便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア   作:マスターBT

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FOX小隊にちょっとだけオリジナル設定組み込んだ。

話が進む度にカヤが誰だお前!ってなる……


悪と罵られる事になろうとも

「本日はお時間をいただきありがとうございます。ドン・アランチーノ」

 

「ふっ、新たな連邦生徒会代行からのラブレターを受け取らねば無作法というモノだ」

 

「ふふっ。嬉しいお言葉ですが、貴方はあくまでビジネスパートナーですので」

 

「これは手酷くフラれてしまったものだな」

 

 流石はブラックマーケットを中心に勢力を確かなものとしているだけはあるアランチーノファミリーのドンですね。

 此方を品定めする様な視線は気に入りませんが、まぁそれは此方も同じですので許すとしましょうか……珈琲の趣味も良いですし。

 

「私が視線を交わすべき相手は既に定めていますからね」

 

「……ふむ。小綺麗な理想に酔っている哀れな小娘かと思ったがその実、恋する乙女であったか」

 

「ぶっ!?」

 

 な、なにを言ってるんですかねこの老人は!?

 確かにあの人の在り方には興味が唆られますし、お小言が多いとは言えそれら全てが私の選択に間違いがある事を気付かせようとしているものでそのもう少し言い方に気をつけていただければ、あの優しい青空の瞳に免じて従うのも吝かではないと思った事も沢山ありますが。

 

「……ンンッ、私はあの人を超えたいんですよ。全てを見透かした様な目で先の未来を見続けているあの人に()()()()()()()()()と叩きつけたいんです」

 

 思えば連邦生徒会長もそうでしたね。

 私の前を歩く人達は皆、私が見通すことの出来ない未来を見据えて動きその悉くを解決してみせた超人ばかり……はぁ、本当に人の劣等感を刺激するのが上手な人達ですよ。

 

「その為に我々の様なマフィアを抱き込むと?」

 

「えぇ。綺麗な道を歩み続ける資格はもはや私にはありません。ですが、正道だけが結果を得る最適解ではないと私は考えています」

 

「……だがしかし、人は悪を拒絶する生き物だ。不知火カヤ、お前が歩む先に万雷の喝采などないぞ」

 

「案外お優しいんですねマフィアというものは」

 

「ふっ、我々とてただ暴力を振いたいが為に集まっている訳ではない」

 

 まぁ、そういう連中が多い事は否定しないがなと続けて珈琲を飲むアランチーノの姿に一つの悪という理想系を見出した気がします。

 だからでしょう、この人には少しだけ胸の内を明かす事に決めたのは。

 

「恐怖がない訳ではありません。自分が裏切り者としてキヴォトスの歴史に名を刻むかもしれない道を歩んでいる自覚はありますからね」

 

「ふむ」

 

「──ですが、きっと私の歩く薄氷が砕け散っても……いえ、それよりも早くあの人は私のこの手を掴んでくれると信じているのですアランチーノ」

 

 こうして口に出してみるとやれやれと呆れ切った風を装いながらも、口元は楽しげな笑みを浮かべて今まで出会って来た誰よりも真っ直ぐに私を見つめるセラさんの姿が容易に浮かんでくるのだから、我ながら単純なものだなと思ってしまう。

 

「ハッハハハ!!なるほど、随分と悪い人だなその相手は」

 

「そうですね。悪人ですよあの人は」

 

 ──互いに一頻り笑った後に、私とアランチーノファミリーの間である程度の情報共有と停戦協定を主軸とした同盟関係が結ばれる事になった。

 

 

 

 

 止まっていた時間が再び、動き出したのを感じたのはキヴォトスの空が赤く染まった日、カヤ防衛室長の命令でミレニアムの廃墟での戦闘後一般市民達を助けている時だった。

 

「大丈夫か?」

 

「うぁ……ありがとう……お姉ちゃん……」

 

「……」

 

 戦闘の余波で崩れてしまった建物に生き埋めになっていた少年を助け、ありがとうと言われた瞬間、胸に懐かしさと共に暖かさが宿ったんだ。

 SRTで活動していた時は聞き慣れたその言葉、カヤ防衛室長の命で汚い行為に手を染めていた時には決して聞くことのなかった言葉──それがどうしようもなく絶望し、冷め切っていた私の心を溶かしたんだ。

 

「あぁ……無事だったのね!!」

 

「お母さん!!」

 

 助けた少年を涙ぐみながら、抱きしめる母親とそんな二人を抱きしめる父親。

 彼らから目を外せずにいると私がジッと見ている事に気がついた父親が涙を拭いながら、此方に歩いて来て私の手をまるでとても有難いものの様に両手で包み込んだ。

 

「ありがとうございます!!貴女のお陰で息子は無事に戻ってこれました!!」

 

「……あ、あぁ」

 

「何度お礼を重ねても足りませんが、本当にありがとうございます!!」

 

 手を通して伝わる熱が、折角拭ったのに溢れ出す涙と共に告げられる言葉がとても熱くて──思い出したんだ。

 

『私は誰かの為になりたかったからSRTの門を叩いた』のだと。

 

