便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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原作崩壊の音が聞こえてくる今日この頃、皆様はどの様にお過ごしですか?


超人に集う狐達

 「ガッ……」

 

 力なく崩れ落ちる男は周囲に倒れ伏す同胞達を見つめ、その中で己が最も信頼し重用していたジェネラルの姿を見て奥歯が砕けるほどに悔しさを噛み締める。

 巨大な企業を創り上げた、当然真っ当ではない手段に手を染め上げて時に人を恐喝し、大切な物を奪い去り果てには命すらも奪い、己が創立した会社をキヴォトス一の大企業にともすれば忌々しい連邦生徒会の地位を簒奪し世界(箱庭)を思うがままに出来るほどに。

 一度は手が届きかけたのだから、今度こそと雌伏の時だと再び裏から手を回そうとしていたというのにどうして、今、自分は──栄えあるカイザー・コーポレーションのプレジデントが地に伏せている!?

 

「……予定時刻より三十分ほど速いですね。どうですか?勘を取り戻す事は出来ましたか?FOX小隊の皆さん」

 

 恵まれた環境、それを一から作り出した男の全てが崩れ落ちていく怨嗟の中でそんなものは路地裏の犬でも喰わせておけば良いと思っている女の冷淡な声が響き渡ると、たった四人でカイザーの兵士を退けた黒服の少女達が狐を模した服と同じ夜に馴染む黒色の仮面を外す。

 

「あぁ。良い歯応えだった」

 

「そうですか。それは良かったですユキノ」

 

 倒れ伏したプレジデントには聞き覚えのある声であったが記憶の中の声とは差異が大きく闇の中から歩いてくる声の主が窓から射し込む月明かりに照らされ顔が明らかになるまで正体に気がつく事が出来なかった──だからこそ、彼は本来なら取るに足らない山羊の一突きで崩れて落ちたのだが。

 

「なっ──お前は」

 

 連邦生徒会の白い制服を黒に染め上げ、差し色として金色を加えると言った実に悪役チックな装いではあるが、裏地には澄み渡る青空と同じ青色が描かれているのは彼女の秘めたる想いの現れだろうか。

 

「おやその反応は今に至るまで襲撃者が誰だったのか分からなかった様ですね。ふふっ、あのプレジデントの瞳も随分と曇ったものですねぇ」

 

 悪意を隠そうとせず、倒れ伏した者への敬意なんて微塵もなく嘲笑うその姿は彼女を此処まで育て上げてしまった人物と似通っているものだ。

 

「仕方ないから自己紹介をしてあげましょう。私は不知火カヤ……形骸化して久しい連邦生徒会を生まれ変わらせる『超人』です」

 

 右手の指を一本立てて、口元に添えニコリと笑う顔はとても愛らしいものであったが、プレジデントはその奥底に隠された明確な悪意を感じ取り恐怖した──大企業を作り上げた大人である彼が。

 最も簡単に両者の格付けは終わり、平伏するしかないプレジデントに興味を無くしたのかカヤは浮かべていた愛らしい笑顔から無機質なものに表情を変える。

 

「プレジデント。貴方が築き上げた財産は私が利用してあげます──あぁ、防衛室からの増援が来た様ですね。貴女達は速やかにカイザーの技術を接収してください。情報統制は完璧ですが手早く、一時間以内に終わらせてくださいね」

 

 手早く部下達に指示を出し終えたカヤは狐の仮面を付け直したFOX小隊を引き連れてカイザー・コーポレーションの社長室から出て用意していたリムジンへと乗り込む。

 その視界にはもはや、自身の部下達によって取り押さえられるプレジデントやジェネラルの姿など一欠片も映り込んではおらず、カヤにとって彼らはもう道端の石と同然であった。

 周囲には完全に自分が信頼を置く者達しか居なくなったことで漸く、彼女は張り詰めていた気を解しリムジンの柔らかな背もたれに身体を預けた。

 

「ふぅ……あー、疲れたぁぁ!!カヤ防衛室長、ちょっと人使い荒すぎ!!」

 

 どかっと少し乱暴にリムジンのふわふわとした座席に身を預けるFOX3クルミは、多くの弾痕が残る盾を下ろして衝撃を受け止めていた掌をマッサージしているが言葉とは裏腹にあまり疲れた様子は見せていない。

 

「まぁねぇ……まさか私達だけでカイザー制圧をやらされるとは」

 

 そんなクルミの隣に座るのはカイザービルの真向かいに陣取り、ずっと狙撃を行っていたFOX4オトギで、彼女はずっとうつ伏せになっていたために拭えなかった汗を拭う。

 

「結構二人とも楽しんでいる様に見えたけどなぁ?」

 

 文句を溢す二人に笑顔で話しかけるのはFOX2ニコで、今回はクルミと組んで乱戦の中的確な戦い振りを見せていた。

 

「そ、そりゃまぁ久しぶりの活動だし、カヤ防衛室長からは気にせず暴れて良いって言われてたから……」

 

「ふっ」

 

「あー!今、鼻で笑ったでしょユキノ!!」

 

 最後の一人、FOX1のユキノはそんな賑やかな彼女達を見て、一家の大黒柱である父親の様に笑っているがこの戦いにおいて、最も派手な立ち回りを見せたのは彼女であり、たった一人でジェネラルを相手しながら彼が率いる一個小隊すらも潰す程の実力を持つ。

 だが朗らかな笑顔を見せる彼女に釣られてかFOX小隊の面々も緩い空気を醸し出す──そこにはもう、自らの在り方に悩み途方にくれた迷子たちの姿はなかった。

 

「一仕事終えたというのに賑やかですね貴女達は」

 

 そんなFOX小隊を新たに導く存在となったカヤは談笑を始めた彼女達を見ながら、何処からともなく取り出した珈琲を飲んでおり、言葉とは裏腹に彼女もリラックスしている事は明らかだった。

 

「ふふっ、嬉しいんですよ。以前は仄暗い仕事ばかり命じられていましたけど、あの人と関わる様になって変わった貴女から命じられるのは全てキヴォトスの為だと分かるものですから」

 

「……既存の枠組みを壊す行為は悪ですよニコ」

 

「だとしても貴女は突き進む価値があるから選んだ。古巣を敵に回すとしても」

 

 ユキノがジッとカヤの目を見る。

 そこには確かな信頼があり、以前なら決してそんな視線を向けられる事はなかったなとカヤは自嘲してからFOX小隊一人一人を見た。

 

「覚悟は十分と。理解しました……では着いてきて貰いましょうか。私のキヴォトス再編計画に」

 

 連邦生徒会長という眩しすぎる光に導かれ、その光を失ったが故にそれぞれの道に迷うことになった迷子達は同じく迷子であった一人の超人の元に集まり、一つの大きな群れとなった。

 

「……宣戦布告は済ましたからねアル。あの人なき今、私を止めたければ貴女も腑抜けた手駒に喝を入れる事です」

 

 リムジンは夜のキヴォトスを進む。

 キヴォトスに革命の朝を迎えんとする者達を乗せて。

 

「あ、そうだ。打ち上げの焼肉屋、予約してあるけど皆来るよね?」

 

「……聞いていませんけど?」

 

「あれ?言ってなかったっけ?まぁ、今言ったから!!」

 

「オトギ……まぁ良いでしょう。幸い、事務仕事は終わってますからね」

 

「ふぅ!流石はカヤさん。ノリがいいね」

 

 ……どうやら今夜の行き先は焼肉屋の様だ。




アビドス編、どうしようね?

感想やここ好き待ってるぜ!!
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