便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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わっぴー!!わっぴー!!わっぴー!!


アウトローと超人を目指す者

 便利屋の空気が重い……重すぎるわ。

 三人が三人ともセラとの繋がりが強い品を眺めて、深々と溜息を吐いたり目のハイライトがどっかに旅立ってるからちょっと怖くて窓の外を眺めてるのだけど私も落ち込んでると思われてるみたいで誰も話しかけて来ないわ。

 この状態でもどうにか仕事はしてくれるから便利屋は回っているけれど、ずっとこのままって訳にもいかないわよねぇ……社長としてどうしたものかしら。

 『先生』を頼るにしても一回、顔を出しに来た時に凄く気まずそうな顔をしてお弁当だけ置いて帰って行ったし。

 

“……私に出来る事があったらなんでも言ってね。セラに君達の事を託されているから”

 

 『先生』の律儀なところとかセラのしっかりと託していくところは嫌いじゃないけど、まるで遺品みたいにセラが着けてた仮面を見せるのはちょっと駄目だと思うのよ。

 託された事を分かりやすく示す物だとは思うわよ?でも、今更『先生』を疑う事はしないから素直に面倒を見るように頼まれたぐらいで済まして欲しかった……『先生』が帰った後、空元気すら失ってしょんぼりする皆を見たくなかったもの。

 

 そんなすっかり暗くなってしまっている便利屋68の空気に私が頭を悩ませていると、ピコンという通知音がすぐ近くから鳴り、それが自分のスマホであった為確認して見ると珍しい人からのモモトークだった。

 

『今夜、D.U.にあるこの場所の屋台で一杯どうですか?出来れば貴女一人だと嬉しいのですが』

 

 私達はまだ学生なのだけど?とツッコミを入れたくなる文章を送ってきたのは、連邦生徒会防衛室長の不知火カヤだった。

 まぁ、特に断る理由もないし良いわよと返信してっと……今の事務所からは少し遠いわね此処。

 

「……ちょっと出てくるわね」

 

「ア、アル様どちらに?」

 

「ご指名が入ったのよ。相手は防衛室長だから余程の事がない限り問題はないと思う」

 

 一応、犯罪者である私達を捕まえるなんて算段もあるかもしれないけど、権力者である彼女が一々私だけ呼び出す手間を取るとは思えない。

 まぁ、セラ仕込みの策略だとしたらあり得るけどそれならそれで騒ぎを起こして『先生』を動員させれば少なくとも秘密裏に動きたいであろう彼方の思惑は潰せるだろうし、何より今此処で不知火カヤと会うって皆に伝えたから何があっても大丈夫ね。

 

「一人で大丈夫?」

 

「そういう指定だからね。だから騒ぎがあったらよろしくね」

 

「はーい。いってらっしゃいアルちゃん!」

 

「行ってくるわねムツキ」

 

 皆に手を振って事務所を出ると、少し冷えた風が私の頬を撫でていく。

 

「……少し冷えるわね」

 

 いつも羽織っているコートに袖を通し、ゆっくりと夕暮れの道を目的地まで歩いていく。

 何か有意義な話が出来れば良いのだけどね。

 

 

 

 

 

 

「あら。早いのねカヤさん」

 

「それは此方の言葉ですアルさん」

 

 なんの変哲もない屋台に用意されている丸椅子に腰掛けているピンク髪の背中にもしやと思って声を掛けてみたら、私の予想通りの人物が出汁の染みた美味しそうな大根と卵、そして厚揚げを食べていた。

 暖簾をくぐって隣に座ってみれば、黄金色に輝くおでんがグツグツと煮られていて反射的に唾を飲み込んでしまったらクスクスと笑われてしまったわ……恥ずかしい。

 

「此処のおでんはこだわりの出汁で作られているからとても美味しいのでよく来るのですよ。ただまぁ、大将がご覧の通りの強面で無愛想なものだから客足がよろしくないのですが」

 

「……」

 

「ムスッとしてるけど良いの?」

 

「いつもの事ですから。あぁ、それと私の事はカヤで良いですよアルさん」

 

「それなら私もアルで良いわ。折角の二人きりだし、こんなにも美味しそうなおでんを前に堅苦しいのは疲れるもの……という訳で、大将!!私にも彼女と同じ物をくれるかしら!!」

 

「あいよ」

 

 わっ、凄い渋い声の猫大将ね……柴崎ラーメンの大将と並んでいたらそういう組織みたいに見えるかも。

 手慣れた手つきで皿に盛られたおでんは、その匂いだけで私の食欲を刺激するもので目の前に置かれた瞬間、割り箸を割って先ずは大根に箸を入れてみればしっかりと煮られて簡単に四等分にする事ができ、一欠片口に運んで見れば出汁の風味と大根の味が口一杯に広がり熱々の汁が冷えた体を手軽に温めてくれる。

 

「はふっ……んっ、美味しいわ!!」

 

「ふふっ、気に入っていただけたようで嬉しいですね。ねぇ、大将?」

 