 その瞬間、理想を守る為に手段に執われ、良い様に使われる道具として心を凍らせ閉ざしていた自分がどうしようもなく小さく下らない存在に思えてしまった。

 始まりの理想は綺麗でもいつの間にか私は、SRTに設けられた特権に酔いしれ自分が責任を負わずとも勝手に背負ってくれる連邦生徒会長という大きな背に全てを乗せる事が当たり前な環境に甘え──気が付けば理想よりも特権を手放さない事に執着してしまった。

 

『道具であると自らを定めたのであれば黙って従う事ですね。それが出来ないのであればその頭で考える事です。以前なら兎も角、今の私は愚鈍な者は好みませんよ』

 

 漸く、貴女の言葉の真意を理解したカヤ防衛室長。

 いつの間にか私の手を握り締めていた父親は家族と共にこの場を離れており、ポツンと残された私は未だ熱の残る両手をズキズキと痛む胸に当てていた。

 

「──ユキノちゃん?」

 

「ニコか」

 

「どうしたの?ぼーっと立ってるなんてらしくってえ!?ユキノちゃんが泣いてる!?ど、どこか怪我でもした!?」

 

 そう言われて手を添わせてみれば、確かに濡れた感触があった。

 

「……ニコ」

 

「何処が痛いの?あ、救急キットを持って──」

 

「今まですまなかった。隊長である私がこんなにも不甲斐なければ苦労をかけただろう」

 

「ユキノちゃん?」

 

 胸が痛い。

 思い出した理想がこんなにも深々と自分の胸を抉ってくるとは思ってもいなかったが、この痛みこそが私の過去の象徴、過ちを犯した結果だと何よりも主張してくる。

 カヤ防衛室長も恐らく、この痛みを経験したのだろう──そうでなければ、あんなにも変わるとは思えない。

 

「……今は与えられた任務を果たそう。だが約束する。必ず話すと」

 

「……うん。分かった」

 

 そうして全てが終わった後、FOX小隊で集まり私の謝罪とそして見据えるべき『正義』を皆で話し合った。

 幸いな事に皆んな、私の不甲斐なさを許してくれそれどころか全員で他の者達に謝り続けるなど誰もが今まで進んでいた道が間違っていたという思いを秘めながらも進んでいた事が明らかになり、そんな単純な事も話し合えない程に余裕がなかったんだと笑い合った。

 

「──なるほど。目付きが変わりましたね皆さん」

 

「あぁ。貴女には色々と苦労を掛けさせられたし掛けもした」

 

「そうですね」

 

「だからこそ、聞きたい。今の貴女が目指す場所を」

 

 皆で話し合った次の日、私達はカヤ防衛室長の元に集まり無礼にも銃口を彼女に突き付けたままその真意を問いただしていた……カヤ防衛室長が以前とは異なっているのは分かっているが、もしその在り方がキヴォトスの平和に弓引くものなら今此処で我々諸共終わらせる、それが総意だ。

 

「曇りは晴れた様ですねユキノさん。良いでしょう、今の貴女達になら話す価値があります」

 

 ……銃口を突きつけられてなお、彼女には一切の怯えもなくいつも通りの笑みを浮かべたまま机の上に組んだ手の上に顎を乗せるか。

 

「今のシャーレ、引いては『先生』に依存した連邦生徒会を破壊し私が頂点に立ちます。その後、キヴォトスに災いを招く悪を全て支配下に置き完全なる平和を実現させる……それが私の最終目標です」

 

「……全ての悪を支配下に置く?そんな事が」

 

「出来ますよ。貴女達、FOX小隊が私の暴力装置となってくださるのなら」

 

「それじゃあ今までと何も変わらないじゃない!!ユキノ!!」

 

「落ち着けクルミ……その目標を叶えたとして貴女は何をするつもりだ?」

 

「ふむ」

 

 腕を解き、自由になったその手をゆっくりと自身の机の上に積まれていた書類に伸ばし一枚手に取るとクルクルと指先でペンを回しながら彼女は答えた。

 

「退屈な書類仕事でもしてるんじゃないでしょうか?」

 

 そう言って微笑み、皆が呆気に取られている中、彼女はジッと私の顔を見つめる。

 

「或いは全ての悪意を一身に受け、表舞台から退場しているか……こればっかりは分かりませんね。全てを成した後、キヴォトスにとって私は正義にも悪にも等しい存在でしょうから」

 

 そう覚悟した開かれた目で続ける。

 彼女からは自らを炉に焼べて、燃え尽きても構わないという覚悟を感じ私達は銃口を下ろしていた──言葉はなくとも、彼女の歩む道に着いて行くと分かった。

 

 

 

「ユキノちゃん?」

 

「……ん?あぁ、すまない。ちょっと昔を思い出していた」

 

「まぁ、これから戦う相手を思えば分かるけど珍しいね」

 

「雪辱を晴らす戦いでもあり、新たな理想を叶える為に必要な一戦だ。少しばかり気負うのも仕方ないだろう」

 

 ガゴンッと大きく車が揺れ、目的地に到着したことを告げる。

 運転していたオトギとクルミが降り、ニコと私が続き目の前の廃ビルを見上げる。

 

「主人なき傭兵集団『レイヴン』、お前達はキヴォトスに災いを招きかねない危険因子だ。故に我々が捕える」




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