路は屋上だった。

 D.U.地区は比較的ビルが多く、建物が高層化しやすくこのショッピングモールもかなりの大きさを誇る為、屋上から周囲の建物へパルクールの要領で逃げるつもりだったのだが、その道中の階段で先ずは最後尾を走っていた者が一人物陰からの不意打ちで昏倒し、その声を聞き足を止めてしまった者達も次々と不意打ちを受け、昏倒していく──だが、人数が多い彼女達はそんな末端の出来事には気がつかない。

 

「よしよし、もう少しで屋上だぞ!」

 

 屋上へと続く階段へと足を一歩踏み入れた瞬間、リーダーのバイザー部分は最も容易く砕け散りゴロゴロと階段を落下していった。

 

「ククッ、残念だが此処は通行止めだ。別の道を通って貰おうか?」

 

「リーダー!?!?!?」

 

 脱出経路を先読みしたセラの一撃によって、昏倒したリーダーに驚きを隠せない団員達は初動が遅れ、ただでさえ狭い階段という戦場では人数の多さが仇となりセラの次なる攻撃を避ける事が出来なかった。

 

「そら」

 

 すぐ近くにあった買い物カートが蹴飛ばされ、氾濫した川のように迫る買い物カートに慌てて飛び退いて落下したり、飲み込まれて後ろに居る者達を巻き込んだりと次々と悲鳴が上がる中、どうにか後方でその濁流を耐えた者達が武器を手に取り、ニヤニヤと笑っているセラへと襲い掛からんとするがその隙だらけの後頭部にゴリッと銃身が押しつけられる。

 

「死んでください死んでください死んでください!!」

 

 不意打ちしながら階段を登ってきたハルカは次々と、慣れた手つきでボムボムヘルメット団を処理していき、たった五分後にはそれなりの勢力を誇ったボムボムヘルメット団は全員、階段周辺で伸びる事になるのだった。

 

「大軍を相手取る時は閉所で優位性を潰し、連中のメリットをデメリットへと変える。次があるなら覚えておくが良いヘルメット団よ」

 

「さ、流石ですねセラさん!それでえっと、此処からどうやって帰るんですか?」

 

「ん?屋上があるだろう?」

 

 何を不思議な事を言っているんだ?と言わんばかりのセラの態度に小首を傾げながら、ハルカもセラに続いて外に出るとタイミング良くヘリの音が聞こえてきて、二人の目の前に着陸すると扉が開かれよく知る人物が姿を現した。

 

「ん?なんだもう終わらせしまったのか旦那。ちぇ、折角なら一緒に暴れられる良い機会だと思ったんだが」

 

「ハルカさんも居たのでね。戦力は十分だったとも」

 

「なるほど。確かにハルカの姉御なら適任だわ。さ、お二人とも乗ってくれ。公僕が来るより早く帰りますよ」

 

 あぁ、なるほどとハルカは思った。

 自分に作戦を説明している間に片手で、端末を弄っているとは思っていたが脱出手段として子飼いのレイヴン達に指示を出していたんだと。

 

「あ」

 

 そんな中、ある物に気がついたハルカはすぐ近くのフェンス近くまで駆け寄りその何かを大切そうに持ち上げる。

 

「それは……雑草かね?」

 

「は、はい。多分、ボムボムヘルメット団が侵入してくる時に踏んでしまったものかと……その、あの」

 

「ククッ、持ち帰りたいのだろう?構わんよ。確か私の机の上にまだ使ってない植木鉢があったはずだ」

 

 不安そうな面持ちでセラを見上げていたハルカの表情が一気に花が咲いた様な明るさに変わり、セラはそんな彼女の頭を優しく撫でながらヘリの中へとエスコートする。

 無事にヴァルキューレが駆け付けるよりも早く飛翔したヘリは便利屋68の事務所まで、戻り熱りが冷めた頃にセラは車を取りに行くのだった。

 

「……セラさん」

 

 そんな思い出の雑草は今、青々しく元気を取り戻しハルカが一人で世話をしている。




ハルカって、子犬感あるよね。近所に住んでるめっちゃ吠えるチワワを連想させます。

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