「……」

 

「客商売なんですから愛嬌は大切ですよ大将。まぁ、こんな無愛想な大将は置いておいて……アル、あの人の事を教えてくれませんか?」

 

「あの人……あー、セラのこと?」

 

 私達で共通している事なんてセラの事だと思っていたけど、やっぱり今回はそういう話みたいね。

 

「はい。既に察してはいると思いますが、私はあの人を超え従えるのが目的です。その為に逐一姑の如く、人の仕事に茶々を入れてきたりコソ泥の様に人が隠している秘蔵の品を飲みやがるあの悪魔の暴挙に耐えてきたのです……!!」

 

 あ、あら?なんか思っていたよりも恨みを買ってたりするのセラ?会議とかでこの二人のやり取りを見た時は凄く仲良さそうで、気を許し合ってる友達みたいに思えてたんだけど台パンすら厭わない様子を見るに違うのかしら……

 

「んんっ、失礼乱れましたね。まぁ、それなりの因縁があるという事は分かっていただけかと思います」

 

「え、えぇ。そうね」

 

「防衛室のコネを使って可能な限り彼女の足取りを調べましたが、確認出来る最後の記録はエデン条約後のみ。それ以前、何処でどんな暮らしをしていたのかそもそも何処の学園に所属していたのか不明。あぁ、一応、書類上の記録ではゲヘナ学園に所属していた事にはなっていますけどね?」

 

 『先生』がやってくれた偽装もバレてる訳ね……んー、別にセラがバイステンダーであった事を話すなとは言われていないけれど折角、セラという実績を作り上げてきたのにほんの一雫と言えど墨を落とす様な行為はしたくないわね。

 

「彼女を超える為に一つでも多くの情報が欲しいのですよ。お礼なら幾らでも用意しますので……教えていただけますか?便利屋68社長陸八魔アルさん」

 

 なるほどね、セラを超えるなんて宣言するだけの事はあるわ。

 場の空気を作り、整え相手の警戒心を解きほぐしたのちに逃さないと言わんばかりの圧を放ち場の支配者が誰なのかを示す……隣で何度も見てきたやり方だ。

 

「セラはね、うちの大事な大事なアルバイトなのよ」

 

「ッッ!!」

 

 防衛室の情報というやつで元々、うちが貧乏なのを知っているから金銭を餌にすれば釣れるとでも思ったのなら随分と甘く見られたものね。

 私達、便利屋68は裏社会にも名を馳せる立派なアウトローなのよ?たかが、金銭如きで仲間の情報を吐く訳ないわ。

 

「セラを超えると言ったわね。なら、彼女が隠し通しているものを見抜くのも必要な事じゃなくって?まぁ、私を狙ってこの話を持ってきたのは賢かったわよ。他の皆に聞いていたら恐らく、銃弾の一つでも支払われていたでしょうから」

 

「……ふふっ、やはり貴女は腑抜けてはいなかった様で嬉しい限りですアル。あの人を超え、真に超人へと至るにはあの人が築き上げたもの全てを踏破する必要がありますからね。たかが帰って来ていない程度で揺らぐ相手では物足りないと考えていたところです」

 

「ふぅん。中々、強気ねカヤ。でもそう簡単に私達便利屋68を倒せると思わない事よ」

 

 またセラはカヤに何をしたのかしらね……私の神秘を前にしても怯まないどころか楽しそうに笑みを浮かべる様な子を育てちゃって。

 しかもこの私を貴女を超える為の踏み石程度にしか思ってないわよ。

 

「もちろんです。やはり今日ここで話せて良かった。超えるべき壁というものを知れたのはとても大きい」

 

「私も話せて良かったわ。何も知らず貴女を相手にするのは大変そうだったもの」

 

「ふふっ。貴女の中でも高い評価を頂けた様で何よりです……そのお礼という訳ではありませんが近々、私達は事を起こします。阻止したければ好きな様にしてくださいね」

 

「防衛室が犯罪宣言とかして良いわけ?」

 

「あの人を超える為ではありますが、同時にキヴォトスにとっても良い事のつもりですので」

 

「……はぁ、どうせこの場で貴女を撃っても意味はないのでしょうね」

 

 こういう手合いが自分の計画を仄めかす時は大抵、準備も何もかもが完了している証で自分一人が脱落しようとも計画に支障は無いと分かりきっている時だと相場が決まってるわ。

 まぁ、闇夜に紛れて四人ほど隠れているみたいだし私が何かしても彼女らが守るつもりなのかもしれないけど。

 

「だからまぁ、今は美味しいおでんでも食べましょうか。カヤ、まだお腹は空いてる?」

 

「そうですね。湯呑み一杯分くらいは付き合いましょうかアル」

 

「ふふっそう来なくっちゃ!大将、大根二人分くれるかしら!!」

 

「あいよ」

 

 この後、二人でセラに対する愚痴を言い合って凄く盛り上がった……今度、皆を連れて此処のおでんを食べに来ようっと、勿論、セラも連れてね。




